土地を相続する予定の方のなかには「財産評価基準書って、何だろう?」と、疑問に思っている方もいるでしょう。
財産評価基準書は、相続税や贈与税を計算する際の基準を示す文書ですが、見方や活用方法がわからない方も多いのではないでしょうか?
本記事では、財産評価基準書の概要や見方を解説します。
土地を評価する際のルールや、土地の価値を適正に評価する方法も紹介するので、土地を相続する方や土地の評価で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
財産評価基準書とは、相続・遺贈・贈与などで得た財産にかかる相続税や贈与税を計算する際の基準を示した文書のことです。
財産評価基準書には、路線価や倍率など、主に土地を評価するときに用いられる基準が記載されています。
全ての評価基準が載っているわけではなく、法令で別段の定めがあるものや別に通達されるものについては、それによって評価します。
全国の国税局で毎年作成されており、国税庁のホームページで確認することが可能です。
ここからは、財産評価基準書で評価額を調べる際の具体的な手順を紹介します。
まずは、国税庁のホームページに掲載されている「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のページを開き、調べたい年分と都道府県を選択します。
年分は、相続が発生した年や贈与を受けた年を選んでください。
また、都道府県は相続した土地がある場所を選択しましょう。
出典:財産評価基準書|国税庁
都道府県を選択すると、財産評価基準書の目次が表示されます。
相続した土地が、路線価方式で評価する地域にある場合は「路線価図」、倍率方式で評価する地域にある場合は「評価倍率表」の「一般の土地等用」を選択してください。
どちらかわからない場合は、ひとまず「評価倍率表」の「一般の土地等用」を選びましょう。
次に、相続する土地がある市区町村名・地名を選択しましょう。
選択すると、その地域の路線価図や財産評価基準書が表示されます。
ここからは、財産評価基準書の見方を解説します。
路線価は、「600B」「1,140C」などのように数字とアルファベットで表示されています。
数字は、道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額を千円単位で表示したものです。
600と表示されていた場合、その土地の1平方メートルあたりの価額は「600千円=60万円」となります。
一方、アルファベットは借地権割合を表したものです。
借地権も相続財産に含まれるため、相続が発生した場合には評価が必要です。
借地権割合とは、その土地の権利における借地権の割合を示したもので、対象の土地の価格の借地権割合分が借地権の価格となります。
反対に、借地権が設定されている土地自体の価格は、借地権割合の差し引いた分だけ価格が下がります。
アルファベットと借地権割合は、以下のように対応しています。
路線価図上のアルファベット |
借地権割合 |
A |
90% |
B |
80% |
C |
70% |
D |
60% |
E |
50% |
F |
40% |
G |
30% |
評価倍率表は、「宅地」「田」「畑」などの地目によって欄が分かれています。
相続した土地が宅地である場合は、「宅地」の欄をチェックしましょう。
表内に数字が書かれていれば、その宅地が倍率方式で評価されることを意味しています。
「路線」と記載されている場合、その宅地は路線価方式で評価されるので、路線価図を確認しましょう。
また、相続した土地が農地である場合は「田」「畑」の欄をチェックします。
田・畑の欄に「中」と記載されていれば、その農地が倍率方式によって評価されることを意味します。
右側に数字が書かれているので、この数字を固定資産税評価額に乗じて土地の評価額を算出しましょう。
一方、「比準」と書かれている場合は、その近くの宅地の価額に比準して評価する「宅地比準方式」を用いることを指します。
土地を評価する方法はいくつかあるので、これから土地の評価額を計算する方は覚えておくとよいでしょう。
ここからは、地目ごとの評価方法を紹介します。
取得した土地が宅地である場合は路線価方式か倍率方式で評価します。
路線価方式の場合は、路線価図上の数字と道路に面している地積を掛けて評価額を算出します。
貸宅地の場合は、借地権割合の分だけ評価額が減額されるので、路線価図で借地権割合を確認しましょう。
倍率方式の場合は、評価倍率表に記載されている数字を固定資産税評価額に掛けて評価します。
農地の場合は、区分によって評価方法が異なります。
農地は、都市部との近さに応じて「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」の4つの区分に分かれます。
