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相続登記の義務化とは?損をしないために覚えておきたい知識をわかりやすく解説

山本 一貴・山越 勇輝
監修記事
相続登記の義務化とは?損をしないために覚えておきたい知識をわかりやすく解説
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  • 「相続登記をしないとどうなるのか」

相続登記の義務化について、このような疑問を感じていませんか?

相続登記は以前までは義務化されておらず、相続後にそのまま放置していたという方も少なくないはずです。

しかし、2024年4月1日より相続登記が義務化されており、それ以前に相続した不動産についても必ず手続きが必要になっています。

手続きせず放置すると、ペナルティとして10万円以下の過料が科されるおそれがあるので、正しい知識を身に付けてなるべく早めに対応しましょう。

本記事では、相続登記義務化の概要や背景、手続きの流れについて解説します。相続登記を専門家に依頼すべきかどうかについても説明するので、「自分でやるべき?」と悩んでいる方も、ぜひ参考にしてください。

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目次

相続登記の義務化とは?なぜ義務化される?

相続登記の義務化は、相続した不動産の名義変更を義務付ける不動産登記法の新ルールで、2024年4月1日に施行されました。

ここでは、そもそも相続登記とは何かや、義務化の条件・ルール、義務化が決まった背景などを解説します。

そもそも相続登記とは?相続した不動産の名義を変更すること

そもそも相続登記とは、不動産を相続した際、名義を被相続人から相続人へと変更する手続きです。

相続登記が完了してはじめて相続人が正式な所有者となり、登記簿に記録されます。

申請しなければ不動産の名義が被相続人から変わらず、売却や担保設定などの手続きができません。

2024年4月以降は相続登記手続きが義務化されており、放置するとペナルティを受ける可能性があるため、必ず登記をおこないましょう。

相続登記義務化の条件・ルール

2024年4月以降、相続登記が義務化されていますが、いつまでに相続手続きが必要かどうかについては、不動産を相続したタイミングによって異なります。

それぞれのタイミングごとの相続登記手続きの期限は、以下のとおりです。

条件 期限

2024年4月1日以降に相続した

所有権を取得したと知った日から3年以内

2024年4月1日以前に相続した

施行日から3年以内(2027年3月31日まで)

なお、期限内の手続きが難しいときは、相続人申告登記の申出を検討しましょう。

相続人申告登記とは、被相続人の死亡と自分が相続人であることを法務局に申し出て、登記義務を履行したことにする手続きです。

申告登記をおこなうと申出人の氏名・住所が登記簿に記載され、ペナルティを回避できます。

ただし、これは正式な相続登記ではないため、不動産の売却や担保設定などをおこなう際は別途相続登記が必要です。

遺産分割協議が難航していて期限を過ぎそうなときや、登記義務の履行だけを急ぎたい場合に活用できます。

相続登記の義務化が決まった背景|所有者不明土地が増加し問題化しているため

相続登記の義務化が決まった背景には、所有者不明土地の増加という深刻な社会問題があります。

所有者不明土地が問題視される理由は、土地の売却や活用ができず、公共事業や災害復旧、地域の活性化の妨げになるためです。

そのような土地が増加する主な要因は、所有者が死亡しても名義変更がおこなわれず、そのまま放置されることにあります。

実際、代替わりを繰り返すうちに権利関係が複雑になり、相続人自身がその土地の存在を把握していないケースも珍しくありません。

こうした問題を解決するため導入されたのが、相続登記の義務化です。

これまで放置されがちだった名義変更が、義務化によってスムーズにおこなわれる可能性が高まります。

不動産の管理や売却、活用がしやすくなり、将来的なトラブルの防止や所有者不明土地問題の解決が期待できるでしょう。

相続登記の義務化は過去の相続も対象

相続登記の義務化は、2024年4月1日以前に発生した相続についても適用されます。

すでに登記が完了しているのであれば改めて手続きする必要はありませんが、未登記なら施行日から3年以内、つまり2027年3月31日までに登記申請をおこなわなければなりません。

期限内に対応すれば、10万円の過料や将来的な権利関係のトラブルを回避できるため、できる限り早めの手続きが重要です。

相続登記が義務化されたのに、しないとどうなる?

