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任意後見と成年後見の違いは何?権限やどんなときに効力が発動するかを比べて解説

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成年後見制度は認知症対策になるといわれますが、仕組みがよくわからず、利用すべきかどうか迷っている方も少なくないようです。

また、任意後見と成年後見の違いもあまり知られていないので、自分自身や親の認知症に備えたいときは、以下の疑問を解消しておく必要があります。

  1. 任意後見と成年後見の違いは何?
  2. 成年後見制度はどんな仕組み?
  3. 後見人はどんなことをしてくれる?
  4. 任意後見と成年後見のメリット・デメリットは何?
  5. 成年後見制度以外の認知症対策はある?

成年後見人は身上監護や財産管理をサポートしてくれますが、柔軟な制度とはいえないため、成年後見制度以外の認知症対策も検討しておくとよいでしょう。

本記事では、任意後見と成年後見の違いや、それぞれのメリット・デメリットなどをわかりやすく解説していきます。

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任意後見と成年後見の違い

成年後見制度は以下の2種類に分かれており、法定後見を成年後見と呼ぶケースがあります。

  1. 任意後見制度:認知症になったときの後見人を自分で選べる制度
  2. 法定後見制度:すでに認知症になっている人を後見する制度

任意後見と成年後見には以下の違いがあるので、全く同じサポートを受けられるわけではありません

対象者や効力が発動する条件が異なる

任意後見制度と法定後見制度の対象者や、後見業務の開始時期などは以下のようになっています。

 

任意後見制度

法定後見制度

対象者

判断能力が十分にある方

判断能力が不十分な方

後見人の選び方

自分で選べる

家庭裁判所が選任

後見業務の開始時期

本人が認知症を発症したあと、家庭裁判所に申し立てて任意後見監督人が選任されたとき

後見開始の審判確定後

任意後見制度は本人の判断能力が低下し、法律行為ができなくなった時点で後見開始となりますが、契約次第ではすぐに任意後見をスタートする場合もあります。

また、任意後見制度の場合は任意後見監督人が必須になっており、家庭裁判所によって選任されます。

自分で選んだ人に後見業務を任せたいときは、元気なうちに任意後見制度を検討しておくべきでしょう。

一方で法定後見制度の場合、認知症を発症すると法律行為に制限がかかり、自分の意思で後見人を選べなくなるため、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てなければなりません。

任意後見人と法定後見人では与えられる権限に違いがある

成年後見人は被後見人に成り代わって法律行為などをおこなうため、以下のように一定の権限を有しています。

以下で、任意後見人と法定後見人(成年後見人)で異なる権限について確認していきましょう。

 

任意後見制度

法定後見制度

後見人の権限

後見契約の内容によるが、取消権はなし

一部の契約行為における同意権と取消権、および特定の法律行為における代理権

本人の意思反映

反映される

反映されない

後見監督人

必要

必要に応じて家庭裁判所が選任

根拠法令

任意後見契約法

民法

任意後見人には取消権がないため、被後見人が不要な契約を結んでも解除はできません。

また、任意後見人の権限は後見契約で定めた代理権に限られるため、基本的には本人の意思を尊重する制度趣旨になっています

なお、法定後見人(成年後見人)は同意権・代理権・取消権を有していますが、日用品などの買い物は取消しできないので注意してください。

任意後見の場合は事前の手続きが必要

判断能力が低下したあとの生活を任意後見人にサポートしてもらう場合、事前に任意後見契約を結んでおく必要があります。

まず任意後見人を選び、何を後見してもらいたいのか決定するので、以下のような内容を話し合っておくとよいでしょう。

  1. 介護や医療などの療養看護に関する事務
  2. 財産管理に関する取り決め
  3. 任意後見報酬

療養看護については、認知症の発症後に入所したい施設、利用したい病院、要介護認定の手続きや医療費の支払いなどを決めてください。

任意後見人の報酬は自由に設定できますが、弁護士などの専門家に依頼した場合、財産の額に応じて毎月2~6万円程度の報酬が発生します。

なお、後見人の業務は財産管理と身上監護に限られるため、入浴や食事の介助、ペットの世話、借金の保証人や遺言書の作成などは代行できません。

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成年後見には「法定後見」と「任意後見」の2つがある

前述のとおり、成年後見制度には法定後見と任意後見の2種類があります。

後見開始のタイミングや、後見人の権限などはすでに解説したところですが、それぞれのメリット・デメリットも理解しておくとよいでしょう。

法定後見とは

法定後見とは、すでに本人の判断能力が不十分になっている場合、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる制度です。

