弁護士に依頼を断られた経験はないでしょうか。
トラブル解決のため、せっかく弁護士に相談する決心をしたのに、いざ話してみると受任してもらえなかった…ということになると、心が折れてしまいそうです。
そもそも弁護士には、依頼に必ず応じなければいけない、という「受任義務」はありません。
言い換えれば、弁護士にも引き受ける仕事を選ぶ権利があるということです。
さまざまな理由・事情を考慮して弁護士が依頼を断るのも、決して不当なことだとはいえません。
しかし、だからといって依頼を簡単に諦める必要はありません。
弁護士が依頼を断る原因は、いくつかのパターンに大別されるので、それぞれへの対策を立てておけば、受任してもらえる確率が高まるかもしれません。
この記事では、弁護士が依頼を断る5大原因と、断られないようにするための対処法を解説します。
スムーズに依頼を受任してもらうための知識を身につけ、必要な準備をしていきましょう。
弁護士から依頼を断られてしまった方へ
一度弁護士に依頼を断られてしまった場合でも、依頼内容によっては別の弁護士が引き受けてくれる可能性があります。
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この記事に記載の情報は2024年05月22日時点のものです
弁護士に依頼を断られる5大原因
弁護士が受任を拒否する主な原因として、以下の5つが挙げられます。
①費用倒れする
弁護士に支払う費用が、弁護士に依頼した結果、得られるであろう見込みの利益を上回ってしまうケースです。
- 弁護士費用…相談料(無料の場合もあり)、着手金、成功報酬、実費など
- 弁護士依頼による獲得見込み利益…相続財産の増額分、相続債務の減免分など
とすると、【B-A】がマイナスになる見込みの場合には、弁護士は依頼を断る可能性が高いです。
依頼者にとってメリットのない案件の受任は、多くの弁護士が断る傾向にあります。
②勝てる見込みがない
弁護士が受任した結果、紛争相手との調停・裁判などに至っても、勝ち目がないと思われるケースです。
弁護士が法的な視点から紛争案件を見て、明らかに依頼者側に不利な条件・状況がそろっている場合、弁護士は受任を断る可能性が高いでしょう。
ただし、弁護士の技量・経験や性格によって判断が変わってくることもあり得ます。
また、着手金目的で、勝ち目のない案件でも引き受けるような弁護士には注意が必要です。
③業務の範囲ではない
依頼された法律分野を、弁護士があまり得意としていなかったり、そもそも業務範囲外としていたりするケースです。
弁護士には、それぞれ得意とする法律分野・領域があります。
あらゆる法律問題に一人で対応できる弁護士は、ほとんどいないと考えてよいでしょう。
したがって、不得意だったり、経験が少なかったりする分野の依頼については、適切な解決へと導けない可能性があるため、断ることもあります。
④利益相反にあたる
紛争の相手方が、同じ弁護士にすでに何らかの相談をしているケースです。
弁護士が、すでに受任中の依頼者と利害が対立するような、別の案件を受任することを「利益相反行為(りえきそうはんこうい)」と言い、弁護士法第25条や弁護士職務基本規程で禁止されています。
例えば、遺産分割の割合について、あなたと別の相続人の間で揉めている場合に、弁護士はあなたと別の相続人の両方から相談を受けることはできません。
これはわかりやすい例ですが、利益相反と捉えられる行為の範囲は実際にはもっと広く、弁護士は慎重にこの点に配慮して、引き受ける仕事を選んでいます。
⑤相談者と信頼関係を築けない
依頼者が弁護士とのコミュニケーションを怠ったり、過大な要求をしたりするケースです。
助言を無視したり、音信不通になったりするような依頼者から仕事を引き受けると、弁護士としては円滑に仕事が進まず、負担が増えるばかりです。
また、法的に見て明らかに過大な要求は、いくら優秀な弁護士でも対応することはできません。
こうした相談者からの依頼は、弁護士に警戒され、断られる可能性が高いでしょう。
弁護士に依頼を断られないための対処法
ここでは、弁護士に依頼を断られないようにするための対処法を、原因別に解説していきます。
後半では、相続問題ならではの対策も紹介しますので、参考にしてください。
