相続欠格(そうぞくけっかく)とは、特定の相続人が民法891条の相続欠格事由に当てはまる場合に相続権を失わせる制度のことで、遺贈を受けることもできなくなりますが、欠格者の子は代襲相続が可能になります。
相続では、被相続人の意思が反映される遺言が最も有効とされています。
しかし、遺言があるからといって、被相続人の財産がすべて無くなってしまわないよう、一定の相続人の遺産相続分を保証する遺留分というものがあります。
この遺留分を遺留分権利者に請求されると、遺言書では「◯◯には財産を渡さない」と明記していても、遺留分が渡ることになります。
遺留分に関しては「遺留分とは|割合と受け取れる人・遺留分侵害額請求の手順を解説」を確認してください。
ですから、不当に相続を受け取ろうとしたり、過去に被相続人に対しての素行が悪かった相続人に対しては、相続欠格・相続人廃除という制度があり、相続の権利を剥奪することができます。
現実問題で滅多にあるものでは無いですが、この制度がなければ秩序が乱れます。
今回は、相続欠格についての内容と、相続人から廃除する方法、また、相続人から排除された場合の撤回方法を解説していきます。
遺産を渡したくない人がいて、相続欠格になるか知りたい方へ
相続人に遺産を渡したくない人がいるが、相続欠格になるケースなのかわからない...とお困りではありませんか?
結論からいうと、遺言書を盗んだor隠蔽した、無理やり遺言書を書かせようとしてきたなどのケースでは、相続欠格になる可能性が高いです。他にも相続欠格になるケースはありますので、一度相続に強い弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを得ることができます。
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この記事に記載の情報は2024年05月22日時点のものです
相続欠格事由に当てはまれば相続欠格になります。
しかし、この相続欠格事由は通常の素行の悪さ程度では当てはまらず、遺産を不正に手に入れるための行動を起こした人物に当てはまります。
このことは、民法891条に明記されていますので、そちらを砕いて解説していきます。相続欠格になる事由は5つです。
1.故意に被相続人又は同順位以上の相続人を死亡、または死亡させようとした場合
これは、財産をもっている被相続人と、相続を優先的に受けられる、又は同等の立場の人物を死亡させるか、死亡させようとして刑に処せられた場合に相続欠格になります。
殺人罪や殺人未遂罪だけではなく、介護が必要な被相続人に食べ物を与えないなどの遺棄罪も当てはまります。
例えば、父親が莫大な財産をもっていて、自分に財産が多く相続されるために母親や兄弟を殺害したり、早く財産を手に入れるために父親を殺害しようとして刑罰に処せられると、相続欠格になります。ドラマなどで見たことのある展開ですね。
2.被相続人が殺害されたのを知って告発や告訴をおこなわなかった場合
被相続人が殺害されたことを知っていて、殺害者をかばうために告発・告訴をおこなわかった人物も相続欠格になります。
ここでは、告訴のできない小さな子どもや、殺害者が配偶者や直系血族の場合は除かれます。
3.詐欺・脅迫によって被相続人の遺言を取り消し・変更を妨げた場合
被相続人が遺言や、遺言の取り消し・変更を考えていることを知り、それを詐欺や恐喝で妨害すると、相続欠格になります。
4.詐欺や脅迫によって被相続人の遺言を取り消し・変更・妨害させた場合
もちろん、実際に被相続人に詐欺や脅迫を利用し、遺言・取り消し・変更させることも相続欠格になります。
例えば、息子Aが父親に刃物を突き付け「『私の遺産の半分は息子Aに相続する』と書け」と、脅迫することです。
5.被相続人の遺言書偽造・変造・破棄・隠蔽した場合
遺言書を発見した際に、この遺言書があると自分が不利になると考え、遺言書を偽造・変造・破棄・隠蔽することも相続欠格になります。
相続欠格は強制的に相続人の権利を失います。
一方、相続廃除は被相続人の意思により、相続人の権利を失わせることができます。
相続欠格人以外で財産を渡したくない場合は相続廃除をおこなう
相続欠格は相続欠格事由に当てはまると、被相続人の意思に関係なく相続人の権利を失います。
しかし、ご覧のとおり相続欠格事由に当てはまるようなことは滅多にないことです。
では、被相続人が「こんな親不孝者に財産を渡したくない」と思っていても、相続欠格以外では、相続人の権利を失わせることはできないのでしょうか。
そのような被相続人のために相続廃除というものがあります。
かといって、被相続人が単に気に入らないからという理由で、相続廃除をできるものではありません。
また、相続廃除の対象は遺留分を有する推定相続人のみになります。
ですので、遺留分が認められていない兄弟姉妹には、相続廃除ができません。
兄弟姉妹に財産を渡したくない場合は、遺言書を作成しそのことを記載します。
相続廃除の対象となる人物の要点
そのうえで相続廃除をできる人物の要点は、以下のようになります。
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被相続人を虐待した
