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相続のときに所得税はかかる?相続税との違いや所得税がかかるケースを解説

伊藤亮太(FP)
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相続をする際、相続税と同時に所得税が取られてしまうのではないかと心配な方も多いでしょう。

給与や売上など、日常生活でお金を受け取る際は所得税が課せられるため、相続した財産についても所得税がかかると思っている人は意外にも多くいます。

結論から言うと、相続した財産に所得税はかかりません

相続財産には相続税がかかるため、相続税と所得税の両方で課税してしまうと二重課税となってしまうからです。

しかし、相続の際に所得税を納める必要があるケースもあります。

そのため、自分が所得税を納める必要があるかどうかを知り、しっかりと対処できるようにしておきましょう。

本記事では、相続の際にかかる相続税や所得税について詳しく解説します。

相続に関するそのほかの税金についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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相続で問題になる税金

相続に関係して問題になる税金には次の種類があります。

  • 相続税
  • 贈与税
  • 登録免許税
  • 所得税

それぞれどのようなものか、以下で詳しく見ていきましょう。

相続税

相続税は、相続や遺贈などによって相続人が得た財産に対して課せられる税金です。

相続税は相続から10カ月を期限に申告・納付する必要があり、期日を過ぎるとペナルティが課せられます。

そのため、相続財産の全容を把握し、必要に応じて申告をおこないましょう。

なお、相続や遺贈などで財産を得て相続税の課税対象となると、財産を得たことについて所得税では課税されないのが原則です。

そのため、相続した財産について発生する税金は、相続税のみということになります。

贈与税

相続税対策として生前贈与をおこなうことがありますが、その際に贈与に対して課せられる税金が贈与税です。

贈与税は、生前贈与によって相続時の課税を逃れようとするのを防ぐため課されるのが趣旨で、相続税を補完するものであるといえます。

登録免許税

相続財産に不動産がある場合、3年以内に相続人が相続登記をおこなわなければなりません

相続登記をする際に納める必要があるのが登録免許税です。

相続財産に直接かかる税金ではありませんが、不動産を相続した際は必ず支払う必要がある税金として覚えておきましょう。

所得税

相続財産に対して直接所得税が課されることはありません

しかし、被相続人の収入状況によっては確定申告をおこない、所得税を納める必要があるので注意しましょう。

相続に関して所得税が問題になる場合

相続をする際、相続財産に直接所得税がかることはありませんが、被相続人の収入に対して所得税がかかるケースがあります。

また、相続後に財産を移動したり、相続財産を換価したりすると所得税が課税される点にも注意が必要です。

以下では、具体的にどのような場合に所得税が問題となるか確認しましょう。

準確定申告

まず、被相続人自身が個人事業主である・不動産収益があるなどの場合は被相続人の所得に対して、所得税がかかります。

この場合、亡くなった被相続人が確定申告をおこなうことはできません

そのため、相続人が被相続人に代わって確定申告をおこないます。

これを、準確定申告と呼びます。

準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内におこなう必要があるので、早めに手続きを進めるのがよいでしょう。

相続人が限定承認をした場合

相続人が限定承認をした場合で、みなし譲渡所得がある場合についても知っておきましょう

被相続人の債務状況が不明な場合、プラスの財産の範囲だけでマイナスの財産を相続する「限定承認」を選択することがあります。

限定承認をおこなうと、税法上では被相続人から相続人に対して財産の移転をしたとみなすため、実質的には相続ではなく売却に近い形になります。

そして、譲渡する際に財産が値上がりしていて譲渡益が出るような場合には、被相続人に対して譲渡所得が発生したとして所得税が発生するのです。

みなし譲渡所得についても準確定申告が必要になるので注意しましょう。

生命保険金を受け取った

保険金については、契約の形態次第では所得税の対象となります

最もスタンダードなケースが、被相続人が契約者としてお金を支払い、被相続人が亡くなったときに、相続人に生命保険金が支払われるものです。

この場合は、被相続人の財産が減って、相続人に財産が移転しているという実態があるので、みなし相続財産として相続税の課税対象となり、所得税はかかりません。

しかし、相続人が契約者としてお金を支払い、被相続人が亡くなったときに、相続人に生命保険金が支払われる形態で契約している場合には、相続人がお金を出して相続人が利益を得ているので所得となり、所得税の対象となるのです。

