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相続放棄しても生命保険は受け取れる!死亡保険金を請求する流れや相続税のポイント

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相続放棄をすると生命保険は受け取れるのか、疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

相続問題はトラブルに発展するケースも少なくないため、悩みを抱えている方にとっては不安が付きまとうことでしょう。

そこで本記事では、相続放棄後に生命保険を受け取る流れや相続税について解説します。

そもそも、相続放棄とは相続発生の際に相続財産となる資産や負債などの権利や義務の一切を引き継がないことです。

相続放棄をすることで相続予定だったプラスの財産とマイナスの財産全てを放棄するため、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄をする旨の申述をすると、初めから相続人とならなかったという扱いになります(民法915条1項、938条、939条)。

また、相続放棄をするにあたって気になる点として、果たして生命保険は受け取れるのかということも挙げられるでしょう。

その点について、生命保険を受け取るには一定の条件が設けられているため、手続きや税金などの注意点を把握しておかなければなりません。

相続に関する手続きをスムーズに進めるためにも、ぜひ参考にしてください。

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相続放棄をしても生命保険は受け取れる!

結論からいうと、相続放棄をしても、被相続人が自己を契約者及びと被保険者とし、相続放棄した者を保険金受取人と指定した場合、生命保険は保険金受取人の固有財産となるため受け取ることができます

相続のルールは民法によって定められており、相続する財産は亡くなった方の財産に属した一切の権利と義務と定められていることに対し、生命保険は契約に基づき受取人が保険会社から受け取るお金であり受取人固有の財産です。

相続に関するルールを定めた民法は、相続財産を「被相続人の財産に属した権利義務」と定義しています(民法896条)。

これに対し、生命保険は契約に基づき受取人が保険会社から受け取れる受取人固有の財産であり、相続財産には該当しません。

つまり、生命保険は相続財産ではないため相続放棄には影響ありません。

一 養老保険契約において被保険者死亡の場合の保険金受取人が単に「被保険者死亡の場合はその相続人」と指定されたときは、特段の事情のないかぎり、右契約は、被保険者死亡の時における相続人たるべき者を受取人として特に指定したいわゆる「他人のための保険契約」と解するのが相当である。

二 前項の場合には、当該保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に、右相続人たるべき者の固有財産となり、被保険者の遺産より離脱しているものと解すべきである。

引用元:裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

相続放棄をした人が生命保険を受け取れないケース

実は、生命保険であれば全て受け取れるというわけではなく、生命保険の契約内容によっては相続放棄をした人が生命保険を受け取れない場合があるため、トラブルに発展しないよう把握してきましょう。

ここからは、相続放棄をした人が生命保険を受け取れないケースを紹介します。

1.被相続人が受取人になっている場合

そもそも、契約上で自身が受取人になっていなければ、保険金は受け取れません

なお、契約上の保険金受取人は保険証券で確認することができます。

そして、医療保険の入院給付金などの受取人が亡くなった方になっているものや、亡くなった方が契約者のみに該当する生命保険に加入している場合の解約返戻金は、本来であれば相続財産として扱われるため相続放棄をすると受け取れません。

