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相続税の基礎控除とは|計算方法や注意点・節税に役立つ7つの控除を解説

川村 勝之
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相続税の「非課税枠」である「基礎控除額」は、相続税申告の有無を判断するうえで非常に重要な要素のひとつです。

2015年の法改正で基礎控除額が大幅に縮小されたことを機に、相続税の申告対象者となった方が大幅に増えています。

相続税申告を控えている方にとって、決して無視できない要素と言えるでしょう。

本記事では、相続税の基礎控除の概要や計算方法、注意点などをわかりやすく解説します。

相続税の基礎控除について正しく理解し、申告手続きをスムーズに進めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

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相続税の基礎控除とは

ここでは、相続税の基礎控除について以下のように順に解説していきます。

  • 相続税の基礎控除|相続財産の総額から控除できる一定額
  • 基礎控除を理解する上で重要な「法定相続人」とは
  • 基礎控除額の計算方法を具体例で解説

一つひとつみていきましょう。

相続税の基礎控除|相続財産の総額から控除できる一定額

相続税の基礎控除とは、相続税を計算するときに遺産総額から差し引ける一定の金額のことです。

相続税は、亡くなった方(被相続人)の遺産を相続人などが受け継いだ時にかかる税金ですが、基礎控除があるおかげで、一定額までの遺産には税金がかかりません。

相続税の基礎控除は、国民の税負担を軽減するための制度として設けられています。

続いて、相続税の基礎控除の具体例や計算方法などについて詳しく解説します。

基礎控除を理解する上で重要な「法定相続人」とは

基礎控除を理解するうえで重要な要素として挙げられるのが、「法定相続人」です。

法定相続人とは、民法によって定められた、亡くなった方(被相続人)の財産を相続する権利を持つ人のことです。

誰でも自由に相続できるわけではなく、被相続人との関係性によって相続できる人とその順位が法律上決められています。

この法律は、相続に関するトラブルを防ぎ、財産承継を円滑にするために制定されました。

例えば、夫が亡くなった場合、その配偶者は常に法定相続人になります。続いて、子や親、兄弟姉妹などがそれぞれ優先順位に従って法定相続人になります。

配偶者と子がいる場合は、配偶者と子が法定相続人となります。

なお、法定相続人の数によって基礎控除額は変動します。

そのため、基礎控除額を計算するときは法定相続人の数を正確に把握することが不可欠です。

次に、法定相続人が変わった場合を仮定し、基礎控除額の計算方法を具体的に紹介します。

基礎控除額の計算方法を具体例で解説

相続税の基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。

例えば、法定相続人が3人いれば、基礎控除額は4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 3人)になります。

法定相続人の数が変われば、基礎控除額も変動します。

例えば、法定相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円となります(りそな銀行ウェブサイト参照)。

このように、法定相続人の数は、基礎控除額を算出する上で非常に重要な要素となります。

相続税に適用できるその他の控除

相続税には、基礎控除以外にも様々な控除が用意されています。

これらを活用すれば、相続税の負担をさらに軽減できます。

以下では、相続税に適用できる主な控除を7つ紹介します。

配偶者の税額控除

配偶者の税額軽減(配偶者控除)は、被相続人(亡くなった方)の配偶者が相続する財産について、一定額まで相続税がかからなくなる制度です。

これは、配偶者が被相続人の財産形成に大きく貢献していると考えられること、残された配偶者の生活を保障する必要があるため、税負担を軽減するために設けられています。

配偶者が相続する財産の額が、1億6,000万円、または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までであれば、相続税はかかりません。

例えば、法定相続分2分の1で、遺産総額が5億円の場合、配偶者の法定相続分相当額は2億5,000万円となり、この場合は2億5000万円まで非課税となります。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた土地や事業に使っていた土地が一定の要件を満たす場合、その土地の評価額を大幅に減額できる制度です。

相続税がかかるせいで土地を手放さなければならない事態を防ぐために、税負担を軽減する目的で設けられています。

例えば、被相続人が住んでいた土地(特定居住用宅地等)の場合、330㎡までの部分について、評価額を80%減額できます。

この特例は、土地の評価額を大きく引き下げられるので、相続税の節税効果が非常に高い控除です。適用要件を確認し、該当する場合は必ず適用を検討しましょう。

未成年者控除

未成年者控除とは、相続人に未成年者がいる場合に、その未成年者の年齢に応じて一定額を相続税額から控除できる制度です。

未成年者は、被相続人の死亡によって経済的な支援を失ってしまう可能性が高いので、生活を保障して教育の機会を確保する目的で設けられています。

控除額は、「18歳-相続開始時の年齢(1年未満切り捨て)」×10万円で計算されます。

例えば、相続開始時に10歳5ヶ月の未成年者の場合、控除額は(18歳-10歳)×10万円=80万円となります。

未成年者控除は、未成年者の年齢が若いほど控除額が大きくなるので、未成年の相続人がいる場合は必ず適用しましょう。

障害者控除

障害者控除とは、相続人に障害者がいる場合に、その障害の程度に応じて一定額を相続税額から控除できる制度です。

障害者は、一般的に生活費や医療費などの負担が大きいので、その経済的な負担を軽減する目的で設けられています。

障害者控除は、以下の計算式で算出されます。

「85歳-相続開始時の年齢(1年未満切り捨て)」×10万円(特別障害者の場合は20万円)

<例>

相続開始時に50歳7ヶ月の一般障害者の控除額:(85歳-50歳)×10万円=350万円

障害者控除は、障害の程度が重いほど、また年齢が若いほど控除額が大きくなります。

障害者の相続人がいる場合は、忘れずに適用しましょう。

債務控除

債務控除とは、被相続人(亡くなった方)に借金などの債務があった場合、その債務額を相続財産から差し引ける制度です。

債務控除は、「相続税はプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も考慮して計算されるべき」という考え方に基づいています。

