登録免許税は不動産などの資産の取得や譲渡を登録するときに課税されるもので、登録免許税法によって規定されています。
登録免許税法は不動産の登記だけではなく、弁護士や弁理士の登録、特許権や実用新案権の登録、船舶の登記、事業免許など幅広く登録に関係する税金についてまとめた法律です。
今回は登録免許税の中でも相続発生時に知っておいた方がいい不動産に関わる登録免許税をご説明いたします。
登録免許税について、具体的にどんなときに、どんな課税標準や税率を基に算出され、どのような軽減措置があるのかを解説して行きますので、是非参考にしてみてください。
*本記事の専門家による監修日は2023年6月28日です。
不動産を新築したときは必ず表題登記をし、そのあと所有権保存登記をします。
また売買や相続で不動産の所有権が移ることになれば所有権移転登記をすることになり、住宅ローンを組めば抵当権設定登記、住宅ローンが完済すれば抵当権抹消登記をしなければなりません。
最後には建物滅失登記をおこなうことになります。
不動産と関わる中で、不動産登記は無視することはできませんし、そして登記には登録免許税が課せられるケースも多いのです。
登録免許税の算出方法は下記の通りです。
登録免許税額=課税標準額×税率
この式を各登記に当てはめていくことになります。
課税標準額と税率を掛け算したものといっても、課税標準となるものや税率は何の登記かによって異なります。
新築の建物の場合、「表題登記」という登記をする必要があります。
不動産の所有権を得て1ヶ月以内に登記しなくていけませんが、原則、表題登記に登録免許税は課税されません。
ですが、1ヶ月の期限を過ぎてしまうと10万円以下の過料に処される可能性があります。
まず「表題」とは、その建物がどこにあり、どんな構造で、どのくらいの広さなのかなどという建物の物理的な情報を指します。
つまり、表題登記とは地番や建物家屋番号、床面積、構造などを登録するのです。
表題登記をおこなうことで登記記録がつくられ、所有権保存登記ができるようになります。
所有権保存登記は、所有権登記のなされていない不動産におこなうもので、誰の持ち物かを示すものです。
所有権保存登記をするかどうかは任意ですが、所有権保存登記をしていないと相続や売買の登記、抵当権の設定登記といった権利を主張するための登記ができません。
引用元:法務局|所有権保存登記申請書
登録免許税額の算出方法は前述のとおり、登録免許税額=課税標準額×税率という式です。
こちらの式に各項目の課税標準額や税率を当てはめることになります。所有権保存登記の場合は下記のとおり。
所有権保存登記の登録免許税額=固定資産税評価額または法務局の認定価格×0.004
通常、新築の場合は固定資産税評価額が決定されていないので、地方法務局が出している新築建物課税標準価格認定基準表を使用します。
課税標準額は1,000円未満の端数は切り捨て、登録免許税額は計算後に100円未満に端数が出た場合は切り捨てます。
ある不動産の法務局認定価格が20,001,234円のとき、所有権保存登記の登録免許税額はいくらか。
まず課税標準額が20,001,234円で1,000円未満に端数があるので切り捨てをするので
課税標準額=20,001,000円
所有権保存登記の登録免許税額=法務局の認定価格×0.4%だから
所有権保存登記の登録免許税額は80,000円です。
軽減税率を受けた場合の税額はこちら
建物の売買や相続、遺贈、贈与などにより、所有権が登記名義人から誰かに移動した場合の名義変更を所有権移転登記といいます。
対象の不動産がすでに所有権保存登記がなされている場合におこなえます。
引用元:法務局|所有権移転登記申請書
不動産を相続した場合にも所有権移転というかたちで登録免許税が課されます。
相続の所有権移転登記における登録免許税額=固定資産税評価額×0.004
課税標準額が1,000円未満の端数がある場合は切り捨てです。
その後税率をかけたあとに100円未満の端数があれば同様に切り捨てします。
相続によって所有移転登記をおこないます。固定資産税評価額が24,321,012円のとき、登録免許税額はいくらでしょうか。
計算結果の100円未満に端数があれば切り捨てなので、このケースの場合相続の所有権移転登記における登録免許税額は97,200円です。
軽減税率を受けた場合の税額はこちら
遺贈と贈与での課税標準はともに固定資産税評価額で、税率も同じく0.02です。
遺贈とは、遺言による贈与です。相続人へも相続人以外の人へも財産を譲渡することができます。
遺贈・贈与の所有権移転登記における登録免許税額=固定資産税評価額×0.02
税率が0.02となっていますが、法定相続人への遺贈の場合は0.004の税率です。
通常の相続と同じと考えればいいでしょう。
遺贈には包括遺贈と特定遺贈というものありますが、特定遺贈のみ不動産取得税が課されます。
売買では、軽減措置によって建物か土地によって課される税率も軽減税率も異なります。
建物の所有権移転登記における登録免許税額=固定資産税評価額×0.02
土地の所有権移転登記における登録免許税額=固定資産税評価額×0.015
ただし、原則として土地・建物の税率は1,000分の20となり、上記の税率はあくまでも令和8年3月31日までの期限付きの軽減措置であることを覚えておきましょう。
課税標準額に1,000円未満の端数があれば切り捨て、計算後の登録免許税額の数値に100円未満の端数がある場合、それを切り捨てます。
相続のときと同じように売買による土地の所有権移転登記をします。
固定資産税評価額が30,005,432円だった場合
このケースでは、土地の所有権移転登記における登録免許税額は450,000円です。
