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遺言書と遺留分の関係|どっちが優先される?生前にできる遺留分対策法

川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士
監修記事
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自身の相続について遺言書の作成を検討していても、遺留分請求によって自分の希望通りの遺産分割ができないのでは…と不安になっている方も多いでしょう。

特定の相続人に全ての財産を相続させるために遺言書で「特定の相続人に全ての財産を相続させる」と指定するときには遺留分という大きなハードルが存在します。

この記事では、遺言書と遺留分の関係について、それぞれの基礎知識を紹介するとともに、生前にできる遺留分対策についても解説します。

遺言書の作成でお悩みの方へ

相続させたくない人がいる場合や、特定の相続人に遺産を残したい場合の遺言書の作成について悩んでいませんか?

 

結論からいうと、遺言書を作成して相続人の遺留分を奪うことはできないため、少しでも生前に遺留分対策をしておきたいなら、弁護士に相談・依頼するのがおすすめです。

 

弁護士に相談することで以下のようなメリットを得ることができます。

  • 遺言書の内容についてアドバイスを得えられる
  • 生前にできる遺留分対策を教えてもらえる
  • 依頼すれば、遺言書の作成を任せられる

当サイトでは、遺言書の作成を得意とする弁護士を地域別で検索することができます。

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この記事に記載の情報は2023年12月05日時点のものです

遺言書と遺留分についての基礎知識

遺言書と遺留分の関係について知るために、まずはそれぞれの基礎知識を押さえておきましょう。

ここでは、遺留分とはどんなものか、遺言書の効力にはどんなものがあるかを解説します。

遺留分とは

遺留分(いりゅうぶん)とは、特定の相続人が最低限取得することのできる遺産の取り分のことをいいます。

亡くなった人が遺言を遺していたような場合でもこの遺留分を奪うことはできません。

遺留分は、配偶者・子ども(代襲相続人・非嫡出子[婚外子]も含む)・直系尊属に保障されていますが、下記のような特徴があります。

  1. 廃除された相続人や相続欠格の該当者には認められない
  2. 財産を遺す人=被相続人であっても遺留分を奪うことはできない
  3. 被相続人の兄弟姉妹には遺留分はない

もっとも、遺留分を侵害するような内容の遺言書であっても、法的には有効です。

ただ、遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求」という方法で遺留分を取り戻すことができるので、やはり被相続人が相続人の遺留分を完全に奪うことはできません。

遺留分の割合

遺留分は、権利者の種類によって遺産のうちどれくらいが遺留分として確保されるかという「総体的遺留分」が決まり、その後それぞれの相続人に「個別的遺留分」として分配されれます。

総体的遺留分は、相続人に配偶者・子どもが含まれる場合は相続財産の1/2、相続人が直系尊属のみの場合は相続財産の1/3となります。

個別的遺留分は原則として法定相続分の1/2で、たとえば配偶者と子どもが相続人である場合は総体的遺留分が相続財産の1/2、配偶者の遺留分は1/4、子どもの遺留分も1/4(複数いる場合は等分)となります。

相続人

遺留分権利者

総体的遺留分

法定相続分

個別的遺留分

配偶者のみ

配偶者

相続財産の1/2

100%

1/2

配偶者と子ども

配偶者

相続財産の1/2

1/2

1/4

子ども

1/2

1/4

配偶者と直系尊属

配偶者

相続財産の1/2

2/3

1/3

直系尊属

1/3

1/6

配偶者と兄弟姉妹

配偶者

相続財産の1/2

3/4

1/2

兄弟姉妹

1/4

なし

子どものみ

子ども

相続財産の1/2

100%

1/2

直系尊属のみ

直系尊属

相続財産の1/3

100%

1/3

遺言書とは

遺言書とは、被相続人が生前に自らの遺産の分割方法を指定するために作成できる文書のことを指します。

遺言書のない相続は法定相続人が法定相続分に従って相続することが原則ですが、遺言書が残された相続ではその遺言書の通りの相続がされるのが原則となります。

遺言は、法律で定められた事項に限りその効力を生じ、遺言者が自身の財産をどのように相続させるかについて強力な権利をもつことになりますが、その分遺言書の作成には厳格な決まりがあります。

遺言には一般的に、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の普通方式の3種類と、緊急時などに利用される特別方式の4種類の形式があります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者本人が自筆で遺言の全文と氏名・日付を書き、署名押印をすることで作成します。

