親が仮想通貨を持っていたことがわかり、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、仮想通貨や暗号資産などのデジタル遺産も相続の対象です。
相続財産に仮想通貨などが含まれている場合には、不動産や預貯金と同じように遺産分割協議内で話し合いをおこない、相続の方法を決定しなければいけません。
ただし、仮想通貨のようなデジタル資産は評価額の算定基準が不明確だったり、仮想通貨取引所とのやり取りが大変だったりする点に注意が必要です。
仮想通貨の相続手続きに瑕疵があると、遺産分割協議のやり直しを強いられたり、相続税の追徴などのリスクに晒されます。
そこで本記事では、仮想通貨を相続するときの流れや注意点、仮想通貨の相続税対策などについてわかりやすく解説します。
仮想通貨の相続手続きの基本的な流れは、以下のとおりです。
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
まずは、被相続人が生前仮想通貨取引をしていたか、取引をしていたのならどこの仮想通貨取引所を利用していたかを調査しましょう。
仮想通貨の調査方法などについて、以下で詳しく紹介します。
被相続人が仮想通貨の取引をしていたかを把握する代表的な方法は以下のとおりです。
これらによって仮想通貨取引所とのやり取りを確認できた場合には、仮想通貨に関する相続手続きが必要だと理解しましょう。
代表的な仮想通貨取引所・販売所の連絡先と公式Webサイトは以下のとおりです。
どこの仮想通貨取引所を使っていたかはっきりしないときには、全ての仮想通貨取引所に照会をかける必要があります。
仮想通貨取引所・販売所 | 公式Webサイト |
Coincheck(コインチェック) | https://coincheck.com/ja/ |
SBI VC トレード | https://www.sbivc.co.jp/ |
GMOコイン | https://coin.z.com/jp/ |
bitFlyer(ビットフライヤー) | https://bitflyer.com/ja-jp/ |
DMMビットコイン | https://bitcoin.dmm.com/ |
bitbank(ビットバンク) | https://bitbank.cc/ |
BITPOINT(ビットポイント) | https://www.bitpoint.co.jp/ |
BTCBOX(ビーティーシーボックス) | https://www.btcbox.co.jp/ |
Zaif(ザイフ) | https://zaif.jp/?lang=ja |
被相続人が生前取引していた仮想通貨取引所を特定できたら、取引所・販売所に直接連絡をして、相続手続きについて問い合わせをしてください。
通常、取引所・販売所から相続手続きの流れや必要書類などについて説明を受けることが可能です。
ただし、自分が相続人であることを証明するために別途手続きが必要になる可能性もあります。
相続についての扱いは取引所によって異なるので、問い合わせ時の案内に従って手続きを進めましょう。
次に、仮想通貨取引所から説明されたとおりに必要書類を準備してください。
取引所・販売所によって必要書類の種類は異なりますが、一般的には以下の書類が求められることが多いです。
各種依頼書については、仮想通貨取引所のホームページからダウンロード、仮想通貨取引所からの郵送によって入手可能です。
また、この時点で仮想通貨取引所から残高証明書が送付されてくるので、ほかの相続財産と合わせて遺産分割協議で承継方法などについて話し合いをしてください。
なお、相続手続き全般の流れや必要書類などについては、以下の記事で詳しく解説しています。
相続手続きには期限が設けられているものも多いので、時間があるときに少しずつ片付けていきましょう。
仮想通貨取引所から求められた必要書類の準備が終わり、仮想通貨の承継方法について遺産分割協議がまとまったら、仮想通貨取引所に必要書類を郵送してください。
この時点で仮想通貨取引所の口座は凍結されているので、口座内の仮想通貨を相続人などが無断で引き出すことはできません。
全ての相続手続きが終了すると、仮想通貨取引所から支払いを受けることができます。
仮想通貨の相続方法は以下2つのどちらかです。
まず、被相続人が所有していた仮想通貨をそのままの形で受け取るときには、相続人名義の取引口座が必要です。
事前に口座開設手続きを済ませておきましょう。
また、仮想通貨を本円に換金して受け取ることも可能です。
その場合、振込先の口座を聞かれることがあるので、事前に確認しておきましょう。
なお、どの相続形式に対応しているかは仮想通貨取引所によって異なります。