抵当権は、住宅ローンなど借り入れをしたときにそのお金を返済できなくなってしまったときの担保として土地や建物に設定する担保権のことです。
そして抵当権設定登記は設定された抵当権の内容を登記簿に記載することなのですが、このときにも登録免許税が課されます。
抵当権設定登記における登録免許税の式は下記のとおりです。
抵当権の設定登記における登録免許税額=債権金額×0.004
課税標準額となるのが債権金額でそこに0.004をかけるというもので、課税標準額は1,000円未満の端数がある場合、切り捨てです。
債権の額が1,000万円の抵当権設定登記をします。
債権額が1,000蔓延であれば債権金額×0.004だから
10,000,000円×0.004=40,000円
この場合の抵当権の設定登記における登録免許税額は40,000円です。
軽減税率を受けた場合の税額はこちら
住宅ローンを完済しても自動的に登記簿から抵当権が消されるわけではありません。
別件でのローンの審査が通りにくくなるので、所轄の法務局へ抵当権の抹消登録申請をおこなう必要が出てくるのですが、このときにも登録免許税が課税されます。
登録免許税額は不動産ひとつにつき1,000円です。
土地1つ、建物1つならば1,000円×2で2,000円になります。
建物滅失登記は建物を解体処分したときに1ヶ月以内に行う登記です。
その建物の存在が無くなったということを登記簿上でも示すために行うものになります。
建物滅失登記をしても他の登記と異なり、登録免許税は課税されませんし、他の税金も発生しません。
1ヶ月の期限内に建物滅失登記を済ませないと10万円以下の過料が発生したり、建物が消滅したという事実が判明しないので、固定資産税がそのまま発生し続けたりとデメリットがあるので、きちんとやっておきましょう。
登録免許税には軽減措置があり、税率を下げることができます。
どのようなものか見ていきましょう。
所有権保存登記の登録免許税の軽減税率にはいくつか種類があります。
軽減措置を受けられる要件は下記の3つです。
認定長期優良住宅と認定低炭素住宅については以下のサイトを御覧ください。
【参考】
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会|長期優良住宅について
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会|低炭素建築物認定制度について
住宅用家屋の所有権の保存登記の軽減税率は1,000分の1.5なので課税標準額×0.0015
ある不動産の法務局認定価格が20,001,234円のとき、課税標準額は20,001,000円なので
本来の所有権の保存登記の税率1,000分の4で計算したときは80,000円なので、軽減税率下では50,000円低くなります。
認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅の軽減税率は1,000分の1なので課税標準×0.001
ある不動産の法務局認定価格が20,001,234円のとき、軽減税率を使用すると課税標準額は20,001,000円なので
通常の税率1,000分の4で計算した80,000円と比べると60,000円低くなります。
土地、建物の売買の登記では登録免許税を減らせる可能性があります。
所有権移転登記の軽減税率は下記の通りです。
住宅用家屋の所有権の移転の登記の軽減税率1,000分の3なので課税標準額×0.003
固定資産税評価額が24,321,012円のとき、課税標準額は24,321,000円なので
24,321,000円×0.003=72,963円
軽減税率を受けた場合の額は72,900円です。
認定長期優良住宅の軽減税率は共同住宅は1,000分の1、戸建ては1,000分の2なので
それぞれ24,321,000円×0.001=24,321円 24,321,000円×0.002=48,642円
共同住宅は24,321円 戸建ては48,600円です。
認定低炭素住宅の軽減税率は0.001%なので
24,321,000円×0.001=24,321円
軽減税率を受けた場合の額は24,300円です。
建物所有権の移転登記の通常の税率1,000分の20で計算すると486,400円ですので、軽減税率を使うとそれぞれ大きく減額します。
土地の所有権の移転の登記に係る登録免許税の軽減措置
土地の所有権の移転の登記の軽減税率1,000分の15なので課税標準×0.015
固定資産税評価額が24,321,012円のとき、課税標準額は24,321,000円なので
24,321,000円×0.015=364,800円
軽減税率を受けた場合の額は364,800円です。
住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定の登記に係る登録免許税の軽減措置:新築・中古ともに1,000分の1(令和6年3月31日まで)
下記の条件満たすことで軽減税率が適用されます。
中古住宅である場合
債権の額が1,000万円であれば債権金額×1,000分の1だから
10,000,000円×0.001=10,000円
軽減税率を受けた場合の額は10,000円です。
通常の税率1,000分の4で計算すると40,000円なので30,000円低くなります。
この記事では不動産におけるどのような登録免許税が存在するのかをお伝えいたしました。
不動産の始まりと終わりである表題登記と建物滅失登記では課税されず、その他では課税されると考えると覚えやすいかもしれません。
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