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遺贈とは相続人以外への相続|遺贈で知っておくべき全知識
2016年02月04日

遺贈とは相続人以外への相続|遺贈で知っておくべき全知識

Izou


遺贈(いぞう)とは、被相続人が遺言書によって受遺者(遺贈を受けられる人)へ遺産を渡す行為のことで、通常は被相続人の財産を相続人が全て受け継ぐのに対して、遺産の一部、または全部を「無償あるいは一定の負担を付けて」相続人だけではなく、相続人以外にも相続させることができます。
 
遺贈には2種類あり、包括遺贈と特定遺贈があり、死因贈与とは異なる点が挙げられます。今回お伝えすることは、「遺贈と相続の違い」「遺贈の種類」「遺贈に関わる相続税」についてご紹介しますので、お役に立てていただければ幸いです。


 

 【目次】
遺贈に関する基礎知識|遺贈と相続の違いなど
受遺者(遺贈を受ける人)
遺贈義務者(遺贈を実際に行う人)
不特定物の遺贈義務者の担保責任
遺贈と相続の違い
受遺者が遺言者より前に死亡した場合
遺贈とよく似た死因贈与とは
遺贈の放棄は3ヶ月以内なら可能
遺贈の種類|包括遺贈と特定遺贈の主な違い
包括遺贈
特定遺贈
特定遺贈と包括遺贈の違いのまとめ
負担付遺贈というのもある
特殊な形態の遺贈について
補充遺贈
裾分け遺贈
後継ぎ遺贈
遺贈の執行は遺言書で行う
特定の財産を第三者に遺贈する場合の遺言書 
第三者に包括的に遺贈する場合の遺言書
遺贈した場合の相続税の計算
遺贈があった場合の相続税の計算方法
まとめ

 

 

遺贈に関する基礎知識|遺贈と相続の違いなど

遺贈と相続の違いについて触れる前に、誰が遺贈を受けられるのか、そして実際に遺贈を行うのは誰なのかを確認していきましょう。
 

受遺者(遺贈を受ける人)

実際に遺贈を受ける人は受遺者と呼ばれ、被相続人の相続開始時に生存している者に限られますが、相続人以外でもなることが可能です。

被相続人の相続開始時に生存していることを同時存在の原則と言い、同時死亡の推定(民法32条の2|数人が危難等にあって死亡した場合、その死亡の先後関係が明らかでない場合に同時に死亡したものと推定する規定)の場合にも、遺贈は効力を生じないとしています(民法994条1項)。

また、胎児の場合は既に生まれたものとみなされるため、受遺者としての権利があるとされます。
 

(相続人に関する規定の準用)
第九百六十五条 第八百八十六条及び第八百九十一条の規定は、受遺者について準用する。
引用元:民法第965条

(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
民法886条


また、相続欠格者に該当する方も、受遺者になることはできません。
 

(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
引用元:民法第891条

 

遺贈義務者(遺贈を実際に行う人)

実際に遺贈を行う(履行)する義務は原則として相続人が負うことになります。(第896条)。つまり、遺贈に伴う手続きや、目的物の引渡しなど、実行すべき義務を負う者を「遺贈義務者」といい、遺贈義務者となるのは相続人(法定相続人)のみです。(民法896条)
 
また、包括受遺者も遺贈を履行する義務を負い、相続人が明らかでない場合は相続財産管理人が行い(957条1項)、遺言執行者がいる場合には、その者が遺贈を履行する義務を負うことになります。(1012条1項)。
 
包括受遺者に関しては、後述の「遺贈の種類|包括遺贈と特定遺贈」で解説していきます。
 

不特定物の遺贈義務者の担保責任

物には特徴がある特定物(例えば不動産)の他に、米・水・ワインのように商品としての銘柄や規格を指示するだけで取引できるものを不特定物と呼んでいます。

この不特定物を遺贈する物としていたのに、既に遺贈義務者(被相続人)によって売却されていた場合(手違いや忘れていたなど)、受遺者​はその遺産の所有権を取得できないことになります。
 
民法では、このように受遺者が遺産を取得できない場合、遺贈義務者(被相続人)は売主と同じ担保責任を負うこととし、不特定物の遺贈義務者の担保責任を認め、受遺者の利益を保護することにしています。

このように、受遺者は遺贈義務者に対して責任を追及することができる制度を「遺贈義務者の担保責任」といいます。(998条1項2項)
 
具体的には、受遺者は遺贈義務者に対して損害賠償請求等をすることになりますが、肝心の遺贈義務者はすでに他界しているので、実際は遺贈義務者の相続人に対して請求することになります。
 

