遺族年金とは、国民年金や厚生年金などの加入者が亡くなった際、遺族に対して支給される年金です。
遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類あり、それぞれ受給条件や受給額が異なります。
本記事では、遺族年金の受給条件や受給額、遺族年金を受け取る際の手続きや、そのほかに利用できる年金制度などを解説します。
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遺族年金については、亡くなった人が生前加入していた年金の種類によって、以下のように受給内容が異なります。
なお、受給条件を満たしていれば、遺族基礎年金と遺族厚生年金を両方受給することもできます。
ここでは、遺族基礎年金・遺族厚生年金・(旧)遺族共済年金の受給条件や受給額などを解説します。
まずは、遺族基礎年金の受給条件や計算方法について解説します。
遺族基礎年金の場合、亡くなった方や遺族が以下のような条件を満たしている必要があります。
亡くなった方については、以下のいずれかを満たしていなければいけません。
①や②に該当する場合Mは、以下いずれかの条件も満たしている必要があります。
③や④に該当する場合は、以下の条件も満たしている必要があります。
遺族基礎年金を受給できるのは、亡くなった人によって生計が維持されていた「子どものいる配偶者」や「子ども」です。
具体的には、以下の両方を満たしている必要があります。
なお、子どもは以下いずれかの条件もを満たしていなければいけません。
遺族基礎年金の場合、「基本額」と「加算額」を合計したものが受給額となります。
以下のように基本額は受給者ごとに定められており、加算額は子どもの人数によって変動します。
遺族基礎年金の受給者 |
遺族基礎年金の基本額 |
---|---|
子どものいる配偶者(67歳以下) |
79万5,000円 |
子どものいる配偶者(68歳以上) |
79万2,600円 |
子ども |
79万5,000円 |
遺族基礎年金の受給者 |
遺族基礎年金の加算額 |
---|---|
子どものいる配偶者(67歳以下) |
子ども1人あたり22万8,700円(2人目まで) 子ども1人あたり7万6,200円(3人目以降) |
子どものいる配偶者(68歳以上) |
|
子ども |
0円(子どもが1人の場合) 22万8,700円(子どもが2人の場合) 子ども1人あたり7万6,200円(3人目以降) |
2014年3月まで、遺族基礎年金の受給者は「子どものいる妻」や「子ども」に限られており、夫は対象外でした。
しかし、現在では「子どものいる妻」から「子どものいる配偶者」に変更されており、父子家庭でも受給できるようになりました。
次に、遺族厚生年金の受給条件や計算方法について解説します。
遺族厚生年金の場合、亡くなった方や遺族が以下のような受給条件を満たしている必要があります。
亡くなった方については、以下のいずれかを満たしていなければいけません。
①や②に該当する場合は、以下いずれかの条件も満たしている必要があります。
④や⑤に該当する場合は、以下の条件も満たしている必要があります。
遺族厚生年金を受給できるのは、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族です。
以下のようにそれぞれ優先順位があり、受給対象になるのは最も優先順位が高いグループのみです。
優先順位 |
遺族厚生年金の受給対象者 |
---|---|
第一順位 |
妻、夫(故人の死亡当時に55歳以上の人が対象)、子ども |
第二順位 |
父母(故人の死亡当時に55歳以上の人が対象) |
第三順位 |
孫 |
第四順位 |
祖父母(故人の死亡当時に55歳以上の人が対象) |
遺族基礎年金の場合と同じように、遺族は前年の収入や所得などの条件を満たしていなければいけません。
子どもや孫については、年齢条件などを満たしている必要があります。
遺族厚生年金の場合、子どものいない配偶者でも受給でき、遺族基礎年金よりも受給範囲が広いという点が特徴的です。
ただし、受給者によっては以下のような制限があります。
遺族厚生年金の受給者 |
受給に関する制限 |
---|---|
妻 |
30歳未満で子どもがいない場合、5年間しか受給できない |
夫 |
受給開始は60歳から ※遺族基礎年金の受給条件も満たしている場合は60歳未満でも受給開始する |
父母・祖父母 |
受給開始は60歳から |
遺族厚生年金は計算方法が複雑で、「(①の金額+②の金額)×3/4」が受給額となります。
