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単独相続とは?ひとりの相続人が財産を全て相続するケースと注意すべきトラブル

山本 一貴・山越 勇輝
監修記事
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「親の財産をひとりで相続する場合は、どのように手続きを進めればよいのか」

「単独相続によってトラブルが起こることはないのか」

相続人のうち、ひとりだけが財産を相続することを「単独相続」といいます。

相続において単独相続となるケースは珍しくありませんが、必要な手続きを把握できていなかったり、トラブルが起きるのではないかと不安に感じていたりする方も多いのではないでしょうか

なかには、そもそも自身が置かれている状況で、本当に単独相続が起きるのかさえ判断しきれていない方もいるはずです。

そこで本記事では、単独相続が起こる4つのケースや今後必要になる手続きなどを解説します。

遺産を単独相続する際に気をつけるべきトラブルの事例なども紹介するので、ぜひ最後まで目をとおしてみてください。

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単独相続とは?共同相続との違い

まずは、単独相続の定義を明確にしておきましょう。

ここでは、対照的な概念である「共同相続」との違いに触れながら解説します。

単独相続とは|相続人のひとりが全ての財産を相続すること

単独相続とは、相続人のひとりが全ての財産を相続することを指します。

複数の相続人が財産を相続する「共同相続」と対照的な意味合いをもつ概念です。

詳しくは後述しますが、ほかに相続人がいない場合遺産分割協議で決まる場合など、単独相続が起こる要因は多岐にわたります。

共同相続とは|2人以上の相続人が共同で財産を相続すること

共同相続とは、2人以上の相続人が共同で財産を相続することを指します。

法定相続人が「配偶者」と「血族相続人」の2つに分かれていることもあり、現代においては、単独相続よりも共同相続となるケースが一般的といえるでしょう。

単独での相続が起こる4つのケース

次に、単独での相続が起こる4つのケースを紹介します。

ご自身が置かれている状況と照らし合わせながら、読み進めてみてください。

1.最初から相続人がひとりだけの場合

最初から相続人がひとりだけの場合は、基本的に単独での相続が起こります。

たとえば、被相続人に配偶者がいて、子どもや両親、兄弟姉妹、それらの代襲相続人もいない場合、財産を相続するのは配偶者だけです。

また、被相続人の配偶者が亡くなっており、子どもがひとりだけの場合も単独相続になります。

2.相続放棄・相続欠格・相続廃除によりほかに相続人がいなくなった場合

相続放棄・相続欠格・相続廃除によりほかに相続人がいなくなった場合も、単独相続がおこなわれます。

相続放棄・相続欠格・相続廃除の対象となる人物は相続人の地位を失うので、結果的に財産を相続するのは残された相続人だけになります。

【相続放棄・相続欠格・相続廃除の違い】
  • 相続放棄:相続人が自ら望んで一切の財産を相続しないこと
  • 相続欠格:重大な非行によって相続権を失うこと
  • 相続廃除:被相続人の意思によって相続権を剥奪されること