相続登記をしなかった場合、以下のようなデメリットが生じます。

  • ペナルティとして10万円以下の過料を支払わなくてはならなくなる
  • 不動産を売却したり担保として提供したりできない
  • 権利関係が複雑になって、あとから相続登記をするのが困難になるリスクが生じる
  • 差し押さえや共有持分が売却される可能性が生じる
  • 経済的な損失が生じる可能性もある

上記のリスクを回避するためにも、相続登記は早めに済ませておいたほうがよいでしょう。

それぞれのデメリットについて、詳しく解説します。

ペナルティとして10万円以下の過料を支払わなくてはならなくなる

正当な理由なく期限内に相続登記を申請しなかった場合、10万円以下の過料を支払う義務が発生します。

申請義務については不動産登記法第76条の2第1項、ペナルティについては同法164条で明確に定められています。

相続後に正当な理由がないにもかかわらず3年以上登記をしなければ、過料の支払いを命じられる可能性があることを念頭に置いておきましょう。

ペナルティを回避するには、期限内の登記申請が重要です。

ただし、ある日突然過料が科されるのではなく、まずは法務局から催告があり、それでも正当な理由なく登記しないときに裁判所の判断で過料が科されます。

なお、ここでの「正当な理由」とは以下のケースをいいます。

  • 相続人が膨大で戸籍の収集や相続人の把握に時間がかかる
  • 相続人が重病で動けない
  • 経済的に困窮しており登記費用を捻出できない

単に遺産分割協議が難航しているというだけでは、認められない可能性があるので注意しましょう。

不動産を売却したり担保として提供したりできない

相続登記が完了しない限り、不動産の売却や担保提供はできません。

被相続人の名義のままでは登記上の所有者が一致せず、契約が成立しないためです。

なお、期限内の申請が難しいときは相続人申告登記が利用できますが、申告登記をおこなっただけでは売却や担保設定はできないため、正式な相続登記が必要なことを覚えておきましょう。

権利関係が複雑になって、あとから相続登記をするのが困難になるリスクが生じる

相続登記をせず長期間放置すると権利関係が複雑化し、手続きが困難になるリスクが高まります。

代替わりを繰り返すうちに関係者が増え、関係者同士の関係が希薄になるためです。

人数が多くなれば相続人を探すことすら難しくなり、遺産分割協議もまとまりにくくなるでしょう。

一方、権利関係が複雑化する前に相続登記を済ませておけば、手続きの負担や将来的なトラブルリスクを抑えられます。

差し押さえや共有持分が売却される可能性が生じる

相続登記を怠ることで、差し押さえや共有持分の売却リスクが生じます。

相続発生後、不動産はいったん相続人全員の共有状態になるためです。

不動産が共有状態になると、以下のようなトラブルが発生するおそれがあります。

状況 発生するトラブル

相続人の中に借金を抱えている人がいる場合

債権者が裁判所を通じてその相続人の持分を差し押さえたり、競売にかけたりする

ほかの相続人が自分の持分を第三者に売却する

面識のない第三者が共有者になり、トラブルの原因になる

これらのリスクを防ぐためにも早期に相続登記をおこない、共有状態を解消しておくことが重要です。

経済的な損失が生じる可能性もある

相続登記を怠ると、経済的な損失が生じる可能性があります。

なぜなら、名義が被相続人のままでは、不動産の売却や不動産を担保に金融機関から融資を受けることなどができないためです。

急に現金が必要になっても不動産を売却できず融資も受けられない場合、資金繰りが悪化して生活や事業に悪影響を与えるリスクがあります。

本来売却する予定のない資産を、安値で売却せざるを得なくなるケースもあるでしょう。

このような損失を防ぐには、相続登記を速やかに完了させ、不動産という資産を自由に使える状態にしておくことが重要です。

相続登記の手続きを自分でおこなう場合の流れ

相続登記を自分でおこなう場合は、以下の流れで進めるのが一般的です。

  1. 相続する不動産の登記事項証明書を確認・取得する
  2. 遺言や遺産分割協議などで、誰が相続するか決める
  3. 相続登記の必要書類を準備する
  4. 登記申請書を作成する
  5. 管轄の法務局へ申請する

