被相続人が死亡して相続が開始した場合、法定相続人や受遺者などが被相続人の財産を承継します。
ただし、分籍や養子縁組などによって除籍された子どもがいたりする場合、相続関係が複雑になってトラブルに発展するおそれがあります。
なるべく穏便かつスムーズに相続手続きを済ませるためにも、本記事で除籍された子どもの相続に関する正しい知識を押さえておきましょう。
本記事では、除籍された子どもの相続権や相続割合、除籍された子どもの相続権がなくなるケースや、相続トラブルを防ぐ方法などを解説します。
結論として、基本的に除籍された子どもにも相続権は認められます。
除籍されたからといって、親子関係・血縁関係が消滅するわけではありません。
除籍後に親が亡くなった場合は、法定相続人として相続財産を受け取ることが可能です。
以下では、戸籍・除籍・相続権などの定義について解説します。
戸籍とは、出生から死亡までの身分関係を登録・公証する公的な帳簿のことです。
以下のとおり、戸籍は現在戸籍・除籍・改製原戸籍の3種類に分類されます。
なお、除籍に関する書類は、除籍謄本と除籍抄本の2種類に区別されます。
除籍謄本とは「除籍簿に記載されている事項の全部が記載されたもの」、除籍抄本とは「除籍簿に記載されている事項の一部のみが記載されたもの」を指します。
基本的に遺産相続では除籍謄本の提出が求められ、以下のような場面で必要となります。

相続権とは、亡くなった人である被相続人の財産を受け継ぐ権利のことです。
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上図のとおり、民法では相続人の優先順位が定められています(民法第887条、第889条、第890条)。
遺産相続では「被相続人の配偶者」と「最も相続順位の高い血族」が相続人となります。
民法では「法定相続分」として各相続人の取り分の基準なども定められており、相続人の組み合わせによって割合は異なります。
遺産相続の優先順位や相続割合など、ルールの詳細を知りたい方は以下の関連記事をご覧ください。
基本的に除籍された子どもにも相続権は認められますが、例外的に以下のようなケースでは相続を受けることができません。
ここでは、除籍された子どもの相続権がなくなるケースについて解説します。
子どもに対する相続人廃除が認められた場合、子どもが持つ相続権は失われます。
相続人廃除とは、被相続人の意思に基づき、特定の相続人から相続権を剥奪する制度のことです。
相続人廃除が認められるケースとしては、以下の3つがあります(民法第892条)。
子どもが上記のいずれかの要件を満たしており、家庭裁判所にて申し立てが認められた場合は、相続権が剥奪されて相続財産を受け取ることができなくなります。
子どもに対して相続欠格が適用された場合も、子どもが持つ相続権は失われます。
相続欠格とは、被相続人の意思とは関係なく、特定の相続人の相続権が剥奪される制度のことです。
相続欠格が適用されるケースとしては、以下の5つがあります(民法第891条)。
子どもが上記のいずれかに該当する場合、強制的に相続権が剥奪されて相続財産を受け取ることができなくなります。
子どもが相続放棄をおこなった場合も、子どもが持つ相続権は失われます。
相続放棄とは、被相続人が保有するプラスの財産もマイナスの財産も一切受け取らずに放棄する手続きのことです。
相続放棄は相続方法の一種で、ほかには単純承認や限定承認などがあります。
子どもが相続放棄の手続きをおこない、家庭裁判所にて相続放棄の申述が受理された場合は、相続権を失って相続財産を受け取ることができなくなります。
除籍となり戸籍から除かれた場合、相続にはどのような影響が生じるのでしょうか。
ここでは、以下のような除籍の原因別に、相続で生じる影響について解説します。
夫婦が離婚した場合、原則として戸籍筆頭者の戸籍はそのまま残りますが、戸籍筆頭者ではない側については除籍となり、以下のいずれかを選択することになります。
離婚成立後は元夫と元妻は他人同士となり、一方が亡くなったとしても法定相続人の地位からは外れているため、相続を受けることはできません。
なお、元配偶者との間に生まれた子どもに関しては、法定相続人のまま地位は変わりません。
たとえば「再婚をした」「再婚相手との間に子どもが生まれた」というような場合でも、元配偶者との間に生まれた子どもは相続権を有したままです。
子どもが18歳以上の場合、現在の戸籍から抜けて自分が戸籍筆頭者となる「分籍」という手続きが可能です。
たとえば「両親との関係が悪化して縁を切りたい」「社会人になったタイミングで独り立ちをしたい」というような場面でおこなわれます。
分籍をすると、現在の戸籍の身分事項には「分籍」と記載されて除籍扱いになり、分籍後に結婚や離婚などをしても親側の戸籍には表示されません。
なお、子どもが分籍によって除籍となっても、あくまでも戸籍上の取扱いに変化が生じるだけに過ぎません。
分籍後も親子関係自体は継続しており、親が亡くなった際に子どもは法定相続人として相続を受けることができます。
子どもが死亡した場合は、親の戸籍から除籍されます。
「被相続人である親よりも先に子どもが亡くなっている」というようなケースでは、被相続人の子どもの代わりに孫などが相続人となる「代襲相続」が発生します(民法第887条2項)。
代襲相続では、すでに孫も亡くなっている場合はひ孫、ひ孫も亡くなっている場合は玄孫というように、基本的に血縁関係が続く限り再代襲が続きます。
なお、相続人廃除や相続欠格などのケースでも代襲相続は発生します。
代襲相続の範囲や注意点など、代襲相続の詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
特別養子縁組が家庭裁判所に認められた場合、子どもは実親の戸籍から除籍されます。
特別養子縁組とは、子どもと実親との間の法的な親子関係を解消し、養子と養親との間で実の親子と同様の親子関係を結ぶ制度のことです(民法第817条の2~11)。
特別養子縁組をすると、養子の氏は特別養子縁組をした養親のものが付され、父母欄には養父・養母の氏名が掲載されます。
なお、養子縁組制度は普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があり、それぞれ遺産相続での扱いが異なります。
普通養子縁組の場合、養子は養親が亡くなった場合も実親が亡くなった場合も相続人として相続を受けることができます。
一方、特別養子縁組の場合、養子は養親が亡くなった場合しか相続を受けることができず、実親が亡くなった場合は相続権を有さないという点で大きく異なります。
ここでは、除籍された子どもの法定相続割合についてケースごとに解説します。