例えば、被相続人に住宅ローンが3,000万円残っていた場合、その3,000万円を相続財産から差し引けます。

なお、被相続人が負担すべきであった未払いの医療費や税金なども債務控除の対象となります。

相次相続控除

相次相続控除とは、10年以内に2回以上の相続が立て続けに発生した時や2回目の相続の時に、1回目の相続で課された相続税額の一部を控除できる制度です。

短期間に相続が繰り返されると、相続税の負担が過度に重くなる可能性があるため、その負担を軽減することを目的としています。

例えば、父親が亡くなって相続税を納付した5年後に母親が亡くなった場合、母親の相続税を計算するときに、父親の相続で支払った相続税額の一部を控除できます。

なお、控除額は、1回目の相続から2回目の相続までの期間が短ければ短いほど大きくなります。

みなし相続財産控除

相続税には、「みなし相続財産」として課税対象となる生命保険金や死亡退職金について、それぞれ一定額まで非課税となる制度があります。

生命保険金や死亡退職金は、残された家族の生活保障という側面があるため、一定額までは相続税の負担を軽減する目的で設けられています。

生命保険金は「500万円 × 法定相続人の数」、死亡退職金も「500万円 × 法定相続人の数」まで非課税となります。

例えば、法定相続人が3人の場合、生命保険金と死亡退職金それぞれについて、1,500万円まで非課税となります。これらの非課税枠は、相続税の負担を軽減する上で非常に有効です。

「みなし相続財産」である生命保険や死亡退職金を受け取った場合は、忘れずに適用させましょう。

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相続税の基礎控除を計算するときの注意点

相続税の基礎控除額を計算する際には、いくつかの注意点があります。これらを理解しておけば、正確な申告と納税が可能になります。

次に、相続税の基礎向上を計算するときの主な注意点を一つひとつ解説します。

代襲相続が起きたら相続権が別の親族に移る

代襲相続が発生すると、本来相続人となるはずだった人(例えば子)が亡くなっている場合、その子(例えば孫)が代わりに相続人となります。

基礎控除額の計算においては、代襲相続人も法定相続人の数に含まれるため、代襲相続の有無を確認することが重要です。

代襲相続とは、本来相続人となるべき人が被相続人(亡くなった方)よりも先に死亡している場合などに、その下の世代の人が代わりに相続する制度です。

相続権を保護し、公平な財産承継を図ることが目的とされています。

例えば、父親が亡くなり、本来相続人となるはずの長男がすでに亡くなっている場合、長男の子(父親から見ると孫)が代襲相続人となり、長男の代わりに相続します。

養子縁組の相続人の数には一定の上限がある

相続税の基礎控除額を計算する際、法定相続人に含められる養子の数には制限があります。

なぜなら、無制限に養子を認めてしまった場合、基礎控除額を増やすために、相続税対策として養子縁組がおこなわれる可能性があるためです。

実子がいる場合、法定相続人に含められる養子の数は1人までです。

実子がいない場合は、2人まで養子を法定相続人に含められます。

ただし、この制限はあくまで相続税の計算上の話であり、民法上は養子の数に制限はありません。

養子縁組の実態を伴わない、税金対策のためだけの養子縁組は、税務署から否認される可能性もあります。

相続放棄した人がいても、基礎控除額は減らない

相続放棄をした人がいても、相続税の基礎控除額を計算する際の法定相続人の数には影響しません。

なぜなら、基礎控除額は、被相続人の財産状況と法定相続人の数に基づいて機械的に計算されるからです。

具体的に言うと、法定相続人が3人いる場合、そのうちの1人が相続放棄をしたとしても、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」のままです。

つまり、相続放棄は、相続人自身の相続税負担には影響しますが、相続財産を受け取らない他の相続人の基礎控除額には、影響が生じないことを覚えておきましょう。

相続税の計算を誤るとペナルティが課せられるおそれがある

相続税の申告額や利用申請をした控除制度の適用条件に間違いがあると、ペナルティが課せられるおそれがあります。

相続税の申告漏れや過少申告があった場合、このようなペナルティが生じる可能性があります。

ペナルティの種類

内容

無申告加算税

期限までに相続税を申告しなかった場合に生じるペナルティ

延滞税

納付期限以降1日単位で発生する利息相当額

過少申告加算税

相続税の申告額が不足していたときに課されるペナルティ

重加算税

不正な手段などで相続税を正しく納付しなかったときに課される罰金

相続関係や相続財産の内容が複雑だったり、各種控除制度が適用されるか曖昧だったりすると、申告・納付手続きに誤りが生じる可能性があります。

相続税の申告・納付手続きを正しく進められるかどうしても不安な方は、弁護士・税理士などの専門家のアドバイスを参考にしましょう。

相続税額の計算に不安がある場合は弁護士・税理士に相談しよう

基礎控除額や各種控除制度などを利用すれば、一定範囲の相続税を節税できます。

ただし、相続税の申告・納付には厳格な期限が設けられているので、決められた期間内に手続きを進めなければいけません。

ベンナビ相続では、相続税問題に強い弁護士を多数掲載しています。

相続が発生する前から相談すれば、現段階から実施できる節税対策についても具体的にアドバイスしてくれます。

初回無料相談を受け付けている弁護士も多数いますので、この機会にぜひ積極的に活用してください。

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この記事の監修者
リフト法律事務所
川村 勝之 (千葉県弁護士会)
相談者に選択肢を提示し、最も理想に近い解決法を共に考えることを心がけており、コミュニケーションの取りやすさに定評あり。税理士・司法書士・公認会計士などの他士業と連携したトータルサポートも魅力。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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