家族の高齢化にともない、認知症などの対策として家族信託の利用を検討している方も多いでしょう。
家族信託は成年後見制度よりも自由度が高く、使い勝手のよい制度ではあるものの、比較的新しい制度だからこそ以下のような不安もあるでしょう。
この記事では、家族信託は本当に危険なのかを解説するとともに、家族信託を利用して後悔してしまうケースや、トラブルの回避方法なども紹介します。
家族信託で発生しやすいトラブルの原因を知り、失敗を避けて上手に活用しましょう。
遺産相続の問題は弁護士への相談で解決!相談内容と都道府県の選択をして悩みを解決しましょう
遺産相続について期限が迫っていたり不満や納得のいかない事があるなら遺産相続トラブルの解決が得意な弁護士への相談がオススメです。
当サイト『相続弁護士ナビ』は相続争いの解決を得意とする弁護士を掲載しております。
こういったお悩みは、相続に詳しい弁護士に相談することで豊富なノウハウを活用した具体的な解決策が見つかるかもしれません。
電話での無料相談や面談による相談を無料にしている事務所もあります。
まずは下記よりお近くの弁護士を探して相談してみましょう。
家族信託は比較的新しい制度であり、危険ではないかと不安になる方もいるでしょう。
しかし、家族信託の制度自体に危険性はなく、「危険だ」「後悔した」などと言われるのは、受託者とのトラブルや親族間でのトラブルなどが原因といえます。
ここでは、家族信託がきっかけでトラブルになってしまうケースや、家族信託の利用を後悔してしまうケースについて紹介します。
「財産の管理や処分を任せる受託者を誰にするのか」を親族間で相談せずに決めると、受託者以外の親族が不満をもつことがあります。
その理由として、家族信託には将来の遺産相続を見据えた手続きという面もあり、ほかの親族からすれば相続できるはずの財産が減ってしまうように思えるからです。
特定の一人を受託者にした場合にも、同様の問題が生じることがあります。
このように、親族間で不公平感や不満が生じると、将来の相続などについて争いになる恐れがあります。
選ばれた受託者は親族争いに巻き込まれ、受益者のための円滑な財産管理・処分が難しくなるでしょう。
家族信託を利用する際は、親族間で十分話し合って受託者を決めることが大切です。
受託者次第で家族信託がうまくいくかどうかが決まるため、もし不安な場合は「信託監督人」や「受益者代理人」を付けることも検討しましょう。
信託監督人や受益者代理人を設定しないと、適正な財産管理・処分がされない恐れがあります。
「信託監督人」とは、受益者に代わり、受託者が信託目的に従って適正に業務を遂行しているかを監視・監督する人です。
「受益者代理人」とは、受益者に代わり、権利を行使する立場の人です。
委託者が高齢であれば、やがて判断能力の低下・喪失が予想されます。
その場合、財産の管理処分が適正におこなわれているかを委託者自身が定期的に確認するのが難しくなるでしょう。
また、必ずしも受託者が適正な財産管理・処分ができるとはかぎりません。
家族信託は、委託者が元気なうちに契約するため、財産の管理・処分が長期にわたることが予想されます。
そのため、信託契約の内容が時間を経過するにつれて状況に合わなくなることもあれば、資産の内容によっては管理や処分が困難になることもあります。
たとえば、新たな不動産を購入した場合などが該当します。
長期の契約になることを見越して、契約内容を変更する際の方法を定めておきましょう。
家族信託は長期にわたり継続する制度です。
契約内容は変更できますが、慎重に取り決めたうえで実行しましょう。
家族信託を検討しているなら、その分野が得意な専門家に相談することをおすすめします。
行政書士でも家族信託契約書の作成代理はできますが、契約内容の相談はできません。
また、司法書士や弁護士でも家族信託を取り扱った経験がない事務所が多く、十分に対応できる専門家はまだ少ないのが現状です。
専門家選びを誤った場合、自分に合った相談先にたどりつくまでに契約内容の大きな変更を余儀なくされるなど、無駄に費用と時間を費やすリスクがあります。
家族信託では、受益者を子どもや孫に順番に承継させることもできます。
そのような信託契約を「受益者連続型信託」といいます。
受益者連続型信託は、信託法第91条によって以下のように定められています。
第九十一条 受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。
引用元:信託法第91条
受益者連続型信託では「最初の信託から30年を経過すると、新たな受益権の承継は1度しか認められない」というルールがあり、これを30年ルールといいます。
したがって、二次や三次の受益者を設定しても、必ずしも最後まで連続するわけではないということに注意が必要です。
家族信託契約は、自分で考えて作成することもできます。
しかし、複雑な内容の契約なので、専門家に相談せずに作成すると次のようなリスクがあります。
遺留分とは、一定の相続人に認められている「遺言でも奪えない遺産の取り分」のことをいいます。
基本的には、遺産の半分が遺留分となり、民法で定められた法定相続分の割合に基づいて留保分を考えます。
たとえば、被相続人に配偶者がおらず、相続人が子ども2人だけの場合は、それぞれ4分の1ずつ遺留分があります。
