大切な方が亡くなった際におこなわなければならないのが、相続手続きです。
相続手続きではやるべきことがたくさんあり、中には手続き自体に費用が発生するものもあります。
専門家に依頼すれば相続手続きを楽に済ませることができますが、費用が気になって依頼するかどうか悩んでいる方も多いでしょう。
また「そもそも相続手続きをどのように進めればよいのかわからない」という方もいるでしょう。
本記事では、相続手続きでかかる費用や専門家に依頼する場合の費用相場、相続手続きの流れや弁護士に依頼するメリットなどを解説します。
まずは、自分で相続手続きをおこなう場合の費用や、専門家に依頼する場合の費用相場について解説します。
相続手続きを自分でおこなう場合の費用相場は、3,000円以上です。
相続財産が預貯金・株・証券・貴金属・骨董品といった現物のみの場合は、必要書類を取得するだけで特別な費用はかからず、基本的には3,000円程度で手続きが済みます。
一方、相続財産に不動産や車などが含まれる場合は別途手続きが必要で、相場よりも高くなる可能性があります。
相続手続きを専門家に依頼する場合の費用相場は、10万円以上です。
なお、相続する財産額に応じて費用を設定しているケースが多く、相続財産が高額な場合などは100万円以上かかることもあります。
また、相続人の数・相続財産の種類や数・依頼する専門家などによっても費用は異なり、依頼先ごとの費用相場については「相続手続きを依頼する場合の費用」で後述します。
相続発生後はさまざまな手続きが必要で、主に以下のような手続きで費用がかかります。
ここでは、自分で相続手続きをおこなう際にかかる費用について、相続手続きの流れに沿って解説します。
相続で費用がかかる手続き |
費用 |
遺言書の検認 |
950円 |
相続人調査・相続財産調査 |
ケースによって異なる |
相続放棄 |
2,350円程度 |
相続財産の名義変更(不動産の場合) |
不動産の評価額によって異なる |
相続財産の名義変更(車両の場合) |
3,000円~ |
ここでは、相続発生後の流れや、各手続きでかかる費用について解説します。
まず、相続発生後は以下の書類を提出する必要があります。
【相続開始後7日以内に届け出が必要なもの】
【相続開始後10日以内に届け出が必要なもの】
※被相続人のマイナンバー登録がされている場合は提出不要
【相続開始後14日以内に届け出が必要なもの】
※被相続人のマイナンバー登録がされている場合は提出不要
なお、各種届け出については費用が発生するケースはありません。各届け出先で必要な書類がある場合は、取得費用のみかかることを覚えておきましょう。
届け出が完了したあとは、被相続人が遺言書を作成していないか確認します。
遺言書は自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類あり、それぞれ以下のような特徴があります。
上記のうち、被相続人が自分で保管していた自筆証書遺言や秘密証書遺言については、開封前に裁判所へ検認の申し立てをする必要があります。
申し立て先は「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」で、検認手続きの費用は以下のとおりです。
項目 |
費用 |
遺言書1通あたりの収入印紙代 |
800円 |
検認証明書の収入印紙代 |
150円 |
合計 |
950円 |
なお、「被相続人が自筆証書遺言を作成して法務局で保管されていた場合」や「公正証書遺言を作成していた場合」などは検認手続きは不要で、上記の費用はかかりません。
遺産分割にあたっては「相続人は誰なのか」「相続財産はどのくらいあるのか」を調査する必要があります。
相続人調査では、どのような相続関係でも共通して以下の書類が必要です。
さらに「被相続人に子どもがいる場合」や「子どもがいない場合」など、状況に応じて上記以外の戸籍謄本も集めなければならず、ケースごとの必要書類については以下の関連記事で解説しています。
戸籍謄本は本籍地の役所で取得でき、1通あたり450円程度かかります。
相続財産調査では、預貯金・有価証券・不動産といったプラスの財産だけでなく、ローン・借入金といったマイナスの財産なども全て調査します。
その際、相続財産によっては書類を取り寄せたりするために手数料などがかかる場合もあります。
相続放棄とは「被相続人の財産を一切相続しないこと」を指します。
相続放棄をするには「相続の開始を知ったときから3ヵ月以内」に家庭裁判所へ申し立てなければならず、期限を過ぎた場合は原則として単純承認に移行します。
単純承認とは「被相続人の財産を全て相続すること」を指し、被相続人が借金を抱えていた場合などは自分が返済することになります。