費用が安い弁護士を探す|①のケース
費用倒れの可能性があるために弁護士に依頼を断られる場合は、費用を安く設定している弁護士に依頼する、というのが一つの手です。
そもそもの弁護士費用が安ければ、獲得見込みの利益から差し引かれる額も少なくなるので、費用倒れの可能性は低くなります。
ただし、単純に安ければいい、というわけではない点に注意してください。
費用が安い分、経験も浅く、獲得見込みの利益も下がってしまう、ということもあり得ます。
費用と獲得見込みの利益を天秤にかけ、依頼者に一定の利益が出そうな場合には、受任してもらえるでしょう。
面談で詳細な相談をしておく|②のケース
勝てる見込みがない紛争でも、状況をきちんと整理し、詳細に弁護士に話すことで、受任を前向きに検討してくれるかもしれません。
弁護士は、基本的に相談時に出てきた話の内容をもとに、調停・裁判で勝てるかどうかの判断をします。
説明が雑だったために、「勝てない」と判断されていた案件でも、有利になりそうな材料を弁護士に多く提供し、丁寧に説明することで、「勝てる」という判断に変わる可能性があります。
また、どこまでを「勝ち」とするかの相談も重要です。
依頼者が少しハードルを下げれば、弁護士にも応じる余地が出てきます。
自分の希望に適した相談先を選ぶ|③のケース
あらかじめ、自分が相談したい法律分野を得意とする弁護士を選べば、業務範囲外という理由で依頼を断られることはありません。
また、弁護士以外の別の専門家へ相談してみる、というのも一つの方法です。
相続問題なら、税金や登記に関する問題も起こりがちです。
税金なら税理士、登記なら司法書士のほうが、弁護士よりも専門的な知識を持っている場合があり、弁護士に業務範囲外として断られた案件でも、受任してもらえる可能性があります。
別の弁護士を探す|④のケース
利益相反が原因で弁護士が受任してくれない場合には、別の弁護士を探してみるしかありません。
住んでいる地域や依頼分野から、自分に合った別の弁護士を探してみましょう。
なお、利益相反のために弁護士が依頼を断る際は、その理由を明かしてくれない可能性があります。
これは、すでに受任している依頼者との関係に配慮しているためです。
特に自分に思い当たる非がないのに、理由も告げられず依頼を断られた場合は、その依頼が弁護士にとって利益相反にあたっている可能性があります。
自分自身の相談姿勢を見直す|⑤のケース
相談しているうちに弁護士との関係が悪くなり、受任を断られてしまったという場合には、自分自身の態度や相談姿勢に問題がなかったか、一度振り返ってみましょう。
受任後、依頼者と弁護士は、共に問題解決を目指すパートナーとなります。
弁護士としても、受任後によい協力関係を築いて仕事が進められそうかどうかを、相談時に見極めようとしています。
弁護士に相談するということは、何かしら困ったことを抱えている状況だと思いますので、焦っていたり、興奮していたりするかもしれません。
しかし、過度な感情は抑え、冷静に話をすることが、弁護士に信頼してもらうことにもつながります。
相続問題を依頼したい場合
以下は、相続問題で役立つ、弁護士への依頼成功のためのアドバイスです。
財産調査・書類準備をし直す
財産調査とは、相続する財産について、「何が」「どのくらい」あるのかを調べることです。
財産調査をし直すことは、弁護士が受任しやすい環境を作ることにつながるかもしれません。
例えば、財産調査をしっかりと行うことにより、当初想定していたよりも多くの相続財産があることが判明した場合、その財産を依頼者が相続できる可能性も出てきます。
その可能性が大きいほど、弁護士にとっても受任するメリットが大きくなるといえるでしょう。
また、相続ではたくさんの書類作成を必要とします。
弁護士への相談時に、これらの書類をきちんと見せられる状態にしておけば、弁護士が取れる法的手段が増える可能性があります。
財産調査や書類準備も含めて、弁護士に依頼する場合もあります。
しかし、いずれにしても、自分でできる範囲の準備、つまり状況整理はしっかりとしておくことが、弁護士に受任してもらえる確率を上げることは間違いありません。
相続問題が得意な弁護士を探す
