共有名義になっている不動産があるが、相続上どのような取り扱いになるのか疑問に思っている方もいるかもしれません。
結論からいうと、共有名義の不動産も相続の対象となり、相続人と共有名義になる可能性があります。
そこで本記事では、不動産の共有名義人が死亡した場合の基本ルールから、不動産の共有名義を解消するために相続時にできる3つの対応までわかりやすく解説します。
本記事を読めば、共有名義の不動産の相続上の取り扱いと今後の対応を知ることができます。
不動産の共有名義人が死亡した場合、共有名義人が有していた持分は、相続財産に含まれます。
つまり、その持分が共有名義人の相続人に相続されることになります。
共有名義人が死亡しても不動産の所有権の全てを取得できるわけではないため、注意が必要です。
ここでは、不動産の共有名義人が死亡した場合の相続手続きの基本ルールについてしっかりと理解しておきましょう。
不動産の共有名義人が亡くなると、共有名義人が有していた不動産の持分だけが相続財産になります。
つまり、自分の持分については、亡くなった共有名義人の相続財産になることはありません。
一方で、共有名義人が亡くなったからといって、その相続人は不動産の所有権の全てを取得できるわけではないことにも注意が必要です。
例えば、夫婦で各持分2分の1を有していた夫が亡くなり、妻と子どもが相続人だった場合、共有持分割合は下表のようになります。
相続人 |
相続前持分 |
相続した共有持分の割合 |
最終的な共有持分 |
---|---|---|---|
妻 |
2分の1 |
2分の1(全体の4分の1) |
4分の3 |
子ども |
0 |
2分の1(全体の4分の1) |
4分の1 |
このように、もともと共有名義人だった妻は自身の持分2分の1に加えて、相続分に応じた持分4分の1を取得します。
事業などのための不動産を共有名義人として所有していた場合、事業に関係のない人物が不動産の持分を取得することを防ぎたいと思うかもしれません。
しかし、個人名義で共有名義人になっていた場合であれば、共有名義人の配偶者や子どもが持分を相続します。
遺言があれば、それにしたがって相続がおこなわれますが、遺言がない場合は通常法定相続分にしたがって相続がおこなわれます。
このとき、配偶者は常に相続人となり、子どもがいた場合は子どもも相続人になります。
そのため、複数人の相続人がいる場合、相続人の1人が持分の全てを取得する方法としては、通常、遺産分割協議でそのような合意をしない限り、実現できません。
不動産の共有名義人が死亡した際、家族構成によって相続人が変化します。
そこで、ここではケース別に相続人になる人を紹介します。
夫婦間で共有名義人になっており、妻が亡くなった場合、配偶者である夫が法定相続人になります。
民法上、配偶者は常に相続人になると定められています。
そのため、子どもやほかに相続人がいない場合、夫が全ての所有権を取得することになります。
親子間で共有名義人になっており、子どもが亡くなった場合には、子どもの家族構成によって相続人が変わります。
例えば、子どもに妻と(被相続人から見て)孫にあたる子どもがいた場合、妻と子どもが法定相続人になります。
そのため、不動産の持分は親が2分の1、妻が4分の1、子どもが4分の1となります。
兄弟間で共有名義になっており、兄が亡くなった場合もどのような家族構成なのかによって法定相続人が変わります。
兄弟ともに結婚しておらず、両親も亡くなっていた場合は弟だけが法定相続人となり、不動産の所有権の全てを取得します。
もっとも、兄に配偶者と子どもがいた場合は、この2人が法定相続人になります。
そのため、弟がもともと有していた2分の1を引き続き有し、配偶者と子どもが相続によりそれぞれ4分の1ずつ共有持分を取得します。
親族以外の第三者と共有名義になっており、第三者が亡くなった場合、第三者の家族が相続人となり、共有持分を相続します。
このようなケースの場合には、親族関係にない第三者の相続問題であるため、誰に持分権がわたるか、所有権の登記がなされるまで不明になる可能性があります。
また、共有持分を有しているからといって、遺産分割協議に参加することもできません。
そのため、共有名義人が亡くなったことを知ったら、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
共有名義人の死亡により、ケースによっては意図しない相手が共有持分を取得するなど、権利関係が複雑になる可能性があります。
ここでは、不動産の共有名義を解消するために相続時にできる3つの対応を紹介します。
不動産の共有名義人が相続人の場合、その不動産の持分全てを相続すると共有名義を解消でき、単独名義に書き換えるという方法があります。
共有名義になっている不動産を相続する場合には、複数の相続人で分割すると権利関係が複雑になってしまうおそれがあります。
ほかにも、ほかの相続人が無条件で不動産の相続を認めない可能性も否めません。
そのような場合には、預貯金などほか他の相続財産を分割する、場合によっては多めに渡すなどの方法を取られることが一般的です。
ほかにも、相続後にもうひとりの共有名義人に持分を売却するという方法です。
この方法であれば、法定相続分で遺産分割をし、自分が不要な持分を現金化することができます。
また、仮にほかの相続人も共有状態にあったとしても同意を得る必要はなく、ご自身の意思で売却することが可能です。
ただし、共有持分のニーズは決して高いとはいえないため、不動産会社へ相談をした場合に断られたり、売却価格が低く提示されたりする点は考慮する必要があるでしょう。
共有持分が不要な場合は、ほかの共有者に対して共有持分を放棄するという意思表示をすることができます。
放棄された持分は、他の共有者のものとなります。
このとき、法律で定められた規定は特にないものの、意思表示をした証拠を残すという観点からも、内容証明郵便を利用するのがおすすめです。
ただし、いきなり内容証明郵便を送付するのは決して印象がよいものではないため、事前に口頭で連絡するようにしましょう。
共有名義の不動産の相続が負担に感じる場合には、相続放棄を検討するのもひとつの手です。
「相続放棄」とは、不動産や動産、預貯金、株式などのプラスの財産と、借金やローンなどのマイナスの財産どちらも受け取らない意思表示のことをいいます。
なお、相続放棄は、自己が相続人となって相続が開始したことを知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に申し立てをする必要がありますが、認められれば最初から相続人でなかったことになります。
そのため、相続手続きに関与する必要がなくなり、共有名義の不動産相続の負担もなくなります。
しかし、相続放棄は原則として取り消すことができないため、下記の関連記事を参考に慎重に検討しましょう。
なお、全ての相続人が相続放棄した場合は、不動産の共有名義人に持分が移転し、共有名義人の単独名義となります。
共有名義の不動産がある場合には、相続上の問題だけでなく、今後の不動産の管理の問題も生じます。
誰が共有名義を相続するか決められず、相続人全員の共有にしてしまうと権利関係が複雑になり、不動産を適切に利用できなくなるかもしれません。
ほかにも、自分が所有者だったはずの不動産が、相続によって顔も知らない他人と共同所有することになる可能性も否めません。
そのため、共同名義の不動産がある場合には弁護士に相談しましょう。
特に相続トラブルに注力している弁護士へ依頼することで、今後の共有名義の不動産の取り扱い方のサポートから単独名義にするための交渉を依頼することができます。
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