亡くなった本人が受取人に認定されることが多い生命保険金には、入院給付金・解約返戻金・満期保険金が挙げられるため把握しておきましょう。

2.死亡保険金請求権の時効が過ぎている場合

ほかにも、死亡保険金請求権の時効が過ぎている場合も、生命保険は受け取れないため注意してください。

そのため、保険会社の保険金支払い義務は3年と定められており、3年を経過した時点で時効になり消滅するとされています(保険法第95条1項)。

なお、保険金請求権の消滅時効の起算点は、保険法に規定が設けられていません。

そのため、民法の一般原則により判断することになりますが、保険商品や保険の種類によって異なるため注意してください。

また、事故が発生した場合は保険会社への通知と同様、保険金請求に関しても失念しないよう速やかにおこないましょう。

相続放棄をした人が死亡保険金を受け取る際の大まかな流れ

自分に近しい人物が亡くなり死亡保険を受け取る場合、さまざまな書類が必要です。

スムーズに手続きを済ませるためには、受取人が速やかに行動しなければなりません。

では、相続放棄をした場合に死亡保険はどのように受け取るのでしょうか。

ここからは、相続放棄をした人が死亡保険金を受け取る際の大まかな流れを解説します。

1.保険証券の内容を確認する

まず、保険証券の内容を確認しましょう。

保険証券とは、保険契約の成立後に保険会社から契約者に対し交付される証書のことです。

保険証書は加入した保険内容を証明するものであり、保険の種類・証書番号・契約者・被保険者・受取人などが記載されています。

保険契約成立後、1週間ほどで登録住所に届きます。

通常、保険証券は紙面での交付が一般的ですが、保険会社によっては電子交付によりインターネット上で保険内容を確認できる場合があります。

そして、手元にある保険証券で死亡保険金の受取人を確認してください。

この段階において手続きをスムーズに進めるためには、契約者が保険証券の内容を受取人に伝える、かつ保管場所を事前に共有しておくことが大切です。

万が一に備えて、死亡保険金の受け取りについて契約内容を十分に把握しておきましょう。

2.生命保険会社に連絡をする

次に、生命保険会社へ連絡をします。

保険契約者もしくは保険金受取人が生命保険会社の担当者や営業所、サービスセンターに直接問い合わせます。

なお、伝えるべき主な連絡事項は次のとおりです。

  • 保険証券番号
  • 死亡した方の名前
  • 死亡した日
  • 死亡原因
  • 保険金受取人の名前
  • 保険金受取人の連絡先
  • 死亡前の入院や手術の有無

スムーズに質問に答えられるよう、手元に保険証券を用意しておきましょう。

3.請求書などの必要書類を準備する

生命保険会社に連絡をすると必要書類について案内を受けるため、指示に従い書類を準備しましょう。

連絡を受けた保険会社から死亡保険金受取人宛てに、死亡保険金請求書などの必要書類や手続きの案内などが届きます。

それらの書類を確認して必要事項を記入し、必要に応じて役所や病院などから必要書類を取り寄せてください。

なお、死亡保険金を請求する際の必要書類は次のとおりです。

死亡保険金を請求する際の必要書類
  • 請求書、保険証券
  • 被保険者の住民票
  • 受取人の戸籍謄本、印鑑証明
  • 医師の死亡診断書または死亡検案書

4.保険会社に必要書類を提出する

必要書類が全て用意できたら保険会社に提出し、保険証券に記載されている保険金受取人が請求手続きをおこないます。

保険会社に返送後、加入していた保険の補償内容と照らし合わせ、死亡保険の支払い可否を審査します。

5.保険会社から死亡保険金が支払われる

保険会社により支払いが決定すると、速やかに死亡保険金が支払われます。

なお、保険会社は約款により保険金の支払い期限が定められており、規定はそれぞれの保険会社によって異なるため契約している保険会社に確認してください。

仮に支払い期限経過後に死亡保険金が支払われたとすると、保険会社は遅延利息を支払います。

しかし、正当な理由なく受取人が確認を妨げたり、応じなかったりした場合は遅延利息は支払われません。

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相続放棄後に死亡保険金を受領した際の相続税の計算ポイント

相続放棄をしてから死亡保険を受領した際は、相続税の課税対象になります。

ここからは、相続税の計算ポイントを解説します。

1.みなし相続財産とされ、相続税の課税対象となる

例えば、保険契約者や被保険者が夫で死亡保険金の受取人が妻の場合、死亡保険金は死亡した夫の財産ではなく妻の固有財産になります。

そのため、妻は相続放棄をしても死亡保険金を受け取れますが、税制上みなし相続財産として相続税の課税対象になるのです。

ちなみに、みなし相続財産とは相続財産ではないにもかかわらず相続税が課税される財産のことです(民法903条)。

具体的には死亡保険金や死亡退職金があり、これらの財産は被相続人が死亡したことを理由に支払われるため、実質的に遺贈ないしは死因贈与に準ずる財産移転として相続したと同じと考えられます。

相続放棄をして相続人ではなくなった場合でも、受け取った生命保険金には相続税がかかるため注意してください。

2.相続放棄をすると死亡保険金の非課税枠は使えない

受け取った生命保険は一定額まで非課税となるため、相続税がかかりません。

しかし、相続放棄をした場合はその方が相続人とみなされないため、死亡保険金の非課税枠が使えません

なお、死亡保険の大きな目的は残された家族の生活保障であるため、被相続人が保険金を受け取る場合に限り【500万円×法定相続人数】の額が非課税となります。

また、相続放棄をしても非課税額の計算上、法定相続人の数に数えられますが非課税は受けられない点も理解しておきましょう。

3.相続放棄をしても基礎控除や配偶者控除などは使える

相続放棄をしても、基礎控除や配偶者控除などは使えると認識しておきましょう。

相続税には基礎控除と配偶者控除という非課税枠が設けられているため、相続放棄をして生命保険の非課税枠が対象外になったとしても、保険金の全額がそのまま課税対象の扱いを受けるわけではありません