弁護士は、経験が浅くあまり得意でなかったりする分野は、業務範囲外として依頼を断ることも多いです。
したがって、相続問題に関する依頼を受任してもらうためには、相続問題が得意な弁護士に依頼することが重要です。
弁護士のホームページやポータルサイトでは、取り扱い分野や解決実績が紹介されています。
まずはインターネットで条件に合う弁護士を探してみて、気になった弁護士に連絡を取り、実際に話して詳細を詰めていく、という流れがよいでしょう。
依頼前に知っておきたい注意点
ここでは、自分に合った弁護士を探すために、依頼前に知っておきたいポイントをご紹介します。
前項まで、弁護士に受任してもらうためのアドバイスをしてきましたが、ただ受任してもらえればいい、というわけではありません。
自分に合った弁護士と、継続的に協力して、解決を目指すことが重要です。
以下を参考に、弁護士探しに臨んでみてください。
複数の弁護士に相談するのがベター
可能であれば、多くの弁護士の意見を聞いてみるのがおすすめです。
弁護士であれば、法律知識があるのは当然ですが、それに対する解釈と運用方法は、弁護士それぞれに異なる部分も多いです。
現状認識から、調停・裁判になった場合の勝敗の行方に対する見解、獲得利益の見込みまで、すべての弁護士で一律というわけではありません。
一人の弁護士だけの意見を聞いた状態だと、場合によっては偏った方向に導かれてしまうかもしれません。
より客観的な視点を得るという意味で、複数の弁護士に相談してみることは大切です。
必ず面談で相性を確認する
弁護士との面談では、依頼内容や費用などの条件面はもちろん、話しやすさや印象のよさなど、相性面も気にかけてみてください。
弁護士によって、性格・個性はさまざまです。
受任後は問題解決まで長く付き合っていくことになるので、お互いにストレスを感じず、要望や事実はきちんと伝え合える関係性を築くのが望ましいです。
条件面よりも、むしろ相性面のほうが、個人差が出やすい部分かもしれません。
面談時に重視すべきポイントとして、押さえておきましょう。
相談時には弁護士に嘘をつかないこと
弁護士に相談する際は、自分に都合の悪いことでも、包み隠さずに話しましょう。
紛争相手との交渉で優位に立つために、不利になりそうな事実を隠したり、嘘をついたりしたくなるかもしれません。
しかし、これはのちのち逆効果になります。
弁護士との契約は「信義則」、つまりお互いに相手の信頼を裏切らず、誠意ある行動をすべき、という原則の上に成り立っています。
依頼者が嘘をつくことはこの信義則に反していることになり、弁護士としては受任契約が結べなくなります。
また、受任後に嘘が発覚すれば、契約無効か解除となるでしょう。
これは依頼者にとってはダメージでしかないので、相談時に嘘をつくべきではありません。
受任後も辞任される可能性がある
弁護士との受任契約が成立した後も、依頼者、弁護士ともに契約を解除する権利があります。
これは依頼者と弁護士間で結ばれる契約が「委任契約」だからです。
弁護士としては、中途での契約解除にあまりメリットはありません。
したがって、理由なく契約を解除することは基本的にはありませんが、依頼者に前項で述べた信義則違反があったり、解決方針があまりにかけ離れていたり、音信不通になったりした場合には、弁護士側から依頼者へ契約解除を通達することはあり得るでしょう。
こうした状況になっても、依頼者は不当性を申し立てることができません。
弁護士に明らかな非があれば話は別ですが、法律の専門家である弁護士が、そうしたリスクを冒して契約解除することは考えにくいからです。
受任後の辞任を避けるためには、事前の相談で誠実に対応し、丁寧に詳細を詰めておくことが重要です。
さいごに
この記事では、弁護士に依頼を断られる原因と、断られないための対処法をご紹介してきました。
以下は5大原因とその対処法を一覧にしたものです。
一度依頼を断られたからといって、すぐに諦めず、まずはその原因を確かめ、適切な対処法を講じていきましょう。
そうすれば、次は受任してもらえる確率が上がるはずです。
また、受任してもらってからが本当の意味でのスタートです。
受任途中で弁護士とトラブルになったり、辞任されたりしてしまわないよう、相談時にあなたに合った弁護士を見つけることが大切です。