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遺産相続は年収になる?含まれない理由と例外的に含まれる場合について解説

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相続で発生する税金といえば、相続税を連想する人も多いでしょう。

ほかにも、相続で高額なお金が手元に増えることで、中には翌年の住民税や保険料が増額してしまうのではないかと心配されている方もいるかもしれません。

本記事では、遺産相続は年収になるのかという内容を中心に、住民税や保険料に与える影響について解説していきます。

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遺産相続で財産を受け継いだら年収になる?

遺産相続で財産を得た場合、原則年収には含まれません

ここでは、相続が年収に該当しない理由について説明します。

相続財産は基本的に所得ではないので年収にはならない

結論から伝えると、基本的に相続で取得した財産は年収に含まれません

これは、相続は財産の移転という考えに基づくものであり、例外を除いて所得には該当しないためです。

年収とは税金の計算上、収入に該当します。

収入の定義として、正社員やパート、アルバイトとして会社から支払われた給与は収入とし、店舗経営などで得た売上もまた、収入に該当します。

つまり、儲けが出ているかどうかが年収として見なされるかの分岐点となるのです。

よって、遺産相続によって大金を手に入れたとしても、財産が次の世代へと継承するという観点から、年収に含まれることは基本的にありません。

所得税や住民税は増えない、国民健康保険の保険料も上がることはない

相続で大金を手にしたとき、税金が増えないか心配な方もいるでしょう

遺産相続で手に入れた財産は、基本的に収入として見なされないため、個人の所得に対して発生する所得税や住民税は増えません。

また、国民健康保険の保険料も同様に、所得に準拠して計算されるため、保険料が上がることもありません

相続でもらったお金や財産にかかる税金は相続税

遺産相続で得たお金や財産が年収に含まれず、所得税などはかからないものの、相続税がかかります

なお、相続税は相続した財産に対してそのままかかるわけではなく、遺産の総額(課税価格の合計額)から基礎控除額を差し引いた金額にかかります。

基礎控除額は、以下の計算式で求めることができます。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の人数

たとえば、父、母、子供1人の3人家族で父が亡くなったときの基礎控除額を計算しましょう。

法定相続人は母と子の2人であるため、計算式は以下のとおりです。

3,000万円+600万円×2=4,200万円

遺産の総額が4,200万円を超えなければ相続税は発生せず、超えている場合は超過分に対して相続税が発生します。

なお、以下の記事では相続税の基礎控除額を計算する際の注意点や、基礎控除以外に相続税を減らせる主な控除について詳しく解説しているので参考にしてください。

例外的に相続した遺産が年収になる3つのケース

基本的に、遺産を相続しただけでは年収にならないものの、以下3つのケースにおいては年収とみなされます

  1. 相続した遺産を売却し、利益を得た場合
  2. 「契約者=自分」「被相続人=被保険者」の生命保険から保険金を受け取った場合
  3. 収益物件を相続した場合

ここでは、それぞれのケースについて詳しく解説します。

1.相続した遺産を売却し、利益を得た場合

株式や不動産といった資産を売却して得られる資産を譲渡益といいます。

相続財産を売却して譲渡益を得た場合は収入と見なされ、譲渡所得として所得税の確定申告をおこなわなければなりません

譲渡所得の計算は、「いくらで取得し、いくらで売却したか」が基本的な考えとなります。

相続以外で取得した財産を売却する場合と同様の計算式を用いますが、相続特有の考え方や特例などがあるため注意が必要です。

譲渡所得の計算式

譲渡所得の金額 = 収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

取得費は、その財産を取得するために支払った代金や設備費、改良費など含む合計金額であり、建物の場合は合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額となります。

そして、相続財産での取得費は、亡くなった方が取得した際に支出した額が基準となります。

もしも、売買契約書等の紛失等によって亡くなった方が取得した際の金額が不明な場合は、売却額の5%相当を取得費とすることが可能です。

また、譲渡所得に対する税金は、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超える場合の長期譲渡所得か、それを下回る短期譲渡所得かによって税率が異なります。

