- お世話になった人に遺産の全てを相続したいけど、遺留分で揉めない方法はある?
- 相続させたくない人がいるけど、遺留分を請求させない方法はある?
自身の相続について遺言書の作成を検討していても、遺留分請求によって自分の希望通りの遺産分割ができないのでは…と不安になっている方も多いでしょう。
特定の相続人に全ての財産を相続させるために遺言書で「特定の相続人に全ての財産を相続させる」と指定するときには遺留分という大きなハードルが存在します。
この記事では、遺言書と遺留分の関係について、それぞれの基礎知識を紹介するとともに、生前にできる遺留分対策についても解説します。
遺言書の作成でお悩みの方へ
相続させたくない人がいる場合や、特定の相続人に遺産を残したい場合の遺言書の作成について悩んでいませんか?
結論からいうと、遺言書を作成して相続人の遺留分を奪うことはできないため、少しでも生前に遺留分対策をしておきたいなら、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。
弁護士に相談することで以下のようなメリットを得ることができます。
- 遺言書の内容についてアドバイスを得えられる
- 生前にできる遺留分対策を教えてもらえる
- 依頼すれば、遺言書の作成を任せられる
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この記事に記載の情報は2024年06月27日時点のものです
遺言書と遺留分はどっちが優先される?
遺言書と遺留分はどちらが優先されるのでしょうか。
結論からいえば、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、遺留分が優先されます。
遺言書があっても遺留分は請求できる
全ての財産を一人に相続させる場合、必ずといっていいほど遺留分は問題になります。
遺留分は、相続人に与えられる最低限保障される遺産の取得分であるため、いくら遺言者であっても相続人の権利である遺留分を完全に奪うことはできません。
遺留分侵害額請求権は必ず行使されるとは限りませんが、遺産をもらえない相続人が権利を行使する場合があります。
そのため、全ての財産を特定の人に遺したい場合には、遺留分についての対策をしておかなくてはなりません。
遺留分を請求できないケース
遺言で遺留分を侵害していたとしても、相続人全員が必ず遺留分を請求できるとは限りません。
以下のようなケースでは、遺留分が請求できないため、注意しましょう。
相続人に遺留分がない
被相続人に対して、以下のような続柄の相続人は、遺留分を請求する権利はありません。
上記の法定相続人は、財産をもらわなくても生活に困窮しないと考えられることや、被相続人の財産構築における貢献度が低いと考えられるため、遺留分自体が認められていないのです。
また、自らの意思で相続を放棄した方や、被相続人に対して生前に著しい非行や悪行をおこなったことで相続人廃除が認められた場合は、遺留分を請求することはできません。
遺留分侵害額請求の時効が成立している
遺留分の侵害額請求権には、時効があります。
以下のいずれかに該当するときには、遺留分が請求できなくなります。
- 相続開始と遺留分の侵害を知ったときから1年が経過した
- 遺留分侵害額請求の意思表示をしてから5年が経過した
- 相続開始や遺留分の侵害を知らずに10年が経過した
上記いずれかの場合に、時効が成立するため遺留分の侵害額請求権が消滅します。
遺留分侵害額請求を考えるのであれば、期間が経過する前に、手続きをおこなう必要があるでしょう。
遺留分を侵害している遺言書の例
遺留分を侵害している遺言書の例として、複数の相続人がいるにもかかわらず、特定の相続人に多くの財産を与えるケースなどが考えられます。
具体的な例は、以下のとおりです。
- 相続人はいるが特定の相続人に全ての財産を与えるといった内容の遺言書
- 相続人以外の第三者に財産を与えるといった内容の遺言書
遺言書の内容が相続人にとって不公平なものであれば、遺留分を侵害している可能性が高くなります。
遺留分の侵害が疑われる場合は、弁護士に相談するなどして対応を検討しましょう。
遺留分を侵害していても遺言自体が即無効になるわけではない
遺言書が遺留分を侵害していたとしても、遺言自体が即無効になるわけではありません。
いったんは遺言書に書かれたとおりに財産を分けることになります。
遺留分侵害額請求された場合には、遺言書どおりに分けた財産のうち、多く受け取った方が、遺留分相当額の金銭を支払うことになります。
遺言書の内容が即無効になるわけではないため、注意しましょう。
遺言が遺留分を侵害している場合は遺留分侵害額請求をおこなう
