不動産を相続する予定なものの、固定資産税をどのように扱えばよいのかわからず困っている方は少なくないでしょう。
固定資産税は、土地や建物などの固定資産に発生する税金です。
遺産分割後であれば新しい所有者が納税しますが、遺産分割前の場合は相続人全員が納税義務者になります。
そこで本記事では、相続と固定資産税の基礎的なルールや大切なポイントをわかりやすく解説します。
本記事を通じて、誰がいつまでに固定資産税を支払えばよいのかを正しく理解し、期限内に対応できるようになりましょう。
固定資産税とは、土地や建物などの固定資産に発生する税金です。
毎年1月1日時点で、土地や建物などの固定資産を所有している方は、その固定資産のある市区町村に固定資産税を納税しなければなりません。
固定資産には、住宅だけでなく畑や田んぼ、山林なども含まれます。
また、事業をおこなっている場合には、所有店舗や工場、倉庫も固定資産税の対象になります。
固定資産税の支払いは、一般的に1年分の税額を4期に分けてわけ納税します。
市町村によって納期は違い、各期の納付期限は納税通知書に記されています。
一例として、主な市区町村の令和6年度の納付期限は下表のとおり設定されています。
第1期 |
第2期 |
第3期 |
第4期 |
|
東京23区 |
7月1日 |
9月30日 |
12月27日 |
2月28日 |
大阪市 |
4月30日 |
7月31日 |
12月25日 |
2月28日 |
名古屋市 |
4月30日 |
7月31日 |
1月6日 |
2月28日 |
福岡市 |
4月30日 |
7月31日 |
1月6日 |
2月28日 |
札幌市 |
4月30日 |
7月31日 |
9月30日 |
1月6日 |
上記のように固定資産税は、4期に分割して納税することになっています。
もっとも、第1期に1年分をまとめて納税することも可能なので、納税通知書を確認してみましょう。
固定資産税は、固定資産に発生する税金であり、固定資産の「所有者」が納税義務者となります。
そのため、土地や建物を賃貸している方には固定資産税が発生しません。
固定資産税は、1月1日を起算日として発生します。
例えば、1月2日以降に住宅を購入した場合には固定資産税の支払いが翌年から発生します。
他方、1月2日以降に住宅を売却した場合は、売却した年の固定資産税の納税義務は売主に発生します。
固定資産税は1月1日を基準に考えるため、所有者が亡くなってしまうと、納税義務者がいなくなってしまうことになります。
しかし、所有者が亡くなったあとも固定資産税の納税通知書は故人名義で届きますが、誰が支払いをしなければならないのでしょうか。
ここでは、土地・建物の固定資産税の納付に関するルールについてみていきましょう。
まず、不動産の相続人が決まっていない場合は、相続人全員に対して納税義務が生じます。
そのため、自分が不動産を相続することになっていないとしても、固定資産税の支払いをする必要があります。
遺産分割協議前の不動産などの相続財産は、相続人全員の共有財産となります。
そのため、自分が不動産を相続することになっていないとしても、共有財産である以上は自分も所有者の一人として扱われます。
そのため、相続人全員が固定資産税の納税義務を負い、支払う必要があります。
遺産分割協議などで不動産の相続人が決まった場合、新しい所有者が固定資産税を納めることになります。
もっとも、新しい所有者がいつ決まったのかが固定資産税の支払いに影響する重要なポイントです。
固定資産税は、毎年1月1日を起算日として、固定資産を所有する所有者に発生する税金です。
そのため、10月に遺産分割協議が確定した場合、確定した年の固定資産税は相続人全員が納税義務者となります。
他方で、年をまたいだ1月1日時点で新たな所有者がいるため、翌年以降は新しい所有者が納税義務者になります。
誰が固定資産税を支払うかは、新しい所有者がいつ決まるかに影響されます。
そのため、遺産分割協議などで誰が納税するのか、事前に相続人同士で決めておくことが大切です。
相続財産のなかに土地・建物があり、固定資産税を負担する際には3つのポイントがあります。
ここでは、それぞれについて詳しくみてみましょう。
相続人代表者指定届とは、土地や建物など不動産の所有者(被相続人)が亡くなった場合、亡くなった方に代わって固定資産税の納税通知書を受け取る人を指定する届け出のことをいいます。
相続人代表者指定届の提出後は、故人名義ではなく指定した代表者が納税通知書の受取人になります。
固定資産税も相続税の申告時には、相続財産から控除することができるため、いくら納税したのか明確にするため、相続人代表指定届の提出をおすすめします。
もっとも、相続人代表者指定届は、固定資産税の納税通知書の受取人を指定するものです。
そのため、代表者に固定資産税の支払い義務は生じません。
ただし、新しい所有者が決まっていない場合、代表者も相続人の一人として納税義務があることには注意が必要です。
【記入例あり】相続人代表者指定届とは?書き方など疑問に回答!