長期譲渡所得

所得税15%+住民税5%

短期譲渡所得

所得税30%+住民税9%

※保有期間は被相続人が取得してからの期間で適用が可能

2.「契約者=自分」「被相続人=被保険者」の生命保険から保険金を受け取った場合

相続人が保険料を負担し、被保険者が亡くなることで相続人が死亡保険金を受け取る場合は所得とみなされ、年収に含まれます。

一方で、被保険者が自ら保険料を負担し、被保険者が亡くなったあと、その子どもなどが保険金を受け取る場合は所得とはみなされず、年収には含まれません。

保険契約者

(保険料を支払う人)

被保険者

(保険の対象となる人)

保険金受取人

課税種別

相続税

所得税

贈与税

上記より、死亡保険金は、その生命保険契約の「保険契約者」と「被保険者」「保険金受取人」の組み合わせによって、年収に含まれるかどうかが変動することがわかります。

保険契約者や被保険者などについて知りたい場合は、手元にある保険証券を確認するとよいでしょう。

なお、所得税が課される場合は、以下のように受取方法に応じて所得の種類が変わるので注意してください。

一時金で受領する場合

一時金で受領する場合、一時的に得られた臨時収入である一時所得として所得税がかかります。

契約者自身が保険料を支払い、被保険者の死亡保険金も自分で受け取るため、受取人自身が積み立てた財産と同等であるとされます。

課税対象額=(収入 – 支出金額 – 50万円)×2分の1

年金で受領する場合

年金で受領する場合、雑所得として所得税がかかります

雑所得は、所得税の分類でほかの分類にあてはまらない全ての所得が該当します。

課税対象額=収入 – 必要経費

※特別控除はありません

3.収益物件を相続した場合

駐車場や賃貸マンションなど賃料収入のある収益物件を相続した場合、相続人に賃料という収入が発生します。

そのため、収益物件の相続はその賃料収入が年収に含まれます。

また、収益物件は被相続人が亡くなってからも、家賃が継続的に振り込まれます

遺産分割協議によってその収益物件を相続する人が決定するまでの期間に得た家賃収入は、各相続人に対して法律で定められた割合に応じて分けられます。

そのため、遺産分割協議が終了するまでは各相続人に収益物件から収入を得たという考え方になるのです。

もちろん、協議終了後は相続人のみが収入を得ることになります。

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遺産相続が年収になる場合は確定申告が必要

ここまで、遺産相続で年収が発生するケースを紹介してきました。

相続によって所得が発生する場合は、確定申告をおこなう必要があります。

ここからは、確定申告と特例について説明します。

確定申告の期限と方法

確定申告をおこなう期間は、毎年2月16日から3月15日までの1ヵ月間です。

もしもそれぞれの日付が土曜や日曜などの休日にあたる場合は、翌日もしくは翌々日の月曜が期限となります。

該当期間の間に、提出年の前年1月1日から12月31日までの所得額と、そこから求められる所得税の額を報告しなければなりません。

確定申告書の提出方法は4パターンあり、それぞれ提出日の扱いが異なります。

提出方法

提出日

税務署に直接確定申告書を持っていく

確定申告書を税務署に提出した日

e-Taxを用いてインターネット上でデータ送信

データ送信日

郵便もしくは信書便での郵送

郵便局で押される通信日付印の日付

税務署に設置される時間外収集箱への投函

当日の朝に回収された分は、前日の日付

もしも期限内に確定申告をおこなわなかった場合は、本来納めるべき税金に加えて無申告加算税をはじめとするペナルティが課せられます。

このような事態を回避するためにも、期限内の申告を心がけましょう。

特例を利用して上手に節税

遺産相続によって所得が増えると、翌年の住民税が大幅に増える可能性がありますが、特例を活用することで住民税を抑えられる可能性があります。

まず、取得費加算の特例があります。

これは、相続で受け継いだ不動産を売却して利益が出た場合に所得税や住民税の負担を軽減できる特例です。

この特例を利用すると、相続した不動産の取得費に、支払った相続税の一部を加算することができ、結果として売却益に対する所得税と住民税の負担が軽くなります。

次に居住用財産を売却する際の特例です。

被相続人が住んでいた家やその土地を相続人が売却する際に一定の要件を満たせば、売却益から最大3,000万円まで控除を適用することができます。

被相続人が亡くなった時点で一人暮らしであることや、売却までの期間に家が空き家であることなど、複数の要件に適用しなければなりません。

被相続人に所得があった場合は準確定申告が必要

準確定申告は、相続人が被相続人の代わりに確定申告をする手続きです。

相続人は、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡した日までに確定した所得及び税額を算出し、申告をおこなう必要があります。

