小規模宅地の特例は、親族から不動産を相続した方が、相続税を安く抑えるために使うことができる特例です。
小規模宅地の特例が適用されると、土地の課税対象額が減額され相続税が安くなりますが、二世帯住宅の方で、特例がどのように適用されるのかは気になるところです。
二世帯住宅は、同じ建物に住んでいるが別々の空間で暮らしている家族を指しますが、小規模宅地の特例に関して、主に二世帯住宅している親子間で親から子どもへ住宅が相続されるシチュエーションが問題として取り上げられます。
子どもと違い、配偶者が相続人となる場合、小規模宅地の特例が適用されやすくなるためです。
もし、税務署から親が住んでいた部分と子どもが住んでいた部分が別々であるとみなされた場合、親が住んでいた部分しか小規模宅地の特例は適用されません。
建物全体に小規模宅地の特例が適用される場合と比べて、部分的にしか適用されない場合、相続税が減額される割合は少なくなってしまいますが、二世帯住宅でもどのような場合に建物全体に小規模宅地の特例が適用されるのでしょうか。
今回の記事では、二世帯住宅でも建物全体に小規模宅地の特例が適用される条件や、建物全体に小規模宅地の特例が適用されるために必要なことについて説明していきます。
また、配偶者の場合、二世帯住宅でも小規模宅地の特例が適用されやすいため、当記事では子どもが相続人の場合を前提に話を進めていきます。
では、早速ですが二世帯住宅でも建物全体に小規模宅地の特例が適用される条件について説明していきます。
まず、建物全体ではなく、相続した不動産自体に小規模宅地の特例が適用されるのかどうかを確認するべきです。
子どもが相続人の場合、小規模宅地の特例が適用されるためには、以下の条件を満たさなければなりません。
小規模宅地の特例の適用要件について詳しくは、「小規模宅地の特例」を参考にしてください。
小規模宅地の特例が適用されるかどうかは、完全分離型の二世帯住宅か、非分離型の二世帯住宅かで異なります。
完全分離型の二世帯住宅とは、親子で同一の建物に住んでいるが、建物の構造上、それぞれ住んでいる部屋に行き来することができない住宅です。
それに対して非分離型は、暮らしは別々であるが、建物内部でお互いの住まいに行き来することができる住宅になります。
完全分離型と比べて、非分離型は別々の住まいであることの判定が難しいため、建物全体に小規模宅地の特例が適用されやすい傾向にあります。
区分所有登記とは、同一の建物でも各部屋が別々の登記である建物です。
マンションなど各部屋に別々の世帯が住んでいる建物を想像するとわかりやすいでしょう。
ほとんどのケースでは二世帯住宅でも区分所有登記がされていないと、建物全体に小規模宅地の特例が適用されます。
つまりは上の図の場合、親の部屋と子どもの部屋が別々に登記されていない場合に、建物全体に小規模宅地の特例が適用されるということです。
しかし、平成25年以前までは、完全分離型の二世帯住宅に関しては、区分所有登記がされていなくても、小規模宅地の特例が適用されるのは親の住まいの部分だけでした。
平成26年の相続税法の改正により、完全分離型でも1階と2階に行き来可能な通路がある場合に限り、建物全体に小規模宅地の特例が適用されるようになりました。
また、区分所有登記されている二世帯住宅でも、建物の構造が非分離型の場合、小規模宅地の特例が適用される傾向にあります。
しかし、階層別に分かれている建物と違い、住まいが別々の棟に分かれている場合、小規模宅地の特例が適用されないことがあります。
登記が同一、または非分離型の二世帯住宅でも、小規模宅地の特例が適用されづらくなると思ってください。
同じ二世帯住宅でも、いくつものシチュエーションが考えられるでしょう。
そこでシチュエーション別に、二世帯住宅の建物でも小規模宅地の特例が適用されるのかどうかを説明していきます。
まず、増築した建物の増築した部分に子どもが住んでいるが、増築部分を行き来することができない場合、増築部分まで小規模宅地の特例は適用されるのでしょうか。
この場合、区分所有登記されていなければ、増築部分まで小規模宅地の特例が適用されます。
反対に、区分所有登記されていない場合、増築部分には小規模宅地の特例は適用されません。
続いて、二棟に分かれた建物に親と子共が別々に暮らしているが、それぞれの住まいが建物内部で繋がっている場合を考えていきましょう。
もし、税務署から別々の建物と見なされた場合、特例は適用されません。
しかし、原則2つの棟が同一の登記の場合、小規模宅地の特例を適用することは可能です。
下の図のように、建物内部で繋がっていない別々の棟を渡り廊下で繋げた場合、子どもの住まいの部分に小規模宅地の特例は適用されません。
2つの棟が同一の登記でも適用されないと思ってください。
では階層別に子どもと親が別々に住んでいて、建物内部でそれぞれの部屋に行き来はできないが、登記自体をおこなっていない場合はどうなるのでしょうか。
まだ登記はしていないので、同一の所有者として登記した場合、建物全体に小規模宅地の特例を適用することが可能です。
以上のことから、区分所有登記された二世帯住宅の場合、建物全体に小規模宅地の特例が適用されづらい傾向にあることがわかりました。
そこで同一の登記にする方法を紹介していきます。
同一の登記にする方法には、共有登記という方法がありますが、共有登記とは、複数人で一つの建物を共有で登記する方法です。
親子の共同名義で二世帯住宅全体を登記することで、区分所有登記が解除されます。
また、合併登記によって二世帯住宅を同一の登記にすることができます。
合併登記とは、別々の建物として登記された建物を、1戸の建物として登記し直す方法です。
しかし、共有登記や合併登記をすると、相続したはずの建物を相続ではなく贈与されたと見なされる可能性があります。
相続税と比べて贈与税は税率が高いため、節税目当てに小規模宅地の特例を適用させようとした意味がありません。
小規模宅地の特例を建物全体へ適用させる目的で、共有登記、合併登記をするためには、素人ではなく税理士に依頼したほうが確実です。
不動産にかかる相続税はバカになりません。
二世帯住宅の方は、少しでも税額を減らすために、建物全体に小規模宅地の特例を適用させたいところです。
適用させるためには、親と子の住まいを別々の住まいとして税務署から認めてもらう必要があります。
そのために、どのような手続きをおこなうべきかは相続人の状況によりますが、まずは税務手続きのプロである税理士に依頼すると安心でしょう。
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