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実家を相続するときの方法とは?手続きのステップや期限・注意点を理解しよう

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急に実家を相続することになり時、「どんな方法を取ればいいのだろうか」「そもそも相続って法律的にどんな決まりがあるの?」という悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。

実家を相続する時は、「実家をそのまま持つのか」それとも「実家を手放すか」を判断することがポイントです。

そのためには、どちらの方のメリットが大きいのか、ご自身の状況に合わせて正しく判断する必要があります。

本記事では、実家を相続するときの具体的な選択肢や手続きの流れ、注意点やおすすめの相談先を解説します。

実家を相続する場合の判断を見誤ることなく、正しく進めたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

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目次

実家を相続する時の選択肢|5つの選択肢を徹底比較

実家を相続した場合の選択肢は、主に「住む」「貸す」「更地にして活用」「売却する」「相続放棄する」という5つが考えられます。

どの選択肢が最適かは、ご自身のライフプランや実家の状態、立地条件、ほかの相続人との関係性など、さまざまな要因によって異なります。

選択肢ごとにメリットとデメリットが存在するので、ご自身の状況を整理し、将来的な展望も見据えながら、どの道を選ぶべきかを慎重に比較・検討することが重要です。

後悔のない選択をするために、まずはこれらの選択肢について理解を深めましょう。

相続して自分で住む

最初に解説する選択肢は、相続した実家にそのまま住むことです。

相続した実家はあなたの持ち家になるので、家賃を支払う必要がなくなる分、経済的な負担を減らせる可能性があります。

具体的には、相続した方がそのまま実家に住み続けるケースや、一度は実家を離れた方がUターンして実家に戻るといったケースが考えられます。

長年親しんだ実家には、「長年暮らしている家を大切にしたい」という気持ちが芽生えやすいので、修繕やリフォームといった維持管理をおこなう意識も自然と持てるかもしれません。

愛着のある家を守りながら、安定した生活基盤を築ける選択肢と言えるでしょう。

相続して賃貸物件にする

相続した実家を賃貸物件として活用することも、よい選択肢のひとつです。

この選択肢のメリットは、安定した家賃収入を得られる可能性があることです。

得られた家賃収入は、固定資産税や修繕費といった実家の維持管理費用に充てられます。

また、将来的にご自身やご家族が住む可能性を残しつつ、それまでの期間を有効活用できる点も魅力です。

例えば、一般的な賃貸住宅として貸し出す方法のほか、立地や間取りによってはシェアハウスとして運用するケースもあります。

ただし、賃貸経営には入居者募集や家賃管理、トラブル対応のための知識やノウハウが必要です。

賃貸管理を不動産管理会社に委託する方法もありますが、その分の費用も考慮に入れる必要があります。

実家を更地にして活用する

実家の立地が良くても老朽化が進んでいる場合は、建物を解体して更地にし、その土地を活用するのもひとつの手です。

例えば、毎月安定した家賃収入を得るために、賃貸アパートやマンションの建設や駐車場経営を始めるのもひとつの選択肢です。

日当たりの良い土地であれば、太陽光発電設備を設置して売電収入を得るという方法もあります。

ただし、家の解体費用がかかる点はもちろん、更地にすると固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなるため、税負担が増加する可能性がある点には注意が必要です。

相続した実家を売却する

次に紹介するのは、相続した実家を不動産会社に売却するという方法です。

売却して得られた現金は、相続税の納税資金に充てたり、ほかの相続人との遺産分割(代償分割)に利用したりと、さまざまな用途に活用できます。

また、実家を売却すれば、不動産を所有していると必ず発生する固定資産税や物件の維持管理の手間とコストがかからなくなります。

主な売却方法としては、不動産会社に仲介を依頼して買主を探す方法が一般的ですが、時間をかけずに確実に現金化したい場合は、不動産買取業者に直接買い取ってもらうという方法もあります。

ただし、売却価格は市況や物件の状態に左右されるため、希望通りの価格で売れるとは限りません。

相続放棄をする

相続放棄とは、実家を含む全ての遺産を相続しないという方法です。

相続放棄では、プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産も全て放棄できます。

相続放棄をおこなう主な理由は、以下のとおりです。

  1. 実家の資産価値が低い
  2. 老朽化が激しく多額の修繕費用がかかる
  3. ご自身が遠方に住んでおり物理的に管理が困難な場合

また、ほかの相続人との間で遺産分割を巡るトラブルを避けるために相続放棄をおこなうケースもあります。

相続放棄は、原則としてご自身が相続の開始を知った時から3ヵ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

