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親のアパートを相続する際の流れ|経営を引き継ぐべきかの判断基準も解説

親のアパートを相続する際の流れ|経営を引き継ぐべきかの判断基準も解説
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  • 「アパートの経営を引き継ぐべきなのか」
  • 「相続後のアパート経営をどう進めるべきか」

親が不動産賃貸業を経営していたり、相続税対策としてアパートを購入していたりするケースは珍しくありません。

しかし、必ずしも相続人側に不動産に関する経営の知識があるとは限らず、どうしたらよいのか迷うことは多いです。

このような場合は「アパートの相続手続き」と「相続後の経営ポイント」に分けて理解することが重要でしょう。

本記事では、相続財産に賃貸用アパートが含まれていた相続人の方に向けて、以下の内容について説明します。

  • 親が経営していたアパートを相続する際の大まかな流れ
  • アパートを相続して経営を続けるかどうかの3つの判断基準
  • 親がおこなっていたアパート経営を引き継ぐ場合のポイント
  • 親が経営していたアパートを引き継ぎたくない場合の選択肢 など

本記事を参考に、どう相続手続きを進めればよいか、相続後にどう経営をすればよいかなどを理解しましょう。

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目次

親が経営していたアパートを相続する際の大まかな流れ|6ステップ

親が経営していたアパートの相続手続きは、以下のような流れでおこないます。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 収入状況やローン残高などを確認する
  3. 相続人全員で遺産分割協議をおこなう
  4. 管理会社にオーナー変更の連絡をする
  5. 法務局で相続登記の手続きをおこなう
  6. 相続税申告をして、相続税を納付する

ここでは、親が経営していたアパートを相続する際の大まかな流れについて説明します。

1.遺言書の有無を確認する

まずは、以下のような方法で遺言書が残されていないかを確認しましょう。

  • 自宅の金庫やタンスなどを確認する
  • 法務局で遺言書の保管の有無を確認する
  • 公証役場で遺言検索システムを利用する(公正証書遺言の場合) など

もし遺言書が残されていたら、基本的には遺言の内容に従って相続手続きを進めることになります。

一方、遺言書が見つからなかった場合は、相続人全員で遺産分割協議などをおこなう必要があります。

2.収入状況やローン残高などを確認する

親がアパート経営をしていた場合、以下のような資料を確認しましょう。

  • 不動産登記事項証明書
  • これまでの確定申告書や各種契約書
  • アパートローンの返済表
  • 団信保険加入者証
  • 管理会社との管理委託契約書 など