用紙や筆記具等に指定がないことから、遺言書の中で一番手軽に作成可能です。

自筆証書遺言では証人も不要ですが、他人の代筆やワープロ・パソコンでの作成、録音などは無効になり、必ず本文が本人の自筆であることが条件になります。

なお、法改正により、財産目録は自筆ではなくてもよいことになりました。

自筆証書遺言は、手軽に作成できる反面、保管方法によっては紛失や偽造の危険性があります。

また、書き方によっては法的に不備が生じることがあるので、充分に注意して作成しなければなりません。

公正証書遺言

遺言書の中で最も安全で確実といわれるのが「公正証書遺言」です。

公正証書遺言は公証役場で公証人の立ち合いのもとで作成するため、内容が公証人によって確認され、原本が公証役場に保管されるので紛失や偽造の心配がありません。

ただし、公証役場に伴う証人二人以上については、相続に利害関係のある人(配偶者や子ども、未成年者など)は選任することができないことや、事前に準備する書類が多いといったデメリットもあります。

秘密証書遺言

亡くなるまでは他人に知られたくない事柄を遺言する場合に利用されるのが「秘密証書遺言」です。

秘密証書遺言は署名・捺印以外は代筆やワープロでの作成でも問題ありませんが、公証役場で手続きが必要になります。

また、遺言書の作成の事実は公証役場の記録に残りますが、遺言書は公証役場に保管されないので、紛失や内容の記載の不備などの心配があります。

遺言書の効果が及ぶ範囲

遺言は、遺言者が死亡して初めて効力が生じます。

生前に何度も作り直すこと(取り消し・撤回)は可能ですが、法で定められた方式で適宜おこなわなければ無効になってしまいます。

作成日の異なる遺言が複数ある場合は、作成日の新しいものを優先して扱い、それよりも古い遺言については新しいものと食い違う部分だけを無効として扱うことになります。

つまり、古い遺言全体が無効になるというわけではなく、新しい遺言に書いてあることと違う部分は無効として扱われ、新しい遺言に書いていない部分についてはそのまま古い遺言が有効として扱われます。

遺言では、下記の項目について法的効力を有します。

相続に関すること

  • 推定相続人の廃除又は廃除の取消し(民法893条・894条)
  • 相続分の指定又は指定の委託(民法902条)
  • 遺産分割方法の指定又は指定の委託(民法908条)
  • 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言
  • 特別受益の持戻し免除(民法903条3項)
  • 遺産分割の禁止(民法908条)
  • 相続人相互の担保責任についての指定(民法914条)

相続財産の処分に関すること

  • 遺贈(民法964条)
  • 財団法人の設立[寄付行為](一般社団法人及び一般財団法人に関する法律158条2項)
  • 信託の設定(信託法2条)

身分に関すること

  • 子の認知(民法781条2項)
  • 未成年後見人・未成年後見監督人の指定(民法839条・848条)

遺言の執行に関すること

  • 遺言執行者の指定又は指定の委託(民法1006条)
  • 遺言執行者の職務内容の指定(民法1016条1項ただし書き、1017条1項ただし書き)

その他

  • 祭祀承継者の指定(民法897条1項ただし書き)
  • 遺言の取消(民法1022条)
  • 生命保険金の受取人の指定・変更(保険法44条1項)

遺言書と遺留分はどっちが優先される?

全ての財産を一人に相続させる場合、必ずといっていいほど遺留分は問題になります。

しかし、結論からいえば、いくら遺言者であっても相続人の権利である遺留分を完全に奪うことはできません

遺留分侵害額請求権は必ず行使されるとは限りませんが、遺産をもらえない相続人が権利を行使すると意思を示したときに請求の効果は発生します。

また法律は被相続人の生前であれば相続人の希望で「遺留分の放棄」ができると定めていますが、遺留分権利者である相続人の意思次第なので、強制はできません。

そのため、全ての財産を特定の人に遺したい場合には、遺留分についての対策をしておかなくてはなりません。

なお、遺留分は相続があったことを知ったときから1年、または相続の発生から10年で時効となり消滅します。

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遺言書で生前にできる遺留分対策

遺言書と遺留分は、遺留分が優先されるため、遺言書で相続分を指定したとしても、相続人の遺留分を奪うことはできません。

しかし、生前に対策をすることである程度は希望どおりの相続をおこなうことが可能です。

ここでは、遺言によっておこなえる遺留分対策について紹介します。

ただし、最終的には遺留分権利者の意思に従うことになるのは変わらない点には注意してください。

①遺留分請求をする財産の指定をする

遺留分対策で最も有効なのが、遺留分請求をする財産の指定です。

たとえば、建て替えたばかりの家と預貯金を残された妻に相続させる場合を例に挙げてみましょう。

相続の際、遺留分権利者である子が遺留分として家を共有にして欲しいと主張したならば、残される妻のために家を構えても、いずれ子ども夫婦に乗っ取られてしまう危険があります。