相続登記を自分で進めるなら、手順を正確に理解したうえで順番に対応しましょう。

書類や手続きに不備があると、申請後の補正やそもそも申請が受理されずやり直しが発生する場合があります。

ここからは、それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。

1.相続する不動産の登記事項証明書を確認・取得する

まず、相続する不動産の登記事項証明書を取得し、内容を確認しましょう。

登記事項証明書とは、不動産の登記の情報が記載された書類です。

法務局の窓口で取得できるほか、法務局が運営する「登記・供託オンライン申請システム」からオンラインでも請求できます。

登記事項証明書に記載されている情報のうち、確認すべき項目は以下のとおりです。

  • 所在
  • 地番・地目・地積(土地)
  • 家屋番号・種類・構造・床面積(建物)
  • 権利者その他の事項

証明書を取得しておけば、このあと申請書を作成する際にミスを減らせます。

なお、登記事項証明書を取得する際の手数料は、取得方法によって以下のように異なります。

取得方法 手数料(1通あたり)

窓口請求・窓口受取

600円

オンライン請求・郵送

520円

オンライン請求・窓口受取

490円

2.遺言や遺産分割協議などで、誰が相続するか決める

相続登記を進めるには、実際に誰が相続するかを決めなければなりません。

有効な遺言書があるなら遺言書に従うのが原則ですが、なければ相続人全員で遺産分割協議をおこないます。

遺言書には公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の3種類があり、公正証書遺言や秘密証書遺言は公証役場、自筆証書遺言は法務局で有無の確認が可能です。

公正証書遺言 国の機関である公証役場で、公証人と証人2人以上の立会いのもと作成する遺言書。原本は公証役場が保管する。
自筆証書遺言 遺言者本人が全文・日付・氏名を自筆する遺言書。
秘密証書遺言 遺言者が作成した遺言書を封印し、公証役場で公証人・証人に存在を証明してもらう遺言書。内容は遺言者本人しか知らない。

遺言書は、自宅や貸金庫に保管されているケースもあるため、まずは身近な場所を探し、それでも見つからなければ公証役場や法務局に問い合わせるとよいでしょう。

遺言書がないとわかったら、遺産分割協議をおこないましょう。

ここでの注意点は、相続人全員が参加して合意しなければ、遺産分割協議自体が無効になることです。

例えば、相続人のうちひとりだけが参加していなかったり意見に反対していたりすると、遺産分割協議は成立しません。

また、相続人全員が合意したらその内容は書面化し、遺産分割協議書を作成しましょう。

遺産分割協議書へは相続人全員が署名・実印で押印し、印鑑証明を添付します。

なお、有効な遺言書があっても、相続人全員の合意があれば遺言書と異なる内容で相続できますが、遺言執行者がいるときはその同意が必要になることがある点に注意しましょう。

3.相続登記の必要書類を準備する

申請の際は、法務局が相続人や不動産の情報を客観的に確認できるよう、状況に応じて以下の書類を準備する必要があります。

 書類 遺産分割協議によって相続する場合 法定相続分によって相続する場合 遺言書によって相続する場合
登記申請書

不動産の固定資産評価証明書

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

※被相続人の死亡時の戸籍のみ

被相続人の住民票除票または戸籍の附票

相続人全員の戸籍謄本

-

相続人全員の印鑑証明書

-

-

不動産取得者の戸籍謄本

-

-

不動産取得者の住民票

遺産分割協議書

-

-

遺言書

-

-

固定資産評価証明書や戸籍関係、住民票などは市区町村役場で揃えられます。

書類に不備があると申請後に追加資料や修正が発生し、修正が完了するまで審査が止まってしまう点に注意が必要です。

上記の表を参考に、ひとつずつチェックしながら準備するとよいでしょう。

なお、被相続人と各相続人の関係を記した「相続関係説明図」を添付すると、戸籍関係や住民票の原本を返却してもらえます。

4.登記申請書を作成する

登記申請書に添付する書類が準備できたら、登記申請書を作成します。

様式は法務局のホームページに掲載されており、法定相続向けのものや遺産分割向けのものなど、さまざまなものがあるため、状況に合うものを選びましょう。

登記申請書には、主に以下の内容を記載します。

登記の目的 所有権移転
原因年月日 被相続人が亡くなった日
相続人 被相続人の氏名・相続人の情報を記載(氏名・住所・生年月日・連絡先)
登記識別情報の通知 通知を希望するならチェックを入れる
申請日・管轄法務局名 申請する日の日付+不動産の所在地を管轄する法務局
課税価格 固定資産評価証明書記載の評価額を記載(1,000円未満切り捨て)
登録免許税 課税価格×0.4%(100円未満切り捨て)
不動産の表示 不動産番号・所在など