信託財産は、形式的には委託者の財産ですが、実体上は受益者の財産とみなされます。
そのため、受益者が死亡すると、信託財産はほかの相続財産と同様に扱われ、遺留分の対象になるとされています(平成30年9月12日東京地裁判決 Westlaw Japan 文献番号 2018WLJPCA09128002)。
信託契約を作成する場合には、遺留分にも配慮するなど、将来起こりうる紛争を防ぐための工夫が必要です。
それらの配慮を怠ると、遺留分侵害額請求の火種を作ってしまいます。
家族信託契約では、記載すべき項目が多数あります。
知識がないまま自分で作成すると、抜け漏れが生じて受託者の財産管理・処分に支障をきたす可能性があります。
インターネット上や書籍では家族信託契約のひな型が掲載されており、「ひな形どおりに作成すれば、自分で簡単に契約書作成できる」と思うかもしれません。
しかし、実際の家族信託では家族ごとに財産や受託者の状況などが異なるため、一般的なひな型をそのまま利用するだけでは足らない恐れがあります。
信託不動産の管理・運用・処分方法や、費用の支出の取り決めなど、ひな型に載っていなくても記載すべき項目は多数あります。
記載内容の漏れや誤りで受託者の財産管理・処分に支障をきたさないよう、契約書作成の際は専門家に相談することをおすすめします。
家族信託では、本来信託財産を管理すべき受託者が自己の利益を図るために契約すると、「利益相反行為」として無効になる可能性があります。
たとえば、受託者が信託財産を不当に安い金額で購入して受託者名義にすることや、受託者個人の債務を担保するため信託財産に抵当権を設定することなどは、利益相反行為です。
利益相反行為とみなされると、その行為が無効となったり、取り消されたりする可能性があります。
金銭的価値のある財産であれば、基本的には信託財産の対象となります。
しかし、農地・預金債権・年金受給権など、原則として勝手に譲渡できない財産権は信託財産の対象外です。
また、債務も信託財産にはできません。
抵当権がついている不動産については、金融機関との協議によって信託財産とすることは可能です。
ただし、ローンの支払いが滞ってしまった場合などには、抵当権が実行されて信託財産が失われるというリスクがあります。
家族信託では、契約によってさまざまな内容の取り決めができる一方で配慮すべき事柄も多く、親族間のトラブルを生んだり、契約そのものが無効になってしまったりするリスクもあります。
ここでは、家族信託のトラブルを回避する方法を紹介します。
家族関係が複雑な場合や資産が多い場合などは、専門家の助言が必要不可欠です。
家族信託は、自力でも手続きはできます。
しかし、できるだけトラブルを防ぐためにも、法的視点から判断できる専門家に相談することをおすすめします。
特に、家族信託が得意な弁護士や司法書士に依頼すれば、リスクを最小限に抑えることができます。
実際に家族信託を弁護士や司法書士に依頼した場合、費用はいくらかかるでしょうか。
下記は一般的な費用の目安です。
費用は信託財産の内容によっても異なります。
具体的な金額については、依頼を検討している弁護士や司法書士に直接確認しましょう。
家族信託を検討している方にとって、家族は最も身近で頼りになる存在でしょう。
「自分の財産は大事な家族に一任したい」と思うのは自然なことです。
しかし、長期にわたって財産を管理し、場合によっては処分することは、思っている以上に大変です。
また、家族関係や資産内容が複雑なほど、利害関係が対立しやすくなります。
委託者や受託者それぞれの状況だけでなく、資産の価値も時間の経過とともに変化します。
家族信託のデメリットやリスクを含めて、家族間でしっかりと話し合うことが大切です。
家族信託契約の資産内容によっては、管理・処分が複雑で受託者の負担が重すぎる場合もあります。
また、利害関係者としては「信託財産が受託者によって適切に管理されているか」を定期的に確認しておきたいところです。
たとえば、賃貸不動産の管理などのように、資産価値が大きく管理が複雑な場合などは、信託監督人や受益者代理人を設定するのがよいでしょう。
家族信託とあわせて検討される制度として、「成年後見制度」があります。
成年後見制度も、本人の財産を管理する制度です。
家族信託と大きく異なる点は、「成年後見人以外は、たとえ家族でも財産の管理処分ができなくなる」ということです。
また、成年後見人は、本人に代わって法律行為をおこないます。
受託者には身上監護権がなく、受託者という立場で入院や施設入所の契約は結べません。
受益者が高齢の場合や障がいがある場合には、身上監護権のある成年後見制度の利用を検討しましょう。
家族信託では、委託者と受託者の間で契約によって財産の管理・処分に関する取り決めができるため、成年後見制度とは異なり、委託者の意思を反映させた財産管理ができます。
「自分が亡くなったあとに残された、障がいのある子どもの生活が心配」という場合もあるでしょう。
そのような場合、遺言によって自分の財産を信頼できる親族などに信託し、受益者を子どもに設定することで、将来の生活を守ることができます。
また、「残されたペットが心配」という方は、信託財産にペットを加えて、信頼できる親族などに飼育費用に相当する財産を信託することもできます。
子どもがいない場合、自分達の老後の生活を誰に支えてもらうのかは悩ましい問題です。
