遺産分割に関する弁護士相談をご検討中の方へ
亡くなった方の株式の配当金について、このように悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
亡くなった方の配当金を誰が受け取るのかや税金がかかるのかどうかについては、配当金を受け取り権利が発生したタイミングや被相続人が亡くなったタイミングなどによって異なるため、正しい知識を身につけておくことが大切です。
本記事は、被相続人名義の配当金をどう扱えばよいかについて詳しく解説します。
最後まで読めば、相続と配当金についてまったく知識がない方でも自信を持って手続きを進められるようになるはずです。
被相続人名義の配当金の扱い方は、相続財産として相続税の課税対象になる場合と、株式を相続した相続人の所得として所得税の課税対象になる場合の2パターンに分かれます。
そして、相続税と所得税のどちらの課税対象になるかは「相続開始日」と「配当金に関連する日付」の関係性によって異なります。
まずは、この判断の基準となるいくつかの日付について、以下の表で基本的な知識を整理しておきましょう。
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配当基準日 |
配当元の会社が決算日をむかえて配当金を受け取る権利が確定する日 |
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配当確定日 |
株主総会の決議や取締役会の決議を経て配当金の金額が確定する日 |
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受取日 |
株主が実際に配当を受け取る日 |
|
相続開始日 |
被相続人が亡くなった日 |
ここからは、相続開始日とその他の日付の関係性を以下4つのパターンに分け、それぞれのケースで配当金がどのように扱われるのかを解説します。
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
相続開始日が配当基準日よりも前だった場合、配当金を受け取る権利が確定する前に株式が相続人に引き継がれることになります。
つまり、配当金を受け取る権利を持つのは、株式を相続した「相続人」自身です。
そのため、この配当金は相続財産とはみなされず、相続税の対象にはなりません。
その代わり、配当金は相続人の収入とみなされ、所得税と住民税の課税対象となります。
相続人自身の給与など、ほかの所得と合算して確定申告が必要になる場合がありますので注意しましょう。
相続開始日が、配当基準日の翌日から配当確定日までの間にある場合、被相続人が配当金を受け取る権利を持っているため、その後受け取る配当金についても被相続人の財産とみなされます。
なお、配当確定日以前の時点では、まだ具体的な配当金額は決まっていません。
このように将来配当金を受け取れるであろう権利のことを、「配当期待権」と呼びます。
相続開始日が、配当確定日の翌日から受取日までの間にあった場合、配当金は相続財産として扱われ、相続税の課税対象となります。
なお、このように金額がしているものの受取日より前の状況にある配当金のことを「未収配当金」と呼びます。
相続開始日が配当金の受取日よりもあとだった場合、配当金はすでに被相続人に対して支払われています。
そのため、当然に相続財産として扱われ、相続税の課税対象となります。
なお、受取日を過ぎているにもかかわらず受け取っていない配当金は「未受領配当金」と呼ばれます。
配当金の相続では、配当金を実際のお金として相続する以外にも「配当期待権」や「未収配当金」といった権利として相続するケースも少なくありません。
そこで悩むのが、相続税の申告において配当期待権や未収配当金をどのように評価するかです。
実は、配当金期待権と未収配当金は以下のようにシンプルな方法で評価することができます。
|
予定配当金額 - 源泉徴収税率 × 保有株式数 |
なお、予定配当金額は該当銘柄の決算短信などで確認可能なほか、実際の金額は配当金計算書や配当金受取口座の入出金明細等でも把握できます。
また、源泉徴収税率については保有する株式が上場株式と非上場株式のどちらかによって以下のように異なります。
配当期待権や未収配当金は、株式の相続手続きが完了すれば、新しい株主である相続人の口座に自動的に振り込まれることがほとんどです。
しかし、すでに受取日を過ぎているにもかかわらず、被相続人が受け取っていなかった未受領配当金は、受け取りのために別途手続きが必要になります。
未受領配当金の相続手続きは、以下の2つのパターンです。
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
被相続人宛ての郵便物の中に配当金領収証や郵便振替支払通知書といった書類がある場合、ゆうちょ銀行または指定の銀行窓口に、以下の書類を持参することで配当金を受け取れます。
なお、金融機関や発行会社によって必要書類が異なる場合があります。事前に電話などで確認するとスムーズです。
配当金領収証が見つからない場合や、見つかっても払渡期間が過ぎてしまっている場合は、銀行窓口では手続きできません。
この場合は、株式を発行している会社が株式関連の事務を委託している「株主名簿管理人」に連絡を取る必要があります。
株主名簿管理人の多くは、信託銀行が担っています。
どの信託銀行が株主名簿管理人なのかは、株式を発行している会社のウェブサイトで確認するか、会社に直接問い合わせてみましょう。
手続きのおおまかな流れは以下のとおりです。
払渡期間を過ぎた配当金も、会社法上は支払い義務がなくなるわけではありません。
多くの会社では、定款で除斥期間を定めていますが、通常3年〜5年程度は支払い請求が可能です。諦めずに問い合わせてみましょう。
最後に、そもそも配当金はどのような方法で株主に支払われるのか、基本的な仕組みを知っておきましょう。
被相続人がどの方法を選択していたかによって、お金がどこにあるか、相続人が何をすべきかが変わってきます。
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受け取り方法 |
説明 |
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配当金領収証方式 |
発行会社から郵送される配当金領収証を、ゆうちょ銀行や銀行の窓口に持参して現金で受け取る方法。 |
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登録配当金受領口座方式 |
保有している全ての株式の配当金を、あらかじめ指定したひとつの銀行口座で受け取る方法。 |
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株式数比例配分方式 |
株式を預けている証券会社の口座で、配当金を受け取る方法。 |
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個別銘柄指定方式 |
保有する株式の銘柄ごとに、受け取りたい銀行口座を指定する方法。 |
被相続人がどの方法を選んでいたかを確認するには、証券会社から定期的に送られてくる取引残高報告書や、発行会社からの配当金計算書などの郵便物を探してみるのがよいでしょう。
これらの書類が見つかれば、株式の状況や配当金の受け取り方法を把握する手がかりになります。
今回は、相続で発生する配当金の扱いや税金、手続きについて解説しました。
最後に、本記事の重要なポイントを振り返っておきましょう。
専門用語も多く、複雑に感じられたかもしれませんが、ご自身のケースがどのパターンに当てはまるかを確認し、一つひとつ落ち着いて対応すれば、決して難しい手続きではありません。
それでも、遺産分割協議がまとまらない、相続財産がほかにもたくさんあって手続きが大変、といった場合には、相続問題に注力する弁護士や税理士などの専門家に相談することも有効な選択肢です。
弁護士や税理士に相談すれば、配当だけでなく、ほかに相続財産がないか調査し、相続人間の公平な遺産分割のサポートや税金手続きを任せることができます。
無料相談に対応している法律事務所もありますので、気軽な気持ちで相談してみましょう。
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