アパートを相続するかどうかの判断においては、現在の収入状況や返済状況などが重要になります。

また、被相続人が団体信用保険に加入している場合、保険金でローンを完済できる可能性があります。

相続手続きをする際も財産・負債の特定は必要になるため、これらの情報を漏れなく確認しておきましょう。

3.相続人全員で遺産分割協議をおこなう

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議(話し合い)をおこないます。

この話し合いではアパートを含めて、誰がどのように財産を相続するのかについて決めます。

話し合いがまとまったら、相続人全員で「遺産分割協議書」という合意した内容をまとめた書類を作成します。

4.管理会社にオーナー変更の連絡をする

アパートの取得者は、管理会社にオーナー変更の連絡をします。

連絡を受けた管理会社は、オーナー変更に伴い以下のような対応をしてくれます。

  • 入居者に対する連絡手続き
  • 賃貸借契約書に関する手続き
  • 振込先口座の変更に関する手続き など

なお、親が、管理会社に委託せず、自分で管理業務をしていた場合は、取得者がこれらの手続きをおこなう必要があるでしょう。

5.法務局で相続登記の手続きをおこなう

オーナーの変更手続きを終えたら、法務局にて相続登記の手続きをします。

手続きは本人でもできますが、不備や間違いをなくすため司法書士に依頼するのがおすすめです。

登記が完了すると、所有権が被相続人から相続人に移り、オーナーであることが明確になります。

相続登記後には登記識別情報通知が発行されるため、紛失しないよう大切に保管しておきましょう。

6.相続税申告をして、相続税を納付する

相続登記が完了したら相続税申告をおこない、相続税を納付します。

相続税の申告・納付の期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヵ月以内です。

期限までに間に合わない場合は、延滞税が発生したり、特例を利用できなくなったりするので注意しましょう。

アパートを相続して経営を続けるかどうかの3つの判断基準

相続後にアパート経営を続けるかどうかは、以下の基準を参考に判断するのがおすすめです。

  • 相続税を問題なく支払えるか
  • 収支の状況が黒字か、長期的な利益が期待できるか
  • ローンが残っているか、大規模修繕が必要になるか

ここでは、アパートを相続して経営を続けるかどうかの3つの判断基準について説明します。

1.相続税を問題なく支払えるか

まず、相続税を支払えるかどうかが重要です。

収益不動産を相続する場合、相続税額が高額になるケースが多いため注意が必要になります。

相続税が支払えない場合には、納税資金を確保するためにアパートの売却が必要になるでしょう。

2.収支の状況が黒字か、長期的な利益が期待できるか

アパートの現在の収益状況や将来の見込みについても確認しましょう。

現在の収支についてはこれまでの確定申告書、帳簿、収支報告書、通帳などで確認できます。

また、将来の見込みについては、立地条件や入居状況などを参考に予想することが可能です。

黒字経営が続いており、将来的にも空室率が低いと予想できる場合は、相続して賃貸経営を続けるべき物件といえます。

一方、赤字経営が続いている場合や、物件の魅力があまりない場合は、慎重に判断する必要があるでしょう。

3.ローンが残っているか、大規模修繕が必要になるか

アパートローンや大規模修繕の有無も、相続して賃貸経営を続けるべきかどうかの判断要素になります。

ローンの相当額の残債務があり、近い将来に大規模修繕が控えている場合は、赤字になる可能性があるため注意が必要です。

もっとも団体信用生命保険がある場合や修繕費用の積み立てがある場合は、賃貸経営を続けられる可能性が高まります。

被相続人がおこなっていたアパート経営を引き継ぐ場合のポイント

親のアパート経営を相続により引き継ぐなら、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 賃貸管理会社を上手に活用する
  • 修繕計画を立て修繕費を積み立てるようにする
  • 相続を機にリフォームやリノベーションをする
  • ローンがある場合には、金融機関においてローンの名義変更の手続きをする

ここでは、親がおこなっていたアパート経営を引き継ぐ場合のポイントについて説明します。

1.賃貸管理会社を上手に活用する

賃貸管理会社(管理会社)とは、大家に代わって賃貸物件の管理をおこなう会社のことです。

たとえば、管理会社は以下のような業務をおこなってくれます。

  • 家賃の回収
  • 更新手続き
  • 建物の管理
  • クレーム対応
  • 入居者の募集(サブリース契約の場合) など

上記のような業務をまとめて管理会社に依頼することで、大家業に関する負担の多くを軽減できます。

本業がある場合や物件が遠方にある場合など、自身が大家業をできないなら管理会社を活用しましょう。

なお、被相続人が管理会社と契約していた場合は、引き続きその管理会社に依頼するのもおすすめです。

2.修繕計画を立て修繕費を積み立てるようにする

アパート経営をする場合は、定期的に以下のような修繕をおこなう必要があります。

修繕内容

修繕頻度

修繕費用(目安)