その場合、親しい甥や姪を受託者として家族信託契約をし、老後の生活を支えてもらうことが考えられます。
自分達が亡くなったあとの受益者を甥や姪にしておけば、気持ちよく引き受けてくれるかもしれません。
相続人ではない孫や親族などに財産を渡したい場合、遺言によって財産を渡す「遺贈」という方法があります。
しかし、遺贈の場合、二次相続の相手を指定することができません。
たとえば、「一度妻に相続させて、妻が死亡した場合には長男に財産を承継させる」というような、いわゆる後継ぎ遺贈の遺言は民法上無効です。
このような場合、家族信託の受益者連続信託で受益者を承継させることができます。
自分が認知症になると自由に自己の財産処分ができなくなり、成年後見人が選任されて、後見人の判断によって財産が管理されます。
自分が元気なうちに信託契約を締結して受託者を指定しておけば、自らの希望どおりの財産管理・処分が可能になります。
家族信託では、委託者と受託者の間で財産に関する取り決めができ、成年後見制度などと比べても自由度の高い制度といえます。
一方、家族信託では長期の財産管理が想定され、その間に受託者や管理財産の状況が変化する恐れがあることも留意しておくべきでしょう。
家族信託の公平性や透明性を保ち、委託者の希望に沿った財産管理を実現するためにも、まずは家族信託が得意な弁護士に相談することをおすすめします。
民事信託(みんじしんたく)とは、営利を目的としない信託のことで、信託銀行の取り扱う信託商品や投資信託(商事信託)とは違い、財産の管理や移転・処分を目的に家族間で...
家族信託を利用してみたいけど、どのくらい費用がかかるのかが気になる方は多いでしょう。実は、家族信託の手続きにかかる費用はそれほど高額ではありません。本記事では、...
この記事では、金融機関の遺言信託サービスを検討している方に向けて、遺言信託の基礎知識・サービスを利用するメリットとデメリット・利用する際の流れなどを解説します。...
家族信託は、自分の老後に備えて、信頼できる家族に財産管理を任せられる新しい制度です。この記事では、家族信託でトラブルになりやすいケースや、トラブルの回避方法など...
この家族信託は家庭裁判所を通さずとも利用することができる、とても手軽な制度です。 今回は、そんな家族信託を行政書士に依頼した場合のメリットなどについて、解説し...
公正証書遺言は、公証役場から相続人への通知がおこなわれることはありません。遺言書の存在が相続人に伝わるようにするための注意点や、把握していなかった遺言書の存在が...
家族信託の手続きをスムーズに進めたいと思った場合、その相談先としてはどんな人が適しているのでしょうか。またその際、一体どのくらいの費用がかかってくるのでしょう。...
本記事では、相続におけるお金の渡し方を知りたい方に向けて、相続のお金の渡し方に関する基礎知識、生前と死後それぞれのお金を渡す方法、お金の渡し方について相談できる...
本記事では、預金を相続するときの手続きについて必要な書類や期限などをわかりやすく解説します。これから相続を控えている方や、すでに相続手続きが始まっている方は、ぜ...
家族信託契約書は、家族信託に関する合意内容をまとめた書類のことです。作成する際は抜け漏れがないように注意する必要があり、記載すべき内容は状況によって異なります。...
家族信託とは何かをわかりやすく解説します。また、財産を家族や第三者に託す財産管理の方法や、家族信託の仕組み・手続きの方法・費用なども徹底解説します。ぜひご覧くだ...
本記事では、相続におけるお金の渡し方を知りたい方に向けて、相続のお金の渡し方に関する基礎知識、生前と死後それぞれのお金を渡す方法、お金の渡し方について相談できる...
家族信託は認知症対策として注目されていますが、中には「すでに認知症の症状が出ているけど、今からでも間に合うの?」という方もいるでしょう。本記事では、認知症の親が...
家族信託契約書は、家族信託に関する合意内容をまとめた書類のことです。作成する際は抜け漏れがないように注意する必要があり、記載すべき内容は状況によって異なります。...
公正証書遺言は、公証役場から相続人への通知がおこなわれることはありません。遺言書の存在が相続人に伝わるようにするための注意点や、把握していなかった遺言書の存在が...
本記事では、預金を相続するときの手続きについて必要な書類や期限などをわかりやすく解説します。これから相続を控えている方や、すでに相続手続きが始まっている方は、ぜ...
家族信託については、弁護士だけでなく司法書士・行政書士・税理士などにも無料相談できます。それぞれサポート内容が異なり、各士業の特徴を知ったうえで自分に合った相談...
家族信託は、自分の老後に備えて、信頼できる家族に財産管理を任せられる新しい制度です。この記事では、家族信託でトラブルになりやすいケースや、トラブルの回避方法など...
家族信託の手続きをスムーズに進めたいと思った場合、その相談先としてはどんな人が適しているのでしょうか。またその際、一体どのくらいの費用がかかってくるのでしょう。...
家族信託を利用してみたいけど、どのくらい費用がかかるのかが気になる方は多いでしょう。実は、家族信託の手続きにかかる費用はそれほど高額ではありません。本記事では、...