相続に関する弁護士相談をご検討中の方へ
相続対策は、単に税金を安くするためだけの手続きではありません。
これまで築き上げてきた大切な財産を家族へ残し、皆が円満に、そして幸せに暮らしていけるようにするための準備です。
相続対策には、大きく下記の3つがあります。
本記事では、将来起こりうる相続のトラブルを未然に防ぐための「相続対策」について、大きく3つの種類に分けて、わかりやすく解説していきます。
本記事を読み終えるころには、相続対策の全体像を理解し、自身の状況に合わせて、どの専門家に相談すればよいかが見えてくるはずです。
相続対策とは、自身に万が一のことがあった場合に備えて、遺された家族が困らないように事前におこなう準備のことです。
なぜ、相続対策が必要なのかというと、相続では以下のような問題が発生するケースが多いからです。
「うちは争うほどの財産はないから大丈夫」と思われている方もいるかもしれませんが、それは大きな誤解です。
実際、裁判所に持ち込まれる遺産分割トラブルのうち、実に7割以上が遺産総額5,000万円以下のケースであり、財産の多い少ないは関係ありません。
むしろ、「現金が少なく、遺産として分けにくい自宅不動産しかない」といったケースの方が揉めやすいのです。
相続対策の本当の目的は、「遺された家族が幸せに過ごせるようにしてあげたい」「お世話になった人に感謝を伝えたい」という想いを実現することです。
節税はそのための「手段」の一つに過ぎません。
そして、これらの対策は相続が起きてしまってからでは打てる手が非常に限られます。
そのため、自身が元気で、判断能力がはっきりしているうちから準備を始めることが、何よりも大切なのです。
遺産分割対策の最大の目的は、相続人同士が財産をめぐって争う「争族」を未然に防ぐことです。
あなたの意思を法的に有効な形で残し、家族が円満に手続きを進められるようにするための、具体的な方法を見ていきましょう。
相続の際に親族同士のトラブルを避けるために、遺言書を作成することを検討しましょう。
なかでも、公証役場で公証人が作成する遺言である「公正証書遺言」を作成しておくのがおすすめです。
相続の際に遺言書があれば、民法で定められた相続割合よりも遺言の内容が優先されます。
そのため、相続人全員で「誰が、何を、どれだけもらうか」を話し合う「遺産分割協議」が原則として不要になり、争いの火種を根本からなくすことが可能です。
なお、公正証書遺言の作成には、裁判官や検察官などの経験を持つ公証人が関与します。
そのため、内容や形式の不備で遺言そのものが無効になってしまう心配がありません。
作成された遺言書の原本は公証役場で厳重に保管されるため、誰かに破られたり、隠されたり、書き換えられたりするリスクも防げます。
また、自筆で書く遺言書とは異なり、相続が始まったあとに家庭裁判所で検認手続きをおこなう必要がないため、相続人は速やかに相続手続きを開始できます。
法的に万全な公正証書遺言を作成したとしても、その内容が家族にとって「寝耳に水」であったなら、かえって不満や憶測を生んでしまう可能性があります。
そのため、遺言書を作成するだけでなく、自分の希望を直接家族に伝えておくことも大切です。
相続の話を切り出すのは気が引けるかもしれませんが、自分が元気で、判断能力がはっきりしているうちにおこなうのが理想的です。
お正月やお盆など、家族が自然に集まるタイミングや老後の生活について話す流れで、「将来のことで考えていることがあるんだけど…」と切り出すとよいでしょう。
なお、自身の相続について話す際、大切なポイントが2つあります。
1つ目は、話し合いの場には原則として「相続人」だけが参加することです。
相続人のお嫁さんや旦那さんなど、相続権のない方が同席すると、それぞれの立場からの意見がぶつかり、話が複雑になってしまう恐れがあります。
2つ目は、話し合いの主導権は、あくまで財産の持ち主である被相続人が握ることです。
自身が「なぜ、このように財産を分けたいのか」という想いや考えをはっきりと伝えたうえで、子どもたちの意見や希望に耳を傾けるという順番を意識しましょう。
また、自身の財産がどれくらいあるのかをまとめた財産目録を作成し、相続人全員で情報を共有しておくことも大切です。
さらに、話し合った内容を簡単なメモや議事録として残しておけば、あとになって「言った、言わない」のトラブルになることも避けられます。
相続対策で悩んでいるなら、相続に詳しい弁護士に相談することも大切です。
