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不動産の相続を共有名義にしても大丈夫?メリット・デメリットを解説
2018年12月27日

不動産の相続を共有名義にしても大丈夫?メリット・デメリットを解説

弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士
監修記事
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相続人が複数いて、主な相続財産が土地や住居などの不動産しかない場合、どのように遺産分割を行えばよいか迷われている方もいらっしゃるかもしれません。

 

例えば、両親が亡くなり、兄弟3人で土地と住宅を相続したとすると、不動産を物理的に2つ3つに分けることはできませんし、今後住み続けるのであれば売却するのはもったいないということで、実際に財産を分割するのが難しいこともあるでしょう。

 

相続人同士の関係が良い場合であれば、これらの不動産を共同相続して相続人間で「共有」、すなわち、数人が1つの不動産を共同して所有することが考えられます。

 

不動産を共有することで、ほかの共同所有者との権利関係を調整する必要が出てくることから、単独で不動産を所有するケースと比べ、法的に特殊な扱いがなされることになります。この特殊な扱いを受けることでメリットとなることもあれば、デメリットとなることもありますが、多くの場合、トラブルの原因となるケースが多いです

 

特に、不動産は生活の基盤となるものなので、相続人間でトラブルが起きてしまうと生活に悪影響を及ぼしかねません。そのため、不動産を共有することのリスクをあらかじめ理解しておくことが重要です。

 

この記事では、不動産を共有することのメリット・デメリットを検討した上で、どのようなトラブル事例があるのかをご紹介します。

 

共有のメリット

不動産を共有することのメリットには以下のようなものがあります。

 

節税効果

居住用のマイホームを売却したときは、いわゆるマイホーム特例を受けることができ、所定の条件を満たせば、譲渡所得税から最大3,000万円の控除を受けることができます

参考:国税庁|マイホームを売ったときの特例

 

平成28年度の税制改正によって、この特例が適用される範囲が広がり、相続(遺贈も含む)により取得した被相続人の家を売却した場合でも、所定の条件を満たせば、特例の適用が認められます。

 

そして、共有不動産を売却することで、各共有者がそれぞれ特例を利用することができ、より節税することができるというメリットがあります。

 

夫婦で住宅ローン控除を受けられる

不動産を夫婦共有名義とすることで、住宅ローン控除を2重に受けることができます

 

住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高に応じて所得税や住民税が控除される制度で、10年間、住宅ローンの年末残高1%が返金されます。例えば、年末残高が2,500万円であれば、25万円(=2,500万円×1/100)の返金がなされます。

 

そして、不動産の名義を夫婦の共有名義とすることで、この住宅ローン控除を2重に受けることができ、単独名義としたときよりも、大きな減税効果が期待できます。

 

共有のデメリット

他方、共有のデメリットは以下のものがあります。

 

相続人全員の同意が必要なため手続きが困難に

不動産を単独で所有している場合は、その不動産の利用(人に売る、貸す、修理するなど)は自分一人で自由に行えますが、不動産を共有したときは、各持分に応じて単独でできることと、共有者と一緒でなければ行えないことに分かれるので、注意が必要です。次の表をご覧下さい。

 

表:共有者の行為の種類(参照条文はすべて民法による)

種類

内容

決定方法

具体例

保存行為

共有不動産の現状維持を行う最小限の行為

各共有者が単独で行うことができる

(252条ただし書き)

水道管の修理、不法占有者に対する明け渡し請求など

管理行為

共有不動産を変更しない限度で、使用・収益を行う行為

共有者の持分価格の過半数の同意が必要

(252条本文)

不動産を第三者に貸す、不動産の賃貸借契約を解除するなど

変更行為

共有不動産を物理的に変更させる、あるいは法律的に処分する行為

共有者全員の同意が必要(251条)

不動産の売却、建物の大規模な改修・建替え、農地を宅地に変更させる行為など

 

この表を参考にすると、持分の過半数を持っている共有者の合意がなければ不動産を貸すことができませんし、共有者全員の同意がなければ不動産を売却することもできません。特に、変更行為を行うには共有者の全会一致でなければならず、誰か一人でも反対すれば行うことができません。

 

このように、相続人全員の同意が必要な手続きを行うのは、かなり大変なのがわかるでしょう。

 

「兄弟姉妹の仲が良く、話し合いでトラブルは起きないから大丈夫」と考えている方もいらっしゃるでしょうが、共有者のどなたかが先に亡くなったとすると、その共有者の持分を相続した人が話し合いに参加することになります。その相続人は、あなたとまったく面識のない方かもしれませんし、必ずしも協力関係となる保証はどこにもありません。

 

そのような人たちと、一つの答えを導き出すのが容易でないことは明らかでしょう。

 

持分が細分化されていく

共有状態のままにしておくと、持分が細分化され、権利関係が複雑化します

 

例えば、ある土地をA・B・Cの3人が共同相続し、それぞれ3分の1ずつの持分を有しているとします。土地の管理方法などはその3人の話し合いで決めていましたが、ある日Aが亡くなり、Aの相続人が4人いたとします。この4人の持分は、各々等しい割合で相続したとすると、12分の1(1/3×1/4)ずつとなります。

 

このような相続がBやCでも起こると、さらに土地は細分化され、土地の管理方法について話し合う際も大人数で行うことになり、権利関係は複雑化するといえるでしょう。

 

