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被相続人が税金未払いだったら?滞納税金の調査方法と税金滞納時に選択できる手段

長谷川 達紀・日吉 加奈恵
監修記事
被相続人が税金未払いだったら?滞納税金の調査方法と税金滞納時に選択できる手段
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  • 「被相続人が税金を滞納していたことがわかったけど、相続はどうなるの?」
  • 「相続人が代わりに滞納していた税金や延滞金を払わないといけないの?」

被相続人の死後、財産調査によって税金の滞納が発覚した場合、相続にどのように影響するのか不安になる方は多いでしょう。

本記事では、税金を滞納していた被相続人が死亡したときの滞納税金の処理方法、被相続人が税金を滞納していたか調べる方法、被相続人が税金を滞納していたときに弁護士に相談するメリットなどについてわかりやすく解説します。

「知らず知らずのうちに税金を払うことになってしまった...」ということがないよう、しっかりと事前知識を身に付けておきましょう。

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被相続人の滞納税金も相続財産に含まれる

結論からお伝えすると、被相続人が死亡する前に税金を滞納していた場合、相続人が納付義務を承継しなければいけません

これは、被相続人が死亡すると、被相続人の財産に属した一切の権利義務が承継されるためです。

(相続の一般的効力)

第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

引用元:民法|e-Gov法令検索

つまり、預貯金や株式、不動産などのプラスの財産だけではなく、金融機関からの借金やローン、税金滞納などのマイナスの財産も、相続財産に含まれます

そして、滞納した税金を相続した場合には、相続人が納税義務を負担しなければいけません。

また、税金滞納分を指定された期日までに納付できないままだと、相続人の預貯金や不動産が差し押さえられるなどリスクにも晒されます

被相続人の滞納税金を相続する場合の基本ルール

ここからは、被相続人が生前税金を滞納していた場合の基本ルールについて解説します。

1.相続人は法定相続分の滞納税金を負担する

被相続人が税金を滞納している場合、相続人は税金の納付義務を負います

そして、税金の納付義務は民法上、分割債務に分類されます。

(分割債権及び分割債務)

第四百二十七条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

引用元:民法|e-Gov法令検索

そのため、被相続人の滞納税金を相続した場合には、自分の法定相続分に対応した税金の負担義務を負うのが原則です。

たとえば、父親が10万円分の税金を滞納したまま亡くなった場合、相続人が母親と子どもの2人であれば、それぞれ法定相続分である1/2(5万円)ずつを負担することになります。

2.遺産分割協議で負担者を変更することはできる

遺産分割協議では、相続財産をどのように承継するかについて、相続人同士で自由に話し合いをして決めることができます

そのため、相続人同士での合意があれば、被相続人が滞納した税金の負担方法について、法定相続分とは異なる割合で承継することも可能です。

3.負担者の変更について債権者に対抗することはできない

被相続人が滞納した税金の負担方法は遺産分割協議で自由に決定できますが、国税庁などの租税債権者がその取り決め通りに税金の支払いを請求するわけではありません

そのため、場合によっては遺産分割協議で税金負担が決まった人以外に請求がいくこともあるのです。

このケースでは、請求自体を拒否することはできず、納付請求にしたがって税金を納める必要があります。

ただし、遺産分割協議で滞納税金について法定相続分とは異なる合意に至っている場合には、租税債権者からの請求に応じたうえで、滞納税金を負担することに決まっていたほかの相続人に対して支払った税金の金額分を請求(求償)することが可能です。

