不在者財産管理人とは、行方不明者・不在者の代わりに財産管理をおこなう人のことを指します。
遺産相続の場合、被相続人の遺言書がなければ相続人全員で遺産分割協議をおこなって分配方法を決めるのが通常です。
しかし、相続人である一人が行方知れずになっていて連絡がつかない場合、遺産分割協議をおこなうことができません。
行方不明の相続人がいて相続手続きが進行できないようなケースでは、家庭裁判所にて不在者財産管理人の選任申立てをおこなうことになります。
本記事では、不在者財産管理人の定義や役割、不在者財産管理人の選任が必要なケースや選任手続きの流れ、弁護士に相談するメリットなどを解説します。
行方不明の相続人がいて相続手続きが進められない方へ
結論からいうと、相続人の中に連絡が取れない人がいる場合、不在者財産管理人を選任することで相続手続きが進められます。
不在者財産管理人の選任を考えているなら、一度弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼すれば、以下のようなメリットを得ることができます。
- 不在者財産管理人の選任手続きの進め方をアドバイスしてくれる
- 代理人として選任手続きを進めてくれる
- 相続トラブルを解決してくれる
- 遺産の分配方法をアドバイスしてくれる など
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不在者財産管理人とは
不在者財産管理人とは、遺産相続の際に相続人が行方知れずになっていて相続手続きが進められない場合、代わりに財産管理をおこなう人のことです。
遺産相続では「必ず相続人全員が同じ場所で集まらなければならない」というわけではありませんが、相続人全員の同意がなければ遺産分割協議は終了しません。
不在者財産管理人の選任を申し立てたのち家庭裁判所の許可を得れば、不在者に代わって不在者財産管理人が遺産分割協議に参加できるようになります。
なお、不在者財産管理人と混同されやすいものとしては「失踪宣告」や「相続財産清算人」などがあり、ここではそれぞれとの違いについて解説します。
不在者財産管理人と失踪宣告の違い
失踪宣告とは、生死不明の状態の人について「死亡したもの」とみなす手続きのことです(民法第30条)。
失踪宣告も不在者財産管理人も「行方不明の相続人がいる場合に実施される」という点は共通しているものの、行方不明者・不在者の扱いが異なります。
不在者財産管理人の場合は「行方不明者・不在者は生きている」という前提で相続手続きが進行するのに対し、失踪宣告の場合は「法律上は死亡している」という扱いで進行します。
失踪宣告後に生存していることが判明した場合は取り消すことも可能ですが、取り消すと相続手続きがやり直しになって手間がかかるおそれがあります(民法第32条1項)。
たとえば「行方不明になってから7年以上経っている」「すでに亡くなっている可能性が高い」というようなケースでは、失踪宣告のほうが適している可能性があります。
不在者財産管理人と相続財産清算人の違い
相続財産清算人とは、相続が発生したものの相続人が存在しない場合、代わりに財産管理などをおこなう人のことです。
相続財産清算人も不在者財産管理人も「遺産相続で財産管理をおこなう」という点は共通しているものの、適用条件や対象範囲などが異なります。
不在者財産管理人の場合は「相続人の中に行方知れずの人がいる」という場合に選任され、行方不明者・不在者の財産が対象となります。
一方、相続財産清算人の場合は「1人も相続人が存在しない」という場合に選任され、被相続人の全財産が対象となります。
なお、これまでは「相続財産管理人」という名称が用いられてきましたが、2023年4月施行の民法改正によって「相続財産清算人」へと変更されています。
不在者財産管理人の4つの役割
不在者財産管理人の主な役割・業務としては、以下の4つがあります。
- 不在者の財産の管理・保存
- 不在者の財産目録の作成
- 家庭裁判所への財産状況の報告
- 遺産分割協議への参加
ここでは、それぞれの役割・業務について解説します。
1.不在者の財産の管理・保存
不在者財産管理人は、行方不明者・不在者の財産を管理する役割を持ちます。
具体的には、財産の保存行為・利用行為・改良行為などの権限が付与されます。
なお、財産の処分行為については認められておらず、行方不明者・不在者の財産を処分するためには家庭裁判所の許可を得る必要があります。
もし不正に使用したことが発覚した場合、不在者財産管理人は解任となって損害賠償請求されたり、業務上横領として刑事罰に問われたりすることもあります。
2.不在者の財産目録の作成
行方不明者・不在者の財産目録の作成も、不在者財産管理人に与えられる職務のひとつです。
財産目録とは、所有する財産の種類・数量・所在・価額などをまとめたものです。
不在者財産管理人は、就任後ただちに財産を調査し、財産目録を作成して家庭裁判所に提出しなければなりません。
3.家庭裁判所への財産状況の報告
不在者財産管理人には、家庭裁判所に対して財産状況を報告する役割もあります。
まずは、就任後2ヵ月以内に管理状況や管理方針などを記載した「管理報告書」を作成し、家庭裁判所に提出しなければなりません。
提出後も、原則として年1回は家庭裁判所から管理報告書の提出を求められるため、財産の増減などを細かく記録しておく必要があります。
