相続に関する弁護士相談をご検討中の方へ
父親が亡くなって初めて異母兄弟の存在が発覚するなどのケースは少なくありません。
そして、父親が亡くなったケースなど、異母兄弟が法定相続人になるような場面では、異母兄弟への連絡が不可欠です。
異母兄弟に相続に関する連絡をして意向を確認しなければ、遺産分割協議などの相続手続きを進めることができないからです。
とはいえ、「今まで何の関係もなかった異母兄弟にわざわざ連絡をする必要はあるのだろうか」「そもそもどうやって異母兄弟に連絡すればいいのか」といった疑問を抱えている方も多いでしょう。
そこで本記事では、異母兄弟に相続の連絡をするときの流れや注意点、手紙を送るときのポイント、弁護士に相談・依頼するメリットなどについてわかりやすく解説します。
父親が死亡した場合、前妻との間の異母兄弟や隠し子に、わざわざ相続の連絡をしなければいけないのでしょうか。
ここでは、異母兄弟への相続の連絡の要否や、異母兄弟に関する相続の基本ルールについて解説します。
相続において異母兄弟への連絡が必要となる可能性があるケースは、主に以下2つです。
法律上、被相続人の子どもかどうかは、血縁関係にあるかどうかで判断されます。
そのため、亡くなった父親と前妻の間に子どもがいる場合、その子どもも相続人としての権利を有します。
また、自分の兄弟姉妹が死亡し、かつ、子ども(第1順位)親(第2順位)に該当する法定相続人が存在しない場合で、自分たちの両親のどちらかが再婚かつ元配偶者との間に子どもがいる場合も、異母兄弟と財産を分け合わなければなりません。
異母兄弟がいるからといって常に相続の連絡が必要なわけではありません。
相続の連絡が必要になるのは、異母兄弟にも相続権が認められるケースだけです。
具体的には、以下の表を参考に連絡の可否を判断してください。
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異母兄弟への相続の連絡 |
具体例 |
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必要 |
・死別した前妻との間に子どもをもうけており、父親が死亡した場合 ・離婚した前妻との間に子どもをもうけており、父親が死亡した場合 ・婚姻関係にない女性との間に子どもをもうけたあと、この子どもを認知しており、父親が死亡した場合 ・両親、直系尊属が全て死亡している状況において、異母兄弟が存在し、兄弟のうち誰かが死亡した場合 など |
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不要 |
・婚姻関係にない女性との間に子どもをもうけたものの、この異母兄弟を認知していない場合 ・異母兄弟と血縁関係がない母親が死亡した場合 など |
異母兄弟と遺産を分け合う必要が出てきた際に気になるのが、異母兄弟の相続順位や法定相続分です。
法定相続分とは、各相続人の相続割合のことを指し、遺言書が存在しない場合や遺言書で相続割合について指定されていない場合などでは、民法で定められた相続割合にしたがって遺産を分割することになります。
もちろん、遺産分割協議参加者全員の同意があるときには、法定相続分と異なる割合で遺産を承継しても差し支えありません。
ここでは、異母兄弟の相続割合について解説します。
亡くなった父親の遺産を異母兄弟と分け合う場合、兄弟姉妹は全て同じ「被相続人の子」という立場なので、相続分は同じです。
そのため、遺産分割協議で別の相続割合で合意をしない限り、異母兄弟を含めて財産は按分されます。
兄弟姉妹の遺産を異母兄弟と分け合うときには、「被相続人の兄弟姉妹」という立場での相続が発生するため、こちら側の兄弟姉妹(全血兄弟)と異母兄弟(半血兄弟)との間で相続分は異なります。
具体的には、異母兄弟(半血兄弟)の相続分は、父母を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟)の1/2です。
異母兄弟の相続割合は少ないですが、一定の法定相続分を有する以上、兄弟姉妹が死亡して相続が発生したときには、必ず異母兄弟に相続の連絡をしましょう。
異母兄弟に相続の連絡をするときの流れについて解説します。
まずは、異母兄弟の有無とその連絡先を調べましょう。
異母兄弟の連絡先を知る人が身近にいる場合には、その人から連絡先を入手してください。
異母兄弟の連絡先がわからないときには、以下の方法で連絡先を調査する必要があります。
戸籍謄本などの取得には数週間の期間を要するケースも少なくないので、被相続人が死亡したあと、できるだけ早いタイミングで相続人調査をスタートしてください。
次に、戸籍の附票に記載された異母兄弟の現住所宛に手紙を郵送します。
いきなり電話をかけたり訪問をしたりすると、警戒されてスムーズな相続手続きの支障になりかねないので、最初は手紙での連絡が賢明です。
異母兄弟に郵送する相続の手紙は、以下のポイントを盛り込んで、丁寧な記載を心がけましょう。
異母兄弟に郵送する手紙の内容については、以下の記載例を参考にしてください。
|
令和○年○月○日 ○○○○(異母兄弟の名前)様