遺産分割協議では、財産の分配についての話し合いも大切ですが、負債を誰が引き受けるかも重要なトピックのひとつです。
プラスの財産ばかりに気を取られ、税負担についての話し合いをおろそかにしてしまうと、あとになって思わぬ額の税金が発生する可能性があります。
そのような事態を防ぐためにも、遺産分割協議中では相続人同士で税負担についてしっかりと話し合いをしておきましょう。
死亡時点で未納の固定資産税があった場合、債務控除の対象になります。
固定資産税は本来、被相続人である故人に支払い義務があります。
そのため、相続人が代わりに支払ったのならば、未納の固定資産税は相続税の計算上、負債であるとして相続財産から債務控除することができます。
例えば、故人が第1期・第2期の固定資産税は払った場合、未納分の第3期・第4期を合算した額が債務控除の対象となります。
債務控除の対象には、納付期限前の未納分だけでなく、期限が過ぎてしまった未納分も相続人が支払えば債務控除の対象になります。
土地・建物の相続と固定資産税の関係は、法律上複雑なこともあり、多くの疑問があるかもしれません。
ここでは、土地・建物の相続と固定資産税に関するよくある質問を解説します。
固定資産税納付書が見つからない場合には、各市区町村の税務課や税務署に問い合わせてみましょう。
問い合わせをすることで、本人との関係性を証明できるような書類と身分証があれば、再発行手続きをしてもらうことができます。
もっとも、そもそもどのような土地や建物が相続の対象となっているかわからない場合には、相続財産の調査が必要です。
そのため、相続に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
相続登記において、土地・建物の固定資産税は必要ありませんが、登録免許税と必要書類を取得するための実費が主にかかります。
登録免許税とは、登記手続きの際に国に納める税金のことをいいます。
税額は、土地や建物の固定資産税評価額に法律で定められた税率をかけて計算します。
登録免許税の税率は、固定資産税評価額の1,000分の4とされており、以下の計算式によって算出することができます。
つまり、例えば1,000万円の土地の相続登記をする場合には、4万円の登録免許税が発生するということになります。
もっとも、遺言によって相続人以外に財産を譲渡する遺贈の場合には、上記の税率ではありません。
遺贈の場合には、1,000分の20と定められています。
つまり、1,000万円の土地の場合、20万円の登録免許税が必要になります。
なお、令和7年3月31日までの期限付きで下記の条件のいずれかに該当する場合、登録免許税が非課税となります。
なお、非課税の対象となるのは土地に限定されているため、建物には免税措置がない点には注意しましょう。
相続放棄とは、相続人がプラス・マイナス問わず全ての相続財産を相続しない意思表示のことをいいます。
相続放棄をすると、財産を取得することもなければ、負債を負うこともありません。
そのため、相続放棄した場合には、固定資産税の納付は不要です。
もっとも、相続放棄は自己が相続人となって相続が開始したことを知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申し立てることが必要です。
加えて、相続放棄を選択すると、遺産全てを放棄し、最初から相続人でなかったことになります。
そのため、土地や建物だけでなく、車などの動産、預貯金、株式など全ての財産を受け取ることができなくなるため、慎重に決めるようにしましょう。
相続にはたくさんの複雑な手続きが必要です。
中でも、固定資産税をはじめとした税金などの支払いは、慣れていない方にとってはわからないことばかりだと思います。
しかし、固定資産税の支払い時期を過ぎると延滞金が発生してしまうため、支払期日に間に合うよう手続きを進めなければなりません。
そのためには、相続の手続きで疑問があり、自分だけは対応できないと思ったら弁護士に相談するようにしましょう。
特に、相続トラブルの解決実績が豊富な弁護士なら、相続全般のサポートからほかの相続人との交渉やトラブルを未然に防ぐアドバイスをすることができます。
自分だけではわからないことばかりの相続手続きが、弁護士に依頼することで適切なアドバイスをもらうことができ、スムーズな相続手続きをすることができるでしょう。
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