相続手続きの中でも非常に難易度の高いのが相続税申告です。
そのため、多くの人がその手続きを税理士に依頼しています。
とはいえ、税理士に相続税申告を依頼するには当然費用がかかります。
税理士費用がどれくらいかかるのか、安くする方法はないのかなど、費用面の不安を抱えている方も多いでしょう。
本記事では、相続税申告についての税理士費用にいくらくらいかかるのか、その相場について解説します。
そもそも税理士に依頼する必要があるのかどうかも説明するので、ぜひ参考にしてください。
相続税申告を依頼する場合にかかる税理士費用は次のとおりです。
それぞれの相場について、以下で詳しく見ていきましょう。
相続税申告の相談料については、30分あたり5,000円程度が相場です。
相続税申告を依頼する前には、まず税理士に相続税申告についての相談をしましょう。
相談することで、そもそも依頼すべきかどうかや信頼できる税理士かどうかを判断できます。
なお、最近では相続税申告については相談料を無料とする税理士も多くいるので、費用が不安な方は無料相談を実施している事務所を探してみてください。
全ての相続税申告で税理士に対して支払うことになる、費用のことを基本報酬といいます。
基本報酬は、相続財産に0.5%~1%を乗じた金額で請求されることが多く、金額ごとにパーセンテージが変わることもあります。
このような報酬体系になっているのは、一般的に遺産の総額が多ければ多いほど、税理士がおこなう事務の量も増えることになる、という考えによるものです。
目安として、どの程度の費用となるかを以下で確認してみましょう。
遺産額 |
基本報酬が0.5%の場合 |
基本報酬が1%の場合 |
5,000万円 |
250万円 |
500万円 |
1億円 |
500万円 |
1,000万円 |
2億円 |
1,000万円 |
2,000万円 |
3億円 |
1,500万円 |
3,000万円 |
相続税申告の中には、税理士が複雑・難解な内容に対応しなければならないケースがあり、その場合は基本報酬に加算して加算報酬が請求されます。
加算報酬は、サービス内容や相続人の数などによって異なります。
たとえば主に次のような事情があると、加算報酬が請求される可能性があるでしょう。
相続人が複数人いる場合には、加算報酬が請求されます。
相続人が複数人いる場合、遺産分割協議をおこなうための調整が必要です。
そのため、税理士はその調整のために労力を割かれることになるため、加算報酬が発生するでしょう。
なお、相続人が多ければ多いほど加算の割合が上がります。
相続財産に非上場株式がある場合には、加算報酬が請求されます。
株式には、上場株式と上場していない非上場株式があります。
上場株式は日々明確に金額が決まるので評価額の計算は難しくないのですが、非上場株式については、業種と会社の規模に応じて評価に用いる計算方法が異なり、その内容は非常に難解で複雑です。
計算には労力がかかるため、加算報酬の対象となります。
土地の評価が複雑である場合にも、加算報酬が請求されます。
不動産の中でも、土地は評価計算が非常に複雑であり、とくに都市部で路線価がついているところにある土地では、次のような事情により価額が増減します。
また、土地を他人に賃貸している場合などには、用益ができないことから価値を減ずる必要があります。
不動産について価格の補正をする必要があるような、複雑な評価をしなければならない土地がある場合、加算報酬の対象となるでしょう。
相続税申請の書面添付制度による書面添付を依頼した場合には加算報酬の対象となります。
相続税申告をするにあたって、税理士が判断内容とその根拠を示す書面を添付してくれるのが、相続税申請の書面添付制度です。
書面添付によって相続税の税務調査の可能性が大きく下がるという効果があります。
書面作成の手間はもちろん、作成にあたっての責任が生じるため、加算報酬の対象となります。
申告期限が迫っている場合には、加算報酬の対象となります。
相続税申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内におこなう必要があります。
人が亡くなったときや、相続に関する手続きとしては非常に期限の長いものですが、手続きの複雑さや手間の多さから考えると、実際にはそこまで余裕のある期限ではありません。
