遺産相続をおこなう際には、遺産分割について協議をおこなわなければいけないケースがあります。
遺産分割協議をおこなう際の注意点として、相続人全員が協議に参加することが必要です。
ただし、相続人の中には長い間連絡を取っておらず、どこで何をしているかまったくわからないという場合もあるでしょう。
そこで本記事では、連絡が取れない相続人がいる場合の相続手続きについて解説します。
相続人と連絡が取れず、悩んでいるという方はぜひ本記事を参考にしてください。
連絡が取れない相続人がいる場合、まずは遺言書の有無を確認しましょう。
遺言書が存在するのであれば、連絡が取れない相続人と無理に連絡を取らなくてもよいケースがあります。
以下では、連絡が取れない相続人がいる場合の相続手続きのポイントについてケース別に解説します。
法的に有効な遺言書が存在し、その遺言書の内容に沿って遺産相続をおこなう場合、相続人の中に連絡が取れない人がいても無理に連絡を取る必要はありません。
遺産分割協議をおこなわずとも、遺言書や遺言書の検認済証明書などが確保できれば、銀行の名義変更をはじめとした相続に関する手続きをおこなうことが可能です。
なお、公正証書遺言や自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、裁判所の検認手続が不要となります。
遺言書が存在しない場合や、何らかの理由により遺言書を無視して遺産相続をおこなう場合、遺産分割協議をおこなう必要があります。
遺産分割協議をおこなう際には、相続人全員が参加し、作成する遺産分割協議書に相続人全員が署名および捺印することが必要です。
遺産分割協議に参加していない相続人がいると、遺産分割協議の内容は無効となります。
そのため、連絡が取れない相続人がいるなら、どうにかして連絡を取る必要があるといえます。
では、連絡が取れない相続人がいる場合、どのように探したらよいのでしょうか。
以下では、相続人を見つけるための4つの方法について紹介します。
相続人の住所が不明なら、戸籍の附票を手に入れることで住所がわかる可能性があります。
戸籍の附票とは戸籍が作られてから現在に至るまでの住所が記録されている証明書のことで、本籍地の市区町村にて戸籍の原本とともに管理されています。
戸籍の附票を入手し相続人の住所が判明したら、手紙を送るなどの方法でまずは連絡をとってみましょう。
ケースによっては、住民票および戸籍の附票に記載の住所に住んでおらず連絡が取れない可能性も存在します。
その場合には、知り合いや友人関係などを尋ね、現在の住所をなんとか辿ってみるしかありません。
まずは、できる限りの行動をおこなってみましょう。
知人のつてを辿っても相続人の行方がわからないなら、SNSを利用してみるのもひとつの方法といえます。
SNSでは直接関わりのない人を相手に情報発信をおこなったり情報提供をしてもらったりすることが可能です。
無料で利用できるので、それらしき人の情報が得られないか利用してみましょう。
さまざまな方法を利用し調査したものの情報が得られない場合は、探偵や興信所など人探しプロの力を借りることを検討してみましょう。
ただし、探偵や興信所を利用する際には数十万円~の費用が発生するため、最終手段として覚えておいてください。
相続人の居住地や連絡先がわかっても、連絡を拒否されることで相続手続きがすすまないことがあります。
連絡を無視する相続人がいる場合は以下の対象方法を検討してみましょう。
まずはできる限りの手段を使って連絡を取りましょう。
手紙などのおこないやすいコンタクトからはじめ、それでもリアクションがない場合は、電話や直接住所を訪問するなどの方法を検討してください。
また連絡を取る際には相続手続きに協力しないことで、相続財産をいつまでも得られないことや相続税の申告が遅れペナルティが課される可能性があることを伝えてみましょう。
マイナスの財産がある場合は、相続放棄の期限が迫っていることを伝えるのも有効です。
また、遺産分割調停や弁護士への相談を検討している旨を伝えることで対応してもらえる可能性もあります。
遺産分割調停とは遺産分割の協議が相続人間のみでまとまらない場合に、裁判所の調停委員が間に入り、分割方法について当事者間の話し合いを調整する制度のことを指します。
また、遺産分割調停を経ても遺産分割の方針に合意が得られなかった場合は、遺産分割審判に自動的に移行し、裁判所による「審判」という裁判により、強制的に遺産分割がなされることになります。
