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贈与と相続の税金を節税する方法|計算方法や控除制度を徹底解説

新井 智美(FP)
新井 智美
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被相続人の財産の取り扱いについて悩む相続人や、自分の財産をどう分け与えるべきか模索する被相続人の方もいるでしょう。

そこで気になるのが「贈与と相続でより税金上有利な選択肢とは何か?」「贈与税と相続税の違いは何か?」といったことです。

そのほか、贈与と相続の違いについて理解できていないという方もいるでしょう。

本記事では、贈与と相続の違いについて解説し、税金上で有利な選択肢についても紹介します。

相続トラブルを乗り越え、家族との絆をより深めていくためにも、ぜひ本記事を活用ください。

贈与と相続の違い|法律上のそれぞれの意味

贈与と相続には、どのような違いがあるのでしょうか?

ここでは、それぞれの違いについて法的な観点からも解説します。

贈与とは|自己の財産を無償で他人に与えること

贈与とは、個人が所有する財産や資産を無償で他人に譲渡する行為を指します。

この行為によって、贈与を受ける側は譲渡された財産の所有権を得ますが、その代わりとして一切の対価を支払う必要はありません

贈与は生前におこなわれることが一般的であり、贈与税が発生する可能性があります。

贈与税は贈与の対象となる財産の価値に基づいて課税されるため、贈与の際には注意深い財産評価が必要です。

贈与の際には贈与契約書を作成し、法的な手続きを遵守することが重要です。

法律上では、以下のとおり定義されています。

(贈与)

第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

相続とは|被相続人の財産を包括的に承継すること

相続とは、故人(被相続人)が所有していた財産や資産を、遺族や相続人が法的手続きに基づいて承継する行為を指します。

相続には遺産分割や遺言書の有無など、多くの要素が関わります。

相続においては相続税が発生することがあり、被相続人の財産の価値や相続人の関係に応じて課税されるのが特徴です。

遺産の公平な分配や法的手続きの遵守が重要であり、遺産分割協議書や遺言書の作成もその一環として含まれます。

相続は故人の死後におこなわれるため、遺族にとって感情的な側面も関わることから、遺族間のコミュニケーションや協力も重要です。

民法では、以下のとおり定義されています。

(相続の一般的効力)

第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

贈与税の仕組み|相続税を補完する役割を持つ

ここでは、贈与税の具体的な仕組みについて解説します。

贈与税の課税対象|贈与で財産を取得したら課される

贈与税は、生前に財産を贈与する際に発生する税金で、相続税を補完する役割を果たしています。

つまり、贈与によって財産を譲り受ける際には、その価値に応じて一定の税金が課される仕組みです。

贈与を受ける側が課税対象となり、贈与税の計算や申告が必要となります。

ただし、一定の制度を活用することで、贈与税を軽減することも可能です。

贈与税の計算方法|2つのステップで算出可能

贈与税の計算は、基本的に2つのステップでおこなわれます。

第一段階では、贈与された財産の価格から基礎控除額を差し引いた金額が計算されます。

この金額に対して税率が適用され、贈与税が計算されます。

贈与された財産の種類や関係性によって、基礎控除額や税率が異なる場合もありますので、贈与税の計算には、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