なお、生命保険金は一時金として受け取った場合には、一時所得として計算され、年金として受け取る場合には雑所得として計算されます。

一時所得には50万円の特別控除があるので、生命保険金が50万円以下である場合には、確定申告や所得の計算に含める必要はありません。

相続した財産を売却した

相続した財産を売却した場合に、財産について売却益が出ていれば、譲渡所得として相続人の所得税の計算に加算されることになります

譲渡所得がある場合の所得税の計算方法としては、分離課税と総合課税の2つの種類があります。

分離課税は、給与所得や事業所得などの他の所得とは合算せず、財産の譲渡に関する所得について税額を計算します。

分離課税は、対象となる財産が不動産・株式である場合に適用されます

総合課税は、給与所得や事業所得などの他の所得と合算して税額を計算するもので、対象となる財産が不動産・株式以外である場合に適用されます。

総合課税の対象になる譲渡所得で、所有期間が5年を超える財産を譲渡した場合の長期譲渡所得は、財産の2分の1のみが税額計算の対象になります。

なお、譲渡所得は次の計算式によって計算します。

譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除=額譲渡所得

また、譲渡所得の税率は次のとおりです。

譲渡所得の区分

税率

不動産長期譲渡所得

合計20.315%

内訳:所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%

軽減税率が適用された場合の不動産長期譲渡所得

合計14.21%

内訳:所得税10%、復興特別所得税0.21%、住民税4%

不動産短期譲渡所得

合計39.63%

内訳:所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%

株式

合計20.315%

内訳:所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%

不動産、株式以外の財産の譲渡所得

総合課税がされるので、ほかの所得と合算した額に応じて5%~45%で変動

復興特別所得税は所得税額の2.1%

住民税は税率10%

不動産については、売却した年の1月1日に所有期間が5年を越えているかどうかによって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けて税率の計算をおこないます。

所有期間については、被相続人が不動産を取得したときから計算します。

なお、相続時に相続税の支払いをして3年以内に相続した財産を売却した場合には、一定の金額について譲渡所得の計算の際に差し引かれる取得費に加算できる制度があることを知っておきましょう。

相続した財産から収益を上げた

相続した財産から収益を上げた場合にも、その収益については所得税の対象となります。

よくあるケースとして、アパート・マンション経営をしていた被相続人が亡くなり、相続人がこれを承継した場合です。

被相続人が亡くなるまでの収益については、準確定申告をする必要があるのはもちろん、亡くなって以降の収益については相続人固有の収益として、不動産所得の申告が必要となります。

なお、被相続人が青色申告をしていた場合でも、相続人がそのまま青色申告で所得税申告ができるわけではなく、相続人は青色申告承認申請書を提出する必要がある点に注意しましょう。

なお、青色申告承認申請書の提出期限は、被相続人が死亡した日によって、次のとおりとなります。

  • 被相続人が亡くなったのが1月1日から8月31日の場合:死亡日から4ヶ月以内
  • 被相続人が亡くなったのが9月1日から10月31日の場合:その年の12月31日まで
  • 被相続人が亡くなったのが11月1日から12月31日の場合:翌年の2月15日まで

被相続人の所得税について還付を受ける

必須ではないのですが、被相続人の所得税について還付を受ける場合には、準確定申告が必要です。

たとえば、サラリーマンが入院をしたことで高額の医療費を支払っている場合、医療費控除を利用できます。

その際、確定申告をおこなうと医療費控除によって源泉徴収されている所得税について還付を受けられるケースがあるでしょう。

そのほかにも、年末調整がおこなわれてない場合や、配偶者控除・扶養控除・雑損控除・寄付金控除を利用できる場合などによって還付を受けたい場合には、確定申告が必要です。

確定申告の時期

確定申告の時期は次のとおりです。

  • 通常の確定申告:所得があった翌年の2月16日から3月15日までの間
  • 準確定申告:相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内