3.遺産分割協議で相続人のひとりが全ての財産を相続すると決まった場合

単独相続が起こるケースのひとつが、遺産分割協議で相続人のひとりが全ての財産を相続すると決まった場合です。

相続方法は、相続人全員が参加する遺産分割協議によって自由に決められます。

そのため、ほかの相続人全員が相続分の放棄・譲渡をおこなえば、ひとりだけで全ての財産を相続することになります。

4.特定の相続人に全財産を相続させる旨の遺言書が残されていた場合

特定の相続人に全財産を相続させる旨の遺言書が残されていた場合も、単独相続となる可能性があります。

たとえば、「長男に全ての財産を相続させること」といった内容が遺言書に記載されているケースです。

ほかの相続人から民法で最低限保証されている取得分(遺留分)の侵害を主張されない限り、指定された相続人が全ての財産を相続できるようになります

遺産分割協議で特定の相続人が単独相続をする場合の大まかな流れ

ここでは、遺産分割協議で特定の相続人が単独相続をする場合の大まかな流れを解説します。

あとでトラブルを起こさないためにも、一つひとつの手続きを確実にこなしていきましょう。

1.相続人と相続財産の調査をする

遺産分割協議を始める際は、まず相続人と相続財産の調査をおこなう必要があります。

相続人と相続財産の漏れがあとで発覚すると、遺産分割協議をやり直すことにもなりかねないので、慎重に作業を進めてください。

まず、法定相続人になるのは、被相続人の配偶者と血族です。

配偶者は常に相続人となりますが、血族相続人には以下のような相続順位がつけられています。

  • 第1順位:子・孫などの直系卑属
  • 第2順位:父母・祖父母などの直系尊属
  • 第3順位:兄弟姉妹やその子どもなどの傍系血族

相続財産に関しては、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も洗い出すことが重要です。

プラスの財産には現金・有価証券・不動産など、マイナスの財産には借金・税金の支払いなどが挙げられます。

相続財産の種類は、以下の記事で詳しくまとめているので参考にしてみてください。

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2.相続人全員で遺産分割協議をおこなう

相続人・相続財産を正確に把握できたら、相続人全員で遺産分割協議をおこないましょう。

ひとりでも欠けてしまうと、遺産分割協議で決めた内容は全て無効になってしまうので注意してください。

ただし、必ずしも相続人全員が同じ場所に集まる必要はありません。

たとえば、メールや文書などで合意形成がおこなわれた場合でも、遺産分割協議は成立します。

なお、遺産分割協議により単独相続をおこなう際には、ほかの相続人が相続分を放棄したり、譲渡したりするケースが一般的ですが、負債の支払い義務は残ったままになります。

負債の相続を避けるためには、自身のために相続があったことを知ってから3ヵ月以内に、家庭裁判所で相続放棄の手続きをおこなう必要があるので、事前に注意を促しておくとよいでしょう。

3.相続人ひとりに全ての財産を相続させる旨の遺産分割協議書を作成する

相続人全員の合意形成ができた段階で、相続人ひとりに全ての財産を相続させる旨の遺産分割協議書を作成しましょう。

文書として合意内容を残しておけば、あとで「言った、言わない」のトラブルになるリスクを抑えられます

また、各種相続手続においても遺産分割協議書の提示が求められることがあるので、必ず作成しておくようにしてください。

単独相続をおこなう際には、遺産分割協議書に以下のような項目を記載する必要があります。

  • タイトル:一般的には「遺産分割協議書」と記載
  • 被相続人の情報:氏名・生年月日・死亡日・本籍地・最後の住所地を記載
  • 相続人全員が合意した旨:遺産分割の方法について相続人全員が合意したことを記載
  • 相続方法:誰に、どの財産を相続させるのかを具体的に記載
  • 債務の取り扱い:相続財産に含まれる債務を誰が相続するのかを記載
  • 清算条項:相続人同士に権利義務関係がないことを記載
  • 作成日:遺産分割協議書を作成した日付を記載
  • 署名欄:相続人全員の氏名・住所を記載し、押印欄を設ける

実際の書き方は、以下のひな形を参考にしてみてください。

遺産分割協議書

 被相続人:〇〇〇〇

 生年月日:昭和〇年〇月〇日生

 死亡日:令和〇年〇月〇日死亡

 本籍地:〇〇〇〇

 最後の住所地:〇〇〇〇

 

被相続人の遺産について、被相続人の妻〇〇〇〇 (以下「甲」という)、被相続人の長男〇〇〇〇 (以下「乙」という)、被相続人の長女〇〇〇〇 (以下「丙」という)の相続人全員が遺産分割協議をおこない、次のとおり決定した。

 

1. 以下の財産は、甲が相続する。

 

(1)土地

 所在:〇〇

 地番:〇〇

 地目:〇〇

 地積:〇〇

 

(2)建物

 建物:〇〇

 所在:〇〇

 家屋番号:〇〇

 種類:〇〇

 構造:〇〇

 床面積:〇〇

 2階部分:〇〇

 

(3)預貯金

 銀行・支店名:〇〇 

 預金種目:〇〇

 口座番号:〇〇

 口座名義人:〇〇

 

2.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、甲が全て相続する。

 

3. 甲が相続する遺産には被相続人の債務も含まれる。また、甲は、被相続人の債務の弁済について乙及び丙に求償しない。

 

4.本協議書の当事者は、遺産について本書に定めるもののほか、当事者間に一切の債権債務関係がないことを確認する。

 

以上、遺産分割協議書成立の証として、本書を3通作成し、署名・押印の上、各自1通ずつ保有する。

 