不動産の情報は、すでに取得してある登記事項証明書を参考に記載します。

なお、不動産が複数の市区町村に存在するときは、それぞれの所在地を管轄する法務局に申請が必要です。

法務局のホームページで記載例を確認しながら、ミスがないよう正確に作成しましょう。

5.管轄の法務局へ申請する

書類が整ったら、管轄の法務局に申請します。

管轄外だと受け付けてもらえないので注意しましょう。

申請受付後、書類に不備があったときは法務局の登記官から直接電話がかかってきます。

指摘された箇所を修正すれば審査は再開しますが、対応が遅ければその分審査に時間がかかる点に注意しましょう。

一方、書類に問題がなければ1週間〜10日程度で相続登記が完了し、新たな所有者が登記されます。

ただし、法務局の混雑状況や申請内容によっては、さらに時間がかかる場合があります。

なお、登記完了後に登記完了証や登記識別情報通知を受け取りに行く際は、登記申請書に押印した印鑑と身分証明書が必要です。

相続登記は自分でやっても問題ない?専門家に任せるべきケースとは?

相続登記は自分で申請しても問題ありません。

しかし、中には専門家に任せたほうがよい場合もあります。

例えば、権利関係が複雑でなくほかの相続人の合意がスムーズに得られるケースであれば、自分でおこなってもよいでしょう。

しかし、権利関係が複雑だったりほかの相続人と面識がなかったりすると、自分で対応するのはハードルが高いかもしれません。

ここでは、相続登記を自分でおこなっても問題ないケースと専門家に対応を任せたほうがよいケースを紹介します。

相続登記を自分でおこなっても問題ない主なケース

以下のようなケースであれば、自分で相続登記をおこなっても問題ないでしょう。

ケース 理由
相続人がひとりだけ・配偶者+子どもだけなど相続関係がシンプル 必要書類が少なく、手続きが比較的簡単。
有効な遺言書が残されている 遺言書の内容に従って手続きを進めればよく、遺産分割協議が不要。
平日に市区町村役場や法務局に出向ける 申請、修正は平日の日中におこなう必要があるため、時間的な余裕がないと難しい。
自分で調べて書類作成や手続きを進める意欲・時間がある 本記事を参考に、慎重に準備できる人であれば対応可能。
相続人同士でもめていない・相続人を把握できている 相続人同士で意見が合わずもめている場合やどこの誰かわからない相続人がいるときは、専門家に依頼するのがおすすめ。

ただし上記に該当するケースでも、対応が難しいと感じたら専門家への相談・依頼を検討したほうがよいでしょう。

相続登記を専門家に任せた方がよいケース

以下に該当する場合は、はじめから専門家に任せたほうがよいでしょう。

ケース 理由
相続人が多い・権利が複雑 戸籍の取得が大変、相続関係を把握しにくい。
遺産分割協議が必要 ほかの相続人との調整が必要になる。
相続人の中に行方不明者・認知症の人がいる 法定代理人・特別代理人の選任といった追加の手続きが必要になるうえ法的知識が必要。
複数の市区町村に不動産がある 管轄の法務局ごとに申請の準備が必要。
仕事や遠方に居住しているなどで平日市役所や法務局に行けない 平日の日中に動けないと手続きが進まない。
過去の相続が未登記のまま 過去の相続から処理する必要があるため、手続きが複雑になる。
ほかの相続人とトラブルになっている ほかの相続人との交渉や法的手続きが必要になるため、専門知識がないと厳しい。