なお、相続税の基礎控除額は【3,000万+600万×相続人】です。

そのため、保険金を含めた相続財産が3,600万円以下の場合は保険金を受け取っても税金を支払う必要がありません。

また、相続税の配偶者の税額軽減は配偶者が相続した財産のうち1億6,000万円までは法定相続分に相続税がかかりません。

そして、相続放棄をした配偶者が生命保険金を受け取った場合でも配偶者の税額軽減が適用できます。

基礎控除や配偶者控除を上回る場合は、相続税が発生するため覚えておきましょう。

相続放棄をして生命保険金を受け取った場合、非課税枠が適用されず基礎控除額や配偶者控除のみを考慮したうえで相続税を計算します。

相続放棄と生命保険についてよくある質問

最後に、相続放棄と生命保険についてよくある質問を紹介します。

多くの方が悩まれるポイントであるため、事前に解消しておきましょう。

Q.生命保険の受取人の指定がなかった場合はどうなりますか?

仮に生命保険の受取人の指定がなかった場合、保険会社の定める約款により取り扱いが決められます

一般的には、全ての相続人は法定相続分ではなく均等に保険金を受け取るとされていることが多いと言われています。

Q.生命保険以外に相続放棄をしても受け取れる財産はありますか?

相続放棄をしても、生命保険以外にも死亡退職金・遺族年金など社会保険からの給付・信託財産や信託受益権といった受け取れる財産があります。

死亡退職金は被相続人の勤務先から支給されるものであり、通常勤務先の退職金規定によって受取人が指定されます。

なお、死亡退職金は生命保険と同様に受取人の固有財産であると考えられているため、受取人に指定されていれば相続放棄をしていた場合でも死亡退職金の受け取りが可能です。

仮に勤務先の退職金規定に死亡退職金の受取人に関する定めがない場合、死亡退職金は相続財産となるため相続放棄をすると受け取れません。

そして、遺族年金など社会保険からの給付は遺族の生活保障や葬祭費の扶助を目的とする遺族固有のものです。

そのため、相続放棄をしたかどうかは関係ないことから相続放棄をした場合でも受け取れます。

信託財産や信託受益権は個別の信託契約により取り扱われるため、信託契約で取り決めをしていない限り相続の対象から外れます。

もし契約上の受益者が相続放棄をしても、信託財産や信託による利益を受けられます。

Q.受取人が被相続人の死亡保険金を受け取った場合はどうすればよいですか?

受取人が被相続人に指定されている死亡保険金は、被相続人の財産と評価されます。

そのため、相続人がこの死亡保険金を受け取ってしまうと、相続財産を取得したことになり相続放棄は認められなくなります(民法921条1号)。

また、承認された相続放棄が無効になってしまう可能性がある点にも注意してください。

なお、受け取った財産を保管しているだけであれば相続を承認したことにはならないため、すでに相続財産を受け取っているが相続放棄を考えている場合は受け取った財産は使わないようにしましょう(民法921条1号但書、3号、940条1項)。

さいごに|相続放棄に関する疑問・悩みがあれば弁護士に相談を!

本記事では、相続放棄をしたあと、生命保険を受け取る流れや相続税について解説しました。

生命保険の受取人が亡くなった本人に指定されていなければ、生命保険は相続人の固有財産と判断されるため相続放棄をしても保険金を受け取れます

なお、相続放棄をすると生命保険の非課税枠が利用できなくなりますが、被保険者に借金がある場合などは相続放棄をしたほうがお得になる場合が少なくありません。

そのため、そのような状況であれば迷わずに相続を拒否し、生命保険のみ受け取ることをおすすめします。

ただし、相続問題はトラブルになりやすいうえ、しっかりと財産調査をおこなわなければかえって損をする可能性がゼロではありません。

そのような観点からトラブルを防止するためにも、相続放棄を検討している場合や疑問、悩みがあれば早めに弁護士に相談してください。

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この記事の監修者
江戸川葛西相続法律事務所
菊地 正志 (第一東京弁護士会)
当職は、税理士、公認会計士準会員の資格をもつ、会計に強い弁護士です。相続で株式や不動産の扱いにお困りの方や、遺産分割協議でもめている方は、当職へご相談ください。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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