令和〇年〇月〇日

住所〇〇〇〇

相続人甲(妻)〇〇〇〇 (実印)

 

住所〇〇〇〇  

相続人乙(長男)〇〇〇〇 (実印)

 

住所〇〇〇〇  

相続人丙(長女)〇〇〇〇 (実印)

遺産を単独で相続する際に気をつけるべき3つのトラブル

次に、遺産を単独で相続する際に気をつけるべき3つのトラブルを紹介します。

遺産相続が原因で大きなトラブルに発展するケースは多いので、しっかりと対策を講じておきましょう。

1.遺産分割協議書の内容が不明確であとから揉める

遺産を単独で相続する場合、遺産分割協議書の内容が不明確であとから揉めるケースがあります。

たとえば、「長男が全ての遺産を相続する」と記載してしまうと、どの遺産が相続対象になるのか不透明なので、「その財産の存在は知らなかった」などといった不満が出てくるかもしれません。

また、預貯金の払い戻しや不動産登記などの相続手続にも、支障が生じるおそれがあります。

そのため、全ての遺産をひとりが相続する場合でも、一つひとつの遺産を個別に指定して遺産分割協議書を作成することが大切です。

2.ほかの相続人から遺留分侵害額請求をされる

遺言により遺産を単独で相続する場合は、ほかの相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性も考慮しておかなければなりません。

遺留分とは、法定相続人に保証されている最低限の遺産取得分です。

たとえば、特定の人物に全ての遺産を相続させる旨の遺言があったとしても、ほかの法定相続人には遺留分が認められます。

そのため、遺留分侵害請求を受けた場合には、遺留分に相当する遺産を返さなければなりません

3.相続人調査が不十分で新しく相続人が現れる

相続人調査を十分におこなえておらず、新しい相続人が現れた場合も、トラブルにつながることもあります。

相続人全員が参加していない遺産分割協議は無効なので、新たに判明した相続人が自身の権利を主張した場合はやり直さなければなりません。

また、遺産分割協議をやり直す前に遺産を使い込んでいるときは、早急に返還する必要があります。

新たな相続人の意向次第では訴訟に発展するおそれもあるので、相続人調査は漏れのないように入念におこなうことが重要です。

日本の相続制度の変遷|1947年までは単独相続(家督相続)が原則だった

最後に、日本の相続制度の変遷を解説します。

相続に関する理解を深めるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

旧民法では嫡子による家督相続が原則

旧民法では、嫡子による家督相続が原則です。

つまり、家の統率者である「戸主」が亡くなった場合は、正妻との間に生まれた長男が家督相続人となり、全ての財産を相続していました。

もちろん、現代においては、法定相続人が複数存在する場合、法定相続人全員の合意がない限り、長男に全ての遺産を相続させることはできません。

なお、戸主以外の家族が亡くなった場合には、直系卑属・配偶者・直系尊属・戸主の順位で、より上位の者が相続することになり、同順位の者が複数いるときは共同相続も認められていました

新民法では兄弟での均等な分割が原則

新民法では、兄弟での均等な分割が原則となりました。

つまり、親が亡くなった場合には、長男が全ての財産を当然に相続するのではなく、兄弟で平等に相続することとなったわけです。

同時に配偶者相続権も強化され、配偶者は常に相続人に含まれるようになりました

今から半世紀上前につくられた新民法において、現行のものと大きく変わらない相続制度がすでに形作られていたのです。

さいごに|単独相続に関する質問や疑問があったら弁護士に相談を!

現代においては、単独相続よりも共同相続となるケースが一般的です。

そのため、単独相続に関してさまざまな疑問が生じるのも当然のことといえます。

もしご自身で調べても解決しないようなことがあれば、積極的に弁護士に相談してみてください。

自力で無理やり手続きを進めようとすると、余計なトラブルを招き、親族との関係が崩れてしまうおそれもあります。

初回相談であれば無料で対応している法律事務所も多いので、まずは気軽に問い合わせてみましょう。

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この記事の監修者
Yz法律事務所
山本 一貴・山越 勇輝 (大阪弁護士会)
相談者様との信頼関係を大切にし、フットワークの軽さと素早いレスポンスで迅速に対応。弁護士だけでなく従業員もプライベートバンカーの資格を保有し、他士業連携で高額な遺産の相続問題にも対応可能。
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本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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