突然お手紙を差し出しますご無礼をご容赦ください。 わたしは○○○○(差出人の名前)と申します。○○○○(被相続人の名前)の○○○○(被相続人との関係性、続柄)です。 令和○年○月○日、○○○○(被相続人の名前)が、○○○○(死因など)により他界いたしました。
このたび、○○○○(被相続人の名前)の相続手続きを進めるにあたって相続調査をいたしましたところ、○○○○(異母兄弟の名前)様が相続人でいらっしゃることが判明しました。本来であれば亡くなってすぐご連絡を差し上げるべきでしたが、○○○○(被相続人の名前)からあなた様のことをまったく聞き及んでおらず、ご連絡が遅れましたこと、心よりお詫び申し上げます。
今般、○○○○(被相続人の名前)の相続手続きを進めるにあたって、○○○○(異母兄弟の名前)様のご協力を賜りたくご連絡をさせていただきました。相続につきまして○○○○(異母兄弟の名前)様のお気持ちをおうかがいしたうえで、相続人全員が納得できる内容で手続きを進めたいと考えております。
つきましては、○○○○(異母兄弟の名前)様のご意向をおうかがいしたく存じますので、下記の連絡先に、○○○○(日時)までにご連絡をいただけましたら幸いでございます。
突然なお願いで大変恐縮ではありますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
○○○○(住所) ○○○○(電話番号) ○○○○(氏名) |
※遺産の内容、相続人の相関図などは、添付書類を用意する
異母兄弟と連絡がとれたら、相続人全員で遺産分割協議をおこないましょう。
遺産分割協議には相続人全員の参加が求められ、どの財産を誰がどのような割合で承継するのかについて話し合われます。
異母兄弟と直接会うのが難しい場合には、書面で意思確認をすることも可能です。
遺産分割協議で相続人全員の合意が形成されたら、その内容を遺産分割協議書という書面の形式で残すのが一般的です。
また、異母兄弟が相続放棄をしたときには、遺産分割協議に参加してもらわなくても問題ありません。
被相続人の戸籍謄本などから異母兄弟の存在が判明したとしても、戸籍の附票に記載されていた現住所に異母兄弟が居住していないなど、連絡がつかないケースも少なくありません。
ここでは、異母兄弟と連絡がとれない場合の対処法を3つ紹介します。
異母兄弟の住所がわからないときには、不在者財産管理人制度を利用してください。
不在者財産管理人とは、従来の住所や居所を去った不在者の代わりにその財産を管理する人のことです。
相続人がひとりでも欠けると遺産分割協議を進めることができません。
そこで、不在者財産管理人を選任すれば、居場所がわからない異母兄弟の代わりに遺産分割協議に参加をしてくれるので、相続手続きに相続人全員の関与がある状況を作り出すことができます。
ただし、不在者財産管理人を選任してもらうには、家庭裁判所への申立てが必要です。
申立人や申立先、必要書類や費用は以下を参考にしてください。
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申立人 |
配偶者や共同相続人などの利害関係人、検察官、債権者など |
|
申立先 |
不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所 |
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申立てに必要は費用 |
・収入印紙800円分 ・連絡用の郵便切手 |
|
申立てに必要な書類 |
・申立書 ・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書) ・不在者の戸籍附票 ・財産管理人候補者の住民票または戸籍附票 ・不在の事実を証明する資料 ・不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金や有価証券の残高がわかる書類など) ・相続の利害関係者であることを示す資料(戸籍謄本など) |
不在者財産管理人が選任されるまでには1ヵ月〜2ヵ月程度の期間を要するので、相続手続きをスムーズに進めたいのなら、異母兄弟の連絡先がわからないと判明した段階で、すみやかに不在者財産管理人の選任手続きを進めてください。
異母兄弟が一定期間消息不明になっているなら、失踪宣告制度の利用を検討してください。
失踪宣告とは、生死不明の状態が一定期間つづいている人を法律上死亡したとみなす制度のことです。
失踪宣告によって異母兄弟の死亡が擬制されると、異母兄弟が相続人ではなかったと扱われるので、異母兄弟抜きで遺産分割協議を進められます。
なお、失踪宣告には以下2種類の制度が用意されています。
消息不明になった原因に応じて、適切な方法を選択してください。
また、手続きについては以下を参考にしてください。
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申立人 |
不在者の配偶者、相続人に当たる者、財産管理人、受遺者など、失踪宣告を求めるについて法律上の利害関係を有する者 |
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申立先 |
不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所 |