被相続人に配偶者がいる場合、除籍された子どもの法定相続割合は2分の1となります(民法第900条1号)。
上図のとおり、法定相続割合は相続人の組み合わせによって異なりますが、除籍された子どもでも相続順位は第1位のままで変わりません。
なお、子どもが複数人いる場合は、2分の1を子ども同士で均等に分け合うことになります。
たとえば「相続財産:500万円、相続人:配偶者と子ども2人(A・B)」というようなケースでは、配偶者の法定相続割合は250万円、子どもA・Bの法定相続割合は125万円ずつとなります。

被相続人に配偶者がいない場合、除籍された子どもの法定相続割合は100%となります。
上図のとおり、除籍された子どもでも相続順位は第1位のままで変わらないため、子どもが全て受け取ることができます。
なお、被相続人に配偶者がいる場合と同様、子どもが複数人いる場合は子ども同士で均等に分け合うことになります。
相続発生時は、除籍された子どもがいることでトラブルに発展する可能性があります。
たとえば「親子の関係性が悪化し、子どもが分籍をして除籍となった」というようなケースでは、電話番号や住所などがわからずに連絡が取れないこともあります。
相続人同士で遺産分割協議をおこなって分割方法を決定する際は、相続人全員の参加が必要となるため、行方のわからない相続人がいると相続手続きが難航するおそれがあります。
子どもの行方を探るためには、戸籍の附票から住所を調べて手紙を送ったり、知人や探偵に協力を求めたりするなどの対応が必要となります。
どれだけ手を尽くしても子どもの行方が把握できなければ、失踪宣告や不在者財産管理人制度などの利用も検討せざるを得ません。
相続人と連絡が取れない場合の対処法については、以下の関連記事で詳しく解説しています。
除籍された子どもがいて相続トラブルが不安なら、以下のような対応を検討しましょう。
ここでは、除籍された子どもがいる場合の相続トラブルの予防策を解説します。
相続トラブルが不安なら、生前のうちに遺言書を作成しておくのが効果的です。
遺言書は被相続人の意思を反映させるための書類であり、基本的に以下のような事項を記載します。
なかでも相続トラブルの予防に効果的なのが、遺産の分割方法に関する文言です。
たとえば、以下のように希望の分割方法を記載しておくことで、残された家族達からの納得も得やすく、穏便な形での相続が望めます。
また、遺言書を作成する場合は、公正証書遺言とすることがおすすめです。
公正証書遺言とは、公証役場において、二人以上の証人立ち会いのもと、遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人が作成する方式の遺言です。
公正証書遺言は、公証人が作成することから、法的に有効な内容で作成してもらえますし、
原本が公証役場で保管されるので、紛失・毀損・隠匿等のおそれがないというメリットがあります。
相続トラブルが不安なら、弁護士に相談しておくことも検討しましょう。
たしかに遺言書の作成も効果的ではあるものの、遺言書の書き方にはルールが定められており、適切な形式で作成されていないと効力が無効になるおそれがあります。
また、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」という最低限の取り分が保障されており、遺言内容が遺留分を侵害している場合は遺留分侵害額請求に発展することもあります。
弁護士に相談すれば、トラブルにならない適切な遺言書の作成方法をアドバイスしてくれますし、自分での作成が不安なら作成代行を依頼することも可能です。
多くの法律事務所では初回無料相談を実施しているので、まずは一度相談してみることをおすすめします。
ここでは、除籍された子どもの相続に関するよくある質問について解説します。
基本的には、除籍された子どもにも相続権は認められます。
除籍されたからといって親子関係・血縁関係が消滅するわけではないため、親が亡くなった場合は法定相続人として相続財産を受け取ることが可能です。
例外として「子どもが特別養子縁組によって除籍された」というようなケースでは、扱いが異なります。
特別養子縁組の場合、養子は養親が亡くなった場合しか相続を受けることができず、実親が亡くなった場合は相続権を有しません。
なるべく除籍された子どもに相続させたくない場合は、以下のような方法が有効です。
ただし、基本的に除籍された子どもにも遺留分があり、一定の取り分が保障されています。
強引な手段を用いて相続させないようにすると揉め事に発展するおそれもあるため、穏便に済ませたい場合は弁護士に一度相談しておくことをおすすめします。
相続させたくない人がいる場合の対処法について詳しく知りたい方は、以下の関連記事もご覧ください。
除籍謄本の取得方法としては、以下の3つの方法があります。
除籍謄本は自分でも取得できますが、弁護士や司法書士などに依頼することも可能です。
除籍謄本の取得にかかる費用や必要書類など、除籍謄本の詳細については以下の関連記事をご覧ください。
除籍された子どもでも、基本的に法定相続人として相続財産を受け取ることが可能です。
ただし、なかには子どもと連絡が付かずに相続手続きが難航したり、遺産の分け方について揉めたりするケースもあり、トラブルが不安な方は弁護士への相談がおすすめです。
弁護士なら、相続トラブルの未然防止に向けたアドバイスが望めるほか、遺言書の作成代行や相続トラブルの解決なども依頼でき、心強い味方として尽力してくれます。
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