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法定相続人の人数を知る手法と法定相続人が相続税に与える影響まとめ

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ご自身に家族がいる場合、被相続人(故人)の遺産を分け合う遺産相続は必ず起こります。

その遺産分割の際、民法で被相続人(自身の財産を遺して亡くなった人)の財産を相続することができる人の範囲が定められています。そしてその範囲にいる人のことを法定相続人といいます。また、相続人(亡くなった方の財産を相続する人)が複数人いる場合、それぞれが相続する財産の割合も民法により一応規定されています。

これを法定相続分といい、相続税の支払いもこの法定相続分で相続した割合に応じて発生することになります。ただ、相続税には基礎控除【3,000万円+法定相続人の数×600万円】が設けられており、被相続人の財産が基礎控除額を下回る場合、相続税の支払いの必要はありません。

ご自身が相続人になることができるのか、また基礎控除額はいくらなのかを算定する際に、法定相続人の範囲の確認や法定相続人の人数の確認は必要不可欠です。

そこで今回は、誰が法定相続人になることができるのか、また法定相続人の人数を確認する際の注意点を記載したいと思います。

この記事に記載の情報は2024年08月16日時点のものです

法定相続人は民法で規定されている

被相続人の遺産を相続できる範囲を規定しておかなければ、遺産の分配を決める際に収拾がつかなくなってしまいます。そこで民法では相続人の範囲を規定しています。ここでは相続できる人の範囲について記載したいと思います。

法定相続人とは

遺産を相続する際には、主に指定相続と法定相続の2つの方法があります。

指定相続とは、被相続人の遺言書などによって指定された相続人と相続の割合により遺産相続を行う方法で、法定相続は民法により規定された相続人と相続割合により遺産相続を行う方法です。

また、この2つは被相続人の意思が尊重されるため、原則として指定相続が優先されます。そして、民法により規定された相続人になれる人を「法定相続人」といいます。

法定相続人の範囲と順位

民法では法定相続人になれる人を、被相続人の「配偶者」と「被相続人の血族」に限定しています。配偶者に関しては必ず法定相続人となります。

また被相続人の血族の中で法定相続人となれる人には第1位から第3位まで、範囲と順位があります。範囲と順位は以下の通りです。

順位

範囲

具体的な人物

必ず相続人 

配偶者

被相続人の夫や妻。

第1位

直系卑属

被相続人の子供。子供が亡くなっている場合は孫(代襲相続)。

第2位

直系尊属

被相続人の父、母。父、母が亡くなっている場合は祖母、祖父。

第3位

傍系の血族

被相続人の兄弟姉妹。被相続人の兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥、姪(代襲相続)。

(※代襲相続については後述しています。)

第1順位、第2順位、第3順位の範囲の人が重複して法定相続人となることはありません。例えば被相続人に配偶者と第1順位、第2順位に該当する人がいた場合、法定相続人になれる人は、配偶者と第1順位の人のみになります。

代襲相続について

第1順位において、被相続人の子供が亡くなっていて、被相続人の孫がいる場合、被相続人の孫が法定相続人となります。これを代襲相続といいます。

もし孫も亡くなってひ孫がいる場合、ひ孫が法定相続人となります。これを「再代襲相続」といいます。第1位順位内においては原則限度無に下の世代による代襲が認められます。

順位の若い人がすでに亡くなっている場合

第3順位において、被相続人の兄弟や姉妹が亡くなっていて、被相続人の甥や姪がいる場合、代襲相続により甥や姪が法定相続人となります。ただし第3順位においては代襲相続が認められるのは一世代のみに限定されており、それ以降の世代については法定相続人とはなれません。

また、第2順位において被相続人の親が亡くなっていて、被相続人の祖父母がいる場合、祖父母が法定相続人となります。また第2順位においては限りなく上の世代にさかのぼり法定相続人となります。

相続税は法定相続人毎でいくらかかるのか?