なお、相続登記について相談・依頼できる専門家には、司法書士と弁護士がいます

どちらに依頼すべきかは、トラブルが起きている・または起きる可能性があるかどうかで判断できます。

基本的には司法書士に相談し、トラブルが起きている場合や今後トラブルに発展しそうなときは弁護士に相談するとよいでしょう。

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義務化された相続登記の手続きを簡素化するための制度3つ

相続登記の義務化に伴い、手続きを簡素化するための制度が導入されています。

例えば、以下の3つです。

  • 相続人申告登記|相続登記のペナルティを簡易的に回避するための制度
  • 所有不動産記録証明制度|被相続人所有の不動産を簡単に調査するための制度
  • 戸籍の広域交付制度|被相続人の戸籍謄本を一括で取得できる制度

上記の制度を組み合わせて活用すれば、手続きの負担を軽減できるでしょう。

それぞれの制度について、解説します。

相続人申告登記|相続登記のペナルティを簡易的に回避するための制度

相続人申告登記は、相続人が法務局に申告するだけで相続登記の義務を果たしたことになる制度です。

相続人のうちひとりが単独でおこなえるため、遺産分割協議がまとまらない場合やすぐ正式な相続登記ができない事情があるときでも、期限を過ぎた場合のペナルティを避けられます。

ただし、申告登記は正式な相続登記とは違って所有権が移転しないため、申告登記だけでは不動産を売却したり担保提供したりといったことはできません。

売却や担保提供を検討しているなら、最終的に正式な相続登記をおこなう必要があることを念頭に置いておきましょう。

所有不動産記録証明制度|被相続人所有の不動産を簡単に調査するための制度

所有不動産記録証明制度は、被相続人が所有していた不動産を一括で調査できる新しい制度です。

被相続人が所有する不動産を調査する場合、これまでは市区町村で名寄せ台帳を取得する方法が一般的でしたが、その市区町村の物件しか調査できないという問題がありました。

しかし、所有不動産記録証明制度なら、全国で所有する物件が全て見られます。

不動産の漏れや見落としを防げるため、調査の負担を大幅に軽減できるでしょう。

なお、施行は2026年2月2日が予定されており、現在はまだ利用できません。

また、取得場所は法務局が予定されていますが交付手数料は発表されておらず、今後の発表が注目されています。

戸籍の広域交付制度|被相続人の戸籍謄本を一括で取得できる制度

戸籍の広域交付制度は、全国どこの市区町村役場でも被相続人の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を取得できる制度です。

これまでは本籍地ごとに戸籍謄本を請求する必要があったため、転勤族で転籍が多い場合や結婚・離婚が多いケースなどは戸籍を揃えるだけでも一苦労でした。

しかし、広域交付制度の導入によって、出生から死亡までの戸籍をまとめて取得できるようになり、書類集めの負担が大幅に軽減されました。

注意点は、請求できるのが本人や直系の親族に限られていることです。

例えば、兄弟姉妹の戸籍謄本の取得には利用できません。

また、必ず市区町村役場の窓口に出向く必要があり、郵送や代理人による請求ができない点にも注意が必要です。

さらに取得できる戸籍にも限界があり、戸籍抄本や附票など、一部の書類は対象外となります。

相続登記にかかる費用はどのくらい?

相続登記にかかる費用は、手続きを自分でおこなう場合と専門家に依頼する場合とで大きく異なります。

また、不動産の評価額や相続人の人数、依頼内容によっても変わってくるため、専門家に依頼するときは事前に費用について説明を受け、見積もりをとるようにしましょう。

ここでは、相続登記にかかる費用について、手続きを自分でおこなう場合と専門家に依頼する場合別に解説します。

自分でおこなう場合

自分で相続登記をおこなう場合、主に登録免許税と必要書類の取得費用がかかります。

専門家への報酬が発生しないため、実費のみの負担で手続き可能です。

登録免許税 固定資産評価額×0.4%(100円未満切り捨て)
※評価額は1,000円未満切り捨て
必要書類の取得費用 目安:5,000〜3万円程度
【内訳】
・戸籍:1通450円
・除籍・改製原戸籍:1通750円
・住民票:1通200〜400円
・戸籍附票:1通200〜400円
・印鑑証明書:200〜300円
・固定資産評価証明書:1通200〜300円
・登記事項証明書:1通490〜600円
その他の実費 郵送料・交通費など