相続を控えている方のなかには、「うちの子どもたちに限って、揉めることはないだろう」と考えている方もいるでしょう。
しかし、仲が良かった親族同士が相続をきっかけに揉めてしまうケースは少なくありません。
少しでも「揉めるかもしれない」という不安要素があるならば、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、対策を練りましょう。
弁護士は、法律の専門家としてあなたの家族構成や財産状況に合わせた最適な遺言書の書き方や、将来のトラブルを未然に防ぐための具体的なアドバイスをしてくれます。
また、相続人同士の意見が対立しそうな場合、弁護士が中立的な立場で間に入ることで、感情的なぶつかり合いを避け、法的なルールに則った冷静な話し合いを促すことが可能です。
なお、相続に関する専門家には税理士や司法書士もいますが、相続人間の「争いごと」を法的に解決できるのは弁護士だけです。
親として「子どもたちに少しでも多くの財産を残してあげたい」と考えるのは当然です。
そのためには、相続税の負担をできるだけ軽くし、遺された家族が税金の支払いに困らないように準備しておくことも大切です。
ここでは、相続税の負担を軽減するための「節税対策」と、納税のためのお金を確保する「納税資金対策」について解説します。
相続の際、相続税の負担を軽くするためにいくつかの特例を活用できます。
まず、配偶者が財産を相続する場合、「配偶者の税額軽減」という配偶者控除の特例を利用可能です。
配偶者控除とは、配偶者が相続した財産のうち、最低でも1億6,000万円まで、または配偶者の法定相続分のどちらか多い金額までは相続税がかからないという制度です。
この制度のおかげで、多くの場合、配偶者は相続税を心配する必要がありません。
次に小規模宅地等の特例です。
小規模宅地等の特例とは、一定の条件を満たすことで、その土地の相続税評価額を最大で80%も減額できる制度です。
例えば、相続税を計算するうえでの評価額が5,000万円の自宅の土地があったとします。
この場合、小規模宅地の特例を適用すると評価額を80%減額した1,000万円として相続税を計算でき、納税額が劇的に下がることになります。
ただし、この特例を適用するためには、「誰がその土地を相続するのか」「相続したあともそこに住み続けるのか」など、法律で定められた細かい条件をクリアしなければなりません。
そのため、生前のうちから、誰に自宅を相続させればこの特例が使えるのかを考えて準備することが大切です。
なお、これらの特例を使って計算した結果、相続税が0円になったとしても、税務署への相続税申告は必ず必要です。
相続税申告をしなければ、特例の適用は認められないので注意しましょう。
将来の相続税を減らす方法として、生前贈与も検討しましょう。
生前贈与では、自身が元気なうちから財産を子どもや孫に贈与することで、相続時の税負担を軽くすることができます。
なお、生前贈与には暦年贈与と相続時精算課税制度の2つがあり、それぞれ以下のような特徴があります。
| 生前贈与の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 暦年贈与 | 毎年1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額が110万円までであれば、贈与税がかからない制度 |
| 相続時精算課税制度 | 原則として60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫に対して、生涯にわたって累計2,500万円までの贈与であれば、贈与税がかからずに財産を渡せる制度 |
どちらも一定条件下において贈与に対する贈与税が免除される制度ですが、どちらを利用すべきかは贈与したい財産の額などによって異なります。
そのため、自分のケースでどちらの方法が適しているのかわからない場合は、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
同じ価値の財産でも、その種類によって相続税を計算するときの評価額は大きく異なります。
この評価額の差を利用して、現金を不動産などに換えておく「資産の組み換え」も、有効な節税対策の一つです。
例えば、手元に現金1億円があった場合、その相続税評価額は当然1億円です。
しかし、その1億円で土地や建物などの不動産を購入すると、相続税を計算する際の評価額は、一般的に6,000万円から7,000万円程度まで下がります。