4.遺産分割協議への参加
遺産分割協議への参加も、不在者財産管理人の役割のひとつです。
基本的な役割は行方不明者・不在者の財産管理ではあるものの、家庭裁判所の許可があれば遺産分割協議にも対応できます。
実際に、遺産分割協議への参加を主な目的として不在者財産管理人を選任するようなケースも少なくありません。
なお、不在者管理人が遺産分割協議に参加する場合、行方不明者・不在者が不利益を受けないように法定相続分を最低限確保することが求められます。
不在者財産管理人の選任が必要な3つのケース
不在者財産管理人の選任が必要になる主なケースとしては、以下の3つがあります。
- 相続人の中に不在者がいる場合
- 行方不明の相続人に相続放棄させたい場合
- 不在者名義の不動産を売却したい場合
ここでは、どのような場合に必要になるのかそれぞれ解説します。
1.相続人の中に不在者がいる場合
遺産分割協議が必要なものの、相続人の中に行方不明者・不在者がいる場合、不在者財産管理人の選任が必要です。
遺産分割協議は相続人全員が参加しなければならず、行方不明者・不在者がいるままでは協議を進められません。
したがって、不在者財産管理人を選任し、行方不明者・不在者の代理として遺産分割協議に参加してもらう必要があります。
なお、遺産分割協議への参加は不在者財産管理人の権限外行為にあたるため、事前に家庭裁判所の許可を得ておく必要があります。
2.行方不明の相続人に相続放棄させたい場合
行方不明の相続人に相続放棄させたい場合も、不在者財産管理人の選任が必要でしょう。
相続放棄の手続きには期限があり、「自身のために相続の開始があったことを知ってから3ヵ月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります。
被相続人が亡くなってから数年後に行方不明者・不在者が現れたとしても、そのとき初めて相続があったことを知ったのであれば相続放棄を選択することも可能です。
行方不明者・不在者がいる状態では、相続人が確定しない状態が長く続いてしまうため、不在者財産管理人を選任して相続放棄させることも検討する必要があります。
ただし、相続放棄が認められるのは、あくまでも行方不明者・不在者にとって利益になる場合に限られます。
3.不在者名義の不動産を売却したい場合
行方不明者・不在者との共有不動産を売却したいという場合も、不在者財産管理人の選任が有効です。
共有名義の不動産を処分する場合、原則として名義人全員の合意が必要です。
行方不明者・不在者が名義人の一人になっている場合、不在者財産管理人を選任することで代わりに合意してもらうことが可能です。
なお、不在者財産管理人が行方不明者・不在者の財産を売却する際には、裁判所に対して権限外行為許可の申立てをおこなって許可を得ておく必要があります。
不在者財産管理人の選任条件
不在者財産管理人の選任申立ては、誰でもできるわけではありません。
ここでは、選任申立てができる人や、不在者財産管理人になれる人などを解説します。
.選任申立てができる人
不在者財産管理人の選任申立てができるのは、法律上の利害関係人または検察官です(民法第25条1項)。
利害関係人とは「行方不明者・不在者の財産管理について利害関係がある人」のことで、具体的には以下のような人が該当します。
- 不在者の配偶者
- 不在者の債権者担保権者
- 不在者の共同相続人推定相続人
- 不在者の財産を買収しようとする国地方公共団体 など
2.不在者財産管理人になれる人
不在者財産管理人は、法律上の利害関係人や検察官からの申立てに基づき、家庭裁判所が選任します。
以下では、不在者財産管理人として選任される人について解説します。
2-1.利害関係のない第三者
不在者財産管理人の選任を申し立てる際、行方不明者・不在者と利害関係のない第三者であれば候補者として推薦することも可能です。
最終的な決定は家庭裁判所がおこなうものの、相続人ではない親族や被相続人の友人などを候補に出せば不在者財産管理人として選任されることもあります。
また「行方不明者・不在者の親族とは連絡がつながる」というようなケースでは、行方不明者・不在者の親族が不在者財産管理人となるケースもあります。
2-2.弁護士や司法書士などの専門家
選任申立ての際に候補者を推薦しなかった場合、基本的には弁護士や司法書士などの専門家から不在者財産管理人が選任されます。
たとえ候補者を推薦していたとしても、裁判所が「不在者財産管理人として適切ではない」と判断した場合は専門家から選任されることになります。
不在者財産管理人の選任手続きの流れ
不在者財産管理人の選任手続きの基本的な流れは以下のとおりです。
- 選任申立ての必要書類を準備する
- 不在者財産管理人の選任を申し立てる
- 家庭裁判所にて審理がおこなわれる
- 不在者財産管理人が選任される
ここでは、それぞれの手続きについて解説します。
1.選任申立ての必要書類を準備する
まずは、以下のような必要書類を準備します。
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申立書
- 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 不在者の戸籍附票
- 不在者財産管理人の候補者の住民票もしくは戸籍附票
- 不在者の不在を証明する資料
- 不在者の財産に関する資料