仮想通貨のままの相続にしか対応していない取引所もあれば、どちらの相続方法にも対応している場合もあります。
詳しくは、被相続人が利用していた取引所に直接確認しましょう。
仮想通貨は相続財産に含まれるので、相続人は相続税の申告・納付義務が課されます。
相続税を算出するには、以下の計算式で求められる「課税遺産総額」が必要です。
課税遺産総額 = 課税価格の合計額 - 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数) |
そして、「課税価格の合計額」を算出するには、各相続人が相続によって取得する財産の価格が判明しなければいけません。
つまり、相続税を算出するときには、相続財産に含まれる仮想通貨の金銭価値・評価額を決定する必要があるということです。
仮想通貨の相続税評価額を確認する方法は、その仮想通貨について活発な市場が存在するかどうかで以下のように異なります。
仮想通貨の特徴 | 評価方法 |
活発な市場が存在する場合 | 相続開始日の残高証明書に記載された金額
相続開始日の売却価格 |
活発な市場が存在しない場合 | 仮想通貨の内容・種類、取引実態の諸般の事情を総合的に考慮した金額 |
以下では、それぞれのケースごとに仮想通貨の相続税評価額の確認方法を見ていきましょう。
なお、仮想通貨の相続税評価額の算出方法は国税庁でも順次方針を更新している状況です。
あとから税務調査で指摘をされたり追徴されたりするリスクを軽減したいのなら、相続税の申告・納付段階で税理士などの専門家に相談しておくことを強くおすすめします。
まず、仮想通貨が取引所・販売所で十分な数量・頻度で取引がおこなわれており、継続的に価格情報が提供されている場合には、その仮想通貨について活発な市場が存在するといえます。
このケースでは、取引所・販売所自体も客観性が担保された評価額を把握していると考えられるので、残高証明書に記載された取引価格を相続税評価額として扱うことが可能です。
なお、残高証明書は暗号資産交換業者が納税義務者からの求めに応じて提供するのが一般的なので、発行方法について取引所に確認してみましょう。
被相続人が保有していた仮想通貨が市場で活発に取引されている場合には、暗号資産交換業者が公表する課税時期における取引価格を参考にすることも可能です。
なお、暗号資産交換業者が購入価格・売却価格の双方を公表しているときには、売却価格を相続税評価額にできます。
また、被相続人が複数の暗号資産交換業者で取引をおこなっていた場合、納税義務者が選択した暗号資産交換業者が公表する取引価格を相続税課税評価額に指定して差し支えありません。
仮想通貨について活発な取引がおこなわれていない場合には、いわゆる市場価格を算出するのが困難です。
そのため、相続税評価額を決めるときには、仮想通貨に関する取引実態、仮想通貨の性質、市場規模などの事情が総合的に考慮されます。
たとえば、過去の売買実例価額や精通者意見価格などが斟酌されることが多いです。
ただし、これらを素人が判断するのは容易ではありません。
誤った評価額で申告をしてしまわないように、税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
仮想通貨を相続した際にかかる税金は、相続税と所得税の2つです。
しかし、相続税・所得税の両方が課税されるかどうかは、仮想通貨の相続形式によって以下のように異なります
それぞれのケースについて、以下で詳しく見ていきましょう。
仮想通貨をそのまま相続する場合に発生する税金は、相続税だけです。
相続税は、相続する仮想通貨の金額に応じて、以下のような税率によって計算されます。
法定相続分に応ずる取得金額 | 相続税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
なお、相続税の税率や計算方法、節税方法については以下の記事で詳しく解説しているので、合わせてチェックしてください。
仮想通貨を日本円に換金してから現金として相続する場合や、仮想通貨の形式で相続したものを売却して換金した場合には、相続税に加えて所得税が課されます。
所得税率は、取得金額に応じて以下のように異なります。
課税される所得金額 | 相続税率 | 控除額 |
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円~ | 45% | 4,796,000円 |
※所得税の課税対象所得金額は1,000円未満切り捨て
なお、所得税に加えて住民税も加算される点に注意が必要です。
相続のタイミングで所得税が発生するシチュエーションについては以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて確認してください。