贈与税の税率|10%~最大55%

贈与税には、一般贈与財産と特例贈与財産の2つの主要な区分があります。

一般贈与財産には一般的な贈与に関する税率と控除額が適用され、特例贈与財産には特定の条件を満たす贈与に対して設けられた税率と控除額が適用される制度です。

それぞれの違いについて、詳しく見てみましょう。

一般贈与財産は、広く一般的な贈与に適用される制度です。

基本的な税率と控除額が設定されており、贈与される財産の価格に応じて課税がおこなわれます。

贈与される財産の金額が一般贈与の基準に該当する場合、この税率と控除額が適用されます。

一般贈与の税率は下表のとおり、贈与される財産の金額が増加するにつれて段階的に上昇します。

特例贈与財産は、特定の条件を満たす贈与に対して設けられた制度です。

たとえば、特定の不動産や株式などの財産に対して適用されることがあります。

特例贈与財産の税率と控除額は、一般贈与財産とは異なる基準で設定されています。

それぞれの税率については、下表のとおりです。

<一般贈与財産>

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

0円〜200万円

10%

0円

200万円超〜300万円

15%

10万円

300万円超〜400万円

20%

25万円

400万円超〜600万円

30%

65万円

600万円超〜1,000万円

40%

125万円

1,000万円超〜1,500万円

45%

175万円

1,500万円超〜3,000万円

50%

250万円

3,000万円超

55%

400万円

<特例贈与財産>

基礎控除後の課税価格

税率

控除額

0円〜200万円

10%

0円

200万円超〜400万円

15%

10万円

400万円超〜600万円

20%

30万円

600万円超〜1,000万円

30%

90万円

1,000万円超〜1,500万円

40%

190万円

1,500万円超〜3,000万円

45%

265万円

3,000万円超〜4,500万円

50%

415万円

4,500万円超

55%

640万円

贈与税の主な控除制度|配偶者控除(おしどり贈与)など

贈与税には、税額を軽減するための主な控除制度が存在します。

これらの控除制度を活用することで、贈与税の負担を軽減することができます。

主な控除制度には、以下のものがあります。

  • 配偶者控除(おしどり贈与): 配偶者に対する贈与の場合、配偶者控除が適用されます。贈与をおこなう側の配偶者に対して一定の金額が控除されることで、贈与税の税額が減少します。この制度は、夫婦間で贈与をおこなう場合に利用されるのが特徴です。
  • 親から子どもへの贈与 など:贈与税には年間110万円の基礎控除があります。そのため、生活費や教育費以外の受け渡しをする場合であっても、年間110万円以下であれば基本的に贈与税はかかりません。また、必要に応じて民法上で定められた扶養義務者(夫や妻、直系血族、兄弟姉妹)から受け取る生活費および教育費には、贈与税が発生しません。