これまでの内容で法定相続人となれる人はご理解いただけたと思います。ここでは被相続人の財産を相続した場合に、法定相続人毎でどれくらい相続税がかかるのかについての算定方法を記載したいと思います。

ただし先述したとおり、相続税には基礎控除が設けられており、相続した財産が基礎控除額を超えた場合に、その超えた額に対して課税されます。

また基礎控除額は法定相続人の人数によって規定されており、以下の計算式で算出されます。

3,000万円+600万円×法定相続人の人数

つまり基礎控除は最低3,000万円までは保証されており、法定相続人の人数が1人増えるに従い、600万円ずつ増額されます。

法定相続人の人数による基礎控除額を一覧で記載しておきます。

法定相続人の人数

基礎控除額

1人

3,600万円

2人

4,200万円

3人

4,800万円

4人

5,400万円

5人

6,000万円

6人

6,600万円

7人

7,200万円

8人

7,800万円

9人

8,400万円

10人

9,000万円

法定相続分で遺産を分割した場合

法定相続人が複数いた場合、一定の基準がなければ相続財産の配分について恐れが生じる場合があります。ここでは法定相続分で遺産を分割した場合に、法定相続人のそれぞれに相続税がどれくらいかかるのかの算定方法について具体例と共に記載しておきます。

ただし具体例の条件として

・被相続人の遺産は1億4,800万円

・法定相続人は配偶者、子供2人の計3人

としておきます。

課税される遺産額を算定する

先述の通り、相続税には基礎控除があります。相続税は基礎控除を超えた額に対して課税されるため、まず、課税される遺産額を算定します。

課税される遺産額は

・課税される遺産額=被相続人の財産-基礎控除額

により算定されます。

この例の場合の課税される遺産額を算定してみましょう。法定相続人は3人なので、基礎控除額=4,800万円となり

課税される遺産額=1億4,800万円-4,800万

この計算から課税される遺産額は1億円であることがわかります。

法定相続分の割合を出す

課税される遺産額がわかれば、次に法定相続分の割合を把握します。法定相続分での相続の割合を以下に記載しておきます。

 

配偶者の生存

配偶者の法定相続分の割合

各順位の法定相続分の割合

第1順位がいる場合

あり

1/2

1/2を該当者で等分

なし

0

該当者で等分

第2順位がいる場合

あり

2/3

1/3を該当者で等分

なし

0

該当者で等分

第3順位がいる場合

あり

3/4

1/4を該当者で等分

なし

0

該当者で等分

この例の場合、

配偶者の法定相続分の割合:1/2

子供の一人当たりの法定相続分の割合:1/4

であることがわかります。

自身の課税される遺産額を把握する

次に自身の課税される遺産額を算定しましょう。自身の課税される遺産額は

自身の課税される遺産額=課税される遺産額×法定相続分の割合

で算定することができます。

この例の場合

法定相続人

計算式

自身の課税される遺産額

配偶者

1億円(課税される遺産額)×1/2(法定相続税の割合)

5,000万円

子供1人当たり

1億円(課税される遺産額)×1/4(法定相続税の割合)

2,500万円

となることがわかります。

自身の課税される遺産額に相続税率と控除額を適用し、自身の遺産額を算出する

相続税は累進課税となっており、課税額が多くなるほど、相続税額も多くなります。また基礎控除以外にも相続税率を適用した後に一定額控除されます。

課税される相続税率と控除額は以下の通りです。

課税価格

税率

控除額

1,000万円以下

10%

0円

3,000万円以下

15%

50万円

5,000万円以下

20%

200万円

1億円以下

30%

700万円

2億円以下

40%

1,700万円

3億円以下

45%

2,700万円

6億円以下

50%

4,200万円

6億円超

55%

7,200万円

税率と控除を適用した、妻と子供それぞれの相続税額は以下の通りとなります。

法定相続人

税率と控除の適用

相続税額

配偶者

5,000万円×20%-200万円

800万円

子供1人当たり

2,500万円×15%-50万円

325万円

相続人間で自由に相続した場合(法定相続分以外で分けた場合のこと)

遺産相続の分配を、相続人同士の話し合いにより決定することもできます。この際決定した割合が法定相続分と違っていても、法定相続人全員が合意していれば問題ありません。

この場合の各個人の相続税額の算定の方法は、法定相続分で算出した相続税の合計額を、話し合いにより決まった遺産相続の割合で分割してください。

例えば、上記の例において、法定相続分通りに遺産を分配せず、話し合いにより、

配偶者の相続:0

子供(長男)の相続:3/4

子供(次男)の相続:1/4

となった場合の子供それぞれの相続税額を一覧で算出します。

法定相続人

計算式

相続税額

長男

1,450万円(相続税の合計額)×3/4

1,087万5,000円

次男

1,450万円(相続税の合計額)×1/4

362万5,000円

法定相続人になれる人となれない人

被相続人の養子や連れ子など、法定相続人となれる人かどうか判断が難しい場合があると思います。ここでは、判断が難しい人について法定相続人となるかならないかについて記載します。

法定相続人になれる人

被相続人の養子

普通養子縁組によって養子となった人は被相続人の実子と同じ身分になり、法定相続人となります。ただし、養子は実の親との間においても親族関係は消滅しないので、養親、実の親両方の法定相続人となります。