原則として、一度手続きをおこなうと撤回できないので、ほかの財産の状況も含めて慎重に判断しましょう。

実家を相続するときの9ステップ

実家を相続するときの9ステップ

実家を相続することになった場合、さまざまな手続きを定められた期限内に進める必要があります。

ここでは、実家相続における手続きの主な流れを9つのステップに分けて解説します。

それぞれのステップでいつまでに何をすべきかを把握しておくことが、円滑な相続手続きの第一歩となります。

一つひとつ見ていきましょう。

STEP①:遺言書の有無を調べる

相続が発生したら、遺言書がないかを確認しましょう。

もし遺言書が見つかれば、相続登記の際遺産分割協議書や印鑑証明書の提出が不要になるので、手続きが格段に簡単になります。

まずは、自宅の金庫や書類保管場所を確認しましょう。

それでも見つからない場合は、公証役場や故人が信頼していた弁護士、銀行の貸金庫なども調べてみることをおすすめします。

遺言書は、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類に分けられます。

自筆証書遺言を発見した場合は、絶対に開封せずに家庭裁判所へ持参し、「検認」という手続きをおこなう必要があります。

自筆証書遺言をうっかり開封してしまうと無効になってしまうケースもあるので、注意しましょう。

一方、公証役場で作成される公正証書遺言は検認が不要なので、発見したらすぐに内容を確認して次の手続きに進められます。

基本的に、遺産は遺言書の内容通りに分配しますが、相続人全員が合意し、遺産分割協議書を作成すれば、遺言と異なる分け方も可能です。

STEP②:不動産の名義人を確認する

不動産の相続を進める際に欠かせないのが、正確な名義人の確認です。

思い込みだけで手続きを進めると、後から大きな問題に発展する可能性があります。

名義人を調べるときは、法務局で「登記簿謄本(登記事項証明書)」を取得するのがもっとも確実な方法です。

この書類には、現在の不動産所有者が明記されています。

故人が確実に名義人だと分かっている場合でも、念のため確認しておくと安心です。

なぜなら、中には代々受け継がれてきた不動産の名義変更がされていないケースもあるからです。

名義人が故人ではなく先代の名前になっていた場合、相続の起点も故人ではなく、名義人である先代から考える必要があります。

そうなると、連絡を取るべき相続人の範囲が広がり、集めなければならない書類も大幅に増えてしまうのです。

不動産の名義人確認は、思わぬトラブルを防ぐための重要な一歩です。

早い段階で正確に確認しておくことで、後々の安心につながります。

STEP③:法定相続人を確認する

次に、故人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せ、法定相続人を正確に把握しましょう。

法定相続人とは相続権を持つ人を指し、その順位や相続割合は法律で定められています。

全ての相続人が確認できたら連絡を取り、遺産分割協議を進めましょう。

相続登記には相続人全員の戸籍謄本、住民票、場合によっては印鑑証明書が必要となるため、早めに準備を依頼しておくとよいでしょう。

相続人が多数いる場合や連絡が取れない場合は、手続きが複雑化してしまいます。

そのような場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

STEP④:遺された全財産を確認する

同時に、被相続人がどのような財産を遺したのか、その全体像を把握するための相続財産調査も進めていきます。

実家の権利証や固定資産税の納税通知書はもちろんのこと、預貯金通帳や有価証券、生命保険証券、借金の契約書といったプラス・マイナスの財産を全てリストアップする必要があります。

この調査結果が、後々に遺産分割協議や相続税申告を進めるときの重要なポイントです。

STEP⑤:相続放棄・限定承認を検討する

相続財産の調査を進めた結果、プラスの財産よりも借金などのマイナスの財産の方が多い場合、相続放棄や限定承認を検討する必要があります。

相続放棄・限定承認をおこなう場合は、原則として相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出しなければなりません。