申告期限が迫ってから依頼すると、申告期限に間に合わせるために集中的な対応をする必要があるため、加算報酬の対象となります。
期限の3ヵ月前くらい前からが加算の対象となり、残り期間の短さに応じて加算割合が高くなります。
物納をおこなう場合、加算報酬の対象となります。
相続税の納付は原則として金銭でおこないますが、金銭納付が困難である場合には、遺産をそのまま納付する物納が認められています。
物納する場合には、物納申請書や金銭納付を困難とする理由書などの書面を作成し、添付書類を収集のうえで提出する必要があり、手間がかかるため加算報酬の対象となります。
相続税申告にあたって、より有利かつ、ミスなくスムーズに申告をおこなうためには、適切な税理士を選ぶ必要があります。
相続税申告の税理士を選ぶにあたっては、次の4つのポイントに注意をしましょう。
相続税申告の実績が十分な税理士に依頼しましょう。
相続税に詳しくない税理士に依頼をすると、依頼者に有利な遺産の計算方法を選択できなかったり、控除などの制度を失念したりするなどで、本来よりも多くの相続税を支払うことになるケースもあります。
相続税は税理士の中でも特殊な分野とされており、全ての税理士が取り扱っているわけではありません。
相続税申告業務に取り組んでいる税理士であれば、ホームページに実績やお客様の声があるほか、googleの口コミなどを参考にすることができます。
税理士報酬がどのくらいかを公開している税理士を選ぶのもポイントです。
税理士報酬は1件○○万円という性質のものではなく、相続財産の額と相続税申告を複雑にする事情の有無によって金額が異なります。
金額が明確ではない分、あとになって税理士報酬の額を巡ってトラブルとなることも珍しくありません。
金額が明確でなくとも、計算方法や基準などをホームページなどで公開している場合には、安心して依頼できるといえるでしょう。
相続税申告を依頼する際は、税務調査に詳しい税理士を選ぶようにしましょう。
相続税申告で最も避けたいのは、せっかく申告したにもかかわらず、税務調査の対象となることです。
税務調査の対象となると必ず対応をしなければならず、その多くのケースで追徴課税を受けることになります。
税務調査に詳しい税理士は税務調査のポイントとなる項目を熟知しており、その部分についてはきちんと対応してもらえるでしょう。
また、万が一税務調査の対象となった場合でも、適切な対応をしてもらえることが期待できます。
報酬の支払い方法として、申告が終わったときに報酬が発生する成功報酬型をとっているケースがあります。
成功報酬は、相続税の申告が終わり、節税に成功した分に一定割合を乗じて報酬を請求するものです。
法律上このような報酬の請求を禁じられているわけではないので、法的な問題があるわけではありません。
しかし、成功報酬となる場合の報酬は通常は高額であり、かつ事前にはわからないため、依頼者とトラブルになるケースがあとを絶ちません。
成功報酬としている税理士には注意するようにしましょう。
税理士に相続税申告を依頼すべき場合として、次の5つのケースを紹介します。
相続税申告の手続きに自信がない、忙しい場合には、税理士に依頼することをおすすめします。
相続税申告手続きは、難解かつ複雑であり、素人がおこなうには難しい可能性があります。
10ヵ月という期間制限はあるものの、相続税申告には申告書の作成、財産の評価、添付書類の収集など、おこなわなければならないことが非常に多く、あっという間に期限を過ぎてしまうことは珍しくありません。
自分には難しいと感じる場合や、普段は仕事をしていて手続きに取りかかる暇がないという場合には、相続税申告を税理士に依頼することをおすすめします。
土地や自社株など評価が難しい財産がある場合には、税理士に相続税申告を依頼しましょう。
土地や株式(とくに非公開株式)は評価が非常に難しく、安く評価してしまうと過少となってしまって追徴課税の恐れがある一方、高く評価してしまうと本来払わなくてよい相続税を払うことになります。
これらの財産がある場合には、税理士に相続税申告を依頼することをおすすめします。
複数の相続人がいるほか、特例や控除を利用できる可能性がある場合には、税理士に相続税申告を依頼しましょう。
