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名義預金で贈与税がかかる条件とは?申告手続きとペナルティについても解説

伊藤亮太(FP)
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子どもや孫のために名義預金をおこなっている方は多いでしょう。

名義預金は自分以外の名義口座に預金をするため、一見手軽に贈与ができる手段のように思えます。

しかし、実際には名義預金を利用していると贈与税が発生する可能性があり、仕組みやポイントを理解することが大切です。

そこで本記事では、名義預金で贈与税が発生する条件や申告手続き・申告漏れによるペナルティなどについて詳しく解説します。

なるべく税金をかけずに贈与したいという方は、ぜひ参考にしてください。

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名義預金をしたら贈与税は発生するか?

名義預金とは預金した人、つまり口座の管理者と口座の名義人が異なる預金のことです。

名義預金は口座名義人の財産ではなく、預金した人物の財産になります。

そのため、たとえ口座名義人であっても、名義預金からお金を支払うと実際には自分のものではない財産を使ったことになり、預金した人から贈与を受けた扱いとなります。

名義預金からお金を勝手に使ってしまうこと自体に問題はありません。

また、勝手に使っただけで銀行や税務署などから連絡が来るようなこともないでしょう。

しかし、使った金額や預金残高によっては、贈与税を申告したり、納税したりする必要があるため注意しましょう。

なお、名義預金を作った段階では贈与自体は成立していないと考えられます。

そのため、預金口座にいくら入っていたとしても、名義預金が作成されただけでは口座名義人が贈与税を支払う必要はありません。

名義預金をした場合に贈与税が発生する3つの条件

名義預金に関連して贈与税が発生する条件には、以下の3つがあります。

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

1.預金の引き出しなど財産の移転が発生していること

たとえ口座の名義人になっていたとしても、名義預金が存在するだけでは、まだ贈与を受けたとは捉えられません

口座名義人が、当該預金を使用してはじめて預金の管理権限が口座名義人に移転します。

なお、使用していなくても名義人が通帳・印鑑・キャッシュカードなどを自分自身で管理している場合も、財産が名義人本人に移転しているとみなされるケースがあります。

2.年110万円以上の財産を受け取っていること

口座名義人が名義預金を使用して贈与が確定したとき、あるいは名義人が通帳・印鑑・キャッシュカードなどを管理しており財産が移転しているとみなされるとき、預金残高が110万円を超えていると贈与税がかかる可能性があります。

贈与税は、基礎控除額として年間110万円が設定されています

これは、暦年課税と呼ばれる制度です。

暦年課税における基礎控除は、該当年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基準として考えます。

1年間に110万円までの贈与を受けても贈与税は支払う必要がなく、申告も不要です。

しかし、基礎控除額を超えて贈与がおこなわれた場合は贈与を受けた側が贈与税を申告して、納税しなければなりません。

贈与にあたらないケースもある

年間110万円を超えても、生活費や教育費など生活に必要なお金に対しては、贈与税はかかりません

結婚費用・出産費用・祝儀金・弔意金・見舞金などについても、贈与税はかかりません。

3.特例や制度の控除額を上回っていること

贈与税は、基礎控除のほかにもさまざまな特例や制度による控除が適用できます

たとえば、次のような費用は、適用条件を満たしていれば、非課税です。

  • 住宅の購入資金
  • 子や孫の教育資金
  • 結婚や子育てのための資金
  • 配偶者に対する自宅の贈与 など

たとえば、住宅の購入資金であれば2021年4月1日以降に住宅を購入するための贈与がなされた場合、最大1,000万円まで非課税です。

非課税限度枠は住宅の購入時期だけでなく、消費税率・耐震性やバリアフリーなどの性能によっても異なります。

また、配偶者に対する自宅の贈与については、婚姻期間が20年以上の夫婦なら、居住用の不動産やその購入資金が2,000万円まで非課税になります。

それぞれの用途によって条件は異なるので、詳しくは税理士や弁護士などの専門家に相談するのがよいでしょう。

いずれの非課税枠も暦年贈与と併用することが可能です。

そのため、これらのほかに110万円未満の贈与を受けられます。

ただし、これらの非課税となる特例を利用するには、まったく贈与税がかからない場合であっても贈与税の申告自体はおこなわなければなりません

なお、名義預金を経由して受け取った場合、贈与を受けた方が申告をしなければなりません。

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名義預金を受け取り贈与税申告が必要になった場合の手続き

名義預金を受け取ったことで贈与税の申告をしなければならなくなった場合、どのような手続きをすればよいのでしょうか。

以下で、詳しく説明します。

1.必要書類を準備する

まずは、贈与税を申告するために必要な書類を準備しましょう。

申告書は税務署で入手可能です。

また、必要書類は国税庁のホームページでもダウンロードできます。

「贈与税の申告書等の様式一覧」ページから該当の書類を手に入れましょう。

ただし、準備しなければならない申告書や添付書類は、課税方式や適用を受ける特例によって以下のように異なります。

申告内容

必要な申告書

暦年課税を申告する場合

申告書第1表

相続時精算課税を申告する場合

申告書第1表+申告書第2表

住宅取得等資金の非課税+暦年課税を申告する場合

申告書第1表+申告書第1表の2

住宅取得等資金の非課税+相続時精算課税を申告する場合

申告書第1表+申告書第1表の2+申告書第2表

なお、各種特例の適用を受けるにあたっては、申告書のほかに添付書類が必要です。

受ける特例によって、たとえば次のような添付書類を用意しましょう。

相続時精算課税を利用する場合

  • 相続時精算課税選択届出書
  • 贈与を受ける方の戸籍謄本または抄本

住宅取得等資金の非課税制度を利用する場合

  • 贈与を受ける方の戸籍謄本
  • 源泉徴収票などの所得を証明する書類
  • 住宅取得に関する契約書の写し
  • そのほか状況に応じて必要な書類

贈与税の配偶者控除を利用する場合

  • 贈与を受ける方の戸籍謄本または抄本(贈与を受けた日から10日以降に作成したもの)
  • 贈与を受ける方の戸籍の附票の写し
  • 贈与を受ける方が控除対象の居住用不動産を取得と証明する書類