遺族共済年金とは、退職共済年金などを受けている人や組合員が死亡した場合に支払われる年金のことで、現在は遺族厚生年金に一元化されています。
ただし、「一元化される前に受給権が発生していた場合」や、「一元化される前から受給している場合」などは共済組合にて給付が継続しており、完全に消滅したわけではありません。
ここでは、(旧)遺族共済年金の受給条件や計算方法などを解説します。
(旧)遺族共済年金の受給条件は、基本的には遺族厚生年金と同様の内容になっています。
亡くなった方については、以下のいずれかを満たしていなければいけません。
(旧)遺族共済年金を受給できるのは、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族です。
遺族厚生年金と同じように、以下のような優先順位が定められています。
なお、遺族厚生年金と異なる点として、夫・父母・祖父母には年齢要件がありません。
(旧)遺族共済年金の場合、「厚生年金相当額+賦課加算額+配偶者加算額」が受給額となります。
ここでは、遺族基礎年金・遺族厚生年金・(旧)遺族共済年金の受給額の目安を解説します。
ただし、職業・所得・保険料払込期間などによっても金額は変動するため、あくまでもひとつの目安として参考にしてください。
遺族基礎年金の場合、各受給者の受給額は以下のとおりです。
子どもの人数 |
基本額 |
加算額 |
合計 |
---|---|---|---|
1人 |
79万5,000円 |
22万8,700円 |
102万3,700円 |
2人 |
79万5,000円 |
22万8,700円×2 |
125万2,400円 |
3人 |
79万5,000円 |
22万8,700円×2 |
132万8,600円 |
4人 |
79万5,000円 |
22万8,700円×2 |
140万4,800円 |
5人 |
79万5,000円 |
22万8,700円×2 |
148万1,000円 |
子どもの人数 |
基本額 |
加算額 |
合計 |
---|---|---|---|
1人 |
79万2,600円 |
22万8,700円 |
102万1,300円 |
2人 |
79万2,600円 |
22万8,700円×2 |
125万円 |
3人 |
79万2,600円 |
22万8,700円×2 |
132万6,200円 |
4人 |
79万2,600円 |
22万8,700円×2 |
140万2,400円 |
5人 |
79万2,600円 |
22万8,700円×2 |
147万8,600円 |
子どもの人数 |
基本額 |
加算額 |
合計 |
---|---|---|---|
1人 |
79万5,000円 |
0円 |
79万5,000円 |
2人 |
79万5,000円 |
22万8,700円 |
102万3,700円 |
3人 |
79万5,000円 |
22万8,700円 |
109万9,900円 |
4人 |
79万5,000円 |
22万8,700円 |
117万6,100円 |
5人 |
79万5,000円 |
22万8,700円 |
125万2,300円 |
遺族厚生年金の場合、受給額の目安は以下のとおりです。
(旧)遺族共済年金の場合、受給額の目安は以下のとおりです。
上記のほかに利用できる制度としては、寡婦年金・死亡一時金・労災保険の遺族(補償)年金などがあります。
ここでは、それぞれの制度内容について解説します。
なお、寡婦年金と死亡一時金は両方受給することはできず、両方の受給条件を満たしている場合はどちらかを選択する必要があります。
寡婦年金とは、子どものいない妻が受給できる年金のことです。
寡婦年金の受給条件や受給額は以下のとおりです。
寡婦年金の場合、以下の受給条件を全て満たしている必要があります。
なお、第1号被保険者とは「国民年金の保険料を自分で納付する人」のことを指します。
たとえば、自営業者・農業従事者・漁業従事者などが該当します。
寡婦年金は、「夫が受け取るはずだった老齢基礎年金×3/4」が受給額となります。
老齢基礎年金については「老齢年金|日本年金機構」を確認してください。
なお、寡婦年金の受給期間は60歳から65歳までの5年間です。
以下の記事では、寡婦年金の受給条件・受給期間・死亡一時金との違いなどについて詳しく解説しています。
死亡一時金とは、家族を亡くした遺族が一度受給できるお金のことです。
死亡一時金の受給条件や受給額は以下のとおりです。
死亡一時金の場合、以下の受給条件を全て満たしている必要があります。
寡婦年金とは異なり、死亡一時金は妻以外でも受給できます。