- 利害関係を証明する資料 など
なお「不在者の財産に関する資料」としては、預貯金・有価証券の残高がわかる書類や、不動産の登記事項証明書などが該当します。
「利害関係を証明する資料」としては、賃貸借契約書や金銭消費貸借契約書の写しなどが該当します。
個々のケースによっても必要書類は異なるため、自力での書類収集が不安な場合は弁護士に相談することをおすすめします。
2.不在者財産管理人の選任を申し立てる
必要書類を準備できたら、家庭裁判所にて不在者財産管理人の選任を申し立てます。
申立先は、行方不明者・不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法第145条)。
住所地とは「住民票に記載されている場所」、居所地とは「一時的に居住している場所」を指します。
各裁判所の管轄先は「裁判所の管轄区域|裁判所」をご確認ください。
3.家庭裁判所にて審理がおこなわれる
不在者財産管理人の選任申立て後は、家庭裁判所にて審理がおこなわれます。
行方不明者・不在者の状況を把握するために、申立人や親族に対して聞き取り調査がおこなわれたり、場合によっては追加資料の提出を求められたりすることもあります。
なお、審理には1ヵ月~4ヵ月程度かかるのが一般的です。
4.不在者財産管理人が選任される
家庭裁判所では「行方不明者・不在者は本当に不在かどうか」「候補者は適格かどうか」などが判断され、不在者財産管理人の選任または申立てを却下する審判が下されます。
不在者財産管理人が選任されるまでには、3ヵ月~半年程度かかるのが一般的です。
なお、不在者財産管理人が遺産分割協議や財産の売却などをおこなうためには、さらに権限外行為許可の申立てをおこなって審判を受ける必要があります。
不在者財産管理人の選任手続きにかかる費用
不在者財産管理人の選任手続きにかかる費用としては、申立費用・不在者財産管理人への報酬・予納金などがあります。
ここでは、それぞれの金額の目安について解説します。
1.申立費用|数千円程度
家庭裁判所にて申立てをおこなう際、以下の費用が発生します。
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項目
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金額
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収入印紙代
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800円分
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連絡用の郵便切手代
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裁判所によって異なる
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連絡用の郵便切手代については、申立先の家庭裁判所に直接ご確認ください。
2.不在者財産管理人への報酬|毎月1万円~5万円程度
弁護士や司法書士などの専門家が不在者財産管理人として選任された場合、報酬が発生します。
報酬額は、財産管理の手間や難易度などを考慮して家庭裁判所が決定し、一般的な相場としては以下のとおりです。
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項目
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相場
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不在者財産管理人への報酬
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毎月1万円~5万円程度
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3.家庭裁判所への予納金|20万円~100万円程度
不在者財産管理人への報酬などは、基本的に行方不明者・不在者の財産の中から支払うことになります。
もし行方不明者・不在者の財産では支払えないケースでは、申立人が以下のような予納金を支払う必要があります
予納金については、財産管理などが終わったあとに残額が返還されます。
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項目
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相場
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家庭裁判所への予納金
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20万円~100万円程度
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不在者財産管理人に関するよくある質問5選
最後に、不在者財産管理人に関するよくある質問について解説します。
同様の疑問を抱えている方は参考にしてみてください。
1.不在者財産管理人は選任後に変更できる?
