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日本の相続税は高すぎる?世界との比較と節税のコツ

ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所
大竹麻佐子(FP)
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日本の税率(最高税率)は諸外国に比べて高いです。

というのも、そもそも相続税制度を設けていない国も数多く存在しますし、相続税に類する制度を用意している国と比較しても基礎控除額が少額で相続税率が高く設定されているからです。

そこで今回は、日本の相続税制度が国民に重い負担を強いている理由や、厳しい相続税制度のなかにおいて合法的に節税を達成するコツなどについてわかりやすく解説します。

できるだけ早い段階から対策をすれば将来的な相続税を大幅に節税できるので、弁護士や税理士などの専門家のアドバイスを参考にしてください。

日本の相続税は高いのか?

日本の相続税は高いといわれています。

まずは、日本の相続税制度の内容と、諸外国の相続税制度との比較を確認していきましょう。

日本の相続税制度とは

日本の相続税とは、親などの被相続人の死亡により引き継いだ財産に対して課される税金のことです。

現金だけではなく、土地・建物などの不動産、有価証券、各種債権、生命保険、相続開始前3年間(2024年1月1日からは7年)の間に暦年贈与によって相続人に贈与された財産などが幅広く課税対象に含まれます

日本の相続税の負担は重い

日本の相続税制度では、以下の流れで相続税を算出するという仕組みを採用しています。

  1. 相続税の基礎控除額を算出する
  2. 基礎控除額を超える部分について相続税率をかけて実際の相続税を導き出す

第1に、相続税の基礎控除額は【基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)】という計算式によって算出されます。

たとえば、相続人が配偶者と子どもひとりのケースでは、4,200万円の基礎控除が認められるので、相続財産が基礎控除以下であれば相続税が発生することはありません。

第2に、基礎控除額を超える財産が存在する場合、財産額に応じて設定される相続税率に基づいて相続税が算出されます。

具体的には、上記と同様のケースで相続財産額が5,000万円の場合、法定相続分で分割すると40万円の相続税が発生することになります。

【計算例】

5,000万円(相続財産額)-4,200万円(基礎控除額)=800万円

妻400万円(配偶者控除)、子ども400万円になり、子どものみに課税されます。

400万円×10%(相続税率)=40万円

なお、その他の相続税率は以下のとおりです。

相続財産額から基礎控除額を差し引いた金額

相続税率

控除額

1,000万円以下

10%

なし

3,000万円以下

15%

50万円

5,000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1,700万円

3億円以下

45%

2,700万円

6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

引用元:No.4155 相続税の税率

ここからわかるように、日本の相続制度では超過累進税率が採用されているので、相続する財産が高額なほど税の負担率が重くなります

相続財産額や相続人数次第では最大55%もの税金を納付することになります。

日本と世界の相続税の比較

日本の相続税は諸外国と比較して本当に高いのでしょうか。

ここからは、先進国諸国が定めている相続税制度について解説します。

アメリカの相続税

アメリカでは「遺産税(Estate Tax)」という課税方式が採用されています。

日本の相続税制度は相続財産を相続人に分配したあとに相続税を算出するのに対して、アメリカの遺産税制度では、相続財産から遺産税を差し引いたあとに相続人に配分するという手順がとられます。

さらに、遺産税の基礎控除額は1,140万ドル(約16億円)なので、相当高額の遺産が存在しない限り、税金の負担なく相続できる点が大きな特徴です。

イギリスの相続税

アメリカと同じように、イギリスでも「遺産税」制度が採用されています。

イギリスの遺産税制度では、32万5,000ポンド(約5,800万円)の基礎控除枠が認められており、これを超える遺産に対して一律40%の遺産税率がかけられるのが特徴です。

日本の相続税のような超過累進税率が設定されていないので、遺産額が低額なほど負担率が重くなります。

なお、チャリティーや政党などへの寄付、配偶者間での相続に関する軽減税率制度などが存在するため、実際に遺産税の納付義務が発生するのは全体の約5%程度といわれています。

フランスの相続税

フランスでは「遺産取得課税方式」が採用されており、相続人が取得した財産を対象に、5~45%の範囲内で相続税が課されます。

基礎控除額は10万ユーロ(約1,500万円)なので日本よりも負担額が重いようにも思えますが、配偶者の相続を原則非課税とすることによって(夫婦の財産は共有財産と認定されるため)バランスが採られています。

