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共有財産の相続|手続きの難しさやトラブルのリスクを回避する方法

日暮里中央法律会計事務所
三上 貴規
監修記事
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相続財産の中に「共有名義の不動産」といった共有の財産が含まれている場合には、慎重な判断が必要になります。

その理由は、共有の財産には「売却や賃貸などがしづらくなる」「ほかの共有者との間でトラブルが生じる可能性がある」などのデメリットがあるからです。

そのため、できる限り共有状態を解消するのが望ましいでしょう。

本記事では、財産を共有することのデメリットや、共有の財産を相続したときの対処法などについて説明します。

相続財産に共有物が含まれている場合には、本記事を参考にしてください。

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この記事に記載の情報は2024年02月28日時点のものです

「共有財産を相続する」とは?

「共有財産」とは、1つの財産を複数人が共同で所有することをいいます。

物を共有している人は、その物に対して「持分(権)」という権利を有します。

たとえば、被相続人が不動産を単独で所有していた場合は、不動産全体が相続財産となります。

しかし、不動産が共有名義であった場合は、被相続人が有していた持分だけが相続財産となるのです。

共有の財産を相続する際の大まかな流れ

相続財産に共有物があったとしても、相続の基本的な流れは共有ではない財産の場合と同じです。

遺言書があり、それが有効と認められる場合は、遺言書の記載どおりに相続されます。

一方、遺言書がない場合などには、遺産分割協議が必要になります。

遺産分割協議をおこなうにあたり、まずは誰が相続人なのか、どのような相続財産があるのかを調べます。

そして、相続人と相続財産が確定したら、相続人全員で財産の分割方法などについて話し合いをします。

話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。

共有の財産を相続した場合の持分の変化

子どもが2人いる夫婦が、それぞれ2分の1ずつ不動産の持分を有していたとします。

このケースで、夫婦の片方が亡くなり、各相続人が法定相続分どおりに不動産を相続した場合、それぞれの不動産の持分は以下のようになります。

相続人が配偶者と子ども2人の場合の持分

相続人

法定相続分

相続後の不動産の持分

配偶者

2分の1(不動産の4分の1)

4分の3

子ども①

4分の1(不動産の8分の1)

8分の1

子ども②

4分の1(不動産の8分の1)

8分の1

このケースでは、法定相続分どおりに相続すると、複数の相続人で不動産を共有することとなります。

財産を共有することのデメリット

財産を共有することには、さまざまなデメリットがあります。

共有の財産は売却や賃貸などがしにくい

共有者がおこなう行為は、以下の3つに分けられます。

共有者ができる行為の種類と内容

行為の種類

内容

具体例

条件

保存行為

(民法第252条)

共有物の現状を維持する行為

✔共有物の修繕工事をする

✔不法占拠者に対する明渡請求をする

各共有者が単独で可能

管理行為

(民法第252条)

共有物の変更を伴わずに利用・改良する行為

✔不動産を第三者に貸す

✔賃貸借契約を解除する

各共有者の持分の価格に従い、その過半数の同意が必要

変更行為

(民法第251条)