相続放棄の手続きでは、以下の費用がかかります。
項目 |
費用 |
相続放棄申述書の収入印紙代 |
800円 |
郵便切手代 |
500円程度 |
被相続人の住民票除票または戸籍附票 |
300円程度 |
被相続人の死亡が記載されている戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本 |
750円 |
合計 |
2,350円程度 |
準確定申告とは「被相続人の生前の取得について、代わりに相続人が確定申告すること」です。
被相続人の勤務先が年末調整をしているなど、そもそも確定申告が要らない場合は準確定申告も不要です。
準確定申告が必要な場合は、「相続の開始を知ったときから4ヵ月以内」に所得税額の計算・申告などの手続きを済ませなければいけません。
準確定申告の申告先は「被相続人の最後の住所地を管轄する税務署」です。
遺産分割協議では「誰がどのくらい財産を相続するのか」について相続人全員で話し合います。
話し合いがまとまったら、合意内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて分割方法を話し合い、それでも決着が付かない場合は審判手続きに移行して解決を図ります。
なお、遺産分割協議については弁護士などの専門家にサポートを依頼するケースも多く、場合によっては費用が発生することを覚えておきましょう。
遺産分割協議が完了したあとは、合意内容どおりに財産を分け合って、名義変更の手続きをおこないます。
名義変更する際、基本的に預貯金・株・証券・貴金属・骨董品などについては費用はかかりません。
一方、不動産や車両などについては費用がかかります。
車両の場合は3,000円~ですが、不動産の場合は取得した不動産の評価額に応じた費用がかかるため、ケースによって異なることを覚えておきましょう。
相続税には基礎控除という非課税枠があり、相続財産が以下の金額を下回る場合は申告不要です。
基本的に、相続財産が上記の金額を上回る場合は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内」に相続税の計算・申告などの手続きを済ませなければいけません。
相続税の申告先は「被相続人の最後の住所地を管轄する税務署」です。
なお、相続税には基礎控除のほかにも控除制度があり、一定の要件を満たしている場合は税負担を軽減できます。
相続手続きでかかる費用は、相続財産の種類によっても異なります。ここでは、相続手続きの費用について財産ごとに解説します。
不動産を相続する場合、相続登記という名義変更手続きが必要です。
相続登記では、登録免許税や必要書類の取得費用などがかかり、計算式・金額は以下のとおりです。
項目 |
費用 |
登録免許税 |
固定資産税評価額×0.4% |
必要書類の取得費用 |
5,000円程度 |
固定資産税評価額は、市区町村から毎年送付される「固定資産税の納税通知書」に添付されている課税明細書に記載されています。
相続登記の必要書類は以下のとおりで、手続きは「不動産の所在地を管轄する法務局」でおこないます。
預貯金を相続する場合、銀行で以下のような書類を提出する必要があります。
基本的に手続き自体には費用はかかりませんが、必要書類を取得するための費用はかかります。
株や証券などを相続する場合、金融機関・証券会社で以下のような書類を提出する必要があります。
基本的に手続き自体には費用はかかりませんが、必要書類を取得するための費用はかかります。
貴金属や骨董品などを相続する場合、特別な手続きは必要なく、費用はかかりません。
遺産分割協議などが終了した際に自動的に名義変更となり、自由に売却することもできます。
車両を相続する場合、名義変更のために以下の費用がかかります。
項目 |
費用 |
移転登録手数料 |
500円 |
車庫証明取得費用 |
2,500円〜3,500円(地域によって異なる) |
ナンバープレート代 |
1,500円程度(地域によって異なり、ナンバー変更がない場合は不要) |
名義変更代行料 |
5,000円程度(自分で手続きする場合は不要) |
合計 |
3,000円~1万500円程度 |
なお、手続きは運輸局でおこないますが、流れや必要書類などは運輸局によって異なり、詳しくは運輸局ホームページを確認してください。
相続手続きの依頼先としては、弁護士・司法書士・税理士・行政書士・銀行・信託銀行などがあります。
ここでは、相続手続きの依頼費用について解説します。
弁護士に依頼する場合、20万円以上はかかると考えておきましょう。
弁護士費用の内訳としては以下のとおりです。
項目 |
費用 |
相談料 |