登録免許税は、不動産の固定資産評価額によって金額が異なります。

例えば、評価額が2,000万円の場合、登録免許税は8万円です。

ただし、以下に該当する場合は登録免許税は免税になります。

  • 登記をしないまま亡くなった相続人を名義人とする相続登記
  • 評価額が100万円以下の土地を相続する場合

また、必要書類の取得費用も、目安は5,000〜3万円程度ですがケースによって変わってきます。

例えば、相続人が少なければ取得すべき戸籍もそれほど多くならないと考えられますが、相続人が多く相続関係が複雑なケースであれば、戸籍の取得費用だけで高額になる場合があります。

そのほか、戸籍を郵送請求したり郵送で登記を申請したりするときは郵送料、法務局に出向くときは交通費がかかるため、細かい実費も見込んでおくと安心です。

専門家に依頼する場合

登記の専門家である司法書士に依頼すると、5万円〜15万円程度の費用がかかります。

不動産の数や評価額、相続人の数によって金額は異なりますが、遺産分割協議書の作成や戸籍収集なども依頼する場合はさらに費用が高額になることもあります。

トラブルがなければ司法書士ヘの依頼で十分ですが、司法書士は登記や書類作成の専門であり、相手方との交渉や訴訟への対応などは弁護士でないと対応できません。

ほかの相続人とトラブルになっている場合や今後トラブルに発展する可能性があるときは、弁護士への依頼を検討しましょう。

ただし、弁護士に依頼した場合、少なくとも20万円〜30万円程度の着手金や報酬金などがかかる点に注意が必要です。

専門家 主な業務内容 費用相場(目安)
司法書士 登記・書類作成 5万円〜15万円程度
弁護士 交渉・訴訟・トラブル対応 20万円〜30万円程度(着手金)

相続登記の義務化についてよくある質問

さいごに、相続登記の義務化に関するよくある質問を紹介します。似たような疑問を抱えている方は、ここで解消しておきましょう。

相続登記の義務化はいつの相続から対象になる?

義務化の施行日は2024年4月1日ですが、2024年4月1日以前に発生した相続にもさかのぼって適用されます。

未登記であれば、たとえ相続の発生から何十年経っていても対象です。

相続登記が期限内にできそうにないときはどうすればいい?

相続登記が期限内にできそうにないときは、相続人申告登記の申出を検討してください。

以下の2点を法務局に申し出ることで、相続登記義務を果たしたことになり過料を免れられます。

  • 不動産の所有者が亡くなり相続が発生したこと
  • 自分が相続人であること

売却や担保設定を考えているなら正式な相続登記が必要ですが、期限に間に合わないときは応急措置として利用することをおすすめします。

相続登記のペナルティ(過料)は誰が払うの?

相続登記を期限内におこなわなかったときに科される過料を誰が支払うかは、状況によって以下のように変わります。

  • 遺産分割が終わっていない:相続人全員が支払う
  • 遺産分割が完了し、誰が相続するかが決まっている:不動産を取得した人が支払う

相続人全員が支払う場合、誰かひとりが支払えばほかの人は免除されるのではなく、それぞれが支払わなければなりません。

それに対し、不動産を取得した人が支払う場合は、ほかの相続人に支払義務は発生しません。

過去分の相続について、相続登記はいつまでにすませればよい?

2024年4月1日以前に発生した過去の相続については、施行日から3年の2027年3月31日までに手続きすれば問題ありません。

完了までは求められず、期限までに法務局に申請していれば審査中に期限を過ぎてしまっても過料の対象にはなりません。

さいごに|相続登記手続きに不安があれば専門家に相談を!

本記事では、相続登記の義務化で損をしないために覚えておくべきことを解説しました。

これまで任意だった相続登記は、2024年4月1日から義務化されています。

そのため、2024年4月1日からは施行前・施行後を問わず、相続登記を申請しなければなりません。

期限内に登記を申請しない場合、ペナルティとして10万円以下の過料が科される可能性があります。

また、相続登記をしない限り、不動産の売却や担保設定などもできません。

相続登記は自分でもできますが、ケースによっては書類収集や手続きが難しい場合もあるため、手続きに不安を感じたら司法書士や弁護士といった専門家に相談することをおすすめします。

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Yz法律事務所
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ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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