「兄弟姉妹間における不公平な遺産相続を解消したい」
「できるだけ遺産相続で損をしたくない」
遺産相続にあたっては、親と子の関係性などが影響し、相続割合に格差が生まれることも珍しくありません。
実際、自身にとって不公平な相続がおこなわれてしまい、なんとか対処できないものか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、兄弟姉妹間で不公平な相続があった場合の対処法を解説します。
6つのパターンに分けて具体的な対処法を紹介するので、自身が置かれている状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
法律上、遺産相続における兄弟姉妹の権利は平等です。
遺言がある場合や相続人全員の合意がある場合などを除き、兄弟姉妹は同じ割合で遺産を相続することになります。
とはいえ、実際の遺産相続においては、さまざまな事情によって特定の人物が優遇され、兄弟姉妹間で格差が生じるケースも少なくありません。
しかし、各相続人には法律によって守られている権利があるので、決して泣き寝入りしないようにしましょう。
それぞれの状況に合わせて、適切な対処を講じていくことが重要です。
遺産分割の方法は、相続人全員による遺産分割協議によって自由に決められるため、ほかの兄弟姉妹から一方的な分割案を提案されることもあるでしょう。
言われるがままに同意していると、自身の相続割合が小さくなるなど、さまざまな不利益が生じる可能性もあるので、冷静に対処するようにしてください。
一方的な遺産分割案を提案された場合は、すぐに同意せず納得できるまで話し合うことが大切です。
提案を受け入れ、遺産分割協議書に捺印してしまうと、あとでくつがえすことは基本的にできません。
逆にいえば、自分自身が同意しなければ、遺産分割協議の成立を阻止することができます。
そのため、兄弟姉妹の相続割合は原則として平等であることを説明しつつ、自らの適切な取り分を主張しましょう。
兄弟姉妹間での話し合いがまとまらない場合は、遺産分割調停・審判をおこなうことも検討してください。
遺産分割調停とは、家庭裁判所の裁判官と調停委員を交えて、相続人全員による合意形成を目指す手続きのことです。
第三者の視点で助言してもらったり、和解案を提示してもらったりできるので、当事者で話し合うよりもスムーズな解決が期待できるでしょう。
調停でも解決しなかった場合には自動的に遺産分割審判へと移行し、当事者の主張や証拠に基づいて裁判官から遺産分割の方法が示されます。
そして、一定期間内にいずれの相続人からも不服申し立てがおこなわれなかった場合は、その時点で審判が確定します。
兄弟姉妹間での解決が難しい場合は、遺産分割が得意な弁護士に相談・依頼するのもひとつの方法です。
弁護士に相談・依頼すれば、法律的に正しい相続方法を提案してもらえるほか、ほかの兄弟姉妹との交渉も任せられます。
また、調停や審判に移行する場合でも、裁判所とのやり取りや主張・証拠の準備などを全面的にサポートしてもらえるはずです。
弁護士の得意分野は、各法律事務所の公式サイトなどに掲載されているケースが一般的なので、相談先を決める際には一度確認してみることをおすすめします。
実家しか遺産がないことが原因で、兄弟姉妹間の不公平な相続が起きるケースもあります。
家を物理的に分けることは難しく、相続にあたって公平性を確保しにくいためです。
しかし、家を公平に分割する方法にはいくつかの選択肢あるので、詳しく見ていきましょう。
実家しか遺産がない場合は、換価分割を提案してみましょう。
換価分割とは、家を売却して得られた現金を分け合う方法のことです。
相続の対象が家から現金に変わるので、公平に分割しやすくなります。
ただし、家を手放さなければならないので、ほかの兄弟姉妹から反対されることもあるかもしれません。
また、不動産の売却には時間がかかるほか、仲介会社に対する手数料が発生する点にも注意しておきましょう。
実家をどうしても残したいと主張する相続人がいる場合は、代償分割を提案してみてください。
代償分割とは、兄弟姉妹のうちいずれかひとりが家を相続し、ほかの兄弟姉妹に代償金を支払う方法のことです。
実家を維持しつつ、兄弟姉妹間の不公平感も軽減できる方法として、実際に利用されるケースも少なくありません。
ただし、代償分割をおこなうには、実家を相続する兄弟姉妹が、代償金を支払えるだけの資産を持っている必要があります。
また、代償金をいくらにするかで意見が分かれ、揉める可能性があることも理解しておきましょう。
兄弟姉妹のうち特定の人物だけが親の面倒を見ていた場合も、揉めごとになるケースがあります。
