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このように、相続対策として駐車場経営を考えている方は少なくないのではないでしょうか。
相続時の節税対策として、「駐車場経営」は初期投資が比較的少なく、空き地を活用できる方法として注目されています。
本記事では、駐車場経営が相続税対策になる条件や具体的なケースをわかりやすく解説するとともに、相続した土地を駐車場にするメリット・デメリット、相続税の算出方法も紹介します。
相続で損をしないために、自分の土地に当てはめて検討できる知識を身につけましょう。
駐車場経営が相続税対策になるかどうかは、駐車場の形態や駐車場経営を始めた時期によって異なります。
以下では、駐車場経営が相続税対策になるかどうかについて、いくつかのポイントを解説します。
相続する土地をそのまま青空駐車場として活用しても、相続税の節税効果を得られない可能性があります。
青空駐車場とは、車両を覆う屋根などがなく、アスファルトを敷いて区画線を引いただけや、地面にロープを打ち付けて区画を区切っただけの駐車場のことです。
なかでも、アスファルト舗装などの構築物が設置されていない場合は、相続においては「更地」と同じ扱いになるため、路線価や時価を基準に土地の評価額が算出されてしまい、各種相続税の軽減措置は受けられません。
実際は他者に貸し出す目的の土地であるにもかかわらず、借地権割合などによって評価額が下がることもないのです。
相続税法では、「小規模宅地等の特例」によって事業用宅地や貸付事業用宅地について一定の減額措置が設けられています。
具体的には、相続した駐車場が単なる青空駐車場ではなく、安定した事業として運営されている場合や法人に貸し付けている場合は、貸付事業用宅地として最大50%まで評価額を下げることが可能です。
ただし、小規模宅地等の特例で駐車場を貸付事業用宅地等(50%減)として評価減できるのは、貸付事業(不動産貸付業・駐車場業等)に該当し、かつ事業継続・保有継続などの要件を満たすときに限られます。
また限度面積の条件もあります。
以下では、小規模宅地等の特例の適用条件や、適用できる駐車場の具体例などについてわかりやすく紹介します。
相続した駐車場に小規模宅地等の特例を適用させて相続税評価額を軽減させるためには、以下の4つの条件を満たさなくてはいけません。
特に4番目の「相続開始の3年以上前から貸付事業に使われている」という条件には注意が必要です。
たとえば、相続発生時に更地だった土地を駐車場に改装したり、相続開始直前にあわてて駐車場にしたりといったケースでは、小規模宅地等の特例は適用できません。
小規模宅地等の特例を利用できる駐車場の例は、以下のとおりです。
| 例 | 概要 |
| アスファルト舗装されている | アスファルトは構築物として認められるため、アスファルト舗装されただけの青空駐車場も特例を適用できます。 土地の一部だけが舗装されている場合は、その部分のみ適用となります。 |
| 綺麗に砂利が敷かれている | 綺麗に砂利を敷かれて管理されている場合、構築物として認められるか微妙な部分もありますが、特例が適用可能となる場合もあります。 |
| コインパーキングとして運営している | 精算機や看板、舗装など設備投資をしており、不特定多数の利用者から収益を得る形態です。 小規模宅地等特例の対象となるには事業継続性が重視されるため、コインパーキングのように明確な事業実態がある駐車場は要件を満たすケースが多いです。 |
| タイムパーキング事業者に貸し出している | タイムパーキング事業者に土地そのものを貸し出している場合も特例を適用できます。 小規模宅地等の特例において、建物や構築物の所有者に関する規定はないためです。 この場合は、小規模宅地等の特例による減額に加え、賃借権割合による土地自体の評価額減額も期待できます。 |
以下のような駐車場は、小規模宅地等の特例を適用できません。
| 例 | 概要 |
