不動産相続に関する弁護士相談をご検討中の方へ
相続登記がオンラインで申請できると聞いて検討しているものの、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
相続登記は、オンラインでも自分で申請が可能です。
スマートフォンには対応していないためパソコンが必要ですが、必要な準備や注意点を押さえれば、はじめての方でもスムーズに進められます。
しかし、相続関係説明図に誤りがあると申請がやり直しになったり、「補正のお知らせ」に気づけず却下になったりといったこともあるため、簡単ではないことを念頭に置いておく必要があるでしょう。
本記事では、相続登記のオンライン申請で失敗しないために知っておくべきことを解説します。
最後まで読むことでオンライン申請に必要な知識が身につき、安心して手続きを進められるでしょう。
相続登記のオンライン申請とは、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する「相続登記」を、法務局に出向かずオンライン上で進める方法です。
従来は法務局に直接書類を持ち込む方法が主流でしたが、現在は自宅のパソコンを使い、専用のオンライン申請システムから申請書類の作成や電子署名、データ送信が可能になっています。
オンライン申請なら自宅で手続きが完結するため、基本的に法務局へ出向く必要がありません。
ここでは、相続登記のオンライン申請に関する以下のポイントを解説します。
オンライン申請なら、わざわざ平日の日中に都合をつけて法務局に出向かなくても、自宅で登記を申請できます。
相続登記は不動産の所在を管轄する法務局に申請する必要があるため、例えば東京に住んでいる相続人が大阪市にある不動産を登記する場合、大阪法務局に申請しなければなりません。
窓口申請の場合はわざわざ大阪まで出向かなければならず、郵送であれば出向く必要はなくなりますが、修正が必要になった際に郵送でのやりとりでは時間がかかってしまいがちです。
しかし、オンライン申請なら、書類に不備があったときも、補正内容によってはオンラインで対応が可能です。
また、平日の日中に動けない方や体調の問題で外出できない方でも対応しやすく、登記識別情報通知の受領方法を「郵送」にしておけば、申請から受け取りまで全て自宅で完結することができます。
なお、追加の資料を求められた場合など、オンライン上で対応できない修正が発生したときは、直接資料を持ち込むか郵送する必要がある点に注意しましょう。
オンライン申請なら平日8時30分〜21時00分まで手続き可能です。
窓口申請の場合、法務局の開庁時間である平日9時00分〜17時00分でなければ受け付けてもらえないため、仕事が終わってからでは間に合わない可能性があります。
しかし、オンラインなら平日の日中に私用で動くのが難しい会社員や育児中の方でも、落ち着いて手続きを進められます。
ただし、17時15分以降は法務局自体が稼働しないため、申請はできても当日扱いにならず、翌開庁日の受付になる点に注意しましょう。
相続登記をオンラインで申請する場合、戸籍謄本や遺産分割協議書、印鑑証明書といった添付書類は、申請受付日から初日・休日を除いて2日以内に法務局に到着している必要があります。
原本確認が必要な書類は実物を提出しなければならないため、オンラインでデータを送信してもそれだけでは完了しません。
期限を過ぎると申請をいったん取り下げなければならなくなるため、申請の際は事前に必要書類を準備し、全て揃ってから申請することをおすすめします。
なお、添付書類を郵送する際は、普通郵便ではなく追跡が可能な簡易書留やレターパックライトなどで送るようにしましょう。
相続登記をオンラインで申請するには、パソコンが必要です。
また、パソコンのOSはWindows 10または11が推奨されており、スマートフォンやタブレット、Macでは申請できません。
「パソコンはないがオンラインで申請したい」という場合は、知人や家族に協力してもらうか、専門家への依頼を検討しましょう。
最近では、公立図書館などでパソコンを貸し出しているケースもあります。
委任状があれば、第三者が申請代理人として相続登記をオンライン申請できます。
申請者本人が高齢で、法務局に直接出向くのも自分でオンライン申請するのも難しい場合は、信用できる家族や司法書士に代理で申請してもらうとよいでしょう。
なお、委任状の様式に決まりはなく、以下の必要事項が記載されていれば自作したもので構いません。
ただし、法務局のホームページの「記載例」を参考に作成するのがおすすめです。
相続登記は、2024年4月1日から義務化されている点に注意しましょう。
不動産を相続したときは、相続開始から3年以内に相続登記をすませる必要があり、義務を怠れば10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、2024年4月以前に相続した不動産についても、義務化から3年以内、つまり2027年3月31日までに相続登記をおこなわなければなりません。