そのほかにも、結婚・子育て資金や教育資金、住宅取得資金における非課税の特例などが用意されています。

贈与税の申告・納付方法|翌年の2月1日~3月15日が期限

贈与を受ける側は、贈与税の申告と納付が必要です。

贈与を受けた際には、翌年2月1日から3月15日までの期間に申告書を提出し、税金を納付しなければなりません。

この期間内に申告と納付をおこなわない場合、滞納金や罰則が発生する可能性があります。

贈与税の申告書には、贈与された財産の詳細や金額、関係者の情報などを記載します。

このように、贈与税には控除制度を活用することで税額を軽減できるメリットがあります。

また、申告と納付の適切な期限を守ることが滞納や罰則を防ぐためにも重要です。

贈与を検討する際には、これらの要点を理解しておくことがスムーズな手続きにつながります。

相続税の仕組み|資産の再分配を図る役割がある

相続税は、故人から遺された財産を受け継ぐ際に課される税金で、社会的な公平性や富の再分配を促進する役割を果たしています。

ここでは、相続税の仕組みを解説します。

相続税の課税対象|相続で財産を取得したら課される

相続人が一定の金額以上の財産を相続する場合、その財産の価額に応じて税金がかかります。

現金や不動産、株式など、どの種類の財産も課税対象となります。

つまり、相続人が財産を手に入れると、その財産の価額に応じて相続税が発生するのです。

相続税の計算方法|4つのステップで算出可能

相続税の計算は、基本的に4つのステップでおこなわれます。

最初に相続財産の評価額を算定し、次にその評価額から債務などの債務を差し引いて、相続財産の純額を求めます。

それに続いて、純相続財産に適用される控除額を適用し、最終的な課税対象額を計算します。

この課税対象額に、相続税の税率を適用して最終的な税金額が算出されます。

税率は、相続財産の評価額に応じて段階的に上昇します。

相続税の税率|10%~最大55%

相続税の税率は、相続財産の評価額によって変動します。

相続財産の評価額がどの範囲に該当するかに応じて、異なる税率と控除額が適用されます。

法定相続分に応じる取得金額ごとに適用される税率と控除額については、次のとおりです。

法定相続分に応ずる取得金額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

3,000万円以下

15%

50万円

5,000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1,700万円

3億円以下

45%

2,700万円

6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

相続税の主な控除制度|配偶者控除や未成年者控除など

相続税を軽減するための措置として、いくつかの控除制度があります。

たとえば、配偶者控除や未成年者控除などがあり、これによって相続税の課税額が軽減されます。

これらの控除は、特定の条件を満たす相続人に対して適用され、相続税の負担を軽くするための手段として活用できるでしょう。

相続税の申告方法|相続の開始から10ヵ月以内

相続税の申告は、相続が始まった時点から10ヵ月以内におこなわなければなりません。

通常、相続が始まった時点とは、被相続人が亡くなった日を指します。

相続が始まると、相続人はこの期限内に相続税の申告書を提出し、相続税の詳細な情報を提供します。

申告の際には、相続税の計算結果や支払うべき金額も報告されます。

適切な申告を怠ると、罰金や利息などの制裁金が課せられる可能性があるため、期限を守ることが重要です。

贈与や相続の相談を受け付けている専門家

贈与や相続に関する問題は、法律や税金の専門知識が必要な複雑な分野です。

幸いにも、専門のプロフェッショナルである弁護士と税理士が、個々のケースに合わせたアドバイスやサポートを提供しています。

こうした専門家の存在は、贈与や相続に関する課題に取り組む際に非常に役立ちます。

ここでは、そんな専門家について解説しましょう。

弁護士|法律や手続きに関する相談ができる

弁護士は、法律の専門家であり、贈与や相続に関わる法律的な問題や手続きに関するアドバイスを提供します。

贈与や相続においては、遺言の作成や遺産分割、相続人間のトラブルの解決など、多岐にわたる法的な課題が発生することがあります。

弁護士は、クライアントの権利や義務を保護し、法的なプロセスをスムーズに進めるための指導やサポートをおこなうのが役割です。

また、法律的な専門知識を持っており、クライアントが適切な決定をするための情報を提供します。

税理士|税金の計算や申告に関する相談ができる

税理士は、税金の専門家であり、贈与や相続に伴う税金の計算や申告に関する相談を受け付けます。

贈与や相続には、贈与税や相続税などの税金が関わってくるため、正確な税金の計算や適切な申告が重要です。

税理士は、クライアントの財産状況や目標に基づいて適切な税金計画を立て、節税の方法や控除の活用などをアドバイスしてくれます。

また、税法や税務手続きに詳しいため、クライアントが税金に関する問題を解決するための専門的な支援を提供してくれるでしょう。

贈与と相続に関するよくある質問

贈与と相続に関する疑問は、多くの方にとって興味深いものです。

税金や法律の面での違いや制度についての理解が求められるため、よくある質問に対する詳細な回答を以下にまとめました。

Q.税金上は相続と贈与ではどちらのほうが得か?

一般的には、相続税のほうが有利になるケースが多いでしょう。

相続税のほうが得する理由は、主に税率の違いにあります。

相続税は課税対象人が受け継ぐ財産に対して課税されますが、一定の非課税枠や控除を適用することで、実際に支払う税金が軽減されます。

これに対して、贈与税は贈与を受ける側が支払う税金であり、贈与される財産の価値に応じて税金が発生するのです。

特に、贈与税の税率が相続税よりも高くなることが多いため、相続税のほうが有利とされる傾向があります。

たとえば、兄弟2人で1,000万円ずつ相続する場合、相続税の基礎控除以下なら税金はかからない可能性があります。

しかし、同じ額を生前に贈与として受け取ると、贈与税が発生する可能性があります。

こうした場合、相続税のほうが税金の負担が軽くなるケースが多いです。

ただし、すべてのケースで相続税のほうが得とは限りません。

たとえば、贈与税を支払ったほうが得するケースも存在します。

相続税は基礎控除を超えると最低税率10%が適用される一方、贈与税も一定額を超えると課税されるため、特定の状況下では贈与税のほうが有利になることがあるでしょう。

また、贈与時の評価額によっても異なります。

贈与税は贈与時の評価で計算されるため、贈与を受けたあとに資産価値が大幅に上昇しても、その増加分に対して課税されることはありません。

これに対して相続では、実際の相続時の評価額が基準となります。

総じていえることは、一般的には相続税のほうが税率的に有利になる傾向がありますが、個別の状況や資産の性質によっては贈与税のほうが得る場合もあるということです。

ご自身の状況に合わせて、専門家である税理士に相談することをおすすめします。

Q.相続税における生前贈与の持ち戻しとは何か?

生前贈与の持ち戻しとは、贈与を受けた人が贈与された財産を一定の条件の下で返還することを指します。

これによって、贈与した財産が贈与を受けた人の名義で所有されたままであっても、実際には贈与をおこなった人が財産を管理・使用することが可能です。

この制度は、相続税を軽減するための手段のひとつとして利用されることがあります。

具体的には、贈与をおこなった人(贈与者)が贈与を受けた人(受贈者)に対して財産を贈与したあと、一定期間内にその贈与された財産を持ち戻すことができる制度です。

ただし、この持ち戻しには条件があり、一般的には贈与者が贈与された財産を管理・使用することが許されるものとされています。

以前は、生前贈与の持ち戻しの期間は3年でしたが、2023年の税制改正により7年に延長されました。

この改正は2024年の贈与分から適用されます。

これにより、贈与を受けたあとに何らかの事情で贈与された財産を必要とする場合、贈与を受けた人が持ち戻すことで、相続税の負担を軽減することができる可能性があります。

ただし、この制度は特定の条件を満たす必要があり、資産の管理や利用に関する契約や取り決めが適切におこなわれていることが求められるでしょう。

生前贈与の持ち戻しは、相続税対策の一環として検討されることがありますが、法律や規制の変更に注意する必要があります。

改正された7年の持ち戻し期間も含めて、具体的なケースにおいては専門家の助言を得ることが重要です。

Q.相続時精算課税制度とはどのような制度なのか?

相続時精算課税制度は、相続人が相続財産を売却した際に、売却益に対して課税される制度です。

通常、相続財産を売却するとその売却益は所得税の対象となりますが、相続時精算課税制度を利用することで、相続財産を受けた際の評価額と売却価格の差額に対して課税されることがあります。

この制度は、相続した財産を売却する際の税金負担を軽減するために設けられたものであり、資産の処分に際して考慮すべきポイントです。

ただし、具体的な適用条件や詳細については専門家の助言を受ける必要があるでしょう。

さいごに|贈与と相続の違いを正しく理解しよう!

本記事では、贈与と相続に関する幅広い情報を詳しく紹介しました。

これらは、将来の資産や家族に関わる重要なテーマです。

本記事を参考に、専門家のアドバイスを活用しながら、贈与や相続を適切な方法で実施していきましょう

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この記事の監修者
新井 智美(FP)
新井 智美
主に個人を相手にお金に関する相談及び提案設計業務を行う。2006年11月 世界共通水準のFP資格であるCFP認定を受けると同時に、ファイナンシャル・プランニング技能士1級を取得。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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