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相続税は海外に移住したら安くなる? 国際相続のルールについて解説

伊藤亮太(FP)
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相続税の節税の方法として、相続税の安い海外に移住して相続税の支払い義務から逃れる方法があります。

しかし、このような方法は相続税の課税を免れることを認めることになってしまい、国の富を海外に流出してしまうことにつながります。

海外移住をしたからといって安易に相続税の課税を免れるとするのは、日本に居住し続けている方との間で課税の不公平が生じてしまうでしょう。

そのため、海外で相続をおこなう「国際相続」については厳格なルールが定められています

本記事では、海外に移住した場合の国際相続に関するルールについて解説します。

「海外にいるなら相続税はかからないって本当?」「相続税を免れるために海外に行きたい!」と考えている方は、詳しくチェックしてください。

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海外に移住すれば相続税は安くなる?

そもそも相続税は海外に移住すれば安くなるのでしょうか。

ここでは、相続税と海外移住の関係や海外での相続税課税について紹介します。

相続税がない国がある

まず、国によっては相続税というものがそもそもない場合があります。

相続税が存在しない国では、次のような観点から相続税を課すことを避けているのです。

  • 富裕層が相続税を嫌がって海外移住を防止する
  • 海外の富裕層を自国に呼び込む
  • 政治的な理由
  • 個人の資産把握が困難で相続税が課税できない

なお、相続税が存在しない国には以下のようなものがあります。

  • 中国
  • モナコ
  • インド
  • シンガポール
  • マレーシア
  • オーストラリア
  • ニュージーランド
  • スウェーデン
  • ノルウェー
  • カナダ
  • ポルトガル

たとえばシンガポールは、株や不動産を運用して得られるキャピタルゲインに課税されない、住民税・贈与税がなく、相続税も2008年に廃止されるなどで、資産運用を考えている方にとって人気の移住先となっています。

アメリカの相続税は基礎控除額が高額

アメリカでは、相続税の基礎控除が1,140万ドル(1ドル140円計算で約16億円)までと非常に高額で、一般的な相続では相続税はかからないといえます

また、相続税がかかる場合でも、連邦遺産税の税率は18%~40%となっており、最高税率が55%の日本よりも低い水準です。

イギリスには非課税などの減税措置が多い

イギリスでは、遺産に対して一律40%の相続税がかかるとされています。

しかし、325,000ポンドまでは原則として非課税であったり、住宅非課税枠が175,000ポンドあるほか、配偶者は相続税が免除・子や孫が自宅を相続する場合最大200万ポンドが非課税となるなど、減税措置がたくさんあり、実際に課税される方はごく僅かです。

以上のことから考えて、日本の相続税によらず、外国の相続税による課税のほうが、相続税は安くなるといえる可能性は高いでしょう。

海外移住時に国外転出時課税される可能性がある

海外移住時に1億円以上の有価証券や未決済信用取引など、または未決済デリバティブ取引を所有などしている場合、国外転出時に対象となる資産を譲渡・決済したものとして、その含み益に国外転出時課税(「出国税」と呼ばれることもある)が課されます

相続税の関係だけではなく、国外転出時課税についても考慮して、節税対策としての海外移住を検討する必要があるでしょう。

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海外に移住した場合に相続税がかかるか

では、海外に移住した場合に日本の相続税はかかるのでしょうか。

以下で詳しく解説します。

国内にある資産には日本の相続税の対象となる

国内にある資産には、相続人が日本国籍を有しているかどうか、日本に居住しているかどうかなどにかかわらず、日本の相続税の対象となります。

そのため、基礎控除額以上の資産が国内にある場合には、たとえ外国籍で外国に居住している人であっても、日本で相続税を支払う必要があるのです。

なお、誰が相続人となるか・法定相続分はどうなるのかなどの相続関係については、法の適用に関する通則法第36条により、被相続人の本国法によって定められます。

海外の資産についての相続税

海外の資産に関する相続税については相続税法1条の3第1項・第2項イで次のように定められています

  • 被相続人・相続人のいずれかが日本に居住している場合には、海外の資産についても日本の相続税の対象となる
  • 被相続人・相続人が10年以上日本に居住していないor日本国籍を有しない場合には日本の相続税の対象とはならない(10年ルール)