| 駐車場の上に建物や構築物がない | 小規模宅地等の特例を受ける条件として「土地の上に建物や構築物があること」が求められます。 そのため、アスファルト舗装や精算機などの構築物が一切なく、ロープや止め石などで区画を区切っただけの駐車場は適用外です。 |
| 親族や知り合いに低額または無償で貸している | 小規模宅地等の特例を受けるためには、不動産貸付業として相応しい対価を得ていることが求められます。 相場より著しく低い価格や、固定資産税評価額未満で貸し出している部分は適用外となります。 |
| 自家用車を止めている区画がある | 駐車場のうち、自家用車を駐車している区画については除外した按分により、特例を適用することになります。 |
| 相続発生前3年以内、または相続開始後に駐車場にした | 小規模宅地等の特例の適用条件として「相続開始の3年以上前から貸付事業に使われている」があるため、適用外となります。 |
駐車場経営は、相続税対策として注目されがちですが、それ以外にもさまざまなメリットがあります。
以下では、相続税対策以外の駐車場経営のメリットについて、詳しく解説します。
駐車場経営は、ほかの不動産活用と比べて初期費用を大幅に抑えられる点が魅力です。
土地を相続した際にアパートやマンションを建てて賃貸物件として運用する場合、数千万円単位の費用が必要になりますが、青空駐車場であれば数十万円から始められます。
また、賃貸物件を運営する場合は入居者募集や建物管理などのために管理会社と契約するケースも多く、維持管理費用がかさみがちです。
その点、駐車場は日常的な維持管理も清掃や区画ラインの補修などにとどまり、建物ほど複雑ではないため自力での運営もそこまで難しくありません。
設備投資が少ない分、赤字リスクを低く抑えられる点も安心材料といえるでしょう。
駐車場経営は安定収入につながる可能性があるのも大きなメリットです。
月極駐車場なら毎月一定額の賃料収入を得られ、コインパーキングであれば時間貸しにより短期利用者から収益を得られます。
特に駅前や繁華街、商業施設の周辺などは需要が高く、長期的な利用者を見込めるでしょう。
また、駐車場は車を停められるスペースさえあれば成り立つので、アパートを建てるには不向きな狭い土地や、三角型・L字型のようないびつな土地でも有効活用しやすいのもポイントです。
駐車場は建物を伴わないため、将来的に土地の使い方を変更したい場合にも柔軟に対応できます。
たとえば、将来は土地を売却したい、住宅を建てたい、あるいは商業施設や賃貸物件に活用したいと考えた際、駐車場経営なら容易に転用が可能です。
駐車場経営は初期費用が少なく比較的始めやすい土地活用方法ですが、必ずしも良いことばかりではありません。
ここでは、相続した土地を駐車場にする際に考慮すべき代表的なデメリットを整理して解説します。
駐車場として利用すると、土地は基本的に「宅地」ではなく「雑種地」として扱われ、住宅用地の特例が適用されません。
そのため、固定資産税が住宅用地より高くなる可能性があります。
特に広い土地を青空駐車場として利用する場合は、相続後の税負担が想定以上に増えるリスクがあるため注意が必要です。
たとえ収益が出ていても、固定資産税の負担が重ければ手元に残る利益は少なくなってしまうため、事前に十分なシミュレーションをおこなっておきましょう。
駐車場収入は「不動産所得」として課税対象になる点にも注意が必要です。
そのため、相続人がほかに給与所得などを得ている場合には、累進課税によって税率が上がる可能性もあります。
結果として、駐車場経営をしても実際の手取りが思ったほど増えないこともあるでしょう。
節税効果を狙って始めたつもりが、むしろ税負担が増える場合もあるため、収益と税金のバランスを事前に試算しておくことが大切です。
駐車場経営は立地に大きく左右される点にも注意が必要です。
駅や商業施設の近くなら需要が見込めますが、住宅街の中や交通量の少ないエリアでは利用者が集まらず、空き区画が増える可能性があります。
場合によっては、固定資産税や維持費ばかりが発生し、赤字経営になることも少なくありません。
さらに、近隣に競合する駐車場ができれば価格競争に巻き込まれることもあり、安定的な収益を確保するのが難しくなるリスクもあります。