残された遺言が遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額請求をおこないます。
遺留分侵害額請求の流れは、以下のとおりです。
- 遺留分の権利と時効を確認する
- 遺留分侵害額請求の通知をおこなう
- 支払金額や期限について話し合う
- 調停や訴訟で解決する
遺留分を請求する権利があることを確認したら、相手方に内容証明郵便による通知をおこないます。
そして、相手方と話し合いをおこない支払金額や期限を決めます。
話し合いでまとまらない場合には、調停や訴訟で解決しましょう。
遺留分を侵害する遺言書がある場合は遺言無効を主張できることもある
遺言書に無効原因があるような場合には、遺言無効を主張することで遺産分割自体のやり直しが認められる可能性があります。
遺言の無効を主張する際には、遺言書が以下のいずれかに該当するか確認します。
- 民法所定の要件を満たしていない
- 自筆証書遺言で記載に重大な不備がある
- 公正証書遺言で証人が適切でない
- 複数人で作成されている
- 偽造・強要によって作成されている
- 重大な事実誤認がある
- 公序良俗に反している
- 作成当時に本人に遺言能力がなかった
- 新しい遺言書が存在する
このような場合には、遺言の無効を理由として遺産分割協議を行うこともあり得ます。
合意できない場合には遺言無効確認訴訟を提訴して、裁判所に判断を求めます。
【遺言作成者向け】遺言書で生前にできる遺留分対策
遺言書と遺留分は、遺留分が優先されるため、遺言書で相続分を指定したとしても、相続人の遺留分を奪うことはできません。
しかし、生前に対策をすることである程度は希望どおりの相続をおこなうことが可能です。
ここでは、遺言によっておこなえる遺留分対策について紹介します。
ただし、最終的には遺留分権利者の意思に従うことになるのは変わらない点には注意してください。
①付言事項(メッセージ)を残す
「付言事項」とは、遺言書の中でも法的な効力が発生しない部分のことで、たとえば「残される妻をよろしく頼む」といった内容を遺言書内に残したりするケースがこれにあたります。
誰かに遺産の全てを相続させたい場合は、遺言書に付言事項として「遺留分侵害額請求をしないで欲しい」旨をメッセージとして残すのも手といえます。
付言時効には法的強制力がないので、結局のところ遺留分権利者の良心に訴えかけるための手段に過ぎませんが、故人の最後のメッセージとして心情的な部分で考慮される可能性があります。
このとき、直接的に「遺留分侵害額請求をしないで!」と書いてもいいのですが、一人に相続をさせる理由や気持ちを真摯に伝えるのがおすすめです。
遺言者の明確な意思が伝わるような文章を心掛けると相続人やその周囲の人たちからも理解が得やすいでしょう。
生前贈与や特別受益を理由とする付言事項
遺留分の対象となる財産には生前の贈与も含まれるので、生前に与えた事業資金や住宅購入費用、結婚費用等の贈与を理由に遺留分請求をおこなわないよう希望するという方法もあります。
たとえば「長女には生前に結婚費用と住宅資金として既に3,000万円超を与えているので、死後の財産は不動産も含め次女に全て相続させ、遺留分も請求しないで欲しい」といった内容を遺言書に記載するとよいでしょう。
また、子どもが年の離れた兄弟などである場合は、贈与等の総額にも差がある可能性があるので、具体的な金額等を比較して記載しておくと相続人の理解が得やすいかもしれません。
②生前に相続人全員で協議する
遺言書の作成の際に相続人全員にその旨や内容を通知したり、親族全員で話し合いをするという方法もあります。
遺言書は遺言者が自由に作成できるものなので、本来であれば誰にも相談する必要はありませんし、同居していない相続人には特に連絡等を取らないことが多いです。
しかし、あえて遺言書を作成する前にその旨と内容を相続人に伝えることで後々のトラブルを回避できるかもしれません。
もちろん反発による争いが生じる危険も否めませんが、全員の落としどころを探る意味でも決して無意味ではありません。
また、話し合いの際に遺留分権利者が納得してくれれば、「遺留分の放棄」という手続きを取ることも可能です。
実際には遺留分を放棄するだけの生前贈与等の代償性があったことなどを家庭裁判所に申し立てて認めてもらわなければなりませんが、そういったことを含めて相続人の理解を得て遺言書を作成するというのが一番いいのかもしれません。
さいごに
遺言と遺留分は切っても切れない関係です。
遺言書によって相続分を指定することは、相続人同士のトラブルや揉め事のきっかけになってしまうケースが多いため、特に遺留分を侵害するような遺言をする場合には、生前に充分な対策を練っておくことが大切です。
自分で遺言書を作成することに不安がある場合は、弁護士などの専門家に頼ることも検討しましょう。