また特別養子縁組により戸籍上実の親と親子関係を断ち切った特別養子も、法定相続人となります。ただし特別養子となった人は実の親との間では相続権がなくなります。

非嫡出子

戸籍上婚姻関係にない男女の間の子供を、「非嫡出子」といいます。非嫡出子は父親から認知(父親が婚姻外の子供を自身の子供と認めること)を受けていた場合、法定相続人となります。母親の場合は、認知の必要なく法定相続人となります。

胎児

被相続人の妻の胎内にいる胎児も法定相続人となります。

前妻、前夫の子

被相続人が離婚しており、前妻、前夫との間にいる子供は法定相続人となります。

 

行方不明者

行方不明者も法定相続人となります。

法定相続人になれない人

相続欠落者

法定相続人の範囲内の人であっても、以下の理由にあたる人は相続人としての資格がないと見なされ、法定相続人にはなりません。

①故意に被相続人や被相続人が殺害されたことを知りながら、告訴、告発しなかった場合

②詐欺や脅迫により被相続人の意思に反した遺言をさせた人

③被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した人

相続廃除

被相続人の意思により、法定相続人の相続権を排除させることを「相続廃除」といいます。相続廃除を行う方法は、家庭裁判所に申請するか、遺言によりその意思を表示するかの2通りあります。

相続廃除の条件に該当する行為は以下の通りです。

①被相続人を虐待する

②被相続人に重大な侮辱を与える

③その他の著しい非行

連れ子

連れ子は法定相続人にはなれません。しかし養子縁組を行えば法定相続人となります。

前妻や前夫

前妻や前夫は、離婚が成立した時点で婚姻関係がなくなり配偶者とならないので、法定相続人にはなれません。

もし法定相続人がいなかった場合

相続が開始した際に、法定相続人が全くいなかった場合は、被相続人の利害関係者や検察官の請求により、裁判所が遺された遺産の管理等を行う相続財産管理人を選任します。相続財産管理人は弁護士や司法書士が選ばれることが一般的です。

相続財産管理人はさらに不明の相続人を捜索しますが、それでも相続人がいなければ、家庭裁判所が縁故者に被相続人の財産または一部を与えます。さらに縁故者も不在の場合、相続財産は国庫に入ります。

法定相続人の人数によって変わる相続税の非課税額

相続税には、基礎控除や非課税額があり、その額が法定相続人の人数に依存している場合があります。基礎控除については既に言及しましたので、ここではその他の非課税額の算定の方法について記載します。

生命保険金等の非課税額

生命保険(死亡保険)の契約者(保険料負担者)が被相続人であり、保険金の受取人が法定相続人であった場合、「みなし財産」とされ、被相続人の財産になり相続税の評価額に加算されます。

しかし生命保険金にも非課税額があります。

生命保険の非課税額の算定の方法は500万円×法定相続人の人数です。

また下記の表に法定相続人の人数による生命保険の非課税額を一覧で記載しておきます。

法定相続人の人数

生命保険の非課税額

1人

500万円

2人

1,000万円

3人

1,500万円

4人

2,000万円

5人

2,500万円

6人

3,000万円

7人

3,500万円

8人

4,000万円

9人

4,500万円

10人

5,000万円

退職手当金等の非課税額

被相続人が死亡して、被相続人が受け取るべきであった退職手当金が、被相続人の死亡から3年以内に支給が確定し、受取人が法定相続人であった場合も「みなし財産」とされ、被相続人の財産になり相続税の評価額に加算されます。

また退職手当金にも非課税額があります。

退職手当金の非課税額の算定の方法は500万円×法定相続人の人数となります。

また下記の表に法定相続人の人数による退職手当金の非課税額を一覧で記載しておきます。

法定相続人の人数

生命保険の非課税額

1人

500万円

2人

1,000万円

3人

1,500万円

4人

2,000万円

5人

2,500万円

6人

3,000万円

7人

3,500万円

8人

4,000万円

9人

4,500万円

10人

5,000万円

 相続税がかからない財産もある

以下の財産に関しては、相続税がかからない財産とされています。

①従来からある、墓地や、仏壇などの祭具

②相続により取得した財産のうち、申告期限までに国、地方団体、公益団体に寄付した財産

③学術団体、慈善団体などの、公益を目的とした事業団体が相続により得た財産

④特定公益信託の信託財産

⑤心身障害者共済制度に基づいた給付金の受給権

⑥相続税の申告期限前に、災害で被害を受けた財産。

適用される法定相続人の人数の注意点

法定相続人の人数により規定される内容は以下の4つがあります。

・相続税の基礎控除額

・生命保険金の非課税限度額

・死亡退職金の非課税限度額

・相続税の総額の計算

上記の4つは法定相続人の人数が確定しなければ算定することができません。よって法定相続人の人数を正確に把握しておくことは重要です。この時、法定相続人として適用される人数に関して注意する点がありますので、記載しておきます。