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被相続人に対して、極度の屈辱を与えた
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被相続人の財産を不当に処分した
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ギャンブルなどを繰り返し、被相続人に多額の借金を支払わせた
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浪費・遊興・犯罪・反社会団体への加入・異性問題を繰り返すなどの親不孝行為
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重大な犯罪を起こし、有罪判決を受けた(一般的には、5年以上の懲役判決)
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愛人と同棲するなどの不貞行為をする配偶者
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財産目当ての婚姻関係
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財産目当ての養子縁組
さらに相続廃除は、家庭裁判所での手続きが必要になります。
相続廃除の手続きは以下の2種類になります。
生前の廃除申し立て
生前に被相続人に相続人に相続廃除をする場合は、家庭裁判所に対して廃除請求をおこないます。
その後、調停の審判により相続人を排除するかどうかが決定されます。
遺言による廃除
また、被相続人は遺言で法定相続人の相続廃除もできます。
この場合、被相続人が死亡して相続が開始された後に、遺言執行者が家庭裁判所に廃除請求をします。
ですので、遺言で相続廃除をする場合は、同じく遺言執行者も決めていなければなりません。
遺言執行者に関しては「遺言執行者(人)とは|弁護士はなれる?仕事内容や選び方などを解説!」をご確認下さい。
相続欠格や相続廃除がされると、相続人の権利が無くなります。
詳しく説明すると以下のようになります。
子どもがいる場合は、子どもが代襲相続人になる
もし、相続欠格者(廃除者)に子どもがいた場合は、その子どもが代襲相続人になることができます。
代襲相続人とは、推定相続人が死亡・相続欠格・廃除により相続権を失った際に、代わりに相続する人のことです。
代襲相続人に関して詳しくは「代襲相続はどこまで続く?範囲や割合、基礎控除や相続放棄との関係を解説」を参照下さい。
相続欠格は、特定の被相続人との間のみ
また、相続欠格は、特定の被相続人との間に起きるもので、別の被相続人の相続まで欠格になるわけではありません。
ですので、例えば父親の相続の際に相続欠格になったとしても、後の母親の相続の際にまで引き継がれるわけではありません。
ただし、親を殺した者は祖父母を代襲相続できないと解されています。
相続開始後に相続欠格事由が生じた場合は、相続手続きのやり直し
もし、相続が開始した後に相続欠格事由が生じ、相続欠格者が出た場合は、それまでの相続手続きは、相続開始時まで遡ることになります。
それでは、反対に相続欠格や相続廃除によって相続権を失ってしまった方は、相続権を再び回復させることはできないのでしょうか。
相続欠格の撤回は、被相続人の生前に相続欠格事由を許してもらい、別の方法で相続を受け取るしかありません。
相続廃除の場合、被相続人によって相続廃除の取消しをすることができます。
相続欠格を撤回してもらうには
相続欠格者の相続権を回復させることはできませんが、被相続人が生前に相続欠格者を許すことがあれば、財産を受け取ることは可能です。
例えば、生前贈与や生命保険等の受取人指定です。
しかし、被相続人が生前に許し、なおかつ生前贈与等をしてもらわなくてはなりませんので、可能性としてはかなり低いでしょう。
※遺贈に関しては、欠格者は受遺能力も失うとされているため(民法965条)、生前に許してもらったからといって遺言書で遺贈をしてもらうことはできません。
相続廃除を撤回してもらうには
相続廃除の場合の撤回方法は、大きく分けて2種類あります。
一つは、被相続人の生前に相続廃除理由を許してもらい、家庭裁判所に廃除の取消しを請求して貰う方法です。
もう一つは、遺言書によって相続廃除を取り消して貰う方法です。
この場合も、後に相続執行者が家庭裁判所で手続きをおこないます。
いずれにせよ、こちらも被相続人から過去の相続廃除に当てはまる非行等を許してもらうしかありません。
財産が関与してくると目先の利益を優先して、とんでもない行動をとってしまう人も出てきてしまいます。
または、昔から素行の悪い人物も家族の中にはいたりするものです。
そういった人物に財産を渡さないためにも、相続欠格や相続廃除があります。
少しでも真っ当な生き方をしている人物に、多くの財産を渡せるように、相続は慎重に考えたいものです。
遺産を渡したくない人がいて、相続欠格になるか知りたい方へ
相続人に遺産を渡したくない人がいるが、相続欠格になるケースなのかわからない...とお困りではありませんか?