ドイツの相続税

ドイツでもフランスと同じように「遺産取得課税方式」が採用されています。

相続人の続柄によって課税率が異なり、配偶者子女などで7~30%、兄弟姉妹などで12~40%、その他相続人は17~50%の範囲で課税されます。

上記の通り、諸外国と比べても、日本の相続税は高いといえるでしょう。

なお、基礎控除や剰余調整分制度などを活用すれば、かなりの範囲で相続税を減免できるのも特徴的です。

相続税がない国もある

諸外国には、相続税制度を設けていない国も少なくありません。

たとえば、下記の国が挙げられます。

  • ロシア
  • スイス
  • スウェーデン
  • 香港
  • シンガポール
  • 中華人民共和国
  • マレーシア
  • タイ
  • ニュージーランド
  • オーストラリア
  • イタリア
  • モナコ
  • リヒテンシュタイン
  • カナダ

なぜ日本の相続税は高いのか?

日本の相続税が高いといわれるのは、以下3つの理由からです。

  • 相続人が納税義務を負う
  • 相続税の基礎控除額が少ない
  • 超過累進税制度が採用されている

まず、アメリカやイギリスが採用している「遺産税」とは異なり、日本では「相続税」制度が設けられています。

遺産税の場合、遺産の総額に課税されますが、日本の相続税は、遺産分割を確定した後の遺産に課税されますので、個人での税負担が重くなってきます。

次に、10億円以上の基礎控除額が設けられているアメリカの遺産税制度とは異なり、日本の相続税制度では数千万程度までしか基礎控除額が認められていないのも、相続税の高さに拍車をかける要因になっています。

特に、日本では高齢世帯ほど蓄財をしている傾向が強いので、基礎控除枠だけで相続税を完全に回避するのは簡単ではありません。

さらに、日本の相続税制度では諸外国に類を見ない最大55%に及ぶ超過累進課税率が設定されているのも特徴的です。

資産が多いほど相続税負担が重くなりますし、資産状況次第では引き継いだ財産の半分以上を国に納めなければいけないので、日本の相続税は高いといわれています。

そもそも相続税が必要な理由とは

先ほど紹介したように、そもそも相続税制度自体が存在しない国も少なくありません。

そのなかで、なぜ日本では高い税負担を強いる相続税制度が必要とされているのでしょうか。

相続税制度が設けられている主な理由は以下3点です。

  1. 富の再配分をおこなうため
  2. 不労所得に対する課税をおこなうため
  3. 所得税の補完的役割を相続税制度に担わせるため

富の再分配をおこなうため

相続税制度が必要とされる第1の理由は「富の再配分」です。

相続税の申告は、相続した財産の一部を国に納めることになり、国税として広く社会のために使うという点で資産を再分配する機能があります。

また、相続した遺産の金額が大きいほど相続税額は大きくなるため、生まれた家庭の経済状況による格差を縮小させ、格差の固定化を防止するという機能も存在します。

不労所得に対して課税するため

不労所得とは、「労働の直接的対価である賃金・報酬以外の方法によって得られる所得」を意味します。

相続によって親などから財産を引き継ぐ場面は、労働をすることなくお金を手にしているため、これに課税することで不公平感を解消する手段として、相続税制度があるのです。

所得税を補完するため

相続税には、「所得還元」による補完機能を果たす役割もあります。

要は、本来であれば支払っていたはずの所得税を相続税として支払うというものです。

そもそも、労働の対価である賃金・報酬に対しては「所得税」という税制度によって納税義務が課されます。

これに対して、相続によって財産を手にする場面では所得税制度の対象に含まれません。

そこで、相続税制度が所得税制度を補完する役割を担うことによって、相続人が得た財産に対する課税がおこなわれます。

まとめ|高すぎる相続税でお悩みなら専門家への相談がおすすめ

日本の相続税は、諸外国と比較すると、高いのが現状です。

一定の基礎控除は認められているものの、超過累進税率が採用されているため相続する財産が高額なほど高い税率が適用され、税負担が重くなります。

不労所得に対する課税という考え方や格差是正といった目的も理解したうえで、時間をかけて適正に相続税対策をしておくことも大切です。

相続税についての不安や悩みは、税理士や弁護士など専門家への相談がおすすめです。

暦年贈与などの簡単な節税対策だけでなく、合法的に利用できる特例などについてのアドバイスも期待できるでしょう。

相続税が発生する場合、納税義務は相続人にあります。

可能な限り税負担を軽減したうえで、大切な財産を引き継ぎたいものです。

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この記事の監修者
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所
大竹麻佐子(FP)
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て2015年に設立。「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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