ただし、受給者には以下のような優先順位が定められており、最も順位の高い人が受給することになります。
死亡一時金は「12万円から32万円」が受給額となり、保険料の納付月数によって金額が決定されます。
遺族(補償)年金とは、業務中や通勤中の事故などで家族を亡くした遺族が受給できる年金のことです。
遺族(補償)年金の受給条件や受給額は以下のとおりです。
遺族(補償)年金の場合、「亡くなった方によって生計を維持されていたこと」が受給条件となります。
なお、亡くなった方との関係・年齢・障害の有無などによって優先順位が定められており、以下のうち最も順位の高い人が受給することになります。
優先順位 |
遺族(補償)年金の受給対象者 |
---|---|
第一順位 |
妻、60歳以上の夫、障害等級5級以上の障害がある夫 |
第二順位 |
18歳になる年度の3月31日を過ぎていない子ども、障害等級5級以上の障害がある子ども |
第三順位 |
60歳以上の父母、障害等級5級以上の障害がある父母 |
第四順位 |
18歳になる年度の3月31日を過ぎていない孫、障害等級5級以上の障害がある孫 |
第五順位 |
60歳以上の祖父母、障害等級5級以上の障害がある祖父母 |
第六順位 |
60歳以上の兄弟姉妹、18歳になる年度の3月31日を過ぎていない兄弟姉妹、障害等級5級以上の障害がある兄弟姉妹 |
第七順位 |
55歳以上60歳未満の夫 |
第八順位 |
55歳以上60歳未満の父母 |
第九順位 |
55歳以上60歳未満の祖父母 |
第十順位 |
55歳以上60歳未満の兄弟姉妹 |
遺族(補償)年金は、以下のように遺族の人数によって金額が決定されます。
給付基礎日額については、「事故発生日または病院での診断確定日の直前3ヵ月間の賃金額÷3ヵ月の暦日」で計算します。
遺族の人数 |
遺族(補償)年金の受給額 |
---|---|
1人 |
・給付基礎日額の153日分 ・給付基礎日額の175日分(55歳以上の妻、障害等級5級以上の障害がある妻のみ) |
2人 |
給付基礎日額の201日分 |
3人 |
給付基礎日額の223日分 |
4人以上 |
給付基礎日額の245日分 |
ここでは、遺族年金の請求方法について解説します。
まずは市区町村役場に行き、死亡届を提出してください。
以下のように、ケースによって対応内容が異なります。
亡くなった方が現役の加入者の場合は、会社などを通じて「被保険者資格喪失届」を提出します。
届出書の様式や記載例は「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き|日本年金機構」で印刷できます。
亡くなった人が年金受給者の場合は、年金事務所に「年金受給権者死亡届」を提出します。
届出書の様式は「年金を受けている方が亡くなったとき|日本年金機構」からダウンロードできます。
遺族年金の請求先は以下のとおりです。
第3号被保険者の該当条件などについてはは「国民年金の第3号被保険者制度のご説明|日本年金機構」を確認してください。
遺族年金を請求する際に必要な書類は以下のとおりです。
なお、場合によっては上記以外の書類を求められることもあります。
詳しくは「遺族基礎年金を受けられるとき|日本年金機構」や「遺族厚生年金を受けられるとき|日本年金機構」を確認してください。
ここでは、遺族年金に関するよくある質問について解説します。
遺族年金の受給中に再婚すると、受給権は消滅して打ち切られます。
たとえ婚姻届を提出していなくても、生活実態などを踏まえて内縁関係にあると認められる場合は、遺族年金が打ち切られます。
遺族年金の受給者が再婚した場合、年金事務所または年金相談センターにて「遺族年金失権届」を提出しなければいけません。
提出期限は、遺族基礎年金の受給者は再婚後14日以内、遺族厚生年金の受給者は再婚後10日以内です。
受給者が65歳以上の場合は一緒に受給できます。
一方、65歳未満の場合はどちらかしか受給できません。
遺族年金は非課税所得にあたるため、所得税や住民税などの課税対象にはなりません。
以下の条件を満たしていれば、遺族年金の受給者でも扶養対象になります。
家族が亡くなった際は、年金の加入状況に応じて遺族基礎年金や遺族厚生年金を受給できます。
受給条件を満たしていれば両方受給することもでき、受給額は年齢や子どもの人数などによって大きく異なります。
遺族年金を請求する際は、年金手帳や戸籍謄本などのさまざまな書類を準備しなければならないため、漏れや不備がないように注意しましょう。
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