期限を過ぎたら相続放棄・限定承認はできなくなるので、財産調査と並行して早めに検討しましょう。

STEP⑥:被相続人の準確定申告を進める

被相続人が亡くなった年に、事業所得や不動産所、年金収入があり、かつ確定申告が必要な場合は、相続人は準確定申告をおこなう義務があります。

準確定申告をおこなう期日は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内です。

なお、申告先は被相続人の納税地を管轄する税務署となります。

申告書を作成するときは、被相続人の収入や経費に関する資料が必要となります。

申告の結果、納付すべき所得税がある場合は、同じく4ヵ月以内に納付しなければなりません。

期限内に手続きを完了させなければ、延滞税などが課される可能性があるので注意しましょう。

STEP⑦:遺産分割協議書を作成する

遺言書がない場合や遺言書で指定されていない財産がある場合は、相続人全員で誰がどの財産をどれだけ相続するのかを話し合いましょう。

その協議で合意した内容を明確にするために作成する書類が、「遺産分割協議書」に該当します。

「遺産分割協議書」の作成は、法的に義務付けられてはいませんが、後のちのトラブルを防ぐために役立ちます。

また、不動産の相続登記や預貯金の解約手続きで必要となるケースも多いので、基本的には作成するのをおすすめします。

協議がまとまったら、相続人全員が内容を確認し、署名と実印の押印を進めましょう。

なお、遺産分割協議を終える期間の目安は、相続開始を知ってから10ヵ月目です。

この期間内に協議を終えれば、相続税の申告にも間に合うでしょう。

STEP⑧:相続税の申告と納付を進める

遺産分割協議を終えた後、必要に応じて相続税の申告と納付を進める必要があります。

相続税の申告と納付が必要になるボーダーラインは、相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合です。

また、申告と納付の期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内」となります。

実際にかかる相続税は、土地や建物の評価、各種特例の適用などを基に正確に計算する必要があります。

例えば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを適用できれば、納税額を大幅に抑えられます。

なお、期限内に申告・納付を完了させなかった場合、延滞税や加算税といったペナルティが課されるので、計画的に準備を進めましょう。

状況に応じて、弁護士や税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。

STEP⑨:実家の相続登記をおこなう

実家などの不動産を相続した場合、その所有権が移転したことを示すために法務局で名義変更の手続き(相続登記)をおこなう必要があります。

以前は相続登記に期限は設けられていませんでしたが、不動産登記法が改正され、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

不動産登記法では、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記の申請が義務付けられています。

正当な理由なくこの申請を怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性があるため、注意が必要です。

相続登記をしなければ、その不動産の売却や担保に入れて融資を受けることができなくなるので、速やかに法務局に必要な書類を提出し、登記申請を進めましょう。

実家の相続登記時に必要な書類

実家の相続登記を申請する際には、さまざまな書類を収集し、作成する必要があります。

これらの書類は、①ご自身で準備するもの②法務局で入手するもの③市町村役場で取得するものの3つに大別されます。

手続きをスムーズに進めるためには、どのような書類が必要で、どこで手に入れられるのかを事前に把握しておくことが大切です。

次に、それぞれの分類ごとに必要な書類を解説します。

自分で用意する書類

相続登記の申請にあたって準備する主な書類は、遺産分割協議に基づいて登記を進める場合に必要となる「遺産分割協議書」です。

この書類には、相続人全員の署名と実印の押印が必要です。

また、その実印が本人のものであることを証明するために「相続人全員の印鑑証明書」も必要となります。

遺言書に基づいて登記をおこなう場合は、その「遺言書」そのものが必要です。

もし遺言書が自筆証書遺言であれば、家庭裁判所での検認手続きを経たことを証明する「検認調書」または「検認済証明書」も添付します。

法務局で入手する書類

相続登記の申請手続きで必要となるのは、「登記申請書」です。

この書類は、どの不動産を誰の名義に変更するのかを記載する書類であり、法務局の窓口もしくはWebサイトから書式をダウンロードできます。

また、被相続人がその不動産を取得した際の「登記識別情報(または登記済証、いわゆる権利証)」があれば、手続きがスムーズに進む場合がありますが、紛失していても手続きは可能です。