準確定申告が必要な場合

被相続人が下記のいずれかに該当する場合、相続人が準確定申告をおこなわなければなりません。

  • 不動産オーナーや店舗経営など自営業者であった場合
  • 正社員やパート、アルバイトで2ヵ所以上から給与所得がある場合
  • 2,000万円を超える給与収入があった場合
  • 給与・退職金以外で20万円を超える所得があった場合
  • 公的年金収入が400万円を超えていた場合
  • 株式や不動産の売却で、譲渡所得にかかる納税が発生していた場合

もしも年金受給者で、公的年金の収入額が400万円以下、公的年金にかかる雑所得以外の所得金額が20万円以下であれば申告は必要ありません。

さらに、被相続人の収入が給与や年金収入のみで源泉徴収されている場合、準確定申告によって所得税が還付される可能性もあります。

申告は4ヵ月以内におこなう

準確定申告は、自己が相続人となって相続が開始したことを知った日から4ヵ月以内におこない、死亡日時時点において被相続人の住所を管轄する税務署に書類を提出しなければなりません。

さらに、被相続人が1月1日から3月15日までの間に死亡し、前年の確定申告をしていなければ、こちらのケースも同様に4ヵ月以内に前年分の準確定申告をおこなう必要があります。

いずれにしても、4ヵ月以内という短い期間の間に書類収集や記入を進めていかなければなりません。

もしも提出期限までに準確定申告を提出できなかった場合は、通常の確定申告同様に無申告加算税などのペナルティが発生してしまいます。

必要な書類の手続きなど、速やかに進めるよう心がけましょう。

収益物件を相続した場合は青色申告の承認申請をする

被相続人が青色申告事業者として収益物件を運営した場合、その収益物件を相続したとしても、相続人は改めて青色申告の承認申請をする必要があります。

そもそも、所得税には青色申告と白色申告があります。

青色申告は税金面でのメリットが大きく、青色申告事業者を選択する事業者は非常に多いです。

ですが、遺産相続ではその選択を引き継ぐことができないので、相続人は注意をしなければなりません

相続後の青色申告の申請期限は、相続発生がいつかによって、タイミングが異なります。

申請期限を過ぎないように注意を払いながら、申請を完了させましょう。

死亡日(相続発生)

青色申告の申請期限

その年の1月1日から8月31日まで

死亡の日から4ヵ月以内に申請

その年の9月1日から10月31日まで

その年の12月31日までに申請

その年の11月1日から12月31日まで

その年の翌年の2月15日までに申請

さいごに

遺産相続で財産を得た場合、原則として年収には含まれません。

しかし、相続した遺産を売却して利益を得た場合や、自分が契約した被相続人が被保険者となる生命保険で保険金を受け取った場合、収益物件を相続した場合は例外的に所得として見なされます

相続の場合、贈与税や相続税に気を取られてしまいがちですが、遺産相続が年収になるケースもよく理解しておきましょう。

とくに確定申告の手続きは、提出期限を遅れてしまうと、本税に加えて加算税や延滞税などが発生してしまうこともあります。

遺産相続は突然発生するものであり、場合によっては協議そのものが難航してしまうことも少なくありません。

また、遺産分割協議などを進めながら、遺産相続の課税種別を把握し、対応していくことは根気を要する作業といえます。

もし、円滑な遺産相続の手続きを進めたいと考えているのであれば、弁護士へ相談するのがおすすめです。

中でも相続問題に注力している弁護士であれば、遺産分割協議に介入し交渉を進めていきながら、どのように分割していくかまでアドバイスしてくれます。

とくに準確定申告は自己が相続人となって相続が開始したことを知った日から4ヵ月以内におこなわなければならない手続きのため、なるべく早い段階での相談をおすすめします。

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この記事の監修者
井澤・黒井・阿部法律事務所 東京オフィス
黒井 新 (第二東京弁護士会)
2002年弁護士登録。15年以上の実績のなかで多くの相続問題に取り組み、その実績を活かし、相続分野における著書執筆や不動産の講演・セミナーへ登壇するなど、活動の幅は多岐に渡る。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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