相続後に相続した財産を譲渡した場合の相続人が本人としおこなう確定申告と、亡くなった被相続人の分の準確定申告では期限が異なるので注意をしましょう。

確定申告の方法

確定申告は、申告書を提出しておこないます。

通常の確定申告は税務署の窓口のほか、商業施設に特設会場を設けることがあるので、自分の居住している地域の確定申告はどこでおこなうかは確認しましょう。

税務署や確定申告の会場では、相談をしながら申告書を作成することができますが、基本的に予約必須となっているケースが多いので、早めの予約がおすすめです。

そのほかに、国税庁のホームページの「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成すれば、できあがった申告書を窓口・郵送してもかまいません

また、「e-Tax(申告書国税電子申告・納税システム)」を利用して、インターネットで確定申告をおこなうことも可能です。

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確定申告(準確定申告も含む)を怠ったときのペナルティ

準確定申告も含めた確定申告を怠った場合のペナルティとして、次のものが挙げられます。

無申告加算税

確定申告の申告期限までにおこなわなかった場合、無申告加算税が課されます

無申告加算税の税率は、次のような区分に応じて課されます。

相続税額

税務調査前に自主的に申告した場合

税務署からの調査の事前通知の後に期限後申告をした場合

税務署の調査を受けた後に期限後申告をした場合

50万円以内

5%

10%

15%

50万円を超える部分

15%

20%

300万円を超える部分

(※令和6年1月1日以後に申告期限が到来するもの)

25%

30%

過少申告加算税

本来の申告すべき額より少ない所得税額を申告した場合には、過少申告加算税が課されます。

税率は次のとおりです。

相続税額

税務調査前に自主的に申告した場合

税務署からの調査の事前通知の後に期限後申告をした場合

税務署の調査を受けた後に期限後申告をした場合

50万円以内

加算なし

5%

10%

50万円を超える部分

10%

15%

重加算税

事実を隠蔽・仮装した場合に無申告加算税・過少申告加算税のかわりに課されるのが、より重い重加算税です。

重加算税は、申告書を提出しているかしていないかによって以下のように加算されます。

申告期限までに申告書を提出している

35%

申告期限までに申告書を提出していない

40%

さらに次の事情があると、さらに10%の税率が加算されます。

  • 過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課された
  • 令和6年1月1日以降が申告期限の場合で、前年度及び前々年度の国税に無申告加算税・重加算税が課され、さらに同じ税目で無申告である場合

延滞税

所得税の支払いを延滞している場合は、延滞税の支払いが必要です。

延滞税の税率は次のとおりです。

  • 2カ月を経過する日まで:年3%
  • 2カ月を経過した日以後:年6%

とはいえ、上記の税率は現在の金利と乖離が著しく、特例によって次のように調整されます。

  • 2カ月を経過する日まで:年4%
  • 2カ月を経過した日以後:年7%

上記の特例は令和5年1月1日から令和6年12月31日までの特例で、金利の動向によって変更があるので注意しましょう。

刑事罰

所得税や相続税の未申告・未納税に関して、あまりにも悪質なケースだと判断される場合は刑事罰が課されるケースあります。

所得税の刑罰としては5年以下の懲役もしくは脱税相当額以下の罰金が規定されています。

また、単純な無申告の場合は1年以下の懲役もしくは20万円以下の罰金です。

まとめ

本記事では、相続をした際に所得税がかかるのかを中心に解説しました。

相続財産には相続税がかかるので、基本的に所得税はかかりません

しかし、被相続人の所得税についての準確定申告や、相続財産を売却して譲渡益を得たり、相続財産から収益を得たりしたような場合には所得税が発生し、確定申告が必要となります。

確定申告をしないと、税率が高くなりより負担が大きくなるため、注意が必要です。

申告が難しいと感じる場合には、早めに税理士に相談しましょう。

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この記事の監修者
伊藤亮太FP事務所
伊藤亮太(FP)
資産運用・社会保障(特に年金)・保険を中心に提案を行っている。講演会や執筆物も多数。Webコンサルティングも行っており、幅広い提案が可能。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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