それぞれの評価方式は、以下のとおりです。
宅地比準方式で評価する場合、以下の計算式で評価額を計算します。
造成費とは、その農地を宅地に転用する場合にかかる費用のことを指します。
山林は3つの区分に分かれ、それによって評価方法が変わります。
山林の区分は、都市部に近い順に「市街地山林」「中間山林」「純山林」に分かれ、それぞれ以下の方式で評価します。
市街地山林がある地域が倍率方式によって評価する場合、その山林も倍率方式で評価します。
また、市街地山林であっても宅地に転用できそうにない場合は、近くの純山林の評価額を基に評価されます。
相続した土地の評価額については、主に税理士や不動産鑑定士に相談できます。
相続問題に注力している税理士に相談すれば、財産評価基準書に沿って正確な評価額を計算してもらえます。
自分で大まかな評価額を把握することは可能ですが、正確に評価するには高度な知識が必要です。
評価額が間違っていると、相続税が余分に課されたり、あとから追加で課税されたりする可能性があるので、税理士に相談して正しい評価額を計算してもらうのがよいでしょう。
不動産鑑定士は、不動産鑑定評価ができる唯一の専門家です。
不動産鑑定評価とは、不動産の価値を適正に評価し、その結果を価額に反映させることを指します。
財産評価基準書の路線価よりも実際の時価が低い場合、不動産鑑定評価を受けることで相続税評価を下げることが可能です。
土壌汚染がある、土地の形がいびつで利用できないなど、土地の価値を下げる要因があるなら、不動産鑑定評価によって相続税の負担を軽減できる可能性が高いでしょう。
ここからは、財産評価基準書に関するよくある質問をまとめています。
土地の評価について不安や疑問が残る方はぜひ参考にしてください。
土地の地目は、固定資産評価証明書や固定資産税の課税明細書で調べられます。
「登記地目」と「現況地目」の2つが記載されていますが、現況地目をチェックしてください。
記載されている現況地目と実際の地目が異なる場合は、実際の地目を基に評価します。
複数の地目で1つの土地を利用している場合は、地目ごとに評価をおこないましょう。
過去の財産評価基準書は、国税庁のホームページで確認できます。
「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のページの上部にあるタブを切り替えれば、過去の基準書を調べられますよ。
また、国税庁Webサイトの「路線価保管庫」のページでは平成18年分までチェックすることが可能です。
平成17年分より前の財産評価基準書を見たいのであれば、国立国会図書館デジタルコレクションを利用しましょう。
財産評価基準書を閲覧するときは、必ず相続が発生した年分のものを確認するようにしてください。
土地を貸している場合、借地権割合の分だけ相続税評価額が下がります。
評価額の計算方法は、その土地が貸宅地なのか貸家建付地なのかによって異なります。
貸宅地とは、他人に貸している土地の上に、他人が所有する建物が建てられている土地のことです。
一方、貸家建付地は、自分が所有する建物を他人に貸している土地を指します。
それぞれの相続税評価額の計算方法は以下のとおりです。
借家権割合は、現在は一律30%と定められています。
また、賃貸割合は「相続発生時に賃貸していた専有部分の床面積÷建物の専有部分の床面積」で求めます。
個別評価と記載されている場合、税務署に個別評価の申し出をする必要があります。
路線価方式でも倍率方式でも評価できない土地なので、税務署で個別に評価額を計算してもらわなければなりません。
個別評価の申し出をおこなう場合は、国税庁ホームページで「個別評価申出書」をダウンロードし、必要事項を記入します。
記入が終わったら、所定の添付資料と一緒に税務署に提出しましょう。
提出先はその土地の評定を担当する税務署であり、必ずしも相続税を納付する税務署とは限らないので注意してください。
また、手続きには1ヵ月ほどかかるため、早めに申し出をおこなっておくと安心です。
土地の評価は複雑なので、知識・経験がないと評価額を正確に計算するのは難しいでしょう。
土地の価値を正しく評価するために、税理士や不動産鑑定士などの専門家に早めに相談しておくのがおすすめです。
専門家に依頼することで、スムーズかつ適正に土地を評価してもらえるため、相続税を余分に払ってしまったり、あとから追加で徴税されたりするリスクを抑えられます。
相続した土地の評価で悩んでいるなら、まずは税理士や不動産鑑定士などの専門家に相談してみてください。
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