被相続人から不動産を相続する際は、相続登記の手続きをおこなって取得した財産の名義変更をおこなう必要があります。
相続登記の手続きでは、相続登記申請書や被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などの必要書類を準備し、あわせて登録免許税の納付も必要です。
登録免許税とは、「不動産を登記・登録するときに課される税金」で、登録免許税を納付しなければ登記申請は却下されます。
登録免許税を納付する際は、自分で金額を計算して納付する必要があります。
計算方法を間違えて納付額が不足してしまうと、税務署から不足分を徴収されることになるため、本記事で正しい計算方法を押さえておきましょう。
本記事では、相続登記する際の登録免許税の計算方法や計算例、登録免許税が免除されるケースや納付方法などを解説します。
被相続人から土地や建物などの不動産を相続する場合、不動産の所在地を管轄する法務局にて相続登記の手続きが必要です。
登記申請の際は、不動産価格に応じた登録免許税を納めなければいけません。
各法務局の管轄先は、「管轄のご案内|法務局」から確認できます。
なお、これまで相続登記は任意でしたが2024年4月1日から義務化され、「相続が開始して、不動産を取得したことを知った日から3年以内」におこなう必要があります。
正当な理由なく手続きを怠った場合、罰則として10万円以下の過料が科されるおそれがあるため、できるだけ早いうちに済ませておきましょう。
登録免許税を計算する際、基本的な流れは以下のとおりです。
ここでは、登録免許税の計算方法について解説します。
登録免許税の計算では、まずは固定資産税課税明細書や固定資産評価証明書を準備して、相続対象の不動産がいくらなのか確認しておく必要があります。
固定資産税課税明細書は、毎年4月~6月ころに役所から届く書類で、固定資産税納税通知書に同封されています。
現在手元に固定資産税課税明細書がない場合は、不動産の所在地の市区町村役場で固定資産評価証明書を発行してもらいましょう。
その際は、固定資産評価証明書交付申請書(窓口で作成)・本人確認書類(免許証など)・発行手数料(300円程度)が必要となります。
固定資産税課税明細書または固定資産評価証明書を準備できたら、書類内の「評価額」や「価格」と表記されている欄を確認してください。
参考として、以下の画像は土地の課税明細書ですが、「⑦価格(評価額)」に記載されている金額が固定資産税評価額となります。
引用元:課税明細書の見方(土地)|横浜市
次に、登録免許税の課税標準額を計算します。
課税標準額とは、「相続対象の不動産の評価額を合計し、1,000円未満を切り捨てたもの」です(国税通則法第118条第1項)。
たとえば、相続対象の不動産の評価額が236万8,540円という場合、課税標準額は236万8,000円となります。
なお、不動産の評価額が1,000円に満たない場合、課税標準額は1,000円になります(登録免許税法第15条)。
最後に、課税標準額に登録免許税率(0.4%)をかけて、100円未満を切り捨てたものが登録免許税額となります。
たとえば、「課税標準額×0.4%」で算出された金額が55万5,555円の場合、登録免許税は55万5,500円となります。
・登録免許税=課税標準額×税率0.4%(4/1,000) ※100円未満は切り捨て |
ここでは、登録免許税の納付額について、具体例をあげて計算します。
たとえば、「固定資産税評価額が3,333万3,333円の土地を相続する」という場合、登録免許税は以下のように計算します。
・課税標準額=3,333万3,333円→3,333万3,000円(1,000円未満は切り捨て) ・登録免許税=3,333万3,000円×0.4%=13万3,332円→13万3,300円(100円未満は切り捨て) |
したがって、この場合の登録免許税額は、13万3,300円となります。
相続では、ひとつの不動産をほかの相続人と分け合ったりすることもあります。
不動産の一部だけを相続する場合、全体の固定資産税評価額に自分の持分割合をかけて登録免許税を計算します。
たとえば、「固定資産税評価額が3,333万3,333円の土地の3分の1を相続する」という場合、登録免許税は以下のように計算します。
・全体の固定資産税評価額に持分割合をかけた金額=3,333万3,333円×1/3=1,111万1,111円 ・課税標準額=1,111万1,111円→1,111万1,000円(1,000円未満は切り捨て) ・登録免許税=1,111万1,000円×0.4%=4万4,444円→4万4,400円(100円未満は切り捨て) |
したがって、この場合の登録免許税額は、4万4,400円となります。
土地と建物を相続する場合、それぞれの固定資産税評価額を合算して登録免許税を計算します。
たとえば、「固定資産税評価額が3,333万3,333円の土地と、4,444万4,444円の建物を相続する」という場合、登録免許税は以下のように計算します。