面倒を見ていた側からすると「面倒を見ていた分、遺産相続で有利にしてもらいたい」と考えるのも仕方のないことです。
一方で、面倒を見ていなかった側としても、「親の面倒を見ていたからといって、あまりにも偏った遺産相続になるのはおかしい」と、納得できないこともあるでしょう。
この場合、主に2つの対処法があるので詳しく解説します。
自分自身が親の面倒を見ていた場合は、まず話し合いで寄与分を主張しましょう。
寄与分とは、被相続人が所有する財産の維持・増加に貢献した相続人に対し、法定相続分以上の財産を与える制度のことです。
たとえば、家業を助けて財産を増やした場合や、献身的に介護をして財産の減少を最小限に抑えた場合などが挙げられます。
ただし、寄与分を主張するには、通常期待されている程度を超えた貢献があることなど、さまざまな条件を満たしていなければなりません。
たとえば、単に同居していた被相続人の家事を手伝っていた場合などは、寄与分の主張は難しいといえるでしょう。
なお、寄与分として取得する財産は、相続人同士の話し合いで自由に決められます。
寄与分の基本的な算出方法については、以下の記事で詳しくまとめているので参考にしてみてください。
話し合いで寄与分が認められなかった場合は、「寄与分を定める調停」を申し立てましょう。
裁判官や民間から選ばれた調停委員に仲介してもらいながら、話し合いによる合意形成を目指すことができます。
調停で解決しなければ自動的に審判へと移行し、当事者の主張や証拠をもとに寄与分を認めるかどうか、どの程度の寄与分が妥当かどうかを裁判官が判断することになります。
なお、寄与分を主張するための調停には、「遺産分割調停」と「寄与分を定める調停」の2種類があり、審判に移行する場合は両方の申し立てが必要です。
そのため、どちらの調停でも寄与分に関する話し合いは可能ですが、同時に申し立て、併合して手続きを進めていくことをおすすめします。
ほかの相続人に生前贈与があった場合も、兄弟姉妹間の不公平な相続が生じ、トラブルになることがあります。
生前贈与とは、生きている間に他者へ財産を贈与することです。
兄弟姉妹のうち特定の人物にだけ生前贈与がおこなわれていた場合、ほかの兄弟姉妹からすると「生前贈与を受けた分、遺産分割での取得分は減らすべき」と考えるのも無理はないでしょう。
ここでは、実際に生前贈与を受けた兄弟姉妹がいる場合に、公平な相続を実現するための対処法を解説します。
ほかの兄弟姉妹に対する生前贈与があり、不公平感を感じているときは、特別受益を主張して、持ち戻しをおこないましょう。
特別受益とは、「結婚や養子縁組などに際して贈与されたもの」または「生計の資本として贈与されたもの」のことです。
具体的には、以下のような贈与が該当します。
ただし、親と同居していた兄弟姉妹が生活費を負担してもらっていた場合など、一般的な扶養義務の範囲内であるものに関しては、特別受益に該当しないので注意してください。
生前贈与が「特別受益」にあたると認められたときは、その財産を遺産の一部とみなして法定相続分から差し引くことができます。
たとえば、3,000万円の遺産を3人の兄弟姉妹で相続することになったものの、長男が1,200万円の生前贈与を受けていたケースを想定してみましょう。
この場合、法定相続分に従うと1,000万円ずつ分割されますが、長男だけが生前贈与と合わせて2,200万円の財産を取得することになるので明らかに不公平です。
そのため、遺産3,000万円と生前贈与1,200万円は合算し、4,200万円を各相続人に割り振ります。
すると、1人あたりの取得分は1,400万円ですが、長男にはすでに1,200万円の生前贈与があるので、遺産相続においては「1,400万円-1,200万円=200万円」を受け取ることになります。
特別受益の有無や額が話し合いで決められない場合には、遺産分割調停や審判で確定させるケースが一般的です。
まずは、遺産分割調停において、裁判官や調停委員の仲介のもと、話し合いでの解決を目指します。
調停が不成立となった場合には審判へと移行し、当事者の主張や証拠をもとに、裁判官が最終的な判断を下します。
そして、審判の告知を受けた日から2週間以内に不服申し立てがおこなわれなかった場合には、その時点で特別受益の有無や額が確定します。
遺言の内容が不平等だったことが原因で、兄弟姉妹間の不公平な相続が起きるケースもあります。
遺言がある場合は被相続人の意向を尊重し、記載内容に沿って相続を進めるのが基本です。
しかし、長男や長く同居していた兄弟姉妹が有利になるような遺言だった場合、ほかの兄弟姉妹からすると納得できない部分も出てくるでしょう。
