相続の手続きや遺言書の作成をすすめるにあたり、相続と遺贈の違いがわからず悩んでいませんか?
相続と遺贈は、いずれも被相続人の死後に財産を譲り渡す手続きです。
それぞれ特徴が異なるため、できるだけ自分の希望を実現するよう相続をすすめるためには、両者の特徴と違いを把握しておく必要があります。
本記事では、遺贈と相続の違い、遺贈・相続いずれを選ぶ場合も気を付けるべき相続税の2割加算、相続と遺贈の違いがわかりにくい理由について解説します。
本記事を読めば遺贈・相続の違いを理解し、スムーズに相続手続きをはじめられるようになります。
相続と遺贈はともに被相続人が亡くなった際に遺産を分ける手続きという点では共通していますが、具体的な手続きの内容などには大きな違いがあります。
そのため、相続と遺贈のメリット・デメリットを十分に理解し、各自の事情に応じた対応を検討することが重要です。
相続とは、亡くなった人の財産や権利義務を、相続人(法定相続人)が引き継ぐことをいいます。
法定相続人とは、民法で被相続人の財産を引き継ぐ権利を認められた人のことです。
配偶者は常に法定相続人となり、それ以外は以下の相続順位によって親族が法定相続人となります。
遺贈とは、遺言によって被相続人の指定する特定の誰かに遺産を譲ることです。
遺贈では財産の引き継ぎ先として、必ずしも法定相続人を指定する必要はありません。
その他の個人や、法人などの組織に遺産を譲ることもできます。
遺贈は「特定遺贈」「包括遺贈」の2種類に分類されます。
特定遺贈とは、遺贈する特定の財産を具体的に指定する遺贈の種類です。
たとえば「Aには●●の土地を遺贈する」と遺贈する財産を具体的に特定すれば、特定遺贈となります。
一方で包括遺贈とは遺贈する財産を特定するのでなく、遺贈する財産の割合を指定する遺贈の種類です。
たとえば「全財産をAに遺贈する」「遺産のうち5分の1をBに遺贈する」と指定すれば、包括遺贈となります。
包括遺贈であれば、特定遺贈のように指定された財産が失われなにも受け取れなくなるということはありません。
(例:自動車の遺贈を約束されていたが、被相続人死亡時にはその自動車が壊れて廃車されていた)
一方、包括遺贈の場合は、借金などマイナスの財産も受け継がねばなりません。
どちらにもメリット・デメリットがあるので、どちらを選べばよいか分からない場合は弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。
相続と遺贈にはどのような違いがあるのでしょうか?
ここでは、相続と遺贈の相違点3つをそれぞれ解説していきます。
相続と遺贈は、それぞれ手段が異なります。
相続では民法に基づいて遺産が分配されるのに対し、遺贈では被相続人の自由な意思に基づく遺言によって遺産が分配されます。
そのため遺贈であれば、相続に比べより柔軟かつ自由に遺産を分配することが可能です。
相続では、財産を引き継ぐのは前述した法定相続人です。
一方で遺贈では、財産を受け取る相手は法定相続人以外の第三者であってもかまいません。
遺贈先として親族以外の個人、法人、団体などが指定されることもあります。
相続と遺贈には手続き面での大きな違いがあります。
たとえば被相続人の不動産を譲り渡すにあたり、相続の場合は相続人が単独で相続登記をおこなえます。
遺贈では、必要な書類も多くなります。
また農地の取得や借地権・借家権の取得においても、相続のほうが手間なく手続きできます。
相続・遺贈のいずれかで遺産を譲り受ける場合も、「相続税の2割加算」には注意が必要です。
相続税の2割加算とは、相続や遺贈などで財産を受け取る相手が以下のいずれか以外だった場合に相続税が2割加算となることを指します。
なお被相続人の養子も一親等の親族として2割加算の対象になりませんが、孫を養子縁組していた場合は2割加算の対象となります。
反対に以下に遺産を譲り渡した場合は、相続・遺贈いずれかに関わらず相続税の2割加算が適用されるのです。
遺贈の場合、相続に比べ財産の譲り先となる範囲が広い分、結果的に2割加算の対象となるケースが多くなると考えられます。
相続税が2割加算される理由として、以下2つがあげられると言われています。
被相続人の配偶者や子どもといった法定相続人は、被相続人が亡くなったあと生計をたてるため遺産を相続する必要があると考えられます。
しかし、それ以外が遺産を譲り受けた場合は偶然性が高く想定外の利益を得たと考えることもできるわけです。
そのため配偶者や一親等以外の親族が遺産を譲り受けた場合は、2割加算の相続税を納める必要があると考えられます。
第二の理由は孫が相続することで、結果的に子どもの世代が納める筈だった相続税が免れられることです。
免れられた一世代分を加味し、2割加算の相続税が科せられると考えられます。
相続と遺贈の違いはなぜわかりにくいのでしょうか?
ここでは、相続と遺贈がわかりにくい理由3つをそれぞれ解説していきます。
遺贈と相続は、いずれも被相続人の死亡が起因となっておこなわれます。
(相続開始の原因)
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。
(遺言の効力の発生時期)
第九百八十五条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
そのため、遺贈・相続の違いがわかりづらくなっているのでしょう。
なお、遺言に停止条件をつけることで、効力が発生するタイミングを変更することもできます。
停止条件付きの遺言は、たとえば「親族Bが成人したら土地を譲る」といったものです。
この場合、親族Bが成人した時点から遺贈の効力が生じます。
(遺言の効力の発生時期)
第九百八十五条 (中略)
2 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
遺贈・相続どちらでも、法定相続人が遺産を受け取る可能性がある点も、両者の違いがわかりづらい理由でしょう。
遺贈の相手は誰であっても対象となります。
相続の場合、相続人として法定相続人が定められているため、どちらも法定相続人が受け取る可能性があります。
遺言書では、被相続人の財産を譲り渡すという意味で、「相続させる」「遺贈する」両方の言葉が使われることがあります。
そのため、この2つの違いをわかり辛くしているともいえるでしょう。
遺言書でどちらの言葉が使われていたとしても、大きな違いはないとされます。
「相続させる」「遺贈する」の違いは、登記手続や登録免許税の金額といった細かい点にすぎないとされているのです。
なお公証人が遺言書を作成する際は、遺言により遺産に含まれる不動産を特定の人が譲り受ける場合、以下のように言葉を使い分けています。
財産の取り扱いについて迷った場合、早い段階で弁護士に相談しなければ思わぬ事態に発展する可能性があります。
相続や遺贈が発生したら、法的手続きや遺言書の確認などさまざまな準備をおこなわなければなりません。
ただ、相続や遺贈に関する全ての手続きをご自身でおこなうのは難しいものです。
そのため、法的手続きの必要が出てきた段階で迅速に弁護士に相談する必要があるでしょう。
弁護士に依頼することで面倒な手続きを一任でき、当事者同士のトラブルにも迅速に対応してもらえます。
そして、弁護士などの法律の専門家を探す方法のひとつに、「ベンナビ」の活用があります。
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相続や遺贈が発生した場合には、なるべく早めに弁護士へ相談してみることをおすすめします。
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