ここでは、仮想通貨が相続財産に含まれているときの注意事項を3点紹介します。
口座名義人である被相続人が死亡した事実を仮想通貨取引所が把握した時点で、その口座は凍結されます。
これは、被相続人以外の人物が無断で仮想通貨を売却・譲渡するのを防ぐためです。
被相続人の死亡後、口座が凍結される前に第三者が勝手に口座を操作した場合、民事責任・刑事責任を問われるので注意しましょう。
なお、仮想通貨の相続手続きでは、口座の抹消依頼書を提出するのが一般的なので、仮想通貨の相続処理が終了した時点で、被相続人名義の口座はなくなります。
被相続人が所有していたパソコンやスマートフォンを処分するのは、その中身をしっかりと確認してからにしましょう。
なぜなら、被相続人が生前仮想通貨取引をしていたかを確認するには、パソコンやスマートフォンのブラウザ履歴やアプリなどが参考になるからです。
内容を確認せずに遺産整理でパソコンなどを処分してしまうと、仮想通貨が相続財産から抜け落ちてしまうリスクが生じます。
なお、仮想通貨取引所では、被相続人が仮想通貨取引をしていた事実さえ証明できれば、アカウントにログインできなくても相続手続きに対応してくれることが多いです。
パスワードがわからなくてもIDさえ判明すれば相続手続きは可能なので、取引があった仮想通貨取引所まで直接問い合わせてみましょう。
相続税の最高税率は55%、所得税の最高税率は45%です。
そして、所得税が発生する場面では、一律10%の住民税も発生します。
つまり、仮想通貨を相続して現金化した場合には、最高で110%の税負担を強いられるリスクがあるということです。
仮想通貨の価値次第では、相続した金額以上の税金を支払わなければいけなくなるので、事前に丁寧に財産調査をしたうえで、仮想通貨をどのように相続するのか、相続放棄をするべきか否かについて慎重に判断してください。
仮想通貨の相続税評価額は、仮想通貨取引所が公表した数値をベースに算定されるのが原則です。
つまり、相続が発生したあとに、相続税対策のために相続税評価額を引き下げるのは事実上不可能だということです。
そこでここでは、仮想通貨取引をしている被相続人が意識するべきポイントを3つ紹介します。
仮想通貨取引で着実に収益を上げている場合には、生前贈与をすることで、相続発生後の相続税負担を軽減できます。
生前贈与をした場合には受贈者に贈与税の申告・納付義務が課されますが、贈与税は毎年110万円まで基礎控除が認められています。
つまり、この金額の範囲内なら、税負担なく仮想通貨の収益を相続人などに分配可能だということです。
長期的かつ計画的に生前贈与を繰り返しておけば、相続発生後の相続人の相続税負担を大幅に軽減できるでしょう。
仮想通貨は、比較的不安定な投資商品に位置付けられています。
そのため、現段階で仮想通貨で高額の利益が出ている状態であったとしても、相続が発生する頃には価値が暴落しているリスクも少なくありません。
現段階で仮想通貨である程度の利益が出ているのなら、安定性のある資産に組み換えるのも投資戦略のひとつでしょう。
たとえば、仮想通貨を換金して国債に換えることで安定的な利回りで収益を得ることができます。
投資用不動産を購入して家賃収入を得るのも合理的な判断です。
また、仮想通貨を売却してほかの財産に組み換えるのは、相続対策上も有効だと考えられます。
仮想通貨の相続手続きは複雑で節税対策が難しいのが実情ですが、資産を不動産に組み替えておけば、相続時にさまざまな節税制度を利用しやすくなります。
所得税や相続税の回避・軽減を狙うなら、海外の法制度を活用するのも選択肢のひとつです。
たとえば、海外に移住をしてから現地で法人を立ち上げ、個人で保有している仮想通貨を法人に譲渡します。
そして、被相続人が死亡したあと、相続人にその法人を相続させれば、日本の相続税制度の適用を回避できるのです。
ただし、このような海外移住や法人設立スキームを活用するには、シンガポールや香港などの法制度に精通している必要があるので、必ず弁護士や税理士、公認会計士などの専門家のアドバイスを参考にしてください。
相続財産に仮想通貨が含まれている場合には、相続手続きが複雑になるだけではなく、相続税や所得税対策にも配慮する必要があります。
特に、日本の相続税は諸外国に比べて高い税率が課されているので、仮想通貨の現在価値次第では、納付が困難なほどの税負担を強いられかねません。
これを回避するために相続放棄を選択せざるを得ないとなると、被相続人の思い出の品なども承継できず、相続が不満足な結果に終わります。
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