養子の数の制限

たとえば、基礎控除額の増額のために、意図的に養子縁組を行う行為を防ぐために、法定相続人の人数に適用される養子の数には制限が設けられています。制限は以下の通りとなります。

①被相続人に実の子供がいる場合、適用される養子の数は1人まで。

②被相続人に実の子供がいない場合、適用される養子の数は2人まで。

被相続人の子供が別の親と養子縁組を行っていた場合

被相続人に実の子供がおり、その子供が他の親と養子縁組を行っていた場合でも、法定相続人となります。

例えば、被相続人に配偶者と、子供が2人いて、その子供のうちの1人が他の親と養子縁組を行っていた場合の法定相続人の人数は3人となります。

被相続人の子供が別の親と特別養子縁組を行っていた場合

被相続人に実の子供がおり、その子供が他の親と特別養子縁組を行っていた場合、法定相続人には含まれません。

例えば、被相続人に配偶者と、子供が2人いて、その子供のうちの1人が他の親と特別養子縁組を行っていた場合、法定相続人の人数は2人となります。

法定相続人の中に相続放棄をした人がいる場合

法定相続人の中で相続放棄をした人がいる場合でも、法定相続人の人数として適用します。

例えば被相続人に配偶者と、子供が2人いて、その子供の内の1人が相続放棄を行った場合でも、法定相続人の人数は3人となります。

被相続人の子供が2人以上いて、その内の1人が亡くなっており、その亡くなっている子供に子供(被相続人から見た孫)がいる場合

被相続人の子供が亡くなっており、その子供に子供(被相続人からみて孫)がいた場合、代襲相続権があります。この時、被相続人に亡くなった子供以外に子供がいる場合、代襲相続権は認められ、被相続人の孫も法定相続人となります。

たとえば、被相続人に配偶者と、子供が2人いて、その子供のうちの1人が亡くなっており、亡くなっている子供に2人子供(被相続人からみた孫)がいる場合、法定相続人の人数は4人となります。

法定相続人の人数の確定方法

法定相続人の人数を正確に確定するためには、被相続人の戸籍謄本と、相続人の戸籍謄本を揃える必要があります。以下で具体的に見てみましょう。

被相続人の戸籍謄本類の入手

法定相続人数の人数を確定するには、被相続人の戸籍謄本を生誕から死亡まで連続して揃えることが必要になります。戸籍謄本は本籍地の市役所および町村役場にて申請をすれば手に入れることができます。遠方の場合は申請を出し、入手することも可能です。

また、被相続人の本籍地が何度も変わっている場合、生誕から死亡までの戸籍謄本類は、死亡した本籍地から遡って入手していくことが効果的です。具体的には死亡した際の戸籍謄本に1つ前の本籍地が記載されていますので、そこから順次何度も遡って1つ前の本籍地を確認して戸籍謄本を入手してください。

相続人の戸籍謄本の入手

法定相続人の人数を確認するために相続人の戸籍謄本類も入手する必要がありますが、相続人の順位によって入手する戸籍謄本類が違います。以下に一覧で記載しておきます。

相続人

必要な戸籍謄本類

第1順位

第1順位の該当範囲のすべての人の戸籍謄本

第2順位

第1順位の該当範囲のすべての人の戸籍謄本。被相続人の戸籍謄本から第1順位に該当する人がいない場合は必要なし。

第2順位に該当するすべての人の戸籍謄本

第3順位

第1順位の該当範囲のすべての人の戸籍謄本。被相続人の戸籍謄本から第1順位に該当する人がいない場合は必要なし。

第2順位の生誕から死亡までの連続した戸籍謄本

第3順位の戸籍謄本

まとめ

法定相続人の人数により、控除額や非課税額、また相続税の額が変わってくることをご理解いただけたと思います。

法定相続人の人数を把握しておくことは重要になります。法定相続人の人数をきちんと把握しておかないと、本来であれば支払う必要のなかった相続税を払わなければならない場合もあるかもしれません。

是非一度ご自身の法定相続人の確認をしてみてはいかがでしょうか。

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ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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