遺贈と相続の違い

遺贈は、遺言で財産の全部または一部を「相続人又は相続人以外の人に無償で贈与(譲渡)すること」で、遺贈は遺言者が死亡した時に発生します。これに対して相続とは、相続人に対してのみ行われる行為をいいますので、「相続人以外の第三者にも遺産を渡せるか」「相続人しか遺産をもらえないか」が大きな違いと言えます。
 
遺産相続において、被相続人の親族である法定相続人以外の者に財産(遺産)を取得させたい場合、遺言書を作成して「遺贈」するしか方法はないと思って、まず間違いないでしょう。ちなみに、「贈与」「遺贈」「相続」とわかりにくい表現が遺産相続の話題ではよく出てきますが、以下のように考えるとわかりやすいかと多います。
 
相続:被相続人の親族(法定相続人)に遺産を渡すこと
遺贈:遺言書によって、被相続人の死後に財産を無償で渡すこと(第三者可)
贈与:被相続人が生きている間に財産を無償で渡すこと(第三者可)

 

受遺者が遺言者より前に死亡した場合

もし、遺言者が死亡する以前に、受遺者の方が死亡してしまった場合、遺贈の効力は発生しません(994条1項)

遺産の全部を無償で渡すのではなく、停止条件が付いた遺贈の場合、受遺者が条件成就前に死亡した時には遺贈の効力はありませんが、遺言者が遺言で別段の意思表示(特定の条件)をしていたときはその内容に従うことになります。(994条2項)。
※相続の場合と同様に欠格事由がないことも必要。
 
もし、受遺者が遺贈の放棄や承認の返事をせずに死亡した場合、相続人は相続権の範囲内で遺贈の承認や放棄をすることが可能ですが、遺言者が遺言で別段の意思表示をしたときは、そちらに従うことになります(988条)。
参考:相続破棄をする場合の手続きの流れと注意点
 

遺贈とよく似た死因贈与とは

遺贈と似たものに 死因贈与 というものがあります。これは「自分が死んだら土地を与える」という「契約」になります。契約ですから相手(受贈者)の承諾が必要です。

贈与者の死亡した段階で効力が生じるという点では遺贈と類似していますので、民法上は「遺贈に関する規定を準用する」と定めています(民554条)。
 

【民法554条】
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

 

遺贈の放棄は3ヶ月以内なら可能

包括受遺者の場合は「相続人と同一の権利義務を有する」ので、包括遺贈は相続の承認・放棄に準じて取り扱われます。つまり、遺贈を放棄するには相続人と同じく3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
 
また、マイナスの財産が多くて、包括遺贈を受けたくないという場合もあると思います。そんなときは遺贈の拒否(遺贈の放棄)をすることもできます

特定遺贈の場合は、遺言者の死亡後ならいつでも遺贈を放棄することができます。特に家庭裁判所への申立ても必要ありません。ただ、遺言執行者がいるときは、遺言執行者が遺贈義務者となり、意思表示は内容証明郵便によって行います。
 


 

遺贈の種類|包括遺贈と特定遺贈の主な違い

遺贈には大きく分けて「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類が存在し、「渡す遺産を割合(%)で決める」のか、「物の指定で決める」のかでそれぞれ名前が違っていきます。
 
包括遺贈の受遺者は「相続人と同一の権利義務を有する」といっても、正規の相続人になれるわけではありませんので、相続人と次の点で異なります。
 

  • ・受遺者が先に死亡した場合、代襲相続で遺贈を受けることはできない

  • ・遺贈の受遺者には遺留分はない

  • ・相続人の誰かが相続放棄をしても受遺者の相続分は変わらない

  • ・受遺者は登記しないと第三者に対抗できない

  •  ※相続人は登記なくして対抗できる)

  • ・個人ではなく、法人でも受遺者になれる

  • ・保険金の受取人としての「相続人」には、包括受遺者は含まれない

 

包括遺贈

包括遺贈(ほうかついぞう)とは、「全財産を贈与する」「遺産の4分の1を与える」というように一定の割合を指定して行なう遺贈のことです。(民法964条)

ただ、遺贈者に借金などがあればマイナス分も引き継ぐことになりますので、受遺者にとってはあまりメリットのないものかもしれません。
 

特定遺贈

特定遺贈とは、「土地をBに与える」というように、特定の財産(建物・土地・その他の財産)を指定してする遺贈を特定遺贈といいます。包括遺贈とは違い、受遺者は遺贈されたものだけを取得することになるので、被相続人がどんなに負債を抱えていたとしても負担する義務はありません。
 

特定遺贈と包括遺贈の違いのまとめ

 

特定遺贈

包括遺贈

内容

財産を特定して遺贈する

財産を特定せずに遺贈する方法
「財産の2分の1」を遺贈するなど

受遺者の権利義務

1:債務は承継しない
2:遺産分割協議に参加しない

受遺者は相続人と同じ権利義務を持つ
1:相続財産の割合に応じた債務を負担
2:遺産分割協協議に参加できる 

遺贈の放棄

遺贈義務者(相続人等)に対し、いつでも放棄の意思表示が可能 

遺贈があったことを知った時から3カ月以内
・遺贈の放棄または限定承認が選択可能
(家庭裁判所に手続きを行う)

