相続に関する弁護士相談をご検討中の方へ
被相続人が生前外貨預金を保有していた場合には、相続開始後、外貨預金を含めた全財産について遺産分割協議をおこなわなければいけません。
しかし、普段から投資に興味をもっていない限り、外貨預金の取り扱い方法や手続き、相場ルールなどについて詳しくないのは当然のことです。
実際、「いきなり外貨預金と言われてもどのように扱っていいかわからない」と悩んでしまう方も多いでしょう。
そこで本記事では、外貨預金を相続するときの基本的な流れ、外貨預金と相続税申告の関係、外貨預金を相続するときに弁護士に相談するメリットなどについてわかりやすく解説します。
外貨預金の相続に悩んでいる方は、ぜひ最後まで参考にしてください。
まずは、相続財産に外貨預金が含まれるときの相続手続きの流れについて解説します。
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
まずは、被相続人が外貨預金を保有していたかを調査しましょう。
たとえば、遺品整理の際に金融機関の預金通帳が見つかった場合や、被相続人宛に金融機関から郵便物が届いていた場合など、被相続人が外貨預金を保有していた可能性が高い場合、各金融機関に直接問い合わせをして、相続手続きをおこないます。
そのほか、2025年4月からスタートした預貯金口座付番制度を利用すれば、相続開始後に金融機関の窓口で被相続人のマイナンバーを提示するだけで、マイナンバーに紐づけられた預貯金口座の所在が一度で把握できます。
外貨預金を相続する際は、日本円の預貯金、現金、不動産、株式、貴金属類、借金などの全ての遺産も含めて手続きを進めなければいけません。
そのため、外貨預金以外にどのような遺産があるのかや誰が相続人になるのかについて調査を進めましょう。
財産を漏れなくリストアップするには、金融機関や信用情報機関、証券会社などへの照会や、法務局などでの手続きが必要です。
また、シンプルな家族構成なら相続人の洗い出しは簡単ですが、被相続人が離婚・再婚を繰り返していたり、贈与によって第三者に財産を譲り渡していたりする場合には、遺産分割協議に参加するべき相続人の調査が難航しかねません。
相続手続きには期間制限が設けられているものも多いので、すみやかに被相続人の戸籍謄本を取得するなどして、相続人の調査をおこなってください。
相続財産と相続人の調査が終わったら、すみやかに遺産分割協議をおこないましょう。
遺産分割協議では、外貨預金を含む全ての遺産について、誰がどのように承継するのかを話し合います。
遺産分割協議には相続人全員の参加が必要とされており、相続人のうち誰かひとりでも欠けてしまうと、合意による遺産分割をおこなうことができません。
また、話し合いの結果、遺産の分割方法などについて合意形成に至らない場合には、遺産分割調停・遺産分割審判といった法的手続きへの対応が必要です。
遺産分割協議が成立した場合は、合意内容を記載した遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は、相続税の申告手続きや登記手続き、名義変更手続きなどのさまざまな場面で必要とされます。
また、遺産分割協議書を作成することで、後に他の相続人から遺産分割協議は無効である、遺産分割協議はなかったと主張されるなどの法的紛争を予防する効果もあるので、必ず遺産分割協議書を作成して大切に保管しておきましょう。
なお、遺産分割協議書の形式・書式に決まりはありませんが、各種手続きへのスムーズな対応を希望するなら、弁護士や司法書士などの専門家に相談するのがおすすめです。
また、後に他の相続人から遺産分割協議書の偽造や無効を主張されないようにするために、遺産分割協議書を公正証書とすることも有効です。
遺産分割協議で被相続人の外貨預金を相続することになった相続人は、すみやかに外貨預金を預けている金融機関で名義変更の手続きをおこないましょう。
金融機関の外貨預金口座は被相続人名義のままなので、名義変更手続きを済ませなければ、外貨預金を引き出したり日本円に換価したりできません。
なお、名義変更手続きの流れや必要書類は金融機関ごとに異なります。
遺産分割協議書や身分証明書、名義変更申請書などの提出が求められるので、詳しくは該当の金融機関まで直接お問い合わせください。
相続によって外貨預金を引き継ぐと、相続税の申告手続きが必要になる場合があります。