・土地と建物の評価額合計=3,333万3,333円+4,444万4,444円=7,777万7,777円 ・課税標準額=7,777万7,777円→7,777万7,000円(1,000円未満は切り捨て) ・登録免許税=7,777万7,000円×0.4%=31万1,108円→31万1,100円(100円未満は切り捨て) |
したがって、この場合の登録免許税額は、31万1,100円となります。
マンションを相続する場合、建物の専有部分と敷地部分の評価額を合算して登録免許税を計算します。
建物の専有部分の評価額は、「固定資産税課税明細書」に記載されており、敷地部分の評価額は、「敷地全体の評価額×敷地権割合」で計算する必要があります。
たとえば、「マンションの相続で、建物の専有部分の評価額が111万1,111円、敷地全体の評価額が5,555万5,555円、敷地権割合が10,000分の555」という場合、登録免許税は以下のように計算します。
・敷地部分の評価額=5,555万5,555円×555/10,000=308万3,333円 ・建物の専有部分と敷地部分の評価額合計=111万1,111円+308万3,333円=419万4,444円 ・課税標準額=419万4,444円→419万4,000円(1,000円未満は切り捨て) ・登録免許税=419万4,000円×0.4%=1万6,776円→1万6,700円(100円未満は切り捨て) |
したがって、この場合の登録免許税額は、1万6,700円となります。
相続登記の登録免許税には免税措置が設けられており、条件を満たしていれば登録免許税の支払いが免除されます。
この免税措置は2025年3月31日に終了予定でしたが、2025年度の税制改正によって2027年3月31日まで延長となりました。
ここでは、相続登記でかかる登録免許税が免除されるケースや、免除してもらうための申請手続きなどを解説します。
登録免許税の免税措置の適用を受けられるのは、以下のようなケースです(租税特別措置法第84条の2の3)。
なお、各ケースには細かく要件が定められており、詳細は、「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について|国税庁」をご確認ください。
登録免許税の免税措置を受けるためには、相続登記の手続きで提出する「相続登記申請書」に免税の根拠となる法令の条項を記載しなければいけません。
記載内容は上記の①と②のどちらに該当するかによって異なり、それぞれ以下のとおりです。
申請書の記載例・様式は、「相続登記の登録免許税の免税措置について|法務局」でダウンロードできます。
登録免許税の納付方法は3種類あり、現金での納付・収入印紙での納付・オンラインでの納付が可能です。
ここでは、登録免許税の納付方法について解説します。
現金で納付する場合、税務署や銀行などの金融機関で納付書を入手する必要があります。
納付書の必要事項を記入したあとに窓口で登録免許税を支払い、支払い後に交付される領収証書を登記申請書に添付して法務局に提出します。
登録免許税が3万円以下の場合は、収入印紙を登記申請書に貼り付けて提出することも可能です(登録免許税法第22条)。
収入印紙で納付する場合、郵便局などで登録免許税額分の収入印紙を購入し、登記申請書に添付して法務局に提出します。
収入印紙は郵便局で購入できますが、大きな登記所であれば所内に印紙売場があるところもあります。
なお、登記申請書に貼り付ける余白がない場合は、別の用紙に貼り付けて申請書に綴じ込み、申請書との綴り目に申請人が契印しましょう。
上記のほかにも、インターネットバンキング・モバイルバンキング・電子納付対応のATMなどで納付することも可能です。
オンラインで納付する場合、事前登録やインターネット上での申請を済ませたのち、登録免許税を支払うことになります。
詳しい手続きの流れは、「不動産登記の電子申請(オンライン申請)について|法務省」をご確認ください。
相続登記でかかる登録免許税の納税期限は、相続が開始して不動産を取得したことを知った日から3年以内です。
これまで相続登記は任意でしたが、法改正によって2024年4月1日から義務化され、期限や罰則が設けられています。
登録免許税は相続登記をおこなう際に支払う税金ですので、相続登記と同様の期限内に支払いを済ませる必要があります。
相続登記をおこなう際は、登録免許税を支払う必要があります。
登録免許税の計算では、「固定資産税課税明細書」や「固定資産評価証明書」などの書類が必要で、課税標準額に登録免許税率(0.4%)をかけて計算します。
なお、「土地を相続した相続人が相続登記しないまま亡くなった場合」や「100万円以下の土地を相続する場合」などは免税措置が受けられます。
相続登記の手続きは自力でも可能ですが、書類漏れや記載ミスなどが不安な場合は司法書士、登録免許税の計算が不安な場合は税理士に一度相談することをおすすめします。
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