 
 

負担付遺贈というのもある

遺贈者(被相続人)が受遺者に対して、一定の義務を負担するよう求める場合を負担付遺贈といいます。たとえば、「土地、建物を遺贈する代わりに、妻が死亡するまで扶養してほしい」といった遺言を残していた場合が該当します(1002条1項)
 
負担付遺贈は、受遺者となる者に相続人や第三者のために一定の負担を課すとうのが特長ですが、受遺者は、遺贈の目的の価格を超えない限度でその負担を履行すればそれでOKです。

もし、受遺者が負担を履行しない場合、他の相続人が、相当の期間を定めて履行を催促し、それでも履行がないときは、家庭裁判所に遺言の取消を請求ができます(1027条・1015条)。
 
受遺者に課した対価を履行してもらうためには、負担付遺贈としたということを確かなものとするために、「公正証書」にしておくのが便利です。
 


 

遺贈の執行は遺言書で行う

前述した通り、遺贈は遺贈義務者の遺言によってのみ行われます。いかに遺贈のある遺言書の書方サンプルを掲載しておきますので、参考にしてみてください。
 
 

特定の財産を第三者に遺贈する場合の遺言書 

遺言書

 
 遺言者(アシロ太郎)は、次のとおり遺言する。
 
第1条 (アシロ太郎)は、その所有する不動産を(アシロ太郎)の長男の妻(アシロ花子)に遺贈する。

   1 土 地
     所 在  ●●県●●市●●町●●丁目
     地 番  ●●番地
     地 目  宅地
     地 積  ●●●・●●●平方メートル
 
   2 建 物
     所     在  ●●県●●市●●町●●丁目●●番地
     家 屋 番 号  ●●番
     種     類  住宅
     構     造  木造瓦葺二階建
     床  面  積  一階  ●●・●●平方メートル
              二階  ●●・●●平方メートル
 
第2条 遺言者(アシロ太郎)は、この遺言執行者として、●●●●を指定する。
 
    平成●●年●●月●●日
 
            ●●県●●市●●町●●丁目●●番●●号
            遺言者  アシロ太郎      印

 
 

第三者に包括的に遺贈する場合の遺言書

遺言書

 
 遺言者(アシロ太郎)は、次のとおり遺言する。
 
第1条 アシロ太郎は、その所有する財産の全部を、アシロ太郎の内縁の妻(●●●●)に包括遺贈する。
 
第2条 遺言者アシロ太郎は、この遺言執行者として、●●●●を指定する。
 
    平成●●年●●月●●日
 
            ●●県●●市●●町●●丁目●●番●●号
            遺言者  アシロ太郎      印

 参考:遺言書について絶対に知っておくべき9つのコト
 
 

遺贈した場合の相続税の計算

遺言による遺贈で財産を取得した場合も、その財産については相続税が課税されます。つまり、相続人ではない方が遺贈で財産を取得した場合も、相続人と同じように相続税を納付する必要があるということです。
 

遺贈があった場合の相続税の計算方法

通常の遺産相続と異なる点は、相続又は遺贈によって財産を取得したのが、被相続人の法定相続人以外の場合で、原則としてその方が取得した財産に対応して算出された相続税額に、2割加算した額が相続税額とされます(相続税額の2割加算)。
 
相続税の申告が必要かどうかは、相続税の基礎控除額(「3,000万円+(相続人の人数)×600万円」)を超えているかいないかがボーダーラインになりますが、これを超えていなくても、若干の注意が必要になります。
 
詳しくは「3分でわかる遺産相続の手続き|自分で行う際の注意点の全て」「相続税の申告方法とその申告時の注意点まとめ」をご確認ください。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
 
遺贈についての法律知識などをご紹介してきましたが、今後のお役に立てば幸いです。
 

現在の遺産相続の割合や分割協議に不満がある、納得がいかないという方は相続が得意な弁護士への相談をオススメします

もし、あなたが下記のようなお悩みがあれば、弁護士への相談を強くオススメします。

・もっと遺産を貰って当然だと思う
・遺産の分け方を兄弟で争っている
・遺言書の内容が真実か確かめたい
・自分勝手な相続人が居て困っている
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大きな金額が動く遺産相続では、今まで仲の良かった兄弟でも争いに発展することが多くあります。仲が良くなければ尚更争いが起こる可能性は高いでしょう。

当事者同士が感情的になってしまうと解決は絶望的です。まずは弁護士に相談して解決の糸口を見つけましょう。

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相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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