オンライン申請も可能なので、必ず期限内におこなうようにしましょう。
ここからは、相続登記をオンライン申請する際の手順について解説します。
なお、オンライン申請をおこなうには、まず電子証明書の取得や申請者情報の登録といった事前準備をすませ、パソコンに「申請用総合ソフト」をインストールする必要があります。
事前準備については、以下の法務局のホームページを確認してください。
まずは、相続登記に必要な書類を集めます。
相続登記には、以下のような書類が必要です。
なお、必要書類はケースによって異なります。
例えば、遺産分割協議によって相続する場合は遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を添付しますが、遺言書に従って相続するなら代わりに遺言書や遺言情報証明書が必要です。
相続登記の必要書類については、以下の記事を参考にしてください。
必要書類を集めたら、オンライン申請に必要なものを準備しましょう。
具体的に、以下のものがあればオンライン申請が可能です。
マイナンバーカードがない場合、オンライン申請ができません。
マイナンバーカードは住所地の市区町村役場で発行できますが、すぐにその場で発行できるものではなく、1ヵ月程度かかることもあります。
また、通知カードでは代用できません。
現在マイナンバーカードを所有していないなら、必要書類の収集より先にマイナンバー発行の手続きをおこないましょう。
ICカードリーダーは、家電量販店や通信販売で購入できます。
ただし、マイナンバーカード対応の機種を選ばなければオンライン申請に利用できません。
申請用総合ソフトは、登記・供託オンライン申請システムからインストールできます。
電子証明書の取得と申請者情報の登録をすませたら、インストールしましょう。
必要書類と事前準備が整ったら、集めた戸籍をもとに相続関係説明図を作成します。
相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係を家系図のように図示した書類です。
説明図を作成することで相続人の範囲や続柄が明確になり、自分も登記官も権利関係が確認しやすくなります。
また、相続関係説明図をPDF形式に変換し、「登記原因情報証明」として登記申請書と一緒に送信すれば、戸籍謄本や遺産分割協議書をデータ化して添付する必要がなくなります。
ケースによっては戸籍謄本が膨大な量になることもあるため、全てスキャンするのに手間がかかることも珍しくありません。
相続関係説明図の作成方法については、以下の記事を参考にしてください。
申請の準備が整ったら申請用総合ソフトにログインし、相続人や不動産の情報、相続原因年月日など、必要情報を入力します。
入力ミスや漏れがあると補正になる可能性があるため、慎重に確認作業をおこない、ミスがないよう注意しましょう。
入力内容に不安があるなら、突然入力し始めるのではなく事前に紙に下書きし、それをもとに入力していくことをおすすめします。
PDF形式で作成した相続関係説明図を、申請用総合ソフトに添付します。
このとき、添付ファイルのサイズや形式が指定通りになっているか確認することが重要です。
指定通りでないと送信時にエラーになり、システムに受け付けてもらえません。
例えば、ファイルの容量は1申請あたり15MBまでと決まっています。
また、形式は電子署名付きのPDFファイルや XMLファイル、ビットマップ形式などに限られます。
相続関係説明図をPDFに変換せず、WordやExcelのままにしていると添付できないため注意しましょう。
そのほか、ファイル名にもルールがあり、一部の記号や全角スペースは使えません。
ファイルを添付したら、正常にアップロードされているかを画面上で確認しましょう。
なお、WordやExcelで作成した相続関係説明図をPDF化するなら、以下の変換ツールを利用するのがおすすめです。
全ての情報を入力し必要書類を添付したら、申請情報を送信します。
送信が完了した時点で申請受付日が確定し、書類の郵送や登録免許税の納付期限が決定します。
送信後に表示される受付番号や受付日時はメモをとるか、スクリーンショットを撮っておきましょう。
とくに受付番号は、法務局に進捗状況を確認する際などに必要になる場合があります。
申請受付後、登録免許税を納付します。
方法は以下のとおりです。
納付期限は、申請受付日を含めて2日以内です。
納付の確認がとれないと登記が進まないうえ、納付期限を過ぎると申請が却下されるおそれがあるため、できる限り早く納付するようにしましょう。
現金納付の場合は領収証、印紙納付の場合は登録免許税分の収入印紙を登録免許税納付用紙やコピー用紙に貼り付けます。
このとき、貼り付けた収入印紙に割印をしないよう注意しましょう。
なお、登録免許税納付用紙は法務局の窓口でもらえるほか、申請用総合ソフトから印刷できます。