相続税の申告が必要なのは、以下の計算式で算出された課税遺産総額がプラスになる場合です。
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課税遺産総額 = 財産を取得した各人の課税価格の合計額 - (3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数(遺産に係る基礎控除額)) |
ここでは、相続税申告における外貨預金の取り扱いや評価の基本ルールについて解説します。
外貨預金の相続にかかる相続税を計算するときには、外貨預金が日本円基準でいくらの価値を有するのかを評価しなければいけません。
そして、外貨預金を日本円換算する際には、対顧客直物電信買相場(TTB)が基準になるのが一般的です。
対顧客直物電信買相場(TTB)とは、顧客が外貨を売却するときに使う為替相場のことです。
為替相場は以下3種類に区分されており、それぞれを比較するとわかりやすいでしょう。
TTBなどの為替相場基準は金融機関によって異なるため、相続税の計算をする際に、どの金融機関のTTBを使用するかが問題になります。
実務上、相続税を算出する際には、相続人が取引をしている金融機関のTTBを基準として採用するのが一般的です。
被相続人が取引をしていた金融機関の為替相場ではないので注意してください。
たとえば、被相続人の外貨預金を複数人で相続する場合には、相続人それぞれが取引している金融機関のデータを参照します。
また、外貨預金の相続人がひとりで複数の金融機関と取引をしているのなら、相続税負担をできるだけ軽減するために、もっとも低いTTBを設定している金融機関の為替相場を選択することも可能です。
外貨預金を邦貨に換算する基準日は、相続が開始した日、つまり被相続人が死亡した日です。
被相続人が死亡した日の取引金融機関のTTBを調査して、相続税の算定をおこないましょう。
ただし、被相続人が年末年始や祝日、土日に死亡した場合などでは、金融機関がTTBを公表していない可能性があります。
このようなケースでは、「被相続人が死亡した日の前の為替相場のうち、最も直近のTTB」を外貨預金の評価基準として採用するのが一般的です。
さいごに、外貨預金を相続するときの注意点を3つ紹介します。
相続税の納税は日本円でおこなわなければいけません。
外貨のままでは納税できないので注意が必要です。
また、相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。
外貨預金を相続して相続税の納付義務を課されるケースでは、申告期限までに納税分の日本円を用意しましょう。
ただし、為替相場は日々刻々と変化しています。
たとえば、相続開始日から為替レートが急落しており、相続税を納付するためだけに外貨を日本円に換金することが不利な投資判断になるようなケースでは、別の手段で相続税納付のための日本円を調達しなければいけません。
そのため、外貨預金を相続する際には、常に為替レートをチェックしながら、どのような手段で日本円を用意するかについて慎重に判断をしてください。
被相続人が複数の取引金融機関に外貨預金を保有している場合には、全ての金融機関に対して照会をかけたうえで、相続手続きを進めてください。
また、相続人が複数の金融機関と取引をしている場合には、相続税の負担を軽減するために、もっとも有利なTTBを公表している金融機関の基準を活用するのがおすすめです。
外貨預金を相続するときには、為替レートとの関係で、そのまま外貨として保有しつづけるのか、日本円に換金するのかの判断を迫られます。
たとえば、外貨預金を相続したあとに円高が進行すると、外貨預金の日本円基準の資産価値が目減りしてしまいます。
相続した外貨預金をすぐに換金する必要性に迫られているなら仕方ありませんが、少しでも有利な資産状況を構成したいのなら、為替レートをチェックしながら換金タイミングを厳選してください。
遺産に外貨預金が含まれている場合には、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談するのがおすすめです。
遺産相続トラブルが得意な弁護士に相談・依頼をすれば、以下のメリットを得られるでしょう。
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