相続税は、被相続人の死亡の翌日から10ヵ月以内に、被相続人の財産を取得した人が申告・納税しなければならない税金です。
相続税の申告をする際には、申告書の他にも様々な必要書類の添付が要求されているので、申告内容に応じて細かく書類を確認しなければなりません。
今回は、相続税申告で必要になる添付書類を紹介するとともに、申告の際に役に立つチェックリストを作成してみました。
*本記事の専門家による監修日は2023年7月3日です。
相続税といえば「高い・期限が短い・難しい」といったイメージがありますが、それに加えて実は申告の際はとにかくたくさんの添付書類が必要になるのです。
たとえば相続税の特例を利用しない場合の添付書類ですが、申告書とその控えの他に、以下のものを準備しなければなりません。
基本的に必要 |
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該当する場合に必要 |
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相続税には基礎控除のほか、様々な特例や控除が設けられていますが、これらの制度を利用する際には必要書類が変わってきます。
書類に不備があると訂正や補完に手間暇がかかりますので、申告前に十分に注意するのが無難です。
それではまず、どのような申告内容であっても必ず準備するべき添付書類について見ていきましょう。
相続税の申告を始めるにあたり、最初に準備するのが「申告書」ですが、国税庁のホームページに書式があるほか、税務署の窓口で直接もらうこともできます。
まずはこの4枚を準備し、次に「相続税の総額の計算書」を記載します。
そして、「配偶者の税額軽減額の計算書」を確認し、農業相続人の有無によって空欄を埋めていきます。
そのあと、財産関係の以下の書類をそろえましょう。
財産関係の書類の準備ができたら、相続人などの属性や取得した財産の内容によって以下の書類の要否を判断します。
これらの書類の準備が終わったら、いよいよ添付書類の確認です。
どのような内容の相続税の申告であっても、共通して必要になる添付書類は以下のものが挙げられます。
被相続人の戸籍謄本とは、「被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本」、すなわち被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本のことを指しています。
これは相続開始の日(被相続人の死亡日)から10日を経過した日以後に作成されたものと決まっており、たとえば被相続人の生前に取り寄せてあった戸籍謄本などは利用できません。
相続税は取得した財産に応じて課税額が決まりますので、誰がどのように財産を取得したのかが分かる書類を添付します。
遺言書がある場合は遺言書の写し、遺産分割協議によって遺産分割をおこなった場合には遺産分割協議書の写しが必要です。
遺産分割協議書を提出する場合には、遺産分割協議書に押印した実印の印鑑証明書も添付します。
遺産分割協議は相続人全員の合意によって成立するので、印鑑証明書も全員分必要です。
相続人の中に相続時精算課税適用者がいる場合には、以下の書類も必要です。
以上が相続税申告において最低限必要になる書類になりますが、ここからは特例を受ける場合に必要になる添付書類を紹介します。
特例の添付書類を確認する前に基本編のチェックリストも確認しておくのがおすすめですので、よろしければお役立てくださいね。
【相続時精算課税適用者がいる場合】
配偶者控除は、配偶者の相続につき1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか高いほうを控除するという大きな控除枠ですが、利用する際には相続税納付額が0円であっても申告が必要になります。
配偶者控除を利用する場合は基本編の書類を準備すれば問題ありませんが、申告期限内に遺産分割ができない場合には「申告期限後3年以内の分割見込書」も一緒に提出することになります。
小規模宅地等の特例とは、相続等によって取得した財産のうち、相続開始直前において被相続人や被相続人と生計を共にしていた被相続人の親族の居住や事業のため利用されていた一定の宅地等について、所定の要件を満たした場合に税額が減額される制度をいいます。
相続開始直前における宅地等の利用区分 |
限度面積 |
減額割合 |
被相続人等の居住に利用されていた宅地等 |
330㎡ |
80% |
被相続人等の事業に利用されていた宅地等 |
200㎡~400㎡ |
50%~80% |
小規模宅地等の特例を利用する場合には、基本編の書類のほか、状況に応じて「申告期限後3年以内の分割見込書」および以下の書類を準備する必要があります。
相続開始の直前において、被相続人や被相続人と生計を共にしていた親族の居住に利用されていた宅地について、特例を受ける場合です。
被相続人の配偶者が特例の適用を受ける場合には基本編の書類だけで大丈夫ですが、そうでない場合には以下のものが必要になります。
また、被相続人が養護老人ホームに入所していたなど、一定の事由によって相続開始直前において被相続人の居住に利用されていなかった宅地等について特例の適用を受ける場合は、以下の書類が必要です。
相続開始の直前において、被相続人等の事業のうち貸付事業を除いたものに利用されていた宅地等についての特例を受ける場合で、一定の郵便局舎の敷地に利用されている宅地等の場合は、「総務大臣が交付した証明書」を添付します。
相続開始の直前から相続税の申告期限まで一定の法人事業に利用されていた宅地等で、所定の要件を全て満たす被相続人の親族が相続等によって取得した宅地等について特例を受ける場合は、以下の書類が必要です。
特定計画山林の特例とは、被相続人が相続の開始直前に有していた山林のうち「特定森林経営計画対象山林」に該当する山林を取得した場合に、所定の要件を満たすと5%の減額が受けられる制度です。
利用件数はあまり多くないですが、小規模宅地等の特例とも併用できる場合がありますので、特定森林経営計画対象山林がある場合は忘れずにチェックしましょう。
基本編の書類のほか、チェックリスト内の書類が必要になるでしょう。