そのため、将来的な需要予測を含めて慎重に判断することが重要です。
すでに駐車場として活用されている土地を相続する場合、青空駐車場なのか、コインパーキングとして事業利用しているのかによって相続税評価額は異なります。
ここでは、以下2つのケースについて駐車場の相続税評価額の計算方法を解説します。
なお、ここでは相続税評価額の計算方法のみ紹介し、実際にかかる相続税額を算出するには別の計算も必要です。
最終的な相続税額の算出方法については、以下の記事も参考にしてください。
相続人が自ら土地を管理し、青空駐車場や時間貸し駐車場を直接経営している場合は、土地は「自用地」として評価されます。
つまり、実態としては他者へ貸し出してはいるものの、賃借権の価額を控除した一般的な借地の評価とはならないのです。
また、評価額は路線価方式または倍率方式に基づいて算出され、小規模宅地等の特例が適用された場合も評価額の減額は最大50%です。
そのため、同じ土地でも住宅として使われている場合に比べて、相続税の評価額が高くなるケースが多いです。
特に、都市部の幹線道路沿いなど地価が高い場所では評価額が大きくなり、納税額も重くなるリスクがあります。
土地を外部のコインパーキング会社などに貸し出している場合、その土地は賃借権のついた貸地にあたり、相続税評価上は「雑種地」として評価されます。
貸地の評価額は基本的に路線価をベースに算出されますが、さらに借地権割合の価額を控除できるため、評価額を下げることが可能です。
また、事業用宅地等とみなされれば、小規模宅地等の特例で最大50%の減額が認められることもあります。
ただし、実際の扱いは契約内容や土地の用途によって変わるため、専門家に相談しながら対応するのがおすすめです。
ここでは、駐車場経営の相続についてよくある質問をまとめました。
駐車場を相続した人はぜひ参考にしてください。
結論として、自宅の敷地の一部として使われている駐車場であれば「小規模宅地等の特例」を適用できます。
たとえば、自宅の横にある車庫や自家用車のためのスペースは「居住用宅地」の一部とみなされ、最大80%の評価減が可能です。
一方、自宅から離れた別の土地を駐車場として貸しており、その一部に自家用車を停めているようなケースでは、原則として居住用宅地には該当せず特例の対象外となります。
そのため「自宅敷地内かどうか」が大きな判断基準となる点に注意が必要です。
駐車場用地を生前贈与することで、相続税の課税対象財産を減らす効果は確かにあります。
ただし、贈与には贈与税が課されるため、安易におこなうと相続税より負担が重くなる可能性もある点に注意しましょう。
たとえば、子どもに土地を贈与した場合、基礎控除(110万円)を超える分には贈与税がかかります。
ただし「相続時精算課税制度」を利用すれば2,500万円まで非課税で贈与可能となり、その後の増加分も相続時にまとめて精算できるため、土地の値上がりが見込まれる場合には有効です。
節税効果を最大限にするには、相続税・贈与税の両方を比較検討したうえで複雑な計算が必要となるため、税理士などの専門家へ相談するのがおすすめです。
本記事では、駐車場経営が相続税対策になるケースや、駐車場経営のメリット・デメリットなどについて詳しく解説しました。
相続した土地を駐車場として活用する場合、条件によっては「小規模宅地等の特例」が適用され、相続税評価額を大きく下げられる可能性があります。
しかし、青空駐車場のままでは節税効果が得られない場合もあり、適用の可否や具体的な計算方法は複雑です。
また、駐車場経営は固定資産税や所得税の増加、需要による収益の変動といったリスクもあるため、メリットとデメリットの両面を冷静に見極めることが欠かせません。
相続税評価額の計算や特例の適用可否については、事実関係に即した個別・専門的な判断が必要です。
専門的な判断が必要となるため、不安があれば早めに税理士へ相談するのが安心です。
専門家に依頼することで、無駄な税負担を避け、将来の相続トラブルも防ぎやすくなるでしょう。
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