市町村役場で入手する書類

相続登記には、被相続人や相続人の身分関係や住所を証明するための公的な書類も必要です。

まず、被相続人については登記簿上の住所と死亡時の住所が異なる場合に「住民票の除票」または「戸籍の附票」が必要です。

続いて、相続人については全員分の「戸籍謄本」と「住民票」が必要となります。

戸籍謄本は、被相続人との関係を証明するために、住民票は現在の住所を証明するために用いられます。

さらに、実家(建物)とその土地の評価額を証明する書類として、「固定資産評価証明書」も必要です。

これらの書類は、それぞれの本籍地や住所地の市町村役場に請求すれば入手できます。

実家を相続するときにかかる税金|2つの税金と計算方法

実家を相続した場合、主に「相続税」と「登録免許税」という2種類の税金が関わってきます。

相続税は相続財産の総額が一定額を超えた場合に、登録免許税は不動産の名義変更(相続登記)をおこなう場合にかかります。

ここでは、「相続税」と「登録免許税」がどのような場合に発生するのかと、具体的な計算方法を解説します。

相続税

相続税は、亡くなった方から受け継いだ財産の総額が法律で定められた基礎控除額を超える場合に課税される税金です。

相続税は、相続財産の総額が基礎控除額以下であればかかりません。

基礎控除額は、「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」という計算式で算出されます。

例えば、相続財産(実家、預貯金など全て含む)の総額が5,000万円で、法定相続人が配偶者と子の合計二人だった場合、基礎控除額は3,000万円+(600万円×二人)=4,200万円となります。

このケースでは、相続財産が基礎控除額を800万円超えているので、相続税の申告および納付が必要になります。

登録免許税

登録免許税とは、不動産や会社などの登記手続きをおこなうときに課税される税金です。

実家の名義を被相続人から相続人へ変更するには、登録免許税を納付する必要があります。

相続登記における登録免許税の税額は、原則としてその不動産の「固定資産税評価額」に0.4%(1000分の4)の税率を掛けて計算されます。

例えば、相続した実家(土地+建物)の固定資産税評価額の合計が2,000万円だった場合、登録免許税は2,000万円 × 0.4% = 8万円となります。

この税金は、相続登記を法務局に申請するときに、収入印紙で納付するのが一般的です。

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相続した実家を売却・活用するときに適用できる特例|3つの特例を解説

日本には、相続した実家を売却・活用するときに使える特例制度がいくつか設けられています。

これらの特例をうまく活用すれば、売却時にかかる譲渡所得税だけでなく、相続税の負担を減らせる可能性があります。

活用方法を知っているかどうかで手元に残る金額が大きく変わる可能性もあるので、適用できる特例がないかを事前チェックしておくことが重要です。

ここでは、代表的な特例制度を3つ解説します。

マイホームを売ったときの特例

この特例は、ご自身が住んでいた家、または被相続人が亡くなる直前まで住んでいた家(一定の要件あり)を売却した場合に利用できる可能性がある制度です。

この特例の適用を受けられれば、不動産を売却して得た利益から最高で3,000万円までの控除が可能です。

例えば、被相続人が住んでいた実家を相続し、売却した際の譲渡所得が4,000万円だった場合、この特例を適用できれば3,000万円が控除され、課税対象となる譲渡所得は1,000万円まで減らせます。

特例の適用を受けるための要件は、次のとおりです。

(1)売った資産は、下記のイからホまでのいずれかに該当する資産であること。
イ 現に自分が住んでいる家屋
ロ 以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。なお、その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません。)
ハ 上記イまたはロの家屋とともに売ったその敷地や借地権
ニ 上記イまたはロの家屋を取り壊した場合のその敷地で、次の2つの要件全てに当てはまるもの。
(イ) その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(ロ) 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などそのほかの用に供していないこと。
ホ 家屋が災害により滅失した場合のその敷地で、次の区分に応じた期限までに売るもの(これらの土地の場合は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用していてもかまいません。)
(イ) 上記イの家屋の敷地の場合は、災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。
(ロ) 上記ロの家屋の敷地の場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。
(2)売った年の前年および前々年にこの特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
(3)売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
(4)売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除などほかの特例の適用を受けていないこと。
(5)親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと。
「特別の関係がある人」には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。
※(特定増改築等)住宅借入金等特別控除または認定住宅新築等特別税額控除については、入居した年、その前年または前々年に、このマイホームを売ったときの特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。
また、入居した年の翌年から3年目までのいずれかの年中に、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の対象となる資産以外の資産を譲渡し、この特例の適用を受ける場合にも、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の概要等については、マイホームの取得や増改築などしたときを参照してください。

引用元:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

なお、次のようなケースは適用除外としてみなされます。

(1)この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
(2)居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、そのほか一時的な目的で入居したと認められる家屋
(3)別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋

引用元:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

この特例は、納めるべき譲渡所得税や住民税を大幅に軽減できる可能性があるのが大きなメリットです。

ただし、適用には家屋の取り壊し要件や売却時期などの細かな条件があります。

売却する場合の取得費加算の特例

この特例は、相続税を納付した人が、その相続税の申告期限の翌日から3年以内に相続した財産(実家など)を売却した場合に適用できる制度です。

この特例では、納付した相続税額のうち、売却した財産に対応する部分の金額を、その財産の取得費に加算できます。

取得費が増える=売却価格から差し引かれる費用が増えるという意味なので、結果として譲渡所得額が下がり、譲渡所得税・住民税の負担が軽減されます。

特例の適用を受けるための要件は、以下のとおりです。

(1) 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
(2) その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
(3) その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

引用元:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁

例えば、実家を相続する際に100万円の相続税を納付し、その後3年以内にその実家を売却した場合、納付した相続税額100万円の一部(売却した実家に対応する部分)を、売却時の取得費に上乗せして税金を計算できます。

相続空き家の3,000万円特別控除の特例

この特例は、相続によって取得した空き家を売却する際に利用できる可能性がある制度です。

主な対象となるのは、相続開始の直前まで被相続人が一人で居住していた家屋で、一定の耐震基準を満たすもの、または家屋を取り壊して更地として売却する場合などです。

この特例を適用させるには、次の要件を満たす必要があります。

(1)売った人が、相続または遺贈(死因贈与を含みます。以下同じです。)により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得した相続人(包括受遺者を含みます。以下同じです。)であること。
(2)次のイ、ロまたはハの売却をしたこと。
イ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
(注)被相続人居住用家屋は次の(イ)および(ロ)の要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(イ)の要件に当てはまることが必要です。
(イ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
(ロ) 譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。
ロ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
(注)被相続人居住用家屋は次の(イ)の要件に、被相続人居住用家屋の敷地等は次の(ロ)および(ハ)の要件に当てはまることが必要です。
(イ) 相続の時から取壊し等の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
(ロ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
(ハ) 取壊し等の時から譲渡の時まで建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。
ハ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売る場合で、次の(イ)および(ロ)または(イ)および(ハ)の要件に当てはまること(上記イに掲げる譲渡に該当するものを除きます。)。(※)
(イ) 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
(ロ) 譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこととなったこと。
(ハ) 譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、被相続人居住用家屋の全部の取壊し等を行ったこと。
※ハの要件については、令和6年1月1日以後に行う譲渡に限ります。
(3)相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(4)売却代金が1億円以下であること。
この特例の適用を受ける被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合や他の相続人が売却している場合における1億円以下であるかどうかの判定は、相続の時からこの特例の適用を受けて被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金により行います。
このため、相続の時から被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した年までの売却代金の合計額が1億円以下であることから、この特例の適用を受けていた場合であっても、被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにこの特例の適用を受けた被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等の残りの部分を自分や他の相続人が売却して売却代金の合計額が1億円を超えたときには、その売却の日から4ヶ月以内に修正申告書の提出と納税が必要となります。

(5)売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(6)同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。
(7)親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと。
「特別の関係がある人」には、このほか生計を一にする親族、家屋を売った後その売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含まれます。

引用元:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

この特例は、空き家問題の解消を目的として設けられており、適用を受けるためには、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することなど、複数の要件を満たす必要があります。

例えば、要件を満たす相続した空き家を売却し、譲渡所得が4,000万円の場合、この特例により課税対象所得を1,000万円に減らせます。

実家を相続するときの注意点|5つの落とし穴と対策

実家の相続は、単に不動産を引き継ぐというだけでなく、さまざまな手続きを慎重に進めていく必要があります。

その過程には、思わぬ落とし穴が潜んでいるケースも少なくありません。

ここでは、実家を相続するときに気をつけるべきポイントを5つ解説します。

相続は、親族間で感情的な対立や金銭面の揉め事が発生しやすいデリケートな問題なので、適切な対策を打っておけば、リスクを回避して円満な相続を実現できるでしょう。

空き家のまま放置しない

相続した実家に住む予定がなく、売却や活用の目処が立っていない状況でも、空き家のまま放置するのは避けるべきです。

建物は人が住まなくなると急速に劣化が進み、換気不足によるカビの発生や雨漏り、害虫・害獣の発生、庭の雑草の繁茂など、さまざまな問題が生じます。

そのせいで、資産価値が低下するだけでなく、近隣住民とのトラブルの原因にもなりかねません。

さらに、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、倒壊の恐れがあるなど危険な状態の空き家は「特定空家」に指定されるおそれがあります。