2.贈与税額を計算する

次に、贈与税の算出をしましょう。

暦年課税では1年間に受け取った財産のうち、基礎控除である110万円を超えた分に贈与税がかかります。

税率を計算するには、一般税率と特例税率のどちらが適応となるかを把握しなければなりません

一般税率とは、一般贈与財産にかかる税率のことです。

一般贈与財産とは、特例贈与以外の贈与財産を指し、具体的には兄弟同士や夫婦間の贈与・叔父や叔母からの贈与・親や祖父母から18歳未満の未成年の子や孫に対する贈与などがあたります。

一方、特例税率は特例贈与財産にかかる税率のことです。

特例贈与財産は、親や祖父母から18歳以上の子や孫に対して贈与される財産を指します。

ここでは、親や祖父母からの贈与で適用される特例税率で具体的な税率や金額を見てみましょう。

基礎控除後の課税価格

特例税率

控除額

200万円以下

10%

0円

200万円超〜400万円

15%

10万円

400万円超〜600万円

20%

30万円

600万円超〜1,000万円

30%

90万円

1,000万円超〜1,500万円

40%

190万円

1,500万円超〜3,000万円

45%

265万円

3,000万円超〜4,500万円

50%

415万円

4,500万円超

55%

640万円

たとえば25歳の娘に500万円の贈与をしたケースでは、次のように贈与税を算出します。

①500万円から基礎控除額(110万円)を引く

500万円−110万円=390万円

②390万円に特別税率をかけ、控除額を引く

390万円×15%−10万円=48万5,000円

なお、暦年課税ではなく相続時精算課税の場合は、基礎控除額110万円に加えて生涯を通して贈与した金額が2,500万円を超えたら、一律20%の税率がかかります

2,500万円は特別控除額として控除されます。

相続時精算課税とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に対しての贈与にのみ、適用することができる税制度です。

たとえば、3,110万円の贈与を受けたケースとして考えると、贈与税がかかるのは基礎控除額110万円と特別控除額2,500万円を差し引いた500万円です。

500万円の20%である100万円が贈与税の金額となります。

3.贈与申告書を作成する

準備した書類に、それぞれに必要な項目を記入し、申告書を作成しましょう。

たとえば「1.必要書類を準備する」で紹介した申告書第1表に記載するのは、下記のとおりです。

  • 納税者の氏名・住所・生年月日・個人番号・職業
  • 贈与者の氏名・住所・生年月日・贈与をした方との続柄
  • 取得した財産の明細・財産の価額・課税価格・控除額などとそれらを差し引いた税額 など

そのほかの申告書も、書式に従って項目を埋めていけば完成します。

何を書けばよいのかわからない場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。

4.税務署に申告書などを提出する

申告書が作成できたら、必要な添付書類とともに税務署に提出しましょう。

提出は、税務署に持参して直接おこなうほか、郵送や電子申告が可能です。

郵送する場合は、切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。

後日、収受印が押された控えが返送されます。

なお、税理士に依頼をすれば、申告は税理士が代行してくれます。

5. 贈与税申告後、納付書を作成して納税する

申告書を提出しても、贈与税の納付は完了しません。

申告書の提出と別に納付手続きが必要です。

納付書は、税務署や税務署が管轄する金融機関で入手できます。

裏面に記入見本が掲載されているので、参照して必要事項を記入しましょう。

贈与税は、現金によって金融機関または税務署で納めることができます。

または、電子納税のほか、インターネットバンキングやクレジットカードでの納付も可能です。

ただし、別途決済手数料がかかります。

また、30万円以下であればコンビニで納付することも可能です

贈与税の申告漏れがあるとペナルティが課されるので注意を!

贈与税を申告しないままでいると、ペナルティが課されてしまいます

贈与税の納税が遅れることによる延滞税は、支払いが遅れた分に対する利息のようなものです

納付期限を過ぎた翌日から2ヵ月以内であれば年7.3%、2ヵ月以上経った場合は年14.6%がかかります。

また、期限までに申告がなかったことに対するペナルティである無申告課加算税も課されます。

税務調査の通知を受ける前に自主的に申告すれば5%で済みますが、税務調査を受けたあとであれば最大20%になります。

税務調査の通知や調査を受ける前後で税率が異なるため、状況に応じて税理士に相談するのがよいでしょう。

また、隠ぺいや偽装が疑われ、悪質な無申告や過小申告だと判断された場合は、より重い重加算税という税金が課せられるため注意が必要です。

さいごに|名義預金に関する税金が心配なら税理士に相談しよう

名義預金に対して贈与税がかかるのは、名義人が財産を使った場合や特例や制度の控除額を上回っている場合です。

贈与税が発生したら、申告手続きをおこなわなければなりません。

贈与税の申告は、必要な書類の準備・計算・記入など複雑な部分もあります。

非課税特例を利用する際に、申告を忘れないよう注意も必要です。

名義預金に関連する税金について不安なことがあれば、専門家に相談しましょう。

税理士なら、適法に名義預金で贈与税をおさえ、損しなくて済む方法を知っています。

手続きを任せることもできるので安心です。

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この記事の監修者
伊藤亮太FP事務所
伊藤亮太(FP)
資産運用・社会保障(特に年金)・保険を中心に提案を行っている。講演会や執筆物も多数。Webコンサルティングも行っており、幅広い提案が可能。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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