30分あたり5,000円程度 ※初回相談無料の事務所もある |
着手金 |
20万円~50万円程度 |
報酬金 |
法律事務所によって異なる |
実費(交通費・郵便代など) |
ケースに応じて異なる |
日当(弁護士が事務所を離れて対応する場合) |
1日あたり3万円~10万円程度 |
弁護士の場合、相続手続き全般に対応しているというのが特徴です。
また、弁護士であれば遺産分割でトラブルが起きた場合に代理人としても対応してくれるため、相続手続きが不安な方や相続トラブルの悩みがある方などはおすすめです。
司法書士に依頼する場合、費用相場は5万円〜10万円程度です。
司法書士は登記関係の手続きを得意としており、特に不動産を相続する場合はおすすめです。
ただし、弁護士のようなトラブル対応は依頼できません。
税理士に依頼する場合、費用相場は遺産総額の0.5%〜1.0%程度です。
税理士は税金に関する手続きに対応しており、相続では相続税の計算・申告や節税のアドバイスなどをしてくれます。
相続税を正しく計算・申告できるか不安な方は、税理士に相談しましょう。
行政書士に依頼する場合、費用相場は10万円以上です。
行政書士は公的文書の作成手続きに対応しており、相続では遺産分割協議書や相続関係図の作成、相続人調査などを依頼できます。
ただし、相続トラブルや相続登記などには対応しておらず、弁護士や司法書士に比べると業務範囲は限られています。
銀行や信託銀行に依頼する場合、費用相場は100万円以上です。
銀行や信託銀行の場合、銀行員が直接相続手続きをするのではなく、提携先の弁護士や税理士などに依頼して手続きが進められます。
依頼先を自分で探す手間が省けるというメリットはあるものの、仲介手数料が発生して費用が高額になりやすいというデメリットがあります。
相続人同士で円滑に相続が進めば理想的ですが、お金が関わる手続きでは相続トラブルが起こることもよくあります。
相続手続きをトラブルやミスなく済ませたいのであれば、相続手続き全般に対応している弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼することで、以下のようなメリットが望めます。
相続人同士で話し合いを進めようとすると、財産の分け方について意見が一致しなかったり、喧嘩になったりすることもあります。
弁護士であれば、話し合いの進め方やトラブルが起きた際の対処法などについてアドバイスが受けられるため、話し合いがまとまりやすくなります。
また、自分の代わりに交渉対応を依頼することもでき、弁護士に合理的な主張をしてもらうことで不利な条件で話し合いが成立するリスクを抑えられます。
相続では、遺言書の検認・相続放棄・相続登記などのさまざまな手続きが必要で、非常に労力がかかります。
弁護士は相続手続きの大部分を代行でき、税理士や行政書士などとは違って調停や審判などの裁判手続きにも対応しています。
弁護士に依頼すれば、相続手続きにかかる負担を軽減でき、ミスなく進めてくれます。
財産の分け方については、遺留分や法定相続分といったさまざまな決まりがあります。
弁護士であれば、相談者の希望を聞いたうえで、これらの決まりを考慮した適切な配分方法をアドバイスしてくれます。
自力で交渉するよりもトラブルなくスムーズに進み、円満な相続が実現する可能性が高まります。
被相続人が多額の借金やローンを抱えていた場合などは、相続放棄を選択する方が多いでしょう。
しかし、被相続人名義の家で暮らしている場合などは、相続放棄後に退去しなければならず、相続放棄したことを後悔してしまうケースもあります。
相続放棄の期限内に適切な判断ができるか自信がない方は、弁護士に依頼しましょう。
弁護士であれば、相談状況をもとに本当に相続放棄をするべきかどうか的確なアドバイスが望めます。
もし相続放棄を選択する場合は、必要書類や手続きの流れなどもアドバイスしてくれて、スムーズに手続きを進められます。
自力で相続手続きをすれば3,000円程度で済む可能性がありますが、相続ではさまざまな手続きに対応しなければならず、相続知識のない素人ではミスが起きる可能性があります。
特に遺産分割協議では相続人同士でトラブルに発展するおそれもあり、トラブルなくスムーズに相続を済ませたいのであれば弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士の場合、基本的には20万円以上の弁護士費用がかかりますが、相続手続きのアドバイスや代理人としての相続手続きのサポートなど、依頼者が最大限の利益を獲得できるように尽力してくれます。
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