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相続税対策で生命保険の控除枠により得られる節税効果

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相続税対策をするうえで生命保険は有効だといわれています。

その主な理由は、ほかの相続財産と比べて控除される税金の枠が大きいためです。

では、生命保険を利用することでどれくらいの相続税が控除されるのでしょうか。

本記事では、生命保険を利用することで適用することができる相続税の控除の内容に加え、生命保険を活用することで相続人が受けるメリットを紹介していきます。

*本記事の専門家による監修日は2023年6月28日です。

相続税対策で生命保険を利用することで得られる4つの控除

冒頭でもお伝えしましたが、相続税対策として生命保険を活用するメリットは、控除される税額が大きいことです。

まず、最初に生命保険の相続人が、どれくらいの税額が控除されるのかを確認していきましょう。

生命保険非課税枠

生命保険を相続した方は、相続税を計算するうえで、生命保険非課税枠を適用させることができます。

生命保険非課税枠とは、相続税の課税対象額から「500万円×法定相続人の人数」が控除される内容のものです。

基礎控除

相続税を計算するうえで、基礎控除として「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」が課税対象額から控除されます。

基礎控除は、生命保険非課税枠と併用することが可能です。

債務控除

加えて、被相続人の葬儀費用や、被相続人が生前に残した借金も、上記の控除を適用したうえで、控除額に含めることができます。

配偶者控除

被相続人の配偶者の方に限り、課税対象額から1億6,000万円が控除されます。

相続税の計算例

相続税の計算は、以下の計算式の手順によって計算することができます。

  • 課税対象額=取得した財産の合計額-非課税枠の控除の総額・・・(1)
  • 相続税=課税対象額×税率-控除額・・・(2)

では、以下の条件で生命保険非課税枠を適用させたうえで、相続税の計算をしていきましょう。

  • 保険金:7,000万円
  • 法定相続人:3人
  • 総額保険料:5,000万円

非課税額の総額は、500万円×3人+3,000万円+600万円×3人=6,300万円であるため、課税対象額は7,000万円-6,300万円=700万円です。

計算式(2)の税率、控除額は、課税対象額で決まりますが、以下の表から税率は10%、控除額は0円になります。

課税対象額

税率

控除額

1,000万円以下

10%

0円

3,000万円以下

15%

50万円

5,000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1,700万円

3億円以下

45%

2,700万円

6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

よって相続税の額は、700万円×10%=70万円です。

相続税対策に生命保険が有効な理由

続いて、控除額が大きくなる以外に、生命保険を相続税対策として利用するメリットについて確認していきましょう。

ほかの相続財産と比べて保険金は早期に受け取れるため

生命保険金は、早期に現金として受け取ることができる点が、相続税対策として利用するメリットです。

被相続人が亡くなると預金口座は凍結されます。

遺産分割協議を済ませないと、凍結された口座を解除することはできないため、預金口座を相続するまでには時間が必要です。

その点、生命保険金は、簡易的な書類の申請だけで1週間程度で受け取ることができます。

また、不動産を相続した場合、相続税は高くなりますが、現金で納税しなければなりません。

不動産を相続する方の中には、納税資金が工面できないために、期限内に納税できない方は少なくないでしょう。

生命保険金は、被相続人の死亡後に、すぐに現金で受け取ることができるので、納税の資金繰りに苦しむことがありません

遺産分割で争う必要がない

相続人は、ほかの相続人とどの配分で被相続人の財産を相続するのか(遺産分割)を話し合います。

遺産分割は自身の利益に関わるため、相続人同士でもめることは珍しくありません。

その点、生命保険金は相続財産として見なされないため、生命保険金を相続した方は、ほかの相続人と遺産分割で争わなくてすみます。

これは、生命保険金が被相続人の所有財産ではなく受取人の所有財産とみなされるためです。

遺留分侵害の対象外である

被相続人は、特定の相続人が被相続人の財産を相続できるように、遺言書に指定することがあります。

しかし、各相続人の相続財産の割合(遺留分)は、法律で決まっています。

そのため遺言書の指定により、相続財産の額が法律で認められた相続財産の額を下回る場合、その差額分をほかの相続人へ請求することが可能です。

その点、生命保険金は受取人の相続財産とみなさるため、遺留分に含まれません

特定の遺族へ確実に資産を残すうえで、生命保険は最適です。

相続税対策として生命保険を利用するために必要なこと

では、最後に相続税対策として生命保険を利用するうえで、必要なことを紹介していきます。

保険料の負担者と被保険者を同一にする

まず、保険金に課せられる税金は、保険料の負担者、被保険者、受取人を誰に設定するかによって税金の種類が変わります。

所得税、相続税、贈与税のどれかの税金が課されますが、生命保険金では相続税が最も高い節税効果が期待できるため、相続税が課せられる契約内容にするべきです。

保険金に課せられる税金が相続税である条件は、保険料の負担者と被保険者は同一である場合なので、生命保険に加入する際には保険料の負担者と被保険者を同一になるように契約してください。

また、保険料の負担者と、保険金の受取人が同一の場合は所得税が課せられますが、保険料の負担者、被保険者、受取人がそれぞれ異なる場合は、贈与税が課せられます。

保険料の負担者

被保険者

受取人

税金の種類

所得税

妻または子

相続税

贈与税

所得税との比較

  • 保険金:7,000万円
  • 法定相続人:3人
  • 総額保険料:5,000万円

先ほどの保険金に課せられる相続税の計算で用いた例を元に、相続税と所得税の比較をしていきます。

まず、生命保険金に課せられる所得税は以下の計算式によって算出することができます。

  • 課税対象額=(保険金額-払込保険料-特別控除額50万円)×1/2・・・(1)
  • 所得税=課税対象額×税率-控除額・・・(2)

課税対象額は計算式(1)から(7,000万円-5,000万円-50万円)×1/2=975万円です。

No.2260 所得税の税率|国税庁」から税率33%、控除額は153万6千円であるため、所得税は975万円×33%-153万6千円=1,681,500円になります。

今回の例では、相続税の70万円と比べて所得税が高額なことがわかります。

贈与税との比較

続いて贈与税の計算をしますが、贈与税は以下の計算式によって算出することができます。

  • {保険金-110万円(基礎控除額)}×税率-控除額

上記の例で計算すると、贈与税額は (7,000万円-110万円)×55%-400万円=3,389万5千円です。

所得税と同様に今回の例では、贈与税と比べて相続税の方が、節税効果が高いことがわかります。

一時終身払い型の保険に加入する

経済的に余裕がある方は、一時払い終身型の生命保険(将来的に発生する保険料を一括で支払う型の保険)に加入しましょう。

トータルで支払う保険料の額に対し、保険金の割合が高くなるため、相続税をより安く抑えることができるためです。

まとめ

相続人が負担する税額を抑えるうえで、生命保険は有効であることがわかりました。

保険金の受取人は、被相続人の死亡から10ヵ月以内に、相続税の申告と納税をしなければならないので、期限以内に手続きを済ませるようにしましょう。

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この記事の監修者
ファイナンシャルプランナー水上克朗事務所
水上克朗(FP)
ライフプラン、資産運用、保険の見直しなどの観点からアドバイスを行う。著書に「50代から老後の2000万円を貯める方法」「見るだけでお金が貯まる賢者のノート」がある。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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