海外資産の場合は、ケースによっては相続から10年が経過することによって相続税が免除される可能性があるでしょう。

相続人・被相続人いずれかが日本に居住している場合

相続人・被相続人のいずれかが日本に居住している場合には、海外の資産についても日本の相続税の対象となります。

なお、外国でも相続税あるいは相続税と同じ機能を持つ税金の課税を受けることがあるでしょう。

税金については二重課税の禁止という原則があるため、外国の相続税などが課税された場合には、これを考慮するために外国税額控除というものが適用されます。

外国税額控除は、次のいずれか少ないほうの金額を控除するものです。

  • 外国で納付した相続税の額
  • 日本での相続税額×(海外にある相続財産額合計÷相続人の相続財産額合計)

相続人・被相続人が海外に移住している場合

相続人・被相続人が海外に移住している場合、いわゆる10年ルールが適用されます。

  • 被相続人が10年以上日本に居住していない
  • 相続人が日本国籍で10年以上日本に居住していないor日本国籍ではない

以上の場合に、海外の資産については日本の相続税が課されることはありません。

ケース別日本の相続税がかかる・かからない

ここからは、ケース別の国際相続について、日本の相続税がかかるのか否かや、気を付けなければならないことについて確認しましょう。

被相続人・相続人ともに日本在住の場合の海外資産

相続人・被相続人ともに日本在住で、海外資産を相続した場合は日本の相続税がかかります。

この場合に海外資産について現地に相続税法があり、相続税がかかった場合には外国税額控除が受けられます。

被相続人が日本在住で海外在住の相続人がいる場合の海外資産

被相続人が日本在住で、海外在住の相続人がいる場合の海外資産については、日本の相続税法が適用され、相続人は海外在住でも相続税を払う必要があります。

この場合も海外資産について現地の相続税法によって相続税がかかった場合には、外国税額控除が受けられます

なお、相続に関する規定は、被相続人の本国法によるので、日本法が適用されることになります。

この場合、遺産分割などについて、海外在住の相続人については印鑑登録ができず、住民票も取得ができません

印鑑証明に代わるものであるサイン証明書(署名証明書)、住民票に代わるものである在留証明書などを取得するために、在外公館で手続きをする必要があるでしょう。

被相続人が海外在住で相続人が日本在住である場合の海外資産

被相続人が海外在住で相続人が日本在住である場合の海外資産についても、日本の相続税法が適用され、相続税の申告・納税が必要です。

この場合も海外資産について、現地に相続税法によって相続税がかかった場合には、外国税額控除が受けられます。

日本国籍を有する被相続人・相続人ともに海外在住である場合の海外財産

被相続人・相続人ともに海外在住である場合には、10年ルールに従うことになります。

被相続人が10年間日本に居住していない、かつ相続人についても10年間日本に居住していない場合には相続税がかかりません。

仮に相続税の回避のために海外移住をするためには、被相続人だけではなく相続人も海外に10年以上在住する必要がある点に注意が必要です。

相続人が日本国籍を有しない場合で、被相続人・相続人ともに海外在住場合の海外財産

被相続人・相続人いずれもが海外在住であり、相続人が日本国籍を有しない場合には、被相続人が10年間日本に居住していない場合であれば、基本的に海外財産に相続税はかかりません

日本国籍を有しない相続人については、戸籍によって身分を証明することができないので、在外公館で戸籍に準ずる証明書を作成してもらう必要があります。

まとめ

本記事では、海外に移住した場合の国際相続に関するルールについて解説しました。

相続税を回避するために海外移住をする場合、被相続人・相続人のいずれもが海外に移住して10年経過する必要がある、いわゆる10年ルールについて理解しておきましょう。

国際相続をする場合には、相続人が外国人の場合には日本人のように取得できない書類があったりするので注意が必要です。

海外移住によって相続税を回避したい方や国際相続の手続きをおこなう場合には、税理士に相談することをおすすめします。

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この記事の監修者
伊藤亮太FP事務所
伊藤亮太(FP)
資産運用・社会保障(特に年金)・保険を中心に提案を行っている。講演会や執筆物も多数。Webコンサルティングも行っており、幅広い提案が可能。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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