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相続税における生命保険金の非課税枠とは?生命保険が相続税の対象になるケースも解説

伊藤亮太(FP)
監修記事
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相続財産の額が大きく相続税の納付が必要となる場合には、受け取った生命保険金についてもみなし相続財産として計上する必要があります

しかし、生命保険金といっても全てをみなし相続財産として計上する必要があるわけではありません。

また、みなし相続財産として計上する場合でも、生命保険には一定の非課税枠があります。

そこで本記事では、生命保険金がある場合にどのような場合に相続税がかかるのか、相続税がかかる場合の非課税枠について解説します。

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生命保険金が相続税の対象となる場合

受け取った生命保険金が相続税の対象になるかどうかは、生命保険の契約形態によって異なります。

まずは、生命保険の掛け方やどのような掛け方の場合に相続税がかかるのかを把握しておきましょう。

生命保険契約の4つの掛け方

生命保険の契約形態としては、以下4つが考えられます。

  1. 被相続人が契約者・被保険者で、相続人などが受取人
  2. 被相続人が契約者・被保険者・受取人
  3. 相続人が契約者・受取人で、被相続人が被保険者
  4. 相続人が契約者、被相続人が被保険者、ほかの相続人が受取人

なお、ここでいう被相続人・受取人・契約者の意味は、それぞれ以下のとおりです。

  • 契約者:保険料を支払う人
  • 被保険者:保険を掛けられている人
  • 受取人:保険金を受け取る人

それぞれ詳しく見ていきましょう。

被相続人が契約者・被保険者で相続人などが受取人

もっとも一般的なものが、被相続人が契約者・被保険者であり、相続人などが受取人となっているケースです。

たとえば、父A・母B・子C・Dの4人家族で、「被保険者を父A・受取人を母B」とする生命保険の契約をおこなったとしましょう。。

この場合、被保険者である父Aが亡くなると、母Bが生命保険金を受け取ります。

被相続人が契約者・被保険者・受取人である場合

2つ目のパターンとして、被相続人が契約者・被保険者・受取人である場合があります。

上記の家族の例でいうと、「父Aが契約者・被保険者・受取人」となっている場合です。

この場合、被保険者である父Aが亡くなり、受け取ることになった生命保険金が相続財産として相続人に相続されます。

相続人が契約者・受取人で被相続人が被保険者

次に、相続人が契約者・受取人で被相続人が被保険者である場合です。

上記の家族の例でいうと、子の一人Cが「被保険者を父A・受取人をC自身」とする契約を結びお金を支払っている場合です。

この場合、被保険者である父Aが亡くなると、受取人である子Cが生命保険金を受け取ります。

相続人が契約者・被相続人が被保険者・ほかの相続人が受取人となっている場合

相続人の一人が契約者、被相続人が被保険者、ほかの相続人が受取人となっている場合があります。

上記の家族の例でいうと、子の一人のCが「被保険者を父A・受取人を子D」とする契約をする場合です。

この場合は、父Aが亡くなると子Dが生命保険金を受け取ることになります。

契約の形態ごとにかかる税金

生命保険金にかかる税金は、契約パターンによって次にように異なります。

契約者

被保険者

受取人

税金

被相続人

被相続人

相続人

相続税

被相続人

被相続人

被相続人

相続税

相続人

被相続人

相続人

所得税

相続人

被相続人

ほかの相続人

贈与税

それぞれのケースについて、以下で詳しく見ていきましょう。

被相続人が契約者・被保険者で相続人などが受取人の場合は相続税

被相続人が契約者・被保険者で、相続人などが受取人の場合には、相続税の対象となります。

このケースでは、受取人は保険契約に基づいて生命保険金を受け取るので、生命保険金自体は相続財産ではありません。

しかし、被相続人がお金を出して相続人が受け取っているという経済的な実質を見ると、相続しているのと同様であると考えられるのです。

このように、経済的な実質から相続と同視できるものについては、相続税について規定する相続税法で「みなし相続財産」として相続税における相続財産として計算する旨が規定されています。

被相続人が契約者・被保険者・受取人である場合にも相続税

被相続人が契約者・被保険者・受取人である場合も生命保険金は相続税の対象となります。

この場合、被相続人が受け取ることになっている生命保険金は、被相続人の財産(債権)となり、債権として相続人が相続をすることになります。

そのため、相続税の対象となるのです。

相続人が契約者・受取人で被相続人が被保険者の場合は所得税

相続人が契約者・受取人で、被相続人が被保険者の場合は所得税がかかります

この場合、生命保険金として受け取った金銭は所得税法上の雑所得となり、所得税の計算において所得として計算の対象となります。

相続人が契約者・被相続人が被保険者・ほかの相続人が受取人となっている場合は贈与税

相続人が契約者、被相続人が被保険者、ほかの相続人が受取人となっている場合には贈与税の対象となります。

この場合、保険金を出した人から受取人となった人に対して金銭の贈与があったのと同様に考えられるためです。

保険金が贈与税の基礎控除額110万円以上ある場合には、贈与税の申告・納税が必要となります。

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生命保険金を受け取った人が相続税を払わなければならない場合