このような場合は、遺留分侵害額請求をするならばどの財産からするべきかをあらかじめ指定しておくことが有効になります。

遺留分請求は原則として、遺贈・後にされた贈与(新しい贈与)・先にされた贈与(古い贈与)の順でおこなわれますが、この順番を指定によって変更することはできません。

ただし、請求をする財産の指定をしておくと、遺贈が複数ある場合に価額に比例して同時に請求しなくて済むため、相続させたい財産にある程度の優先順位をつけることができます。

今回の例でいえば、請求する財産を①預貯金②不動産というように指定しておけば、預貯金から返還がなされ、不動産を守れる可能性が高くなります。

②付言事項(メッセージ)を残す

「付言事項」とは、遺言書の中でも法的な効力が発生しない部分のことで、たとえば「残される妻をよろしく頼む」といった内容を遺言書内に残したりするケースがこれにあたります。

誰かに遺産の全てを相続させたい場合は、遺言書に付言事項として「遺留分侵害額請求をしないで欲しい」旨をメッセージとして残すのも手といえます。

付言時効には法的強制力がないので、結局のところ遺留分権利者の良心に訴えかけるための手段に過ぎませんが、故人の最後のメッセージとして心情的な部分で考慮される可能性があります。

このとき、直接的に「遺留分侵害額請求をしないで!」と書いてもいいのですが、一人に相続をさせる理由や気持ちを真摯に伝えるのがおすすめです。

遺言者の明確な意思が伝わるような文章を心掛けると相続人やその周囲の人たちからも理解が得やすいでしょう。

生前贈与や特別受益を理由とする付言事項

遺留分の対象となる財産には生前の贈与も含まれるので、生前に与えた事業資金や住宅購入費用、結婚費用等の贈与を理由に遺留分請求をおこなわないよう希望するという方法もあります。

たとえば「長女には生前に結婚費用と住宅資金として既に3,000万円超を与えているので、死後の財産は不動産も含め次女に全て相続させ、遺留分も請求しないで欲しい」といった内容を遺言書に記載するとよいでしょう。

また、子どもが年の離れた兄弟などである場合は、贈与等の総額にも差がある可能性あがあるので、具体的な金額等を比較して記載しておくと相続人の理解が得やすいかもしれません。

③生前に相続人全員で協議する

遺言書の作成の際に相続人全員にその旨や内容を通知したり、親族全員で話し合いをするという方法もあります。

遺言書は遺言者が自由に作成できるものなので、本来であれば誰にも相談する必要はありませんし、同居していない相続人には特に連絡等を取らないことが多いです。

しかし、あえて遺言書を作成する前にその旨と内容を相続人に伝えることで後々のトラブルを回避できるかもしれません。

もちろん反発による争いが生じる危険も否めませんが、全員の落としどころを探る意味でも決して無意味ではありません。

また、話し合いの際に遺留分権利者が納得してくれれば、「遺留分の放棄」という手続きを取ることも可能です。

実際には遺留分を放棄するだけの生前贈与等の代償性があったことなどを家庭裁判所に申し立てて認めてもらわなければなりませんが、そういったことを含めて相続人の理解を得て遺言書を作成するというのが一番いいのかもしれません。

さいごに

遺言と遺留分は切っても切れない関係です。

遺言書によって相続分を指定することは、相続人同士のトラブルや揉め事のきっかけになってしまうケースが多いため、特に遺留分を侵害するような遺言をする場合には、生前に充分な対策を練っておくことが大切です。

自分で遺言書を作成することに不安がある場合は、弁護士などの専門家に頼ることも検討しましょう。

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この記事の監修者
川崎相続遺言法律事務所
関口 英紀 弁護士 (神奈川県弁護士会)
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ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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