結論からいうと、遺言書を盗んだor隠蔽した、無理やり遺言書を書かせようとしてきたなどのケースでは、相続欠格になる可能性が高いです。他にも相続欠格になるケースはありますので、一度相続に強い弁護士に相談することをおすすめします。
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相続トラブルを解決し遺産を多く受け取る方法とは?
相続トラブルで一番多い金額は5,500万円以下です。
これは相続トラブル全体の約75%にあたり、さらに1,000万円以下だけに絞って見ても、全体の32%を占めています。
相続トラブルはお金持ちや、ましてテレビの出来事では決してないのです。
<参考資料:平成25年度司法統計>
さらに、下の表を見ると遺産分割調停、すなわち遺産分割トラブルが右肩上がりで増えてきていることがわかります。
<参考資料:平成25年度司法統計>
相続における自己解決と弁護士介入の違いとは?
相続するのはあなただけではありません。相続人の平均人数は3名程度です。
<参考資料:国税庁 統計年報>
相続人が多いほど、相続トラブルが発生しやすく複雑になるのは避けようのない事実です。
トラブル回避のために重要なのは、早めに専門知識のある第三者を介入させることです。一般的に専門知識を持つ代表格といえば相続問題を得意とする弁護士です。
弁護士を介入させると費用が高くつくイメージがありますが、結果的にはトラブルを解消できるだけではなく、相続面でも優位に働き、金銭的にもメリットを得られることが多くなります。
相続に強い弁護士の選び方と相続相談の具体例
相続に際し、雇うのは弁護士なら誰でもいいというわけではありません。
最大のメリットが得られる弁護士の選び方は、以下を参考にしてください。
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1、相続が得意な弁護士を選ぶ
相続トラブルの解決実績が豊富だったり、相続問題に注力していたりする弁護士を選びましょう。
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例えば、医者に「内科」「外科」「皮膚科」「耳鼻科」…と専門分野があるように、弁護士にも「相続」「離婚」「借金」「企業法務」…といった得意分野があります。
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相続があまり得意でない弁護士に依頼しても十分なメリットを受けられない可能性があるため、相続を得意とする弁護士に依頼することが大切です。
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2、初回相談料の安い弁護士を選ぶ
初回相談は自分と相性の良い弁護士を選ぶチャンスですので、1件だけではなく複数と話をしてみましょう。
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件数を重ねるために初回の相談料を必ず確認しましょう。(相談無料〜3000円程度をオススメします)
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3、近隣の弁護士を選ぶ
相続の弁護士は全国対応していることも多いのですが、やはり対面での関係性構築や急な事態に対応できる近隣の弁護士事務所が最善策といえるでしょう。
相続で弁護士が介入するデメリットは、あまりありません。
あえて挙げるなら、依頼に費用がかかる点でしょうか。
しかし、以下の費用対効果の例をご覧いただけば、実際には費用がデメリットとはならないことが、おわかりいただけると思います。
不公平な遺言書に対し弁護士を通じて遺留分を主張した例
3,000万円の遺産を遺して親が世を去った。全財産をほかの相続人に相続させる旨の遺言書があり、このままでは自分は一切遺産を受け取ることができない。
弁護士に依頼した結果
遺留分侵害額請求により、自分の遺留分割合である8分の1の遺産を受け取ることができた。
費用対効果
自分が受け取ることができた遺産は375万円。弁護士費用は84万円。そのまま泣き寝入りしていれば1円も受け取ることができなかったが、結果的に弁護士費用を差し引いても291万円を手にすることができた。
また、相続トラブルに関しては、初期費用(着手金)はかかるものの、費用の大部分は成果報酬方式です。
つまり依頼料はデメリットにならないのです。
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使い方も簡単なので、近隣の事務所を確認だけでもしてみることをおすすめします。
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