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被相続人が税金を滞納しているかどうかの調査方法

ここでは、滞納税金が遺産に含まれるかどうかをチェックする方法について解説します。

具体的な方法は以下の3つです。

  • 相続人に届く納税義務承継通知書で確認する
  • 被相続人の家に督促状が届いていないか探す
  • 被相続人の住所地を管轄する役所に問い合わせる

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

1.相続人に届く納税義務承継通知書で確認する

被相続人が生前に税金を滞納していた場合、相続人宛に納税義務承継通知書が郵送されます。

納税義務承継通知書は、被相続人の納税義務が承継された事実を通知する書類のことです。

納税義務承継通知書には、税金の滞納額、納税義務の割合、請求期限などの情報が記載されているので、所定の期日までに納付を済ませましょう。

2.被相続人の家に督促状が届いていないか探す

税金を滞納した場合、租税債権者から滞納者宛に督促状が郵送されているはずです。

遺品整理などの際に督促状が見つかった場合には、被相続人が税金を滞納したまま死亡した可能性があります。

そのため、督促状に記載された連絡先に問い合わせをして、滞納が解消されているかどうかを確認しましょう。

3.被相続人の住所地を管轄する役所に問い合わせる

被相続人が税金を滞納していたかどうかは、税金を所管する行政窓口に問い合わせをすれば判明します。

ただし、税金の種類によって問い合わせをする窓口は異なる点に注意が必要です。

たとえば、住民税の滞納について調査したい場合には、被相続人の住所地の市区町村に連絡をしてください。

また、所得税について知りたいなら、被相続人の住所地を管轄する税務署が問い合わせ先です。

さらに、固定資産税・都市計画税の場合には、被相続人が所有していた不動産の住所地を所管する市区町村の税務課に確認しましょう。

被相続人が税金を滞納していた場合の3つの選択肢

さいごに、被相続人が税金を滞納していた事実が発覚していた場合の対処法を3つ紹介します。

  • 単純承認
  • 限定承認
  • 相続放棄

それぞれメリット・デメリットがあるため、違いを理解して適切な方法を選ぶことが大切です。

1.単純承認|滞納税金をそのまま相続する手続き

単純承認とは、滞納税金を含む遺産をそのまま相続する旨の意思表示です。

単純承認をした場合、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産も相続しなければいけません

たとえば、被相続人が滞納していた税金が少額でプラスの財産と差し引きをしても受け取る金額のほうが多い場合や、滞納税額は比較的高額であったとしてもどうしても承継したい財産がある場合には、単純承認を選択するのがおすすめです。

また、プラスの財産を取得又は処分してしまうと、単純承認の意思表示があったとみなされることがあるので、安易にプラスの財産を取得又は処分することは避け、マイナスの財産を含む相続財産を調査し、単純承認するかを決めるようにしましょう。

2.限定承認|財産の範囲内で負債を相続する手続き

限定承認とは、相続したプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を承継する旨の意思表示のことです。

被相続人が滞納していた税金が相当高額であったとしても、限定承認をすれば、承継するプラスの財産の範囲内で税金の納付義務を負担するだけで済みます。

たとえば、遺産の中にどうしても承継したい財産がある場合には、限定承認をしてプラスの財産相当分の返済を負担すれば、経済的な負担を強いられずに目的の遺産を承継できます

ただし、限定承認をするには、自己のために相続があったことを知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所で所定の手続きをおこなわなければいけません。

期間が到来するまでに限定承認をしなければ単純承認をしたものと扱われるので、できるだけ早いタイミングで被相続人が税金を滞納していたかの調査を進める必要があります。

3.相続放棄|財産と負債の一切を相続しない手続き

相続放棄とは、被相続人の財産を全て相続しない旨の意思表示です。

相続放棄をすると預貯金などのプラスの財産を相続できなくなりますが、税金の滞納分のようなマイナスの財産も承継せずに済みますし、煩わしい遺産分割協議に参加する必要もなくなります。

ただし、相続放棄をするには、自己のために相続があったこと(被相続人が亡くなったこと)を知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所で所定の手続きをおこなう必要があります。

滞納している税金が非常に高額で自己負担が難しい場合や、被相続人がほかにも負債を抱えていることが判明した場合には、相続放棄をして経済的負担から免れるのがおすすめです。

さいごに|被相続人が税金を滞納していた場合の相続には気を付けよう

被相続人が税金を滞納していた場合には、期限が到来するまでに相続財産調査を尽くしたうえで、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれを選択するのかを判断してください。

とくに、被相続人が長期間税金を滞納したままで高額の遅延損害金が発生しているケースなどでは、単純承認をすると相続人が厳しい納付義務を強いられかねません。

場合によっては、相続人が財産を差し押さえられるおそれもあるので、ほかの遺産内容や滞納税額などの事情を総合的に考慮したうえで、適切な相続方法を決めましょう

なお、ベンナビ相続では、被相続人が税金を滞納している場合の相続に詳しい弁護士を多数紹介中です。

法律事務所の所在地、具体的な相談内容、初回の相談料無料などのサービス面から24時間無料で専門家を検索できるので、できるだけ早いタイミングで信頼できる弁護士までお問い合わせください。

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長谷川 達紀・日吉 加奈恵 (静岡県弁護士会)
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ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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