特定空家に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税負担が大幅に増加します。

そうならないように、定期的に訪問し、換気や掃除、庭の手入れなどをおこないましょう。

遠方で管理が難しい場合は、空き家管理サービスを利用するなどの対策を講じることが重要です。

共有名義にするとリスクがある

遺産分割協議の結果、相続した実家を複数の相続人の共有名義にするケースがあります。

一見、公平な分割方法に見えますが、共有名義には将来的なリスクが伴います。

不動産を共有名義にすると、その後の管理、活用、売却といったあらゆる行為について、共有者全員の同意が必要となります。

例えば、実家を売却したいと考えても、共有者の一人でも反対すれば売却できません。

なお、大規模な修繕やリフォーム、賃貸に出すといった活用についても同様です。

将来、相続人の誰かが亡くなれば、その持分はさらにその相続人に引き継がれ、共有者が増えて権利関係が複雑化していく可能性もあります。

意見の対立が生じた場合、不動産の管理や活用、売却などの運用に手が追いつかなくなるおそれがあります。

そのようなリスクを避けるためにも、共有名義はできるだけ避け、単独名義にするか、売却して現金を分割する方法を検討すべきでしょう。

実家以外に相続財産がないときはトラブルになりやすい

相続財産が実家のみ、あるいは実家の価値が相続財産の大部分を占めるというケースは少なくありません。

このような場合、遺産分割でトラブルが発生しやすくなります。

法定相続分に従って公平に分割しようとすると、実家を相続する人が、ほかの相続人に対してその相続分に見合う代償金を支払う必要(代償分割)が生じます。

しかし、実家の評価額が高額である場合、実家を相続する人に十分な資力がなく、代償金を支払えないケースがあります。

そうなると、実家を売却して現金で分割するしか方法がなくなりますが、実家に住み続けたい相続人がいる場合は、意見が対立し、協議が難航してしまうおそれがあります。

このような事態を避けるためには、生前のうちに遺言書を作成しておくか、生命保険を活用して代償金資金を準備しておくのをおすすめします。

空き家を解体して更地にすると固定資産税が6倍になる

老朽化した空き家を解体して更地にすれば、管理の手間が省け、土地活用の選択肢も広がると考えがちですが、税金面では注意が必要です。

土地にかかる固定資産税には、「住宅用地の特例」という軽減措置があります。

この特例制度は、住宅(家屋)が建っている土地については、その面積に応じて固定資産税評価額が最大で6分の1(200㎡以下の部分)または3分の1(200㎡超の部分)に減額されるというものです。

この制度は空き家であっても適用されます。

ただし、建物を解体して更地にしてしまうと、住宅用地の特例が適用されなくなり、結果として土地の固定資産税額が最大で6倍に跳ね上がってしまう可能性があります。

解体を検討する際は、解体費用だけでなく、解体後の固定資産税がいくらになるのかを事前に市区町村役場に確認し、慎重に判断することが重要です。

相続登記を放置すると過料が科される可能性がある(義務化)

前述した通り、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

これは、所有者不明土地問題の深刻化を受け、不動産の所有者情報を正確に把握することを目的とした法改正によるものです。

この義務化に伴い、相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、正当な理由なく相続登記の申請を怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

「正当な理由」とは、例えば相続人が多数で戸籍謄本の収集に時間がかかるケースや遺産分割協議が難航しているといったケースが想定されますが、具体的な判断は個別の事案によって異なります。