原状回復

賃借人の退去時

数万円程度

※原則、賃借人が負担

補修

5年~10年程度に1度

※設備によって異なる

数万円~数十万円程度

予防修繕

数年に1度程度

数十万円~数百万円程度

大規模修繕

数年~数十年に1度程度

数百万円~1,000万円程度

相続によってアパートを取得した場合、親がこれまで立てていた修繕計画が残っている可能性があるため探してみましょう。

また、親の現金や預貯金を相続した場合は、そのまま修繕積立金として残しておくこともおすすめです。

なお、修繕積立金が足りない場合は、修繕計画を見直して、修繕費を多めに積み立てることが望ましいです。

3.相続を機にリフォームやリノベーションをする

相続後にお金の余裕があるなら、リフォームやリノベーションをおこなうこともひとつの方法です。

リフォームやリノベーションをすることで、家賃の値上げや入居率の向上などが期待できるでしょう。

リフォームとリノベーションの違い
  • リフォーム:老朽化したアパートを元通りの状態に戻すこと
  • リノベーション:既存のアパートに工事をして付加価値を高めること

たとえば、外壁を塗り直して印象をよくする、宅配ボックスを設置して利便性を高めるなどがあります。

また、システムキッチンやユニットバスを取り入れる、収納スペースを増やすなども挙げられるでしょう。

なお、失敗のリスクもあるため、入居状況や立地場所のニーズなどを踏まえて慎重に判断することがポイントです。

4.ローンがある場合には名義変更の手続きをする

アパートローンが残っている場合は、以下のような流れで名義変更をおこないます。

相続発生時のアパートローンの名義変更の手順
  1. 被相続人が亡くなったら金融機関に連絡しておく
  2. アパートの取得者が決まったらローンの審査を受ける
  3. ローンの審査に通ったら金融機関から必要書類を受け取る
  4. 司法書士などに依頼して債務者変更登記の手続きをおこなう

被相続人が亡くなったからといって、金融機関はアパートローンの返済を待ってくれるわけではありません。

ローンの返済が滞った場合には、連帯保証人に請求されてしまったり、差し押さえをされたりするリスクが高まるでしょう。

そのため、被相続人が亡くなったあとは早めに金融機関に連絡して返済方法などを話し合うことが重要になります。

また、アパートの取得者が決まったら、金融機関でアパートローンの審査を受けて名義変更の手続きを実施します。

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被相続人が経営していたアパートを引き継ぎたくない場合の選択肢