農地等についての相続税の納税猶予の特例とは、農業を営んでいた被相続人(または特定貸付けをおこなっていた被相続人)から一定の相続人が一定の農地等を相続等によって取得して、そのあとも農業を営む(または特定貸付けをおこなう)場合は、一定の要件を満たした場合に納税が猶予される制度です。
この特例を受けている間に特例の適用を受けた農業相続人が死亡したなどの場合には、猶予された納税が免除されることから、農地等を相続する際は必ず確認すべき制度といえるでしょう。
ただし、特例を利用する際には納税猶予額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要がありますので、担保に関する証明書などもしっかり準備する必要があります。
なお、この場合も基本編の書類のほか、以下の書類が必要になります。
非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例とは、所定の要件を満たす会社の後継者である相続人または受遺者(これらの人を経営承継相続人と呼びます)が相続等によって取得した非上場会社の株式等について、その会社を今後も経営していくなど一定の要件を満たす場合に、取得した非上場株式等の課税価格の80%(※ただし上限額が設けられています)に対応する相続税の納税猶予が受けられる制度です。
この特例については納税猶予中も満たさなければならない要件がいくつかあり、利用の際には担保を提供する必要がある点に注意が必要です。
申告の際は基本編の書類のほか、以下の書類も準備しましょう。
【株券が発行されている場合】
【株券が発行されていない場合】
山林についての相続税の納税猶予の特例とは、被相続人が有していた特定森林経営計画が定められている区域内の山林について、被相続人から相続等によってこれを取得した相続人(林業経営相続人)が自らこの山林の経営をおこなう場合に、林業経営相続人が納めるべきこの特例山林に係る相続税の課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予される制度です。
【担保提供書および担保関係書類】
医療法人の持分についての相続税の納税猶予の特例とは、相続人等が被相続人から相続(・遺贈)によって医療法人の持分を取得した場合に、その医療法人が相続税の申告期限において認定医療法人である場合には、一定の要件を満たすことで、納付すべき相続税のうち、この特例の適用を受ける持分の価額に対応する部分についての納税が猶予(または免除、税額控除)される制度です。
やや複雑な運用になっていますので、こちらを利用したい場合には税務署に問い合わせて条件を確認したほうが無難でしょう。
【税額控除の特例の場合】
【認定医療法人が基金拠出型医療法人へ移行する場合の税額控除の特例の場合】
【医療法人の持分についての相続税の納税猶予及び免除の特例の場合】
担保提供書および担保関係書類
相続税の延納とは、簡単にいえば相続税の分割払いを認めてもらう制度です。
相続財産に不動産が多いなど、高額な相続税を金銭で納付することが困難な場合に利用できますが、利用の際には税務署が調査をおこなって許可が下りなければ使えないので注意が必要です。
延納申請に係る書類については、国税庁のホームページから書式がダウンロードできますので、基本編の書類と以下の必要書類を揃えれば問題ないでしょう。
【担保関係書類】
相続税の物納とは、その名の通り相続した財産自体を現金の代わりに国に納めてしまう制度です。
税金は現金での納付が原則ですが、相続税の場合は金銭納付が困難な場合には例外的に物納が認められることがあります。
延納同様、税務署が調査をして許可が下りなければ利用できないのと、物納できる財産には決まりがあるので、利用の際には充分に検討する必要があります。
基本編の書類のほか、国税庁のホームページから以下の書式をダウンロードして利用するのが簡単です。
【物納手続関係書類】
相続税の計算が間違っており、税額を少なく申告していたことが分かった場合には、「修正申告」をおこなわなくてはなりません。
税務署の調査を受けてからおこなう場合や、税務署側から正しい税額への更正を受けたりすると、納付が足りなかった(新たに納める)金額に加えて「過少申告加算税」が課されることになってしまいますので、間違いに気づいたら速やかに修正申告をしましょう。
なお、修正申告の納付期限は修正申告書の提出日で、相続税の申告期限から納付の日までの延滞税を併せて納付しなければならないので、こちらも注意しましょう。
相続税の修正申告で必要な書類は、申告書ほか以下のようなものになります。
基本的に必要 |
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該当する場合に必要 |
平成28年1月1日以降の相続または遺贈・死因贈与により取得した財産に係る相続税の申告の際には、申告書へマイナンバーを記載することになっています。
また、申告の際には税務署での本人確認のためマイナンバーカード(表面と裏面の両面)の写しや通知カードの写し、マイナンバーの入った住民票の写しなどの本人確認書類が必要になります。
マイナンバーを記載した相続税申告書を提出する際には、記載されたマイナンバーの持ち主であることを確認できる書類として、各相続人等の本人確認書類の写しを添付する必要がありますが、住民票等の写しに申告者以外の人のマイナンバーが記載されている場合には、申告者以外のマイナンバーを塗りつぶしたり読めないようにしてからでないと提出できないことになっています。
なお、複数の相続人が申告書を作成する際に、マイナンバーを記載した申告書を他の相続人に渡す行為については、マイナンバー法上の特定個人情報の提供にはあたらないとされていますが、他の相続人や相続人以外の家族等のマイナンバーの取り扱いは慎重におこなうことが求められています。
相続税の申告の際の添付書類は、基本的な申告書類と添付書類だけでもそれなりの数になりますし、特例を利用すると格段に多くなるケースがほとんどなので、漏れなくきちんと確認して書類を揃えていくことが大切です。
本記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。
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