過料のリスクだけでなく、相続登記をしないまま長期間放置すると、権利関係が複雑化し、いざ売却や活用をしようとした際に手続きが困難になる可能性もあります。

相続が発生したら、他の手続きと並行して、速やかに相続登記の手続きを進めることが重要です。

実家の相続にお悩みの方は弁護士に相談するのがおすすめ

遺産相続の手続きは期限に制限があり、〆切を過ぎてしまうとあなたにマイナスの影響が及ぶ可能性があります。

3年以内の期限が設けられている相続登記を例として挙げても、放置すると相続人の代替わりによって権利関係が複雑化し、後の手続きが困難になるおそれがあります。

さらに、遺産分割協議がまとまらない、相続人間で意見対立するといったトラブルも少なくありません。

このような問題を避け、円滑に相続手続きを進めるには、早い段階で相続問題に詳しい弁護士に相談することが重要です。

弁護士は法律の専門家として、個々の状況を詳しく聞き取り、起こり得るトラブルやリスクを見抜いて、最適な解決策を提案してくれます。

いち早く専門家のサポートを得ることが、後悔のない相続を実現する近道となるでしょう。

実家の相続を弁護士に相談する3つのメリット

相続手続きは複雑で、法律知識や専門的なノウハウが求められますし、相続人間での感情的な対立が生じやすい側面もあります。

さらに、相続後の不動産の活用方法まで含めて、長期的な視点でのアドバイスが必要となる場面もあります。

そんな時こそ弁護士の力を借りれば、複雑な相続の手続きをスムーズに進められます。

ここでは、弁護士に相談することで得られる主な3つのメリットを具体的に解説します。

相続法に関する専門知識やノウハウが豊富

弁護士は、民法や税法、不動産登記法などの相続に関するさまざまな法律に精通しており、実務経験も豊富です。

相続について弁護士が対応してくれる業務例は、以下のとおりです。

  • 法定相続分の計算
  • 遺言書の有効性の判断
  • 遺産分割協議に関するアドバイスや代理交渉
  • 相続放棄や限定承認の手続きのサポート

このように、専門的な知識が不可欠なあらゆる場面で、的確かつ信頼性の高いサポートを受けられます。

特に相続案件を専門的に扱っており、常に最新の法律や判例の動向を把握している弁護士の力を借りれば、それらを踏まえた上で、個々のケースに最適なアドバイスがもらえるでしょう。

訴訟や交渉など紛争の解決を依頼できる

弁護士は、相続における訴訟や交渉といった紛争を解決するために動いてくれます。

実家の相続は、親族間でどう遺産を分けるのかという意見がどうしても対立しやすい問題なので、紛争に発展してしまうケースも少なくありません。

特に、実家のように分割が難しい不動産が含まれる場合や特定の相続人が被相続人の生前に多額の援助を受けていた場合は、感情的なしこりも相まって、当事者同士での話し合いによる解決が困難になる可能性があります。

このような場合、弁護士はあなたの正当な権利を守るための代理人として、相手方の相続人やその代理人との交渉を進めてくれます。

もし、交渉で合意に至らない場合には、家庭裁判所における遺産分割調停や審判といった法的な手続きに移行することになりますが、その際も弁護士が代理人として、あなたの主張を法的に示すために、必要な証拠を収集・提出するなど、全面的にサポートしてくれます。

相続後の物件活用も含めて相談できる

弁護士への相談は、単に相続手続きを完了させるだけに留まりません。

特に実家のような不動産を相続した場合、その後の活用方法についても、法的な観点から適切にアドバイスしてくれます。

弁護士は、不動産の活用に関する法規制や税制を熟知しているので、あなたの意向やライフプランを踏まえて、最適な活用方法を提案できます。

例えば、賃貸経営を始める場合には、賃貸借契約書の作成やチェックや入居者とのトラブル対応に関するアドバイスなどが受けられます。

相続手続きからその後の不動産活用まで、一貫して法的なサポートを受けられる点は、弁護士に相談する大きなメリットと言えるでしょう。

実家の相続でお悩みの方は弁護士に相談しよう

実家の相続に関してお困りの際は、相続問題に精通した弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、煩雑な手続きの多くを代行してもらえるので、ご自身の負担を大幅に軽減できます。

万が一、相続人間のトラブルが発生した場合にも代理人として交渉や法的手続きを進めてもられば、円満な解決を目指せます。

相続問題に強い弁護士を効率よく探すためには、弁護士検索サイトを活用するのもひとつの方法です。

専門サイトである「ベンナビ相続」を利用すれば、お住まいの地域や相談内容に合わせて、経験豊富な弁護士を見つけられます。

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この記事の監修者
江戸川葛西相続法律事務所
菊地 正志 (第一東京弁護士会)
当職は、税理士、公認会計士準会員の資格をもつ、会計に強い弁護士です。相続で株式や不動産の扱いにお困りの方や、遺産分割協議でもめている方は、当職へご相談ください。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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