相続税を申告したあとに申告漏れが発覚した場合、追加申告をおこなわなければなりません。
すでに申告した相続税の計算などが間違っていたときであっても、あとから新しい財産が出ていたときであっても、追加申告は必要です。
本記事では、相続税の追加申告の種類や具体的な手続き、修正が必要になる主なケースなどについて解説します。
ペナルティを受けてしまわないよう、本記事を参考に適切な申告をおこなってください。
相続人は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に相続税の申告をしなければなりません。
しかし、期間内に申告と納税を済ませたとしても、あとから申告内容が間違っていたことが発覚するケースがあります。
相続税の申告や納税額に誤りがあったことがわかったら、追加申告をしなければなりません。
追加申告には修正申告と訂正申告の2種類があります。
まずは、それぞれについて具体的に見てみましょう。
一度おこなった相続税の申告内容が誤っていた場合やあとから新たな財産が見つかった場合などに、期限後に申告をやり直す手続きを相続税の修正申告といいます。
相続税は申告納税制度であり、自分で納めるべき税金を計算して、自分で申告と納税をしなければなりません。
そのため、遺産を相続した際の納税手続きはもちろん、修正についても自発的におこなわなければならないのです。
放っておけば税務署から指摘されてしまい、過少申告加算税や重加算税などの附帯税を支払わなければならなくなる可能性があります。
そのため、納付した税額が実際よりも少なかったことがわかったら、すぐに修正申告をおこないましょう。
訂正申告も誤った税額を修正する方法ですが、おこなう時期や目的が修正申告とは異なります。
訂正申告は、相続税の申告期限内に正しい税額に調整する方法です。
期限に遅れているわけではないため、延滞税などのペナルティは発生しません。
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。
早めに申告をしていた場合は、修正すべき事項が発覚しても訂正申告で済むでしょう。
申告期限が過ぎたあとに間違いが発覚した際は、修正申告として税額を調整してください。
相続税を修正しなければならないのはどのようなときでしょうか。
ここからは、修正申告が必要となる主なケースについて解説します。
最も多いケースは、相続財産の評価方法や税率計算が間違っていたというものです。
この間違いが発生しやすいのは、財産を相続したほうが自分で税額を計算したり、申告したりするケースです。
相続は被相続人との関係性によって取得する金額が異なり、取得する金額によって相続税の税率も異なります。
現金だけを相続する場合であればわかりやすいかもしれませんが、金融商品や不動産などさまざまな種類の財産を相続した方にとっては、評価や計算は複雑になります。
そのため間違いが起きやすいのです。
少しでも不安があるなら、弁護士や税理士など専門家の力を借りるほうが確実でしょう。
「令和3事務年度 国税庁実績評価書」によると、約90%の方が税理士へ依頼して相続税を申告・納付しています。
全ての財産について相続税を納付したと思っていても、たとえば自宅を整理しているときに新たな財産が見つかるようなケースもあります。
そのため、遺産分割協議をする際に、万が一あとから新たな財産が見つかったら誰が相続するのかを事前に決めておくことも大切です。
事前に決めていなかった場合は、改めて遺産分割協議をやり直し誰が相続するかを決定します。
そのうえで、相続した方が訂正申告または修正申告をしなければなりません。
なお、修正申告の場合は延滞税がかかります。
あとから新たな財産が見つかる可能性も踏まえ、早めに申告を済ませておきましょう。
申告期限内であれば訂正申告で済み、延滞税などを支払う必要がありません。
被相続人が亡くなり財産の整理をしていた際、相続税の課税対象ではないと考えて申告をしていなかったケースでも、修正申告が必要となることがあります。
とくに、みなし相続財産を含まずに相続税の申告や納付をしてしまうケースは少なくありません。
みなし相続財産とは、亡くなった方の財産ではないにも関わらず、相続税の課税対象となる財産のことをいいます。
たとえば、母親が子どもを受取人として生命保険に加入していた場合、母親が亡くなったら死亡保険金は子どもが受け取ることになります。
このとき、保険料を母親自身が支払っていた場合、実質的に子どもは母親の財産を相続したことになるのです。
死亡保険金には非課税限度額が設けられているためその範囲内であれば相続税はかかりませんが、限度額を超えると相続税の課税対象となります。
とくに生命保険における死亡保険金の受け取りに関しては、保険料の支払いをしている方・受取人・被保険者がそれぞれ誰かによってかかる税の種類が異なります。
そのため、知らずに見逃してしまう方は少なくないのです。
相続税の修正申告は、どのような流れでおこなえばよいのでしょうか。
以下で4つのステップを紹介します。
まずは、修正申告に必要な書類を集めなければなりません。
相続税の修正申告をするには、自ら税務署に修正申告書を提出しなければならないため、必要書類も自分で入手することになります。
税理士に依頼する場合は、税理士が用意してくれるでしょう。
自分で修正申告をおこなう際の申告書は、全国の税務署で入手することができます。