家庭裁判所によって不在者財産管理人が選任されると、原則として変更はできません。
「権限外の行為に及んで解任された」というような例外を除き、基本的には役目を終えるまで同一の不在者財産管理人が財産管理をおこなうことになります。
2.不在者財産管理人が選任されるまでの期間は?
不在者財産管理人が選任されるまでには、3ヵ月~半年程度かかるのが一般的です。
家庭裁判所にて選任申立てをおこなったあとは、行方不明者・不在者の状況確認・選任すべきかどうかの判断・適任者の選定などが慎重に進められていきます。
不在者財産管理人が遺産分割協議や財産の売却などをおこなうためには権限外行為許可を得る必要があり、さらに数ヵ月程度かかります。
したがって、時間に余裕をもってできるだけ早く手続きに着手することが大切です。
3.不在者財産管理人の職務はいつまで続く?
不在者財産管理人の職務は「行方不明者・不在者が現れたとき」「行方不明者・不在者の死亡が確認されたとき」「行方不明者・不在者について失踪宣告がされたとき」のいずれかになった場合に終了します。
行方不明者・不在者が現れた場合は、そのまま本人が財産を管理します。
行方不明者・不在者が死亡、または失踪宣告された場合は、行方不明者・不在者の相続人に財産が相続されることになります。
4.不在者財産管理人を選任するデメリットは?
不在者財産管理人を選任する大きなデメリットとして、手間や費用がかかります。
申立書や戸籍謄本などの必要書類を漏れなく準備しなければならず、場合によっては選任までに半年以上かかったり、候補者以外の人が選任されたりするおそれもあります。
また、予納金が発生した場合は100万円以上かかることもあり、終了事由が発生するまで職務は続くため、不在者財産管理人への報酬が長期間発生する可能性もあります。
5.不在者財産管理人の相場はいくらですか?
不在者財産管理人の選任手続きにかかる費用相場は以下のとおりです。
ただし、財産状況や裁判所によっても金額は変動するため、あくまでも目安のひとつ程度に留めてください。
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項目
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相場
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収入印紙代
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800円分
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連絡用の郵便切手代
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裁判所によって異なる
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不在者財産管理人への報酬
(弁護士などの専門家が選任された場合)
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毎月1万円~5万円程度
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家庭裁判所への予納金
(行方不明者・不在者の財産では費用を支払えない場合)
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20万円~100万円程度
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合計
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数千円~105万円程度
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さいごに|行方不明の相続人がいるなら、まずはベンナビ相続で相談を
相続人の中に行方不明者・不在者がいると、相続手続きがスムーズに進まなくなります。
家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てて、代わりに相続手続きに対応してもらう必要があります。
しかし、不在者財産管理制度を利用するためには、多くの書類を漏れなく集めなければならず、場合によっては家庭裁判所に却下されることもあります。
自力での手続きが不安な場合は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
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