アパートを引き継ぎたくないときの対応は、以下のとおりです。

  • ほかの相続人に譲る
  • アパートを相続後に売却する
  • 債務超過の場合は相続放棄を検討する

ここでは、親が経営していたアパートを引き継ぎたくない場合の選択肢について説明します。

1.ほかの相続人に譲る

自分以外にも相続人がいるときは、ほかの相続人にアパートを譲るのがひとつの方法です。

遺産分割協議ができる場合は、相続人が、自分たちで「誰がどの財産を相続するか」を決めることができます。

たとえば、兄弟姉妹二人がいる場合で兄にアパートを譲り、自分は現金・預貯金を受け取るなどが考えられます。

なお、ほかの相続人にアパートを譲る分、「妥協してあえて代償金(アパートの財産的価値に見合う補償金)を請求しない」という選択肢も検討すべきです。

 というのも、ほかの相続人としても、代償金を満額請求されるのであれば、あえて賃貸アパートそのものを相続したくないと言い出す可能性があるからです。

2.アパートを相続後に売却する

以下のようなケースでは、いったんアパートを相続してから売却を検討しましょう。

  • ほかに相続人がいない場合
  • 遺言書でアパートの相続が指定されている場合 など

このように自分が親のアパートを相続することになるケースは考えられます。

築浅のアパートはそのまま売却でき、老朽化している場合は解体後に土地だけ売ることも可能です。

複数の不動産会社に査定をしてもらい、できる限り高い金額でアパートを売却するとよいでしょう。

なお、相続開始後3年以内に売却すれば「取得費加算の特例」を使えて、譲渡所得を節税することができます。

3.債務超過の場合は相続放棄を検討する

親の資産よりも負債のほうが多い場合は、相続放棄を検討するのもよいでしょう。

相続放棄とは、相続権そのものを放棄することで、一切の相続財産を引き継がなくする手続きのことです。

アパートだけでなく現金・預貯金など全部の財産を相続できなくなりますが、ローンや借金なども背負わずに済みます。

相続放棄の手続きについては、以下のページを参考にしてください。

親が経営していたアパートを相続する際に知っておくべき4つの注意点

親が経営していたアパートを相続する際の注意点は、以下のとおりです。

  • 4ヵ月以内に準確定申告をおこなう必要がある
  • 被相続人が死亡してからの家賃の扱いが難しい
  • アパート経営の規模によっては開業届を提出する必要がある
  • ひとつの不動産を複数の相続人で共有するとトラブルになる

ここでは、親が経営していたアパートを相続する際に知っておくべき4つの注意点について説明します。

1.4ヵ月以内に準確定申告をおこなう必要がある

準確定申告とは、亡くなった被相続人の所得に関する確定申告のことです。

条件はいくつかありますが、基本的には「不動産所得が48万円以上」の場合は申告が必要になるでしょう。

対象である場合は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から4ヵ月以内に手続きをする必要があります。

準確定申告に関する詳しい情報については、以下のページで確認してください。

2.被相続人が死亡してからの家賃の扱いが難しい

被相続人の生前・死亡後の家賃の取り扱いは、以下のようになります。

タイミング

家賃を受け取る人

手続きのポイント

死亡日当日まで

被相続人

相続財産に含める

死亡日翌日から

遺言書あり

遺言書で指定された人

相続人が受け取る

遺言書なし

相続人全員

法定相続分に応じて分ける

遺産分割協議完了後

アパートを相続する人

相続人が受け取る

なお、家賃収入がどのように扱われるかは、実際の支払い期日や滞納状況などによっても変わります。

家賃収入が誰のものになるかわからない場合には、弁護士や税理士などに相談することをおすすめします。

3.アパート経営の規模によっては開業届を提出する必要がある

アパート経営が以下に該当する場合は、開業届の提出が必要になります。

  • アパートの部屋数が10室以上ある場合
  • 10室未満ではあるが、一定額の事業収入がある場合

手続きは、最寄りの税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけの簡単なものです。

もし開業届の提出が必要かどうか迷った場合は、最寄りの税務署に相談することをおすすめします。

なお、親が開業届を提出している場合もあるため、そのときは忘れずに親の「廃業届」を提出しましょう。

4.ひとつの不動産を複数の相続人で共有するとトラブルになる

ひとつのアパートを複数の相続人で共有しないこともポイントです。

アパートを共有で相続した場合は、以下のようなリスクがあります。

  • アパートの売却や解体などに共有者全員の同意が必要になる
  • 共有者が亡くなり、その相続が発生することで共有者が増える など

このような不都合が考えられるため、相続人一人で相続できるよう代償分割などを検討することをおすすめします。

さいごに|アパートを相続する際は経営するか、手放すかを慎重に決めよう

アパートを経営するかどうかは相続税を支払えるか、収支の状況は黒字かなど参考に慎重に決めましょう。

アパートを引き継ぐ場合は、賃貸管理会社を活用したり、修繕費用を積み立てたりすることがポイントです。

アパート経営をすることで安定的な収入を得られるため、できる限り上手に活用することをおすすめします。

一方、アパートを手放す場合は、ほかの相続人に譲ったり、相続後に売却したりする選択肢が考えられます。

また、被相続人の負債があまりにも多い場合は、アパートを含めて一切相続しない相続放棄を検討すべきです。

アパートを相続するときの選択肢や検討事項は多いため、将来のこともしっかりと考えて手続きを進めましょう。

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この記事の監修者
金森総合法律事務所
金森 将也 (愛知県弁護士会)
23年以上のキャリアを持ち、高度な専門知識で安心のアドバイスを提供。「話しやすさ」と「的確な見通しの提示」を大切にしています。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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