遺族年金は、一家の稼ぎ頭が何らかの理由で亡くなった場合に、遺族に対して支給される公的年金です。
遺族にとって、遺族年金は生活の支えになるものですが、亡くなった人の年齢や年金の加入状況などによって受給内容は異なります。
なお、遺族年金には受給条件が定められています。
受給条件を満たしていても、請求手続きに手間取ってしまったりすると受給開始のタイミングが遅れてしまいます。
速やかに遺族年金を受け取るためにも、この記事でポイントを押さえておきましょう。
この記事では、遺族年金の種類や受給条件、請求方法や計算方法などを解説します。
ご家族が亡くなった際は、年金以外にも相続に関する手続きが必要となります。相続問題でお悩みなら、弁護士に相談してみてください。
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※遺族年金の支給方法や受給要件については、相続手続き・トラブルとは異なりますので、市区町村役場や年金事務所、年金相談センターにお尋ねください。
遺族年金は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類に分類されます。
まずは、各年金の受給条件などを解説します。
遺族基礎年金とは、以下のようなケースで支給される遺族年金です。
①・②のケースでは、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。
③・④のケースでは、以下の条件を満たしている必要があります。
遺族基礎年金を受け取れる方は、亡くなった方によって生計を維持されていた「子どもを持つ配偶者」と「子ども」です。
ここでの「生計を維持されていた」とは、以下の両方を満たしている場合のことを指します。
なお、子どもについては、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。
遺族厚生年金とは、以下のようなケースで支給される遺族年金です。
遺族基礎年金と同様に受給条件が定められており、①・②のケースでは、以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。
④・⑤のケースでは、以下の条件を満たしている必要があります。
遺族厚生年金を受け取れる人は、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族です。
ただし、以下のように各遺族には優先順位が決められており、最も優先順位の高いグループしか受け取れません。
第一順位 |
・妻 ・夫(故人の死亡当時に55歳以上の人が対象) ・子ども(年齢条件などを満たしている人が対象) |
第二順位 |
・父母(故人の死亡当時に55歳以上の人が対象) |
第三順位 |
・孫(年齢条件などを満たしている人が対象) |
第四順位 |
・祖父母(故人の死亡当時に55歳以上の人が対象) |
なお、亡くなった方によって生計を維持されていたかどうかの判断基準や、子ども・孫に関する年齢条件などは、遺族基礎年金の場合と同様です。
亡くなった方の妻は遺族厚生年金の受給対象となり、受給条件を満たす子どもがいる場合には遺族基礎年金もあわせて受け取ることができます。
なお、妻の年齢が30歳未満であり、かつ子どもがいない場合には、5年間の有期給付となります。
亡くなった人の夫も遺族厚生年金の受給対象となり、条件を満たしていれば遺族基礎年金もあわせて受け取ることができます。
ただし、夫の場合は「故人の死亡当時に55歳以上であること」が条件であり、受給開始は60歳からとなります。
例外として、遺族基礎年金とあわせて受給できる場合のみ、55歳~59歳でも受給開始となります。
亡くなった人の子どもも遺族厚生年金の受給対象となり、条件を満たしていれば遺族基礎年金もあわせて受け取ることができます。
なお、第一順位である「妻・夫・子ども」については、以下のようにさらに細かい順位付けがされています。
第一順位の中の1番目 |
・子どものいる妻 ・子どものいる55歳以上の夫 |
第一順位の中の2番目 |
・子ども |
第一順位の中の3番目 |
・子どものいない妻 ・子どものいない55歳以上の夫 |
したがって、たとえば「子どものいる妻」や「子どものいる55歳以上の夫」が遺族厚生年金を受給している場合、子どもには支給されません。
亡くなった人の孫も遺族厚生年金の受給対象となります。
ただし、子どもよりも優先順位が低く、第一順位や第二順位の人がいる場合には受け取れません。
亡くなった人の父母や祖父母も遺族厚生年金の受給対象となります。
ただし、父母や祖父母の場合は「故人の死亡当時に55歳以上であること」が条件であり、受給開始は60歳からとなります。
遺族共済年金とは、共済年金に加入している公務員や私立学校の教職員などが亡くなった際に支給される遺族年金で、現在は遺族厚生年金に一元化されています。
かつては、公的年金である国民年金・会社員が加入する厚生年金・国家公務員が加入する国家公務員共済年金・地方公務員が加入する地方公務員共済年金・私立学校の教職員が加入する私立学校教職員共済年金などが運用されていました。