共有物の性質・形状を変更したり、法律的に処分したりする行為

✔不動産を売却する

✔増改築をする

✔解体や建替えをする

共有者全員の同意が必要

このように、共有者が単独でおこなえるのは基本的には保存行為のみで、管理行為や変更行為をおこなう場合にはほかの共有者の同意が必要となり得ます。

その場合、ほかの共有者とのコミュニケーションが発生するので、労力や時間がかかる可能性があります。

共有者が多いほどコミュニケーションの負担は重くなるでしょう。

また、最終的にほかの共有者の同意が得られない場合もあるでしょう。

共有の財産に関するトラブルに巻き込まれる可能性がある

財産を共有することによって、以下のようなトラブルにつながる可能性があります。

【共有物に関するトラブル事例】

  • 共有者のひとりが単独で共有物を占有してしまう
  • 共有者のひとりが無断で共有物を第三者に貸してしまう など

共有者のひとりが単独で共有の財産を占有してしまう

共有者のひとりが、不動産などの共有物を単独で占有してしまうケースが考えられます。

たとえば、A、B、Cの3人で共有している建物を、Aが独占的に使用しているようなケースです。

このような場合、BやCは、Aに対して、当然には明渡しを求めることはできないと考えられています。

なぜなら、共有者のひとりであるAにも建物全体を使用収益する権限があるからです(民法第249条)。

そのため、BやCは、ただちにAを追い出すことはできず、Aの利用を認めない旨の協議を成立させるなどの対応が必要となります。

共有者のひとりが共有の財産を無断で第三者に貸してしまう

共有者の誰かが、不動産などの共有物を無断で貸し出してしまうケースも考えられます。

たとえば、A、B、Cの3人で共有している土地を、Aが無断で第三者であるDに貸してしまうケースです。

このような場合でも、BやCは、Dに対して、当然には明渡しを求めることはできないと考えられています

なぜなら、Dは共有者のひとりであるAの権限に基づいて土地を占有しているといえるからです。

BやCは、Dに土地の明渡しを求めるための対応をとらなければならず、手間や時間がかかってしまう可能性があります。

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遺産に共有物があるときの相続のポイント

被相続人が共有の財産を有していた場合、相続人はどのように対応すればよいのでしょうか。

ここでは、相続人に共有者がいる場合といない場合の2つのパターンに分けて対応方法を説明します。

相続人に共有者がいる場合

相続人の中に共有者がいる場合は、その人が共有の財産の持分を全て相続するのが望ましいでしょう。

たとえば、夫婦名義の不動産を相続する場合、残された配偶者が不動産の持分を全て相続すれば共有状態にならずにすみます。

これにより共有の財産をめぐるトラブルを防ぐことが可能です。

相続人に共有者がいない場合

相続人に共有者がいない場合は、すぐに共有状態を解消することはできません

今回の遺産分割では、できる限りひとりの相続人が共有物の持分を相続するのが無難でしょう。

共有物の持分を複数の相続人で相続してしまうと、共有者が増えてしまいます。

共有の財産を相続した相続人は、なるべく早く共有状態を解消するための対応をとることをおすすめします。

共有の財産を相続した場合の対処法

共有の財産を相続した場合はどうすればよいのでしょうか。

ここでは、共有物を相続した場合の対処法について解説します。

自分の持分をほかの共有者に売却する

自分の持分をほかの共有者に売却する方法が考えられます。

共有者に買い取ってもらえばよいので、買い手を探す手間がかかりません。

少ない負担で共有状態を解消できる点がメリットといえるでしょう。

自分の持分を第三者に売却する

自分の持分を共有者以外の第三者に売却する方法も考えられます。

共有物全部の売却には共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分を売却するだけなら単独でおこなえます。

「不動産を売却したいけど、共有者の同意が得られない」といった場合に利用するとよいでしょう。

ただし、買い手を探す手間がかかる点や、売却価格が低くなる可能性がある点には注意が必要です。

自分の持分を放棄する

自分の持分を放棄する方法も考えられます。

放棄された持分はほかの共有者が取得することになります。

持分の放棄は単独でおこなうことができますが、登記する際にはほかの共有者の協力が必要になります。

また、持分の放棄によってほかの共有者に贈与税が生じる可能性もあります。

このように、持分の放棄はほかの共有者にも影響があるため、事前にほかの共有者に相談しておくのが望ましいでしょう。

(持分の放棄及び共有者の死亡)

第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

まとめ|財産の共有状態を極力避けよう!

財産の共有状態が生じると、売却や運用についてほかの共有者と話し合う必要があるなど、労力や時間がかかる可能性があります。

相続の場面においても、なるべく共有状態が生じないようにするのがよいでしょう。

したがって、遺産分割については、特定の遺産を複数の相続人の共有とする「共有分割」は避けるのが望ましいといえます。

「共有分割」以外にも、遺産を現物によって分配する「現物分割」、特定の相続人に遺産を取得させる代わりに代償金を支払わせる「代償分割」、遺産を売却して得た代金を分配する「換価分割」といった分割方法があります。

できる限りこのような共有状態を避けられる分割方法を選択するとよいでしょう。

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この記事の監修者
日暮里中央法律会計事務所
三上 貴規 (第一東京弁護士会)
早稲田大学法学部を卒業後、早稲田大学大学院法務研究科へ上位入学。第一東京弁護士会 所属。現在は日暮里中央法律会計事務所の代表弁護士を務める。
(※本コラムにおける、法理論に関する部分のみを監修)
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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