このように持分が細分化されると、前述した相続人全員の同意を要する手続きなどを進めるためには多くの時間を要することになり、一つの物事を決めるのにかなりの労力が必要となるケースも少なくありません。

 

登記をし直さないといけない

不動産は、当該不動産の所有者は誰かということを公に知らしめるために、登記がなされています。この登記の記載内容を変更するための手続きは、変更手続きの経験がない方にとってはなかなか大変で、自分で行おうとすると時間と手間がかかります。

 

不動産を共有状態にしてその旨を登記すると、不動産の共有持分の割合や共有者が変わるたびに、登記の変更手続きを行わなければなりません。すなわち、不動産を単独で所有しているときにはなかった手間が増えることになります。

 

トラブルが発生しやすい

以上のことから考えても、共有状態はトラブルを引き起こしやすいのが特徴です。共有者間の仲が悪化し、意見の対立がある状態だと、前述した保存行為以外は何もできなくなってしまいます。

 

そのため、できるだけ早く共有状態を解消しておくことが大切です。

 

共有不動産での相続トラブル事例

相続トラブル

ここでは、不動産共有のトラブル事例についてご紹介します。

 

トラブルが起こる背景

共有不動産のトラブルが生じる原因は、一つの不動産を複数人で使用・処分しなければならず、不公平感や、使用・処分方法をめぐる意見の対立が起こりやすい点にあります。

 

このことを念頭に置いて、具体的なトラブル事例を見ていきましょう。

 

例1:共有者の一人が単独で使用しているケース

民法では、『各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる』ことを認めており(249条)、たとえわずかな持分しか有していなくとも、その持分に基づいて共有物を使用することができます。

 

例えば、住宅の3分の1の持分権を有している場合、住宅の3分の1のスペースしか使用してはならないというわけではなく、住宅全体を使用することができます。

 

常識的な感覚からすれば当然のことのようにも思えますが、このような規定が置かれていることで次のようなトラブルが生じます。すなわち、共有者の一人が不動産をもっぱら単独で使用しているような場合です。

 

例えば、住宅をA・B・Cが共有し、各々3分の1ずつ持分を有しているケースで、Aが勝手に当該住宅の全部を使用しているため、BとCが使用できない状態になっているとします。このような場合、BとCはAに対して「出て行け!」と口では言えますが、法律を用いて強制的に住宅の明け渡しを求めることは当然にはできません。つまり、持分の多い者が持分の少ない者に対して、当然に不動産の明け渡し請求を求めることはできないのです。

 

裁判年月日 昭和41年 5月19日 裁判所名 最高裁第一小法廷 裁判区分 判決

事件番号 昭38(オ)1021号

事件名 土地所有権確認等請求事件

裁判結果 一部破棄自判、一部上告棄却

参考:文献番号 1966WLJPCA05190001

 

Aに対して裁判上で明け渡しを求める場合は、明け渡しを求める理由を示さなければならず、その理由が認められなければ上記請求を行うことはできません。なお、このような場合でも、使用分の金銭賠償を求めることはできます。

 

例2:不動産を第三者に貸すケース

不動産を第三者に貸すことは、前述した管理行為に当たるため、共有者の持分価格の過半数の同意によって決められます。このため、例えば、A・B・Cが建物を共有し、持分を各々3分の1ずつ有している場合、Aが第三者に貸すことを反対していても、BとCが賛成すれば、第三者に対する賃貸は認められることになります。

 

このようにAの意向が無視されることによって、トラブルに発展するケースも少なくありません。

 

また、賃貸借でいえば、賃料や賃貸期間、リフォーム代、修繕費、収益からの利益配分など決めることが多く、これらの事項を話し合いで一つひとつ決めていかなければなりません。当然、意見の対立が起こりやすく、話し合いがまとまらないことも多々あります。

 

共有不動産を利用して収益を図ろうとすることは、単独所有の不動産を利用する場合と比べて、何倍も手間と時間がかかることがわかります。

 

まとめ

以上のように、不動産を共有状態のまま放置しておくのはリスクがあります。

 

相続財産を分割する方法は、なにも共有だけではありません。単純に財産を分割する現物分割の方法以外にも、代償分割(共同相続人のうちの1人が不動産を相続する代わりに、ほかの共同相続人に一定額の金銭を支払う分割方法)や、換価分割(不動産などを売り払い金銭に換えて分割する方法)などの方法があります。

 

そのため、相続が開始したらできるだけ早い段階で遺産分割協議を行い、上記分割方法を検討して、共有状態を解消することをおすすめいたします。

 

遺産分割方法についてお悩みの際は、弁護士などの専門家に尋ねると、法律的な観点からアドバイスをもらうことができます。また、遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停手続きを利用する方法もあります。調停手続きは家事審判官と調停委員の仲介の下で話し合いが行われるので、相続人全員が納得できる解決方法を見つけることもできるでしょう。

 

節税や、遺産分割がうまくいかないことを理由として、一時的に不動産を共有するのもよいですが、長期にわたって共有状態を続けていくのは、この記事で述べてきたように好ましくありません。いずれは分割することを念頭に置いて、話し合いをしましょう。

 

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不動産を相続した際の分割方法と登記手続きを解説

この記事の監修者
弁護士法人プラム綜合法律事務所
梅澤康二 弁護士 (第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を設立。企業法務から一般民事、刑事事件まで総合的なリーガルサービスを提供している。

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相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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