申立人になれるのは本人やその配偶者、四親等内の家族、市町村長や検察官になっており、家庭裁判所の審理によって以下の法定代理人が選任されます。

 

補助

保佐

後見

対象者

判断能力が不十分な人

判断能力が著しく不十分な人

常に判断能力が欠けている人

法定代理人

補助人

保佐人

成年後見人

法定代理人の権限

同意権と代理権、または代理権のみ

同意権と取消権(家庭裁判所の認可で一部代理権あり)

代理権と取消権

法定代理人の同意が必要な行為

重要な財産行為の一部

重要な財産行為

なし

代理権付与についての本人の同意

必要

不要(保佐人に代理権を与える場合は必要)

不要

       

補助人や保佐人、成年後見人は本人の法定代理人になるため、判断能力が低下しても各種契約や生活費の管理などを代行してもらえます。

ただし、法定後見制度には以下のメリットやデメリットがあるので、家族だけで本人をサポートできるかどうかも考えておく必要があるでしょう。

法定後見制度のメリット・デメリット

法定後見制度には以下のメリット・デメリットがあるので、十分な比較検討が必要です。

法定後見制度のメリット

法定後見制度のデメリット

・被後見人の財産が保全される

・介護や医療に関する契約が可能

・不要な契約を解除できる

・自分で後見人を選べない

・資産運用や相続税対策は基本的にできない

・本人が死亡するまで後見人を解任できない

法定後見人は被後見人の財産を管理してくれるので、家族による勝手な使い込みを防止できます。

ただし、被後見人の財産は保全の対象になるため、確実に収益が見込める状況であっても、投資などの資産運用はできません

被後見人の財産を減らす行為も制限されるので、生前贈与による相続税対策もできなくなるでしょう。

また、一般的には被後見人が亡くなるまで後見業務が続くため、後見報酬も高くなります。

任意後見とは

任意後見とは、十分な判断力があるうちに自分で成年後見人を選び、認知症を発症したあとに後見業務を開始してもらう制度です。

任意後見制度も被後見人の財産管理や身上監護を目的としていますが、後見契約の締結や任意後見監督人の選任が必要なので、法定後見とは異なる部分がいくつかあります。

前述のとおり後見人の権限にも違いがあるので、任意後見制度を利用する際は、以下のメリット・デメリットをよく理解しておきましょう。

任意後見制度のメリット・デメリット

任意後見制度には以下のメリット・デメリットがあります。

任意後見制度のメリット

任意後見制度のデメリット

・自分で後見人を選べる

・後見人の権限を自由に設定できる

・契約内容の登記で後見人の地位を公的に証明できる

・任意後見監督人が選任されるまで後見業務を開始できない

・任意後見契約書の公正証書化が必須

・任意後見監督人の報酬が発生する

・取消権がない

任意後見人の権限は任意後見契約によって柔軟に決定できるため、法定後見に比べて自由度が高くなっています

また、任意後見契約は登記できるので、被後見人が認知症になっても行政手続きや預金の引き出しなどがスムーズです。

ただし、認知症を発症しても、任意後見監督人が選任されなければ後見業務を開始できません

公正証書の作成費用や任意後見監督人の報酬が発生し、取消権の付与もできないので、財産の保護が不十分になる可能性があるでしょう。

さいごに|認知症対策に迷ったときは弁護士に相談してみましょう

認知症になると法律行為が制限されてしまい、財産も凍結されるので、成年後見制度が必要になるでしょう。

ただし、成年後見制度は柔軟な財産管理に向いておらず、基本的には被後見人が亡くなるまで後見人報酬が発生するため、ランニングコストも考えておかなければなりません。

後見人によって財産が保全されると、生前贈与もできなくなるので、健康なうちに家族信託などの財産管理方法も検討しておく必要があります。

自分自身や親の認知症対策に迷ったときは、まず弁護士に相談するとよいでしょう。

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この記事の監修者
法律事務所エムグレン
武藏 元
弁護士歴10年以上にわたって多数の相続トラブル解決に尽力。多数のメディア出演、著書の執筆実績をもつ。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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