死亡後に発生する税金は相続税だけではなく、所得税や住民税がかかるケースもあります。
被相続人が納める予定の税金があった場合、相続人が納税しなければなりませんが、死亡後の税金はあまり知られていないため、以下のような疑問もあるでしょう。
死亡後に発生する税金は意外に多いので、課税される条件や税率などを理解しておく必要があります。
この記事では、死亡後にかかる税金の種類や、相続税を安くできる控除・非課税枠などをわかりやすく解説していきます。
死亡後にかかる税金は相続税だけと思われがちですが、被相続人に一定額の収入があった場合や、相続する財産の種類によっては、想定外の税金が発生するケースがあります。
具体的には以下のような税金がかかるので、不足がないように納税資金を準備しておきましょう。
相続財産が一定額を超えている場合、相続税がかかります。
ただし、相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があるため、相続財産が3,600万円以下だったときは非課税になり、相続税申告も必要ありません。
相続税の基礎控除については後述しますが、3,600万円は最低値になるので、相続人が複数いるときは4,200万円や4,800万円などに控除額が上がります。
また、相続税は「相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内」が申告期限になっており、期限を過ぎると延滞税などの加算税が発生するので注意してください。
被相続人が死亡した年に一定額以上の所得があった場合、本人はすでに亡くなっていることから、相続人が代わりに所得税を申告します。
源泉徴収の場合は基本的に申告不要ですが、確定申告によって医療費還付を受けられるケースもあるので、病院からの請求書があれば、支払額を確認しておきましょう。
被相続人に前年度の所得があったときは、住民税も発生します。
住民税は1月1日時点で確定するため、死亡日が1月1日以前であれば翌年度の住民税はかかりませんが、1月2日以降だったときは自治体から課税されます。
住民税が発生したときは6月頃に納税通知書が送付されるので、速やかに納付しておきましょう。
固定資産税も毎年の1月1日時点で確定するため、相続発生日が1月1日以降であれば、被相続人に対して課税されます。
また、相続した不動産が市街化区域内にあるときは、固定資産税と同じ課税時期に都市計画税も発生します。
税率は各自治体によって異なりますが、固定資産税は1.4%、都市計画税は0.3%になっているケースが多く、税額は以下のように計算します。
固定資産税評価額を調べたいときは、納税通知書に同封される課税明細書、または役場で交付してもらえる固定資産評価証明書を確認してください。
納税通知書のあて名は相続の状況によって変わりますが、被相続人の配偶者、または不動産を相続した長男や長女になるケースが多いでしょう。
不動産を相続した場合、相続人に対して登録免許税がかかります。
登録免許税の税額は固定資産税評価額×0.4%になっており、土地と建物は別々に課税されるので、金融機関または税務署で納付してください。
登録免許税が3万円以下であれば、法務局の窓口で収入印紙による納付も可能です。
なお、不動産を取得したときは不動産取得税もかかりますが、相続による取得の場合は非課税です。
被相続人に以下のような所得があった場合、本人はすでに亡くなっていることから、相続人による準確定申告が必要です。
被相続人が高額な医療費を支払っていたときは、準確定申告によって医療費還付を受けられるケースもあります。
準確定申告は相続開始を知った日の翌日から4ヵ月以内が期限になっており、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署へ申告します。
申告の際には以下の書類も必要になるので、早めに準備しておきましょう。
申告書の書き方がわからないときや、準確定申告に対応する時間がないときは、早めに税理士や弁護士に相談してください。
死亡保険金は相続税の課税対象ですが、契約形態によっては贈与税や所得税がかかります。
具体的には以下のような違いがあるので、死亡保険金を受け取ったときは、保険料負担者などをよく確認しておきましょう。
死亡保険金に相続税がかかるケースは以下のような契約形態です。