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申立てに必要は費用 |
・収入印紙800円分 ・連絡用の郵便切手 ・官報公告料4,816円 |
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申立てに必要な書類 |
・申立書 ・不在者の戸籍謄本(全部事項証明書) ・不在者の戸籍附票 ・失踪を証する資料 ・申立人の利害関係を証する資料 |
異母兄弟との連絡で問題が生じたときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談をしてください。
なぜなら、遺産相続問題が得意な弁護士に相談・依頼すれば、以下のメリットを得られるからです。
遺産相続に関する相談は初回無料で対応してくれる弁護士が多いので、念のために一度は専門家に相談することを強くおすすめします。
異母兄弟に連絡を無視されるなど、相続手続きへ積極的に協力をしてくれない場合、当事者間の話し合いだけで相続手続きを終わらせることができません。
そこで、異母兄弟の協力を見込めないケースでは、遺産分割調停を申し立てる必要があります。
遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員が中立的な立場で話し合いに関与し、遺産相続の関係者の意向や資料を確認しながら、合意形成を目指す法的手続きのことです。
調停委員の関与によって相続人全員が合意に至ると相続手続きが終了します。
なお、遺産分割調停を経ても合意形成に至らない場合には、遺産相続をめぐる諸般の事情を総合的に考慮したうえで、家庭裁判所が審判を下します。
最終的に何らかの形で相続手続きを決着させられるので、異母兄弟が協力的でない場合は以下を参考しながら申立ての準備を進めてください。
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申立人 |
共同相続人、包括受遺者、相続分譲受人 |
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申立先 |
相手方のうちのひとりの住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所 |
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申立てに必要な費用 |
・被相続人ひとりにつき収入印紙1,200円分 ・連絡用の郵便切手 |
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申立てに必要な書類 |
・申立書1通及びその写し(相手方の人数分) ・被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 ・相続人全員の戸籍謄本 ・相続人全員の住民票または戸籍附票 ・遺産に関する証明書 ※相続人の状況によってさまざまな添付書類を要する |
相続において、異母兄弟が相続権を主張することに抵抗感を抱く人も少なくありません。
そのため、被相続人が生きている段階であれば、被相続人にお願いをして、以下のような対応策をとってもらうとよいでしょう。
ただし、異母兄弟の遺留分を侵害する内容になったり、特別受益と認定されたりすると、被相続人が死亡したあとにトラブルになる可能性があるため注意しましょう。
また、被相続人がすでに死亡しており、遺産分割協議の段階に移行している場合には、次の方法で異母兄弟への相続を防ぐことができます。
ただし、遺留分の放棄も相続放棄も異母兄弟本人の同意が必要です。
相続手続きに関与すると面倒であることや、生前の暮らしぶりやほかの相続人の生活実態から相続分を主張しない欲しい旨などを丁寧に説明して、遺産相続を辞退してもらうように説得をするとよいでしょう。
さいごに、異母兄弟に相続の連絡をするときの注意点について解説します。
相続放棄をするかどうかは、各相続人が自由に判断できます。
そのため、異母兄弟に対して相続放棄を強制することはできません。
異母兄弟が相続放棄をせずに遺産相続を希望した場合には、遺産分割協議に参加してもらったうえで話し合いをする必要があります。
異母兄弟が死亡していたとしても、異母兄弟に子どもがいる場合には、異母兄弟の子どもが代襲相続人として相続権を有します。
ですから、亡くなった異母兄弟に子どもがいるときには、異母兄弟の子どもに連絡をとって、遺産分割協議への参加などを求めましょう。
父親が亡くなったようなケースでは、異母兄弟にも相続権が発生します。
相続に関する諸手続きには期間制限が設けられているため、すみやかに異母兄弟に相続の連絡をして、遺産分割協議への参加などを促しましょう。
ただし、異母兄弟に連絡をしても、円滑に遺産分割協議が進むとは限りません。連絡を無視されたり冷静な話し合いが難しい状況だったりすると、こちら側の遺産分割手続きにも支障が生まれるので、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談するべきだと考えられます。
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