しかし、共済年金と厚生年金には制度上の格差が生じていたことから、2015年10月より国家公務員・地方公務員・私立学校の教職員も厚生年金に加入することになりました。
このような背景があり、現在の公的年金制度は国民年金と厚生年金の2種類だけになっています。
ただし、厚生年金との統合前の2015年9月30日までに受給権が発生していた共済年金については、各共済組合にて給付がおこなわれています。
もし2015年9月30日までに加入者が死亡していた場合は、各共済組合にて支給要件などを確認しましょう。
ここでは、遺族年金の支給金額について解説します。
遺族基礎年金の場合、「基本額」と「加算額」を合わせた金額が支給されることになります。
子どものいる配偶者については、67歳以下と68歳以上で基本額が異なります。
加算額については子どもの人数によって変動し、多ければ多いほど金額も大きくなります。
ケースごとの金額としては以下のとおりです。
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遺族厚生年金の場合は計算方法が複雑で、「老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」の金額が支給されます。
以下では、詳しい計算方法を解説します。
遺族厚生年金における「老齢厚生年金の報酬比例部分」は、以下①・②を合計したものです。
したがって、遺族厚生年金の計算式は「(①+②)×3/4」となります。
なお、①の平均標準報酬月額とは、「2003年3月までの加入期間の各月の標準報酬月額の総額」÷「2003年3月までの加入期間の月数」で計算した金額を指します。
②の平均標準報酬額とは、「(2003年4月以降の加入期間の各月の標準報酬月額)+(標準賞与額)」÷「2003年4月以降の加入期間の月数」で計算した金額を指します。
上記の計算時に用いる加入期間は、実際に被保険者になっていた月数を入れて算出するのが通常です。
しかし、以下いずれかの受給要件に該当しており、加入期間が300ヵ月(25年)未満の場合は、300ヵ月とみなして算出します。
遺族厚生年金は、平均標準報酬月額や子どもの人数などによって異なります。
場合によっては遺族基礎年金と合わせて支給されることもあり、目安としては以下のとおりです。
共済年金については厚生年金に一本化されています。
したがって、これから受け取る可能性がある方は遺族厚生年金の金額を参考にしてください。
遺族年金を請求するにあたって、事前に年金事務所などで受給権の有無や必要書類などの確認をしておくとスムーズに手続きが進められます。
ここでは、遺族年金を受け取る方法について解説します。
まずは、市区町村役場で死亡届を提出しましょう。
亡くなった人が年金受給者だったのか、それとも現役の加入者だったのかによって提出内容が異なります。
亡くなった人が年金受給者だった場合は、年金事務所へ「年金受給権者死亡届」を提出しましょう。
様式や記入例は「年金を受けている方が亡くなったとき|日本年金機構」でダウンロードできます。
なお、日本年金機構にてマイナンバーが登録されている場合は提出不要です。
マイナンバーが登録されているかどうかわからない場合は、「ねんきんネット」や年金事務所にて確認できます。
亡くなった方が現役の加入者だった場合は、会社などを通じて「被保険者資格喪失届」を提出することになります。
届書様式などについては「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き|日本年金機構」にて確認できます。
遺族年金を受け取るための必要書類は以下のとおりです。
なお、交通事故のように第三者の行為によって亡くなった場合は、以下の書類も必要です。
基本的な必要書類は上記のとおりですが、場合によっては「年金証書」などの書類が必要になることもあります。
詳しくは「遺族基礎年金を受けられるとき|日本年金機構」や「遺族厚生年金を受けられるとき|日本年金機構」をご確認ください。
遺族基礎年金と遺族厚生年金では、以下のように書類の提出先が異なります。
遺族基礎年金の場合、亡くなった人の住所地の市区町村役場に提出します。
なお、死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、年金事務所または年金相談センターに提出します。
国民年金第3号被保険者期間に当てはまるかどうかは「国民年金の第3号被保険者制度のご説明|日本年金機構」にてご確認ください。
遺族厚生年金の場合、年金事務所または年金相談センターに提出します。
一家の大黒柱が亡くなってしまった場合、遺族年金がもらえれば家計の支えになります。
遺族基礎年金や遺族厚生年金の条件を満たしている場合は、速やかに必要書類を集めて手続きを進めましょう。
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