死亡保険金は民法上の相続財産ではありませんが、税法上は相続税の課税対象になる「みなし相続財産」として扱われるため、一定額を超えたときは相続税申告が必要です。
生命保険の契約形態が以下のようなケースであれば、死亡保険金に贈与税がかかります。
この場合、死亡保険金は妻から子どもへの贈与とみなされます。
贈与税には年間110万円の基礎控除があるので、110万円を超えた部分だけが贈与の課税対象です。
死亡保険金に所得税がかかるケースは以下のような契約形態です。
保険料負担者と死亡保険金の受取人が同一であれば、税法上は受取人の所得として扱われます。
死亡保険金は非課税扱いだと勘違いされているケースが多いので、申告を忘れないように注意してください。
死亡後に発生する税金はさまざまですが、相続税はもっとも高額になりやすい税金です。
資産価値の高い不動産などを相続すると、相続税が数百万~1千万以上になる場合もあるでしょう。
ただし、相続税の基礎控除や相続税評価額の減額措置などを活用すると、相続税がかからないケースもあります。
相続税の負担が重くなる方は、以下の特例・控除などを参考にしてください。
相続税には以下の基礎控除があるため、相続財産が基礎控除以内に収まっているときは、相続税がかかりません。
基礎控除の最低額は3,600万円になり、相続人が1人増えるごとに控除額は600万円ずつ上がっていきます。
通常、法定相続人になる人は被相続人の配偶者と子どもですが、子どもがすでに亡くなっている場合、孫が相続人に繰り上がる代襲相続が発生します。
また、養子や認知された非嫡出子、前妻との間に生まれた子どもなど、想定外の法定相続人が判明するケースもあるので、被相続人の戸籍を慎重に調べてください。
死亡保険金や死亡退職金を受け取った場合、以下の非課税枠を適用できます。
非課税枠は最低でも500万円になるので、同じ価格の現金や預貯金、株式の相続よりも節税効果は高くなります。
また、死亡保険金や死亡退職金は受取人の固有財産になるため、遺産分割が不要となり、原則として請求から7日以内には受取人の口座に振り込まれます。
現金化までのタイミングが早いので、当面の生活費や、葬儀費用の支払いにも充てられるでしょう。
配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が相続する財産について、1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い方まで相続税がかからない特例です。
節税効果の大きい特例ですが、配偶者の相続税が非課税になったとしても、相続税申告は必要になるので注意してください。
なお、夫婦のどちらかが亡くなる相続を一次相続といい、次に配偶者も亡くなる相続を二次相続といいますが、配偶者の税額軽減は一次相続しか使えません。
配偶者に財産を集中させると、二次相続では子どもの税負担が重くなるので、遺産分割の割合には十分に注意しておきましょう。
小規模宅地等の特例とは、以下の宅地を相続したときに、一定面積までの相続税評価額を減額できる制度です。
被相続人の自宅や店舗用の敷地、賃貸マンションなどの敷地など、評価額の高い宅地に適用すると、かなり大きな節税効果を得られます。
ただし、適用要件が複雑になっており、異なる種類の宅地にはどう適用させるか?といった問題も生じます。
小規模宅地等の特例を利用するときは、相続の専門家にも相談しておいたほうがよいでしょう。
未成年者が相続人になる場合、以下の未成年者控除を利用できます。
計算の結果、1年未満期間がある場合は、その部分を切り上げるので、相続人に12歳5ヵ月の未成年者がいた場合、控除額を計算すると50万円になります。
あまり大きな控除には思えないかもしれませんが、相続財産からではなく、相続税からの控除になっているため、実は大きな節税効果があります。
たとえば、相続人が未成年者1人しかおらず、50万円の相続税が発生するケースをシミュレーションすると、以下のように1人で4,100万円を相続した状況になります。
50万円の相続税は未成年者控除によって0円になるため、4,100万円まで相続しても相続税はかかりません。
未成年者が高額な財産を相続するようなケースであれば、相続税の計算には必ず未成年者控除を適用してください。
障害者が相続人になるときは、以下の障害者控除を利用できます。