また、国税庁のホームページからダウンロードをすることも可能です。
「相続税の申告書等の様式一覧」のページから修正申告用の申告書を選択しましょう。
なお、修正申告において必ず提出しなければならないのは、第1表「相続税の申告書」と第15表「相続財産の種類別価額表」です。
ほかにも、相続税に関する特例などを適用したい場合は、使いたいものに合わせた書類を準備しましょう。
たとえば、配偶者の税額軽減を利用するなら第5表「配偶者の税額軽減額の計算書」の提出が必要です。
書類が準備できたら、修正用の申告書を作成しましょう。
第1表「相続税の修正申告書」には、被相続人の氏名や住所などの情報のほか、修正申告金額・修正前の税額・修正申告による納付税額などを記入します。
ほかにも必要な書類はダウンロードし、項目ごとに記入しましょう。
なお、被相続人の相続開始日が2016年以後である場合は、個人番号の記載が必要です。
マイナンバーカードの写しか、マイナンバー通知カードと本人確認書類の写しを添付する必要もあるため、準備しておきましょう。
修正申告によって追加で納付しなければならない相続税は、修正申告書の提出日までに延滞税とともに納付しなければなりません。
納付書は、修正申告書とは別のもので、所轄の税務署で入手できます。
税務署でも書き方を教えてくれるはずですが、まずは国税庁の「税についての相談窓口」などに相談してみるとよいでしょう。
支払いは、銀行などの金融機関や税務署の窓口などでおこなうことができます。
修正申告書は添付書類とともに税務署へ提出しましょう。
税務署窓口へ直接提出することはもちろん、郵送や電子申告をすることも可能です。
ただし、電子申告を利用できるのは2019年1月1日以降に相続などによって財産を取得した方のみなので注意してください。
ここからは相続税に関する修正申告や訂正申告などの追加申告に関してよくある質問を紹介し、回答していきます。
相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月間です。
修正申告に関してはさらにその翌日から5年以内が期限となります。
期間を過ぎると時効になるため、それ以降は修正申告をおこなうことができません。
期限まで納税額の不足に気づかず、税務署からの連絡もないまま修正申告をせずに時効になった場合は、納付額が足していなかったとしてもあとから追加で納付する必要はありません。
ただし、わざと相続税の金額を少なく申告した場合や不足に気づいていながら意図的に修正申告や納付をしなかった場合などは、悪質であるとして時効が5年から7年に延長されることがあります。
そのため、5年を過ぎても追加申告や支払いを命じられ、延滞料なども支払うことになります。
あとになるほど延滞税が高くなるため、申告の間違いに気づいたら修正申告はなるべく早くおこないましょう。
修正申告をすると延滞税が課されます。
延滞税は増加分の税額に対してかかり、法定納期限の翌日から追加分の相続税を納付する日までの日数に応じて決まります。
税率は納付期限から2ヵ月以内であれば年2.4%で、納付期限から2ヵ月を超えている場合は年8.7%となります。
なお、税務調査によって納税額が不足していると税務署から指摘を受けてしまった場合は、過少申告加算税が課せられます。
もしも納税額が不足している場合は、税務調査が入る前に自主的に修正申告をおこなうべきでしょう。
また、意図的に相続財産額を少なく申告したり、相続財産を隠ぺいしたりしていたと認定されると、重加算税が課せられます。
なお、修正申告ではなく、そもそも期限内に相続税の申告をしていなかった場合は、無申告加算税がかかります。
税務調査をする旨の通知が来る前に自主的に申告をしたかどうかや、税務署から指摘がされてから申告をしたかどうかなど、状況によってかかる無申告加算税のパーセンテージは異なります。
修正申告をする場合でも特例は使えます。
たとえば、小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減は利用が認められています。
小規模宅地の特例とは、亡くなった人が住んでいた土地・事業をしていた土地・誰かに貸していた土地を相続した場合、一定の要件を満たしていれば、土地の評価額を最大80%減額できる仕組みです。
配偶者の税額軽減は、配偶者が相続した財産が、法定相続分または1億6,000万円まで無税になる仕組みです。
また、障害者控除対象者認定申請についても、修正申告の有効期限である過去5年分までさかのぼっておこなうことができます。
相続税の追加申告には、修正申告と訂正申告の2種類があり、それぞれ異なる手続きです。
なるべく早く正しい申告をすることで、延滞税などのペナルティを避けて、損をせず相続手続きを進めることができます。
手続きには、必要書類の収集・申告書の作成・税金の納付・税務署への提出などをしなければなりません。
記載方法や正確な申告がむずかしいと感じるときは、専門家に相談するのが有効です。
間違いがあると、さらに手続きに手間がかかってしまいます。
税理士であれば、申告する方に代わって手続きをおこなってくれます。
わからないことがあれば、迷わず税理士に相談しましょう。
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