なぜなら、土地の評価額が実際の取引価格(時価)の8割程度とされる「路線価」を基準に計算され、建物の評価額も建築費の5割から6割程度とされる「固定資産税評価額」がそのまま使われるためです。
さらに、その不動産をアパートなどとして人に貸している場合は、評価額はもっと下がります。
土地の所有者であっても自由に使えないという理由から、自分で使う場合に比べて、土地は約2割、建物は3割も評価額が圧縮されるため、より高い節税効果が期待できるのです。
相続税の計算と申告は、非常に複雑で専門性が高い内容です。
どの特例を使うか、不動産をどう評価するかによって、納税額が数百万円、時には数千万円単位で変わることも珍しくありません。
したがって、相続税対策を考えるうえで、税金に関する専門家である税理士への相談は不可欠です。
特に重要なのは、「相続に強い」税理士を選ぶことです。
実は、日本にいる多くの税理士は、法人の決算や確定申告を主な業務としており、相続税申告を専門的に扱っている事務所は多くありません。
そのため、税理士であればだれでもOKというわけではなく、「相続税の節税に強い」税理士を選ぶ必要があるのです。
専門家を選ぶ際は、ホームページなどで「相続専門」を謳っているか、年間の申告実績はどれくらいかなどを確認するようにしましょう。
自身が病気や認知症などで判断能力が低下してしまった場合、たとえ家族であっても、あなたの名義の預金を引き出したり、不動産を売却したりできなくなる「資産凍結」という深刻なリスクがあります。
ここでは、そうした事態に備えるための「財産管理対策・認知症対策」について解説します。
近年、資産凍結のリスクへの備えとして、急速に注目を集めているのが「家族信託」という制度です。
家族信託とは、自身が元気なうちに、信頼できる家族との間で契約を結び、金銭、不動産、有価証券など財産の管理や処分を託す仕組みです。
家族信託の最大のメリットは、認知症などで判断能力を失ったあとでも、財産の名義は凍結されることなく、契約通りに託された家族(受託者)が財産の管理・運用・処分を継続できる点にあります。
例えば、「将来、介護施設に入所する際には、自宅を売却してその費用に充てる」といった希望を契約に盛り込んでおけば、あなたが意思表示できなくなっても、子どもがスムーズに自宅を売却し、介護費用を捻出することが可能です。
また、家族信託は柔軟な設計ができる点でもメリットがあります。
例えば、あなたが亡くなったあとの財産の承継先を指定する「遺言」のような機能を持たせるだけでなく、さらにその次の代の承継先まで決めておくことも可能です。
ただし、家族信託はあくまで「財産管理」に特化した制度です。
介護サービスの契約や入院手続きといった、身上のお世話(身上監護)を代行する権限は含まれていない点には注意しましょう。
判断能力が低下したときに備えるもう一つの代表的な制度が「任意後見制度」です。
任意後見制度は、自身が元気なうちに判断能力が衰えてしまった場合に備えて、「誰に」「どのような支援をしてもらうか」をあらかじめ自分で決めておく制度です。
家族信託との最も大きな違いとして、任意後見人には「身上監護権」がある点が挙げられます。
そのため、任意後見制度を利用すれば、財産管理はもちろん、介護サービスの利用契約を結んだり、病院の入退院手続きをしたりといった生活や療養に関するさまざまな法律行為を代行してもらうことができます。
なお、任意後見制度の契約の効力が発生するのは、実際にあなたの判断能力が低下し、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任してからです。
また、任意後見人は監督人を通じて家庭裁判所の監督下に置かれるため、財産の不正利用などのリスクは低い反面、財産管理の自由度は低くなります。
ただし、財産を守ることが最優先される分、積極的な資産活用は本人の利益のために必要不可欠と認められない限り、難しくなることを覚えておきましょう。
本記事では、相続対策の3つの柱である遺産分割対策・相続税対策・財産管理対策について解説しました。
どの対策が最適なのかは、家族の状況、財産の構成、そして何よりも被相続人の希望によってまったく異なります。
そのため、相続対策の第一歩として、まず専門家に相談するのがおすすめです。
遺された家族が避けられるトラブルに巻き込まれないためにも元気なうちから準備を始めてみましょう。
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