ここからは、上記の生命保険契約のうち、契約者・被保険者が被相続人で、受取人が相続人などである場合について解説します。

生命保険金がみなし相続財産に該当する場合でも、必ず相続税申告と納税が必要であるとは限りません。

生命保険金を受け取った人が相続税を払わなければならないのは、相続財産(みなし相続財産を含む)が、相続税の基礎控除額を超える場合です。

なお、相続税の基礎控除額は次の計算式で求められます。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除額

上記の父・母・子2人の家族で父が亡くなったという例では、法定相続人は3人なので、以下のように計算し、4,800万円が基礎控除額となります。

3,000万円+(600万円×法定相続人3人=1,800万円)=4,800万円

相続財産については非課税枠を控除した金額が相続財産となる

相続税の基礎控除額を超える場合でも、相続税の計算をするにあたっては生命保険金の非課税枠を考慮して計算が可能です。

そのため、受け取った生命保険金から非課税枠を差し引いた金額が、相続税における生命保険金として計算の対象になります。

生命保険金の非課税枠は次のように計算されます。

500万円×法定相続人の数=生命保険の非課税枠

上記の、父・母・子2人の家族で父が亡くなったという例では、法定相続人は3人なので合計1,500万円までが非課税枠となります。

上記の父・母・子2人の家族で父が亡くなった際に受け取る生命保険金が5,000万円である場合は、5,000万円-1,500万円=3,500万円が相続財産として加算されるのです。

一方、生命保険金が1,000万円であれば、非課税枠の範囲内なので、相続税の計算に含まれません。

死亡保険金がある場合の相続税の計算方法

ここからは、相続財産に生命保険などの死亡保険金がある場合の相続税の計算方法について詳しく解説します。

相続財産を計算する

まずは、相続財産を計算します。

生命保険金は、非課税枠を差し引いた残りの額を相続財産に加算してください。

基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を計算する

次に、相続税の基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を計算します。

ここで、相続財産と非課税枠を差し引いた生命保険金の合計が基礎控除額を超えない場合は、相続税は発生しません

課税遺産総額をもとに法定相続分による相続税の総額を計算する

課税遺産総額をもとに法定相続分による相続税の総額を計算します。

課税遺産総額を法定相続分で按分して相続税の税率を乗じ、全ての相続人の相続税額を合算したあと、相続税の総額を計算します。

遺産分割割合に従って各人の相続税を計算する

相続税の総額から、各人が実際に相続した割合をもとに相続人それぞれの相続税額を計算します。

その際、そのほかの相続税控除などを計算して各人の納付税額を求めましょう。

死亡保険金についての注意点

死亡保険金の計算における注意点としては次のものが挙げられます。

相続人が相続放棄をした場合

相続の際は、一部の相続人が相続放棄をする場合があります。

この場合、相続人が相続放棄をした場合でも、生命保険の非課税枠は相続放棄をした相続人も含めた法定相続人の数で計算します。

なお、相続放棄をしても死亡保険金自体は保険契約に基づいて支払われるので、受け取ることができます。

そのため、相続放棄をしてもみなし相続財産を取得したとして相続税の支払いをしなければならず、相続放棄をした人は非課税の制度を利用できないので注意が必要です。

生命保険金は原則として特別受益・遺留分侵害の対象にはならない

被相続人から遺贈や生前贈与によって特別な受益を得た相続人がいる場合、その分の調整をする規定が民法にあります。

しかし、生命保険金の受取は遺贈や生前贈与ではないため、原則として特別受益にはなりません。

なお、特別受益の趣旨に反して相続人間の不公平が著しくなるような「特段の事情」がある場合には、例外的に生命保険金が特別受益となり得るという判例があるので注意が必要です(最高裁判所の平成16年10月29日決定)。

また、被相続人が遺贈や生前贈与をおこなっていた場合、受遺者・受贈者はそれぞれ遺留分侵害額請求の対象となります。

生命保険金は遺贈・生前贈与ではないので、生命保険金の受取人に対して遺留分侵害額請求はできません。

しかし、上記の特別受益に関する判例はここでも妥当し、法の趣旨に反するような生命保険の利用方法をすれば、遺留分侵害額請求の対象ともなりうるので注意が必要です。

まとめ

本記事では生命保険金が相続税の課税対象になる場合と、非課税枠について解説しました。

生命保険の契約形態によって、何の税金の対象になるかが異なるので、生命保険の内容には注意が必要です。

生命保険を利用した節税をする場合には、税理士に相談することをおすすめします。

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この記事の監修者
伊藤亮太FP事務所
伊藤亮太(FP)
資産運用・社会保障(特に年金)・保険を中心に提案を行っている。講演会や執筆物も多数。Webコンサルティングも行っており、幅広い提案が可能。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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