複数の相続人がいる場合で相続税申告の対象になる相続であるケースでは、相続人間で争いになってしまうと遺産分割ができないうえ、小規模宅地等の特例や配偶者控除などの制度も利用できません。
その場合、一度法定相続分で申告したうえで、遺産分割が終わってから更正の請求をおこなって払いすぎた相続税を取り戻すという手続きが必要になります。
また、遺産分割自体に問題がない場合でも、特例や控除の制度を知らずに申告してしまって、本来節税できなのにおこなわなかったという場合もありえます。
相続人が複数いるような場合で、特例や控除の制度が利用できそうな場合には、相続税申告は税理士に依頼するのが望ましいでしょう。
二次相続を控えている場合には、税理士に依頼するのがよいでしょう。
二次相続とは、最初の相続で相続人であった人が亡くなり、相続が発生することをいいます。
典型的な例として、父・母・子2人という家庭で、父が亡くなったあとに母の相続が二次相続にあたります。
父母ともに体調を悪くしており、父が亡くなったあとに母もすぐに亡くなってしまった場合、2つの相続手続きを処理しなければなりません。
二次相続の手続きは非常に複雑であるほか、一次相続の処理を誤ると二次相続の相続税が高額になってしまうといった不都合な結果となる場合があります。
そのため、二次相続が考えられる場合の相続税申告は税理士に依頼するのがよいでしょう。
遺産が高額であるような場合、具体的には1億円以上ある場合には、相続税申告は税理士に依頼するのがよいでしょう。
遺産が高額である場合、税務調査が入る可能性が高まるからです。
手続き上の不備によって損をするリスクを考えると、1億円以上遺産がある場合には相続税申告は税理士に依頼すべきでしょう。
相続税申告をおこなう際によくある質問としては次のものがあります。
法律上相続税申告をするにあたって、税理士に必ず依頼しなければならないということはありません。
そのため、相続税申告は自分でもできます。
ただし、税理士に依頼せずに自分で相続税の申告・納税をしたからといって、10ヵ月の期限を延期できる、申請書の記載内容について不明確でもよい、添付書類が全て集まらなくてもよいというわけではありません。
法律上は依頼者となる人が税理士費用を支払います。
そのため、基本的には相続人がそれぞれ等分で支払うのが原則です。
しかし、たとえば相続で代表的な地位にある人が全額を負担してしまっても問題はありません。
税理士からの請求は基本的には代表的な地位にある方におこなわれます。
税理士費用は、被相続人が負担していた債務ではないうえ、葬祭費用のように特別に差し引くことを認める規定はありません。
そのため、相続税における経費・債務・費用などの名目で控除することはできません。
ただし、相続不動産を売却するときに、支払った税理士費用の一部を取得費に計算できる制度があるので、不動産を売却するときには注意しましょう。
相続に関して相続人同士で揉めている場合、税理士にできることは限られます。
とくに相手の交渉を代理することはできません。
相続人同士で揉めているような場合には、弁護士に依頼をするようにしましょう。
最初の見積もりよりも報酬が大幅に高く請求されることがあります。
当初の見積もり時には判明していなかった相続財産があり、評価に手間取ったような場合や、相続人の調査をしたところ判明していなかった前婚の配偶者との間に子がいたような場合に、このようなトラブルになることがあるでしょう。
その場合は、見積もりよりも高くなった理由を、書類など明確にわかる形で提出を求めてください。
まだ申告が完了していない場合には税理士を解任することも検討可能です。
本記事では、相続税申告を税理士に依頼する場合の税理士費用についてを中心に解説しました。
相続税申告の税理士報酬は相続財産の額の0.5%~1%を基本報酬として、相続人が複数いる、算定が難しい不動産があるなどの特別な事情がある場合は追加で加算されます。
依頼を検討する場合は、ホームページに計算方法が記載されているか、事前に見積もりをもらうなどして、報酬が適切かを確認してみましょう。
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