ここでは、遺言の内容が不平等だった場合における対処法を解説するので、参考にしてみてください。
遺言書に従う遺留分さえ取得できない場合には、遺留分侵害額請求をおこないましょう。
遺留分とは、各相続人に最低限保証されている取得分のことであり、たとえ遺言であっても侵害することは認められません。
もし「全ての財産を長男に相続させる」などといった内容があった場合には、遺留分を取り戻すために遺留分侵害額請求をおこなう必要があります。
遺留分の侵害があったときは、まず話し合いで自身の取得分を主張しましょう。
直系尊属のみが相続人になる場合を除き、遺留分は法定相続分の2分の1です。
たとえば、被相続人の配偶者がすでに亡くなっており、兄弟姉妹2人で相続する場合は、それぞれの法定相続分が2分の1ずつとなり、遺留分はその2分の1にあたる4分の1になります。
話し合いで解決しない場合には、家庭裁判所に対し遺留分侵害額の請求調停を申し立ててください。
そして、調停でも解決しなければ、遺留分侵害額請求訴訟を提起するほかありません。
なお、遺留分侵害額請求権は、相続の開始と遺留分の侵害があったことを知ったときから1年で時効により消滅します。
1年が経過すると、遺留分の取り戻しを請求すること自体できなくなるので注意が必要です。
家庭裁判所の遺留分侵害額の請求調停を申し立てる、遺言無効確認訴訟を提起したというだけでは時効消滅が防げず、内容証明郵便の送付などにより、遺留分侵害額請求の意思表示をする必要があります。
遺留分侵害額請求の時効は短く、あっという間に経過してしまいますので、時効の管理については十分に注意する必要があります。
遺言の内容が不平等だった場合は、遺言無効確認請求訴訟を提起することも検討してみてください。
遺言無効確認請求訴訟とは、遺言の記載内容が法的に無効であることを裁判所に認めてもらうための手続きです。
法律で定める遺言書の方式を満たしていないことや、意思能力がない状態で遺言が作成されていたことなどが認められると遺言書の効力が否定されるため、相続人が従う必要もなくなります。
ただし、遺言の無効を争うには、無効事由を裏づける証拠の提出が必要です。
また、判決が出るまでに長期間を要することもあるので、訴訟を提起するかどうかは慎重に判断するようにしましょう。
喪主が葬儀費用を負担した場合にも、兄弟姉妹間の不公平な相続が起こり得ます。
前提として、葬儀費用は被相続人の死亡後に生じる債務であるため、遺産分割の対象にはなりません。
しかし、自身が喪主となり、葬儀費用を負担していたとすると、その分は多めに遺産を相続したいと考えるのも当然のことです。
ここでは、葬儀費用を負担した場合において、不公平な相続を解消するための対処法を解説します。
まずは、葬儀費用を考慮した遺産分割になるよう、ほかの相続人に提案してみてください。
遺産分割協議で相続人全員が合意すれば、遺産分割の方法は自由に決められるため、まずは話し合いでの解決を目指しましょう。
たとえば、葬儀費用として200万円を支払ったのであれば、預貯金から200万円を多めに相続したり、自動車や不動産を上乗せして相続したりといった方法が考えられます。
話し合いで葬儀費用を考慮してもらうことが難しい場合は、遺産分割調停を申し立てましょう。
裁判官や調停委員に助言や和解案の提案をおこなってもらうことで、葬儀費用を考慮した遺産分割の合意を得られるケースもあります。
なお、遺産分割審判では、葬儀費用について審理することができません。
そのため、調停が不成立になった場合には、葬儀費用を誰がいくら支払うのかについて民事訴訟で争うことになります。
遺産相続における兄弟姉妹の相続割合は平等ですが、さまざまな事情によって兄弟姉妹間の格差が生じてしまい、トラブルに発展するケースも少なくありません。
もし兄弟姉妹間で揉めてしまった場合には、できるだけ早く弁護士に相談してください。
弁護士に相談・依頼すれば、法律や判例に基づいて適切な遺産分割の方法を提示してもらえるほか、対峙する兄弟姉妹との交渉も任せられます。
相続については、兄弟姉妹間の心情が絡みますので、自身で対応することが辛い場合も多く、そのときに相談しながら進められる弁護士の存在は心強い味方になります。
また、中立の立場であいだに入ってもらうことで、冷静な話し合いが実現し、円満解決に至る可能性も十分あるでしょう。
初回相談は無料で受け付けている法律事務所も多くあるので、まずは気軽に問い合わせてみることをおすすめします。
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