トラブルを避けるため、領収証はコピーをとって保管することをおすすめします。
申請データ送信後、戸籍謄本や印鑑証明書などの添付書類を法務局に郵送するか持参します。
郵送の場合、簡易書留やレターパックプラスを利用し、登記完了後に発行される登記識別情報通知を郵送で受領したいときは、簡易書留分の切手を貼った返信用封筒やレターパックを同封しましょう。
期限は申請日の翌日から数えて2日以内です。
「2日以内に投函すればよい」ということではないため、できれば申請後すぐに投函するようにしましょう。
なお、郵送する際は、消印有効ではなく必着である点に注意が必要です。
添付書類は申請用総合ソフトから印刷できる「書類により提出した添付情報の内訳表」を先頭にし、ホチキスや連射式クリップなどでまとめます。
登録免許税を納付した際の領収証や収入印紙を貼り付けた登録免許税納付用紙は、添付書類と一緒に郵送・持参します。
なお、提出した戸籍謄本や遺産分割協議書などの原本を返却してほしいときは、原本還付の手続きが必要です。
原本還付を希望する書類のコピーに「原本と相違ありません」と自書・押印し、コピーと原本を一緒に提出します。
申請後は定期的に申請用総合ソフトにログインし、進捗状況を確認しましょう。
登記が完了しても、完了のお知らせがメールで届くことはありません。
登記識別情報通知の受領方法を郵送にしているなら、登記が完了したことを知らなくても書類が自宅に届きます。
しかし、窓口での受け取りを希望しているときは登記識別情報通知が法務局に置かれたままになってしまうため、登記識別情報通知を受け取るまでは、登記の進捗を気にしておくようにしましょう。
登記が完了したら、登記識別情報通知と登記完了証を受領します。
登記識別情報通知は、登記が完了したときに法務局から新しい名義人に交付される書類のことです。
従来の「権利証」に該当します。
通知には英数字12桁の登記識別情報が記載されており、不動産を売却したり担保設定したりする際に必要です。
この情報がなければ、売買や担保設定の際の登記申請がスムーズにできません。
また、再発行ができないため、なくさないよう安全な場所で保管するようにしてください。
相続登記のオンライン申請で失敗しないために、以下の点に注意しましょう。
上記のポイントを見落とすと、申請が却下されたりやり直しになったりする可能性があります。
オンライン申請は自宅で手続きできるため便利ですが、期限や書類の正確さ、補正の見落としなど、通常の申請以上に注意しなければならない点があるのも事実です。
とくにはじめて申請する方は、少しでも不安があれば専門家に相談したほうがよいでしょう。
相続登記のオンライン申請は、自分で申請するよりも登記の専門家である司法書士に任せたほうがよいケースもあります。
例えば、以下のようなケースです。
なお、以下に該当する場合は、相続手続きそのものを司法書士ではなく弁護士に任せたほうがよいでしょう。
司法書士は書類作成や登記申請はおこなえますが、ほかの相続人との交渉やトラブルの仲裁はできません。
すでにトラブルが起きている・今後トラブルになる可能性があるといったケースなら、はじめから弁護士に相談することをおすすめします。
相続手続きを司法書士に任せたほうがよい場合や弁護士に依頼するメリットについては、以下の記事を参考にしてください。
添付した相続関係説明図に誤りがあった場合、申請をいったん取り下げてはじめからやり直さなければなりません。
一度提出すると、PDFの差し替えや再送信ができないからです。
そのため、相続関係説明図を作成する際は、ミスがないよう十分に確認する必要があります。
「申請自体は自分でしたいが、書類作成に不安がある」という場合は、相続関係説明図のチェックや作成だけ司法書士に依頼するのもひとつの手段です。
申請後、送信内容に誤りがあった場合は「補正のお知らせ」が届きます。
このとき注意すべきことは、補正のお知らせに気づかず、補正の期限を過ぎてしまうことです。
補正のお知らせは申請時に指定したメールアドレス宛てに届くようになっていますが、迷惑フォルダに振り分けられてしまい、メールが来たことに気づけない場合があります。
補正の期限が過ぎてしまうと申請が却下されてしまう可能性があるため、メールをこまめにチェックするのはもちろん、定期的に申請用総合ソフトにログインして「補正」欄を確認するようにしましょう。
本記事では、相続登記のオンライン申請で、失敗しないために知っておくべきことを解説しました。
オンライン申請を利用すれば、相続登記が自宅でできます。
しかし添付した相続関係説明図に誤りがあると申請がやり直しになったり、「補正のお知らせ」に気づけないと申請が却下になったりといった注意点もあります。
ケースによっては司法書士や弁護士に任せたほうがよい場合もあるため、対応が難しいと感じたら、無理に自分で申請しようとせず、早めに専門家を頼ったほうがよいでしょう。
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