連絡が取れない相続人について調査をしたものの行方がわからない場合は、以下2つの手続きを検討しましょう。
不在者財産管理人とは、行方がわからない人に代わって財産の管理や遺産の分割、不動産の売却などをおこなう役割を担う人のことを指します。
もし相続人の行方がわからない場合は、不在者財産管理人を選任することで、行方不明の相続人に代わり遺産分割協議に参加し、相続手続きをすすめることが可能になります。
ただし、不在者財産管理人を選任すると報酬が発生するなどのデメリットも存在します。
不在者財産管理人についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせて参考にしてください。
相続人の行方がわからない場合は、失踪宣告を出してもらうのもひとつの選択肢といえます。
失踪宣告を出してもらうことで行方不明の相続人を法律上死亡したと扱うことができ、遺産分割を進めることが可能です。
失踪宣告を利用するためには、行方不明の相続人が以下2つの要件を満たしている必要があります。
失踪宣告をおこなう際の方法や注意点については、以下の記事で紹介しているのであわせて参考にしてください。
連絡が取れない相続人がいる場合は弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談するメリットは、以下のとおりです。
相続人と連絡が取れないと一概にいっても、そもそも相続人の所在地がわからないのか、それとも連絡に応じてくれないのか状況はさまざまです。
また、相続の状況によっては相続人と連絡が取れないこと以外のトラブルを抱えている可能性もあるでしょう。
連絡が取れない相続人の問題や遺産相続全体について弁護士に相談することで、状況に応じた最適な解決策を提示してもらうことが可能です。
遺産相続について弁護士に依頼することで、遺産分割協議に代理人として参加してもらうことが可能です。
弁護士は、依頼人の希望や利益を最大化することを目的に遺産分割協議をおこなってくれるため、交渉が苦手だという方は弁護士への相談を検討してみてください。
連絡が取れない相続人がいる場合、遺産分割調停の申し立てや不在者財産管理人の選任などさまざまな法的手続きが必要になることがあります。
弁護士に依頼することで、状況に合った最適なものを選択し、手続きを進めてもらうことが可能です。
時間や労力をかけずに、よりスムーズに解決に近づくことができるでしょう。
連絡が取れない相続人がいる場合は、以下のポイントに注意してください。
遺産分割協議には、相続人全員の参加が求められます。
相続人が全員参加していない遺産分割協議はのちに無効とされるため、効力を得られないことに注意してください。
相続人と連絡が取れないからといって、無理やり遺産分割協議をおこなってしまうことは絶対に避けましょう。
遺産分割をおこなうためには相続人全員の協力が大切です。
そのため、特定の相続人と連絡がうまく取れなかったとしても、そのことを責めたり失礼に接したりすることはやめましょう。
相続人への対応を誤ると、強固な対応を取られ遺産分割に非協力的になり、本来不必要だった法的手続きを取らざるを得なくなる可能性もあります。
無駄な争いを避けるためにも、相続人とのコミュニケーションは慎重におこないましょう。
連絡が取れない相続人がいるからといって、相続手続きを放置することはおすすめしません。
相続の手続きを放置してしまうと相続できたはずの財産を活用できなくなるほか、相続税を抑えるための税制が活用できなくなってしまうなどさまざまなデメリットが存在します。
どのように対応すべきかわからない場合や、対応が面倒に感じてしまった場合は、弁護士に相談し対応を一任することを検討してもよいでしょう。
連絡が取れない相続人がいる場合、まずは戸籍の附票を活用して現住所を確認してみましょう。
それでもコンタクトが取れない状況が続くのであれば、不在者財産管理人の選任や失踪宣告などの法的手続きをおこなうことで相続手続きを進められる場合があります。
とはいえ、相続人と連絡が取れないのであれば、状況に合わせた柔軟な対応を迫られるときもあるでしょう。
もし対応に悩んでしまったのであれば、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
本記事を参考に、弁護士のアドバイスを受けながら遺産相続手続きをすすめていきましょう。
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