未成年者控除と同じく税額控除になるため、節税効果の大きな制度です。
年齢が34歳3ヵ月などの場合、端数は切り上げて計算します。
34歳3ヵ月の一般障害者は控除額が500万円になるので、1人で7,100万円まで相続しても相続税はかかりません。
また、相続税よりも障害者控除が大きく、控除額が余ってしまったときは、残額分を扶養義務者の相続税から控除できます。
【参考元】https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4167.htm
相続開始の3年間におこなわれた贈与や、相続時精算課税制度による贈与があった場合、贈与税を納付していたときは、相続税から納付済の贈与税を控除できます。
ただし、相続開始前3年以内の贈与については、適用期間を3年から7年に延長することが決定しており、2024年1月1日から段階的に施行されます。
納付済みの贈与税は相続税から控除できますが、贈与財産を相続財産に加算する必要があるため、大きな節税効果は期待できないかもしれません。
相次相続控除とは、10年以内に相続が連続して発生した場合、1回目の相続で発生した相続税額の一部を、2回目に発生した相続税から控除できる制度です。
また、相次相続控除の計算式は以下のようになっており、A~Eの要素を当てはめて控除額を計算します。
※B-AよりもCが大きくなる場合、B-AがCの値になる
※Eは1年未満を切り捨てる
相次相続控除は計算式が複雑なので、短期間で相続が連続し、相続税が発生するときは、税理士や弁護士に相談したほうがよいでしょう。
外国税額控除とは、国外財産に現地国の相続税、または相続税に相当する税金が課された場合、以下のいずれか低いほうを、国内で発生した相続税から控除できる制度です。
国内と外国では税制がかなり違うので、現地国で課税された税金が相続税にあたるかどうか、調査しておく必要があります。
自分で判断できないときは、外国の税制に詳しい弁護士や税理士に相談しておきましょう。
亡くなった人に課された税金は誰が払うのか?など、死亡後の税金にはさまざまな疑問が生じます。
よくある質問と回答をまとめましたので、税金の扱いに迷っている方は参考にしてください。
被相続人に課せられた税金が未納や滞納だった場合、相続人全員が共同で支払うことになります。
固定資産税は代表相続人あてに納税通知書が送付されるので、遺産分割がまとまっておらず、不動産が共有状態になっているときは、法定相続分に応じて支払います。
遺言書や遺産分割協議によって不動産の相続人が確定しているときは、その相続人が固定資産税や都市計画税を支払ってください。
所得税の準確定申告については、相続人全員の連署による申告、または各相続人が別々に申告するケースもあります。
遺族年金は国税・地方税ともに非課税になっているため、相続税や所得税、住民税はかかりません。
ただし、確定給付企業年金は所得税が課税されるので、退職一時金として受け取る場合は退職所得、年金形式で受け取るときは雑所得として課税対象になります。
なお、年金形式の場合は源泉徴収されるため、確定申告は必要ありません。
相続放棄した人は納税義務が免除されるため、被相続人に課せられた税金を納める必要はありません。
ただし、相続放棄した人が死亡保険金を受け取っており、非課税枠や相続税の基礎控除を差し引いてもプラスの財産額があるときは、相続税が発生します。
また、相続放棄を検討している人が被相続人の税金を支払った場合、相続を承認する意思があるものとみなされ、相続放棄が認められなくなるので注意してください。
死亡後に発生する税金は相続税だけだと思われがちですが、所得税や住民税がかかるケースもあり、それぞれ納税タイミングも違うので注意が必要です。
相続税は税負担が重くなりやすいので、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、相続税の軽減措置をフル活用してみましょう。
ただし、相続は一回限りではないため、節税対策は次回の相続も見据えておく必要があります。
死亡後の税金がどのように課税されるのか、効果的な節税にはどのような方法があるのか、迷ったときは税理士か弁護士に相談してみましょう。
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