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相続税における配偶者の税額軽減とは?要件・利用における注意について解説

伊藤亮太(FP)
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相続した財産が相続税の基礎控除額を超える場合には、相続税の申告・納税が必要です。

しかし、相続税には支払いが過度な負担にならないようにするための特別な措置があり、その中の一つに相続人となる配偶者の税額軽減の制度があります。

相続税における配偶者の税額軽減制度には大きな節税効果がありますが、安易に利用すると、かえって損をしてしまうこともあります。

そこで本記事では、相続税における配偶者の税額軽減について詳しく解説します。

相続する際に相続税が負担にならないようにするためにも、ぜひ詳しくチェックしてください。

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配偶者の税額軽減とは

配偶者の税額軽減とは、相続税について相続人である配偶者が利用できる税額軽減の制度のことです。

一般的には「配偶者控除」と呼ばれることもあります。

相続において、配偶者は常に相続人となり、相続財産の1/2を相続することになります。

被相続人の配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となるものの額が次の2つの多いほうの金額までであれば相続税がかからないとするのが、配偶者の税額軽減の制度です。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当

簡単にいうと、「相続した財産が1億6,000万円以内か、法定相続分に収まっている限りは、相続税がかからない」のです。

この制度の効果は大きく、ほとんどの相続で配偶者には相続税がかからないといえます。

基礎控除との違い

配偶者の税額軽減の制度に似たものとして、基礎控除があります。

それぞれ混同してしまうことがあるので、その違いを確認しておきましょう。

相続税における基礎控除とは、全ての相続において控除されるものです。

相続において相続財産が基礎控除額を超えない場合には、相続税の申告・納税が不要となります。

一方、配偶者の税額軽減の制度は相続税が基礎控除額を超えており、相続税の納税が必要となったケースにおいて、配偶者の相続税を軽減するものです。

それぞれ活用される段階が異なることを覚えておきましょう。

配偶者の税額軽減を適用するための要件

配偶者の税額軽減を適用するための要件は次の3つです。

  • 法律上の配偶者であること
  • 遺産分割がなされていること
  • 相続税の申告をおこなうこと

それぞれの要件について、以下で詳しく解説します。

配偶者であること

配偶者の税額軽減を適用するためには、配偶者であることが要件です。

配偶者とは、法律上の婚姻関係にある相手方のことをいい、夫から見ると妻、妻から見ると夫のことをいいます。

法律上の婚姻関係にあることが必要なので、内縁の相手方は含まれません。

内縁のパートナーは、遺贈を受ける、生命保険金を受け取るなどしてみなし相続財産を得る、特別縁故者として分配を受けるなどで相続財産を得るケースがありますが、配偶者の税額軽減の制度は利用できない点に注意しましょう。

遺産分割がなされていること

相続税の配偶者控除を利用するには、遺産分割がなされていることも必要です。

配偶者に共同相続人がいる場合には、その共同相続人と遺産分割をすることになります。

配偶者の税額軽減は1億6000万円、もしくは配偶者の法定相続分相当のいずれか多いほうが上限となるため、遺産分割がされている必要があるのです。

遺産分割が終わっていない場合でも、相続税の申告は期限である10ヵ月以内におこなう必要があります。

遺産分割が期限までに間に合わない場合、相続税申告の際には法定相続分で相続分を計算して申告・納税をおこない、その際に、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しましょう。

原則として3年以内に遺産分割を済ませて更正の請求をすることで、払いすぎた相続税を取り戻すことができます。

相続税の申告をおこなうこと

相続税の配偶者控除を利用するには、当然相続税申告をおこなうことも必要です。

相続財産の額が基礎控除額を下回ったときには相続税の申告は不要ですが、配偶者の税額軽減によって相続税の納付が不要となる場合でも、相続税の申告は必要なので注意しましょう。

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配偶者の税額軽減を利用する場合には二次相続についても検討すべき

配偶者の税額軽減の制度を利用すれば、非常に大きな節税が可能ですが、同時に二次相続についても検討すべきことを知っておいてください。

たとえば、夫が亡くなって妻と子と共同相続をする場合に、妻に全てを相続させて、配偶者の税額軽減を利用した結果、相続税がかからなかったとします。

この場合、夫の相続の時点では大きな相続税の節約になるのですが、次に妻が亡くなった場合には、夫と妻の財産を合算したものを子が相続することにすることになります。

妻の相続では、配偶者の税額軽減の制度は当然ながら利用できませんし、相続税は累進課税をとっており相続財産が多ければ多いほど課税される割合が高いです。

また、夫の相続のときと比べると法定相続人の数も減っています。

そのため、仮に一次相続で相続税が0円になったとしても、二次相続で払う相続税が高額になり、トータルでは多くの額の納税をしなければならなくなる可能性もあるのです。

たとえば、夫に1億円、妻に5,000万円の財産があり、子が一人いる場合をシミュレーションしてみましょう。

一次相続を法定相続分で相続した場合と、一次相続で妻に全部を相続させた場合では、次のような違いがでます。

一次相続を法定相続分で相続した場合

一次相続

・基礎控除額=4,200万円

・課税遺産総額=5,800万円

・相続税の総額=620万円((2400万円×15%)-50万円=310万円の二人分)

・法定相続分で按分=妻0円・子310万円

・妻の財産が1億円に

二次相続

・基礎控除額=3,600万円

・課税遺産総額=6,400万円

・相続税の額=1,220万円

一次相続・二次相続通しての相続税合計=1,530万円

一次相続で妻に全部を相続させた場合

一次相続

・妻に全部を相続させ相続税は0

・妻の財産が1億5,000万円に

二次相続

・基礎控除額=3,600万円

・課税遺産総額=1億1,400万円

・相続税の総額=2,860万円((1億1,400万円×40%)-1700万円)

一次相続・二次相続通しての相続税合計=2,860万円

このシミュレーションではでは、一次相続で妻に全ての財産を相続した場合、二次相続まで考慮すると1,360万円もの損失を出しているといえます。

相続する額によっては、二次相続を試算して相続税がトータルでかかるかをしっかり見極める必要があるでしょう。

二次相続までのコストを見積もる

上記の例では、一次相続で相続した配偶者が亡くなりそのまま相続財産が残っていることが前提です。

しかし、一次相続後に残された配偶者が亡くなるまでの間に、介護施設に入るなどで、相続したお金を使うことも考えられます。

配偶者がどれだけの遺産を相続するかの検討する場合は、相続税だけではなく、生存している配偶者の年齢・健康状態など二次相続までに必要なコストの見積もりをおこなうのがよいでしょう。

生前贈与の特例規定や生命保険の非課税枠などの制度をフル活用する

相続税を軽減する制度は、配偶者の税額軽減の制度だけではありません。

一次相続で配偶者の税額軽減を利用して配偶者に多くの相続をおこなったあと、生前贈与における贈与税の特例規定を利用する、生命保険を使って非課税枠を利用するなどで二次相続に備えることも可能です。

相続税対策をする場合には一つの制度のみによって相続税対策をするのではなく、利用できる制度をフル活用して検討するようにしましょう。

配偶者の住居の確保には配偶者居住権を利用することも検討

相続によって配偶者の住居を確保する場合には、配偶者居住権を利用することも検討しましょう。

夫婦の一方が亡くなった際、残された配偶者の生活について最も重要なことの一つが、住居の確保です。

住居を確保するために、もともと住んでいた住宅を配偶者に相続させる方法がありますが、二次相続を考えた場合には子に相続させたほうがよいケースもあります。

このような場合に、2020年4月1日に新設された配偶者居住権を利用すれば、不動産について子が相続をすることになっても、配偶者は引き続き住居を利用することができます。

さいごに

本記事では、相続税における配偶者の税額軽減について解説しました。

配偶者の相続税の負担を大きく削減するものである一方で、二次相続まで考えると安易に利用することでトータルでは損失となる可能性もあります。

配偶者控除を利用する際は、相続後に配偶者が生活で使わなければいけないお金を考えながら、二次相続まで考慮する必要があるでしょう。

そのため、配偶者の税額軽減の利用に悩んだ場合には専門家に依頼することをおすすめします。

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伊藤亮太FP事務所
伊藤亮太(FP)
資産運用・社会保障(特に年金)・保険を中心に提案を行っている。講演会や